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(財)資産評価システム研究センター 

5.工業地における規模格差の検討


5.工業地における規模格差の検討
(1)工業地の分類
 工業地は、工業生産活動の用に供される建物、構築物等の用に供されることが、自然的、社会的、経済的及び行政的観点から合理的と判断される地域内に存する土地をいい、一般に製品の生産及び販売に関する採算性を最も重要な指標としてその立地、画地規模等が決定される傾向がある。そのため、業種業態により必要とされる諸条件が異なる結果、構成される価格形成要因が異なり、また、重視される要因の種類が異なる。ここでは、このような工業地が有する特性を前提に工業地を分類し、画地規模との関係を考察する。
@利用形態による区分
「工場地」、「倉庫地」、「流通業務用地」、「研究開発用地」
 工場地は、小規模な家内工業的な工場から、数百万uに及ぶ大規模な工場までその画地規模は広範囲に及ぶ。これに対し、倉庫地、流通業務用地、研究開発用地は一般的には数千uから1〜2万u程度の画地規模が多い。
A業種による区分
「基礎素材型」、「加工組立型」、「生活関連型」
 化学工業、鉄鋼業、石油製品製造業等の基礎素材型は主に1次原材料を加工し工業製品を生産しており、一般にその生産施設に数十万u〜数百万uと広大な敷地を必要とする。これに対し、一般機械器具製造業、電気機械器具製造業等の加工組立型、食料品製造業、繊維工業等の生活関連型は、主に数万u程度までの画地規模が多い。
B立地による区分
「臨海型」、「内陸型」
 臨海型は臨海部に工場等が連たんして地域を形成しており、その画地規模は大きい。これに対し内陸型は、工場等が他の用途と混在して存する「用途混在型」と、開発団地内に計画的に工場等の敷地が配置された「工業団地型」とに区分され、前者の場合、小規模な家内工業的な工場から数万uの画地規模を有する大規模な工場まで多種に分かれる。一方、後者では、主に工業団地として分譲される場合が多く、したがって、その画地規模も比較的工業地として流通性のある数千uから数万u程度の画地が多い。なお、「用途混在型」のうち、市街地内の大規模工場が単独で存する場合は、当該画地自身で価格水準を形成する場合がある(「単独立地型」)。
C地域的な区分
「都市型」、「地方型」
 都市型は、首都圏・近畿圏・中部圏などの大都市圏に存する工業地で、一般に中心都市の地価水準の影響を受ける結果、工業地地価も高いものとなっている。一方、地方型は消費地への距離も遠く、よって都市部の地価水準の影響を受けにくく、地価水準も低いものとなっている。
D画地規模による区分
「大工場地域」、「中小工場地域」
 国土庁監修の「土地価格比準表」では、大工場地域は概ね3万u程度を標準的使用とする大規模な工場が立地している地域、また、中小工場地域は概ね3千u程度を標準的使用とする中小規模の工場が立地している地域とされている。なお、これらの比準表の適用範囲は前者では約1万u〜5万u間で、後者では1千u〜1万uの画地により構成されている地域を目安として適用するものとされてる。
E他用途への移行可能性の有無による区分
「工業地が最有効使用の場合」、「住宅地・商業地等他の用途への移行地」
 画地が存する地域の状況及び将来動向等を勘案し、将来にわたって工業地としての利用が最有効使用であると判断される場合と、逆に、周辺に存する住宅地・商業地等の影響を受ける結果、将来的にはまたは現状ですでに住宅地・商業地等他の用途へ移行することが予測される場合とに区分される。この場合、前者では当該画地が存する工業地の標準的画地規模を前提とした規模格差が検討されるが、後者の場合は、その移行の程度に応じ、移行後の用途における規模の減価を考慮する必要がある。
(2)工業地における画地規模の実態
 工業地における画地規模について、工業統計調査及びモデル都市における画地分布状況により画地規模の実態について整理を行う。
@工業統計調査からみた画地規模の特徴
 平成8年工業統計調査から従業者30人以上の工業地の画地規模等について整理を行う。
a)業種別状況
 業種別の画地規模、付加価値額(※)等の状況は下記のとおりである。このうち1事業所当たり敷地面積が大きい業種は、石油製品製造業・鉄鋼業・化学工業・非鉄金属製造業などであり、装置型産業が上位を占めている。逆にこれら以外の産業における同敷地面積は、数千〜数万uの間であり、業種により画地規模が異なる。また、特に画地規模の大きい石油製品製造業・鉄鋼業が1u当たりの付加価値額で最も小さくなっている。
(※)工業統計では付加価値額は下記のように定義されている。
付加価値額=生産額−内国消費税額−原材料使用額等−減価償却費

 次に、敷地規模及び付加価値額の合計の割合を業種別に示す。下図のうち外円が各業種別の、内円がそれらを3区分した場合の割合を示しており、敷地面積の合計では基礎素材型が1位であるが、付加価値額では加工組立型が1位となっている。また、内円の区分名の下の数字はそれぞれの平均を示しており、1事業所当たりの敷地面積では基礎素材型が44,566uで1位であるが、1u当たり付加価値額では加工組立型の97,393円/uが1位となっている。もし付加価値額が工業地の収益性を示す指標として考えることができるとすれば、画地規模の大きい基礎素材型は、他の産業と比較しその1u当たり付加価値額が小さくなっているので、この意味において規模減価が発生していることになる。

b)都道府県別状況
 都道府県別の工業地地価と付加価値額との関係を下図に示す。ここで工業地地価は平成9年地価公示の工業地(用途番号:9)の都道府県別平均価格を、また付加価値額は工業統計の都道府県別平均を用いている。図からも明らかなように、工業地地価は首都圏及び近畿圏等で相対的に高い水準を示しているが、市場性からみた規模による減価を考えると、相対的に地価水準が高い三大都市圏のほうが、地方圏と比較し規模による減価が大きくなることが予想される。また、工業地地価と付加価値額との関係では両者は概ね同様の傾向を示しているが、一部地域で乖離が見受けられ特に近畿圏での乖離が大きいが、工業地地価と付加価値額との相関が認められるならば、今後これらの工業地地価が付加価値額付近に収斂していくことが考えられる。


Aモデル都市における画地規模の特徴
 下表は「付属資料−2(A)画地規模ランク別集計一覧表」よりモデル都市の工場地区における画地規模別分布状況のデータを行列入れ替えて表示したものである。一般的には画地規模の増大に伴い減価が見受けられるはずであるが、画地規模ランク別の平均価格(固定資産評価額の1u当たり平均価格)をみると、各ランクとも大きな変化は見受けられない。


(3)工業地における規模格差の検討
 工業地における規模格差の考察を行うに際し、住宅地・商業地と異なる点としては、これまでで考察したように、商業地及び住宅地における規模格差が主に分割に伴う潰地等による減価や表地と裏地との関係による減価を反映したものであるのに対し、工業地はその利用形態、業種、立地等の相違により規模格差が生じているものと推察できる。そこでその規模格差を検討するために、ここでは、まず地価公示の工業地について分析を行い規模格差について検討を行う。次に、鑑定評価の実務における規模格差率との関係、また、上記区分で示した他用途への移行可能性を有する場合における規模格差を考慮し、工業地における規模格差の検討を行う。
@重回帰分析による規模格差の検討
 平成10年地価公示における工業地の全標準地801地点について重回帰分析を行った結果、下記に示す地価モデル式が推定された(被説明変数:log地価)。なお、「付属資料−4」に重回帰分析の内容を示す。

 このモデル式を用い、地積と格差率との関係についてシミュレーションを行った結果、下記のように格差率が求められた(log地積平均の実数が4463uであっため5000uを100として規模格差指数を計算した)。


A鑑定評価における実務面からみた規模格差
 鑑定評価では、一般に評価対象地が存する近隣地域の標準的な画地規模を前提とした標準価格を把握し、次にこの地域の標準的画地規模と比較し、評価対象地の画地規模が大きい場合、その状況に応じ規模の増減価を検討する。ここでは、平成7年に日本不動産鑑定協会でまとめられた「大規模工場用地の鑑定評価」のなかで、例示的に示された規模と減価率との関係を参考資料として示す。

B規模格差の検討
 上記より規模格差について「重回帰分析による格差」と「鑑定評価における格差」について検討を行ったが、これらを5万uを100とした場合の規模格差指数を下図に示す。図からも明らかなように概ね2万uから25万uの間ではこれらの規模格差指数はほぼ同様の傾向が認められたが、これらの規模格差については以下のような傾向を有することに留意する必要がある。

 「重回帰分析による格差」は、分析に用いた地価公示データが都市計画区域内の用途地域が工業地域または工業専用地域における標準地のため、これらの状況における画地規模を前提とした規模格差である。したがって、ある程度の都市規模を持つ工業地の規模格差であるといえるが、未線引地域のような一般に地価水準の低い地域における工業地の規模格差を反映しきれていない可能性がある。また、分析では全国データを採用したため、その価格差も5,700〜446,000円/uと大きいものになっており、モデル式の推定に際しダミー変数により立地条件の違いによる格差の除去を行ったが、まだ規模格差にこの格差が含まれている可能性がある。
 一方、「鑑定評価における格差」は注書きにもあるように、大都市圏で近郊整備地帯にある工場を想定しており、三大都市圏のような地価水準の高い地域における工業地の規模格差であるといえる。さらに調査時点が平成7年であるので特に東京圏を中心に地価水準が高い時期の規模格差であり、単価と総額との関係を考慮すると現時点ではやや大きい規模格差率であると判断される。
 なお、住宅地域及び商業地域に隣接ないし近接する工業地については、その価格水準が移行後の用途における価格水準にその移行の程度に応じ接近していく。したがって、この場合は移行後の用途における規模格差を考慮のうえ当該画地の規模格差を決定する必要がある。
(4)固定資産税評価における工業地の規模格差
 上記により工業地における規模格差が抽出されたが、ここではこれを固定資産税評価において適用する場合の規模格差補正率及び適用上の留意点について整理を行う。
@適用範囲の検討
 上記により求められた規模格差は、用途地域が工業地域または工業専用地域における工業地の規模格差であり、現実には他の用途地域にも工業地は存在するが、これらは一般に周辺の住宅地または商業地の影響を受ける場合が多く、その規模格差は移行の程度及び価格水準により異なることから、一律の補正率を適用することは困難である。また、地価水準が異なる都市圏と地方圏では単価と総額の関係からも規模格差に差があるものと考えられ、これも一律に格差率を論ずることは困難である。これらの点を勘案すると、求められた規模格差の適用は主に工業地として純化していると考えられる大工場地区に限定して適用することが望ましいと考えられる。なお、「重回帰分析による格差」と「鑑定評価における格差」との間に同様の傾向が見いだせなかった2万u以下の画地について考察すると、「重回帰分析」により求められた格差率が、利用形態や業種、立地の違い等による格差を反映したものであるのに対し、「鑑定評価」により求められた格差は利用形態や業種、立地がある程度純化された中での格差であることから、様々な形態が混在する2万u以下の工業地で両者の間に乖離が生じたものと考えられる。そのため実際の運用では、それぞれの地域の状況を加味した規模格差補正率を検討する必要があることに留意しなければならない。
A規模格差補正率表への展開
 上記の検討を受け2万u以上の画地について、2万uを100とした場合の規模格差補正率を示すと下表のようになる。
<工業地・規模格差補正率>

地積 規模格差補正率
  20,000u 1.00
20,000u超 25,000u未満 0.98
25,000u以上 30,000u未満 0.96
30,000u以上 35,000u未満 0.94
35,000u以上 40,000u未満 0.92
40,000u以上 45,000u未満 0.91
45,000u以上 50,000u未満 0.89
50,000u以上 55,000u未満 0.88
55,000u以上 60,000u未満 0.87
60,000u以上 65,000u未満 0.86
65,000u以上 70,000u未満 0.85
70,000u以上 75,000u未満
75,000u以上 80,000u未満 0.84
80,000u以上 85,000u未満 0.83
85,000u以上 90,000u未満 0.82
90,000u以上 95,000u未満
95,000u以上 100,000u未満 0.81
100,000u以上 110,000u未満
110,000u以上 120,000u未満 0.80
120,000u以上 130,000u未満 0.79
130,000u以上 140,000u未満 0.78
140,000u以上 150,000u未満 0.77
150,000u以上 160,000u未満
160,000u以上 170,000u未満 0.76
170,000u以上 180,000u未満 0.75
180,000u以上 190,000u未満
190,000u以上 200,000u未満 0.74
200,000u以上 210,000u未満
210,000u以上 220,000u未満 0.73
220,000u以上 230,000u未満
230,000u以上 240,000u未満 0.72
240,000u以上 250,000u未満

B本表の適用上の留意点
a)市町村における規模格差補正率の設定
 上述のように、今回の規模格差補正率の前提となった規模格差の抽出は、全国的な傾向をとりまとめたものであり、それぞれの地域の状況は捨象されているので、市町村においてこの格差率を適用する場合には、地価水準、画地の分布状況、業種等市町村の実態に応じて適宜修正をして適用することが適当と考える。
b)状況類似地域区分
 固定資産税評価における適用を前提として25万u未満までの規模格差補正率を求めたが、鑑定評価では取引事例比較法の適用に際し、採用する取引事例は同一需給圏内に存する代替性を有する取引事例を選択するので、その標準的画地規模はある程度一定となり、極端に画地規模が異なる事例は原則として採用しない。したがって、同格差率の適用には一定範囲の画地規模の画地により構成されている状況類似地域区分がなされていることが前提となる。
c)大規模工場用地に係る規模格差補正率との関係
 平成9年度評価替えから行われている大規模工場用地に係る規模格差補正率は、その需給圏が全国規模に及ぶと考えられる20万u以上の画地を前提として補正率が設定されている。一方、今回分析を行った25万u未満の面積区分における画地については、これらにより構成される地域の需給圏はある程度地域的に限定され、本来はそれぞれの地域的特性に基づいて規模格差を求め適用すべきであることからその対象とするものは異なる。また、今回はデータ収集の制約上全国データを使って分析を行ったものであり、平均的な規模格差としての性格を有する。したがって、大規模工場用地に係る規模格差補正率と今回の規模格差補正率はその性格が異なることからこれらを一体的に適用することは適当ではないと考える。

<参考> 「大規模工場用地の評価」
 大工場地区に所在する工場用地のうち大規模な工場用地として利用される土地(おおむね20万平方メートル以上のものに限る。以下「大規模工場用地」という。)の評価は、用途地区、第3節二(一)2(2)にいう地域等の区分を適切に行い、規模による価格の格差を反映させる方法によるものとする。この場合において、規模の異なる大規模工場用地が連たんする場合等、さらに価格の格差を反映させる必要がある場合には、標準宅地の価格との規模による格差率に応じた補正を行い評価額を求める方法によるものとする。
<大規模工場用地に係る規模格差補正率>

地積 規模格差補正率
  200,000u 1.00
200,000u超 250,000u未満 0.98
250,000u以上 300,000u未満 0.96
300,000u以上 400,000u未満 0.94
400,000u以上 500,000u未満 0.92
500,000u以上 600,000u未満 0.90
600,000u以上 700,000u未満 0.89
700,000u以上 800,000u未満 0.88
800,000u以上 900,000u未満 0.87
900,000u以上 1,000,000u未満 0.86
1,000,000u以上   0.85

(注)20万uの画地を1.00とした場合の規模格差補正率を示したものである。