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T.調査の基本的事項
1.調査事項
- 固定資産評価の市街地宅地評価法における「主要な街路」と「その他の街路」について、価格形成要因のうち個別的要因の格差が生じる宅地について鑑定評価を行い、当該宅地についての固定資産税評価及び相続税評価により算定される価額について比較を行う。
2.調査目的
- 公的土地評価の比較を行うことを目的とする。
3.調査の基準となる日(不動産鑑定評価書の価格時点)
- 平成14年1月1日
4.調査の前提条件
- A) 調査地の選定について
調査地点の所在する都市は政令指定市、特例市、県庁所在市から選定(以下順にA市、B市、C市という。)し、調査地点の選定は当該市との協議によった。
B) 各評価額等の計算について
調査地点の固定資産税評価額は平成15年度基準年度分時点修正前暫定数値を調査地点の所在する市が算定し、相続税評価額は財産評価基本通達に基づき(財)日本不動産研究所が算定した。
U.各テーマの概念の整理及び調査地点の選定基準
本調査における各テーマに該当する土地は下記の条件を満たすものとした。
- (1) 整形な土地
- a.概念
整形な土地とは、一般に形状が矩形で間口と奥行のバランスのとれている土地をいう。
b.調査地点の選定
本調査における整形な土地とは、主要な街路、その他の街路それぞれにおいて次の条件を満たす土地とした。
@形状が矩形である土地
(画地全体が宅地としての機能を十分に発揮できる形状である土地)
A間口と奥行の釣合がとれている土地
B主要な街路においては、標準宅地以外の土地
- (2) 特定道路からの距離による容積率緩和のある土地の概念
- a.概念
容積率とは、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。
容積率は土地面積の単位面積あたりの建物延べ床面積を規定するものであるが、建物延べ床面積が大きくなるということは宅地としての単位面積あたりの効用を高めることにつながるものであり、特に収益性が重視される商業系の用途地区においては容積率の土地価格への影響は大きい。しかし、住宅系の用途地区においては都市計画のなかで指定容積率が低く抑えられていることによって良好な環境が保たれているといった側面もあることに留意する必要がある。
容積率は用途別に都市計画で定められている(建築基準法(昭和25年法律第201号)第52条)が、@前面道路幅員が12m未満の場合、A敷地が容積率の異なる2以上の地域にまたがる場合、B特定道路から一定の距離にある場合、C壁面線の位置指定がなされた場合等によりそれぞれ定められた計算方法により求められた数値が上限値となる。
容積率には、次の3つの指標がある。
(ア) 指定容積率
指定容積率とは、用途地域等の区分に従い、建築基準法第52条第1項第1号〜第6号のうちから都市計画において定められた容積率である。
(イ) 基準容積率
基準容積率とは、建築基準法第52条第1項、第5項及び第6項の規定による容積率である。指定容積率に、前面道路幅員による制約、異なる指定容積率の区域等にまたがる場合の加重平均、特定道路からの距離による緩和等を考慮したものが基準容積率となる。特に特定道路からの距離による緩和規定は同一路線でも容積率が異なることから、相続税評価や固定資産税評価に反映しにくい要因となる。
(ウ) 使用可能容積率
建築基準法上の上限値は基準容積率であるが、実際に建築物を建築する際には当該画地の形状、規模、周囲の状況等により、各種の形態規制が働き、法上の上限値までの床面積の確保は困難な場合がある。また、上限一杯までの建築が経済的に引き合わない場合もある。このような場合に評価対象地の最有効使用に適合する実際に建築可能な容積率を使用可能容積率という。
本調査のテーマである建築基準法第52条第6項に定める容積率緩和とは、広幅員道路に接する敷地と、それに隣接する狭い幅員の道路に接する敷地の容積率の間に急激な変化を生じるのを防ぐために設けられた規定である。
この規定により、敷地の前面道路の幅員が6m以上であり、かつ、当該前面道路に沿って幅員15m以上の道路(特定道路)からの延長が70m以内である敷地については、前面道路幅員に建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第135条の4の5で定める数値を加えて前面道路による容積率の制限が適用されることになる。
建築基準法第五十二条第六項
建築物の敷地が、幅員一五メートル以上の幅員(以下この項において「特定道路」という。)に接続する幅員六メートル以上一二メートル未満の前面道路のうち 当該特定道路からの延長が七十メートル以内の部分において接する場合における当該建築物に対する前各項の規定については、第一項中「幅員」とあるのは、「幅員(第六項の特定道路に接続する同項の前面道路のうち当該特定道路からの延長が七 十メートル以内の部分にあつては、その幅員に、当該建築物の敷地が接する当該前面道路の部分までの延長に応じて政令で定める数値を加えたもの)」とする。 |
b.調査地点の選定
本調査では、調査地点を建築基準法第52条第6項に規定する特定道路からの距離により容積率の緩和の適用があり、当該緩和が土地の生み出す収益ひいては土地価格に影響を与えると考えられる商業地域に設定した。
- (3) 高圧線下地
- a.概念
電気事業法(昭和39年法律第170号)に基づき経済産業省の定める「電気設備に関する技術基準を定める省令」(平成9年通商産業省令第52号、以下「技術基準」という。)によれば、電圧には低圧(直流750V以下、交流600V以下)、高圧(直流750V、交流600V〜7,000V以下)、特別高圧(7,000Vを超えるもの)がある。「高圧線下地」とは、特に定説はないが、「7,000V超の特別高圧架空電線路の直下又は近接に存するため、実質的な建築制限等により土地利用に制約を受ける土地」と考えられている。
送電線に係る規制は、電気事業者と土地所有者との当事者間の約定による私法上の規制もあるが、公法上の規制が原則的である。公法上の規制としては、工作物の建設等の作業を行う場合の感電防止のための規則(労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第349条)(※1)等があるが、送電線と建造物とが接近または交差する場合の規定として、技術基準第29条及び第48条(※2)に示されている。これらの規定は主として安全・保安目的のために、特別高圧架空電線路を施設する場合の電線の使用資材及び電線の付設方法に関する電線付設者の義務を定めたもので、付設された電線に接近して建造物を築造するときは、送電線から一定の離隔距離を維持しなければならない。また、より高圧な170,000Vを超える電線付近においては、建造物の水平離隔距離3m以内に電気事業者が送電線を施設してはならないとされている。このような電気事業者に対する施設制限に適合するため、通常は電気事業者と土地所有者等との間で@地役権設定契約または、A送電線架設保持に関する契約等の債権契約を締結することによって、基準に適合するように措置することから、土地所有者等は当該規定に基づく契約により線下地部分の建築制限や建築物の高さ制限、屋根等の材料規制を受けることになる。
(※1)労働安全衛生規則第349条
(工作物の建設等の作業を行なう場合の感電の防止)
第三百四十九条 事業者は、架空電線又は電気機械器具の充電電路に近接する場所で、工作物の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業若しくはこれらに附帯する作業又はくい打機、くい抜機、移動式クレーン等を使用する作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が作業中又は通行の際に、当該充電電路に身体等が接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければならない。
一 当該充電電路を移設すること。
二 感電の危険を防止するための囲いを設けること。
三 当該充電電路に絶縁用防護具を装着すること。
四 前三号に該当する措置を講ずることが著しく困難なときは、監視人を置き、作業を監視させること。
(※2)特別高圧架空電線と建造物の接近にかかる規定(技術基準第29条及び第48条)
(電線による他の工作物等への危険の防止)
第二十九条 電線路の電線又は電車線等は、他の工作物又は植物と接近し、又は交さする場合には、他の工作物又は植物を損傷するおそれがなく、かつ、接触、断線等によって生じる感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
(特別高圧架空電線路の供給支障の防止)
第四十八条 使用電圧が十七万ボルト以上の特別高圧架空電線路は、市街地その他人家の密集する地域に施設してはならない。ただし、当該地域からの火災による当該電線路の損壊によって一般電気事業に係る電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれがないように施設する場合は、この限りでない。
2 使用電圧が十七万ボルト以上の特別高圧架空電線と建造物との水平距離は、当該建造物からの火災による当該電線の損壊等によって一般電気事業に係る電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれがないよう、三メートル以上としなければならない。
3 使用電圧が十七万ボルト以上の特別高圧架空電線が、建造物、道路、歩道橋その他の工作物の下方に施設されるときの相互の水平離隔距離は、当該工作物の倒壊等による当該電線の損壊によって一般電気事業に係る電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれがないよう、三メートル以上としなければならない。
高圧線下地部分を含む画地は高圧線下地部分を含まない標準的画地に比べて、次の減価要因がある。
@物理的減価
最有効使用を妨げる土地利用制限による物理的減価(電気事業者に対する施設制限の反射的効果として、土地所有者等が受けることになる空間阻害)
A快適性阻害による減価
(ア)嫌悪施設としての心理的不快感
(イ)強風時における不快音の発生
(ウ)塩害時の放電に伴う継続音の発生とラジオ・テレビに与える影響
(エ)眺望阻害
(オ)架線切断等送電線事故に対する不安
ただし、危険感、眺望阻害等からなる快適性阻害は、心理的な影響で、個人差があり、また高圧線下地にての居住経験年数を増すごとに心理的影響度が希薄化していくという、いわば馴致化の傾向も一般的に認識されている。
B市場性減価
地役権等の登記があることや快適性阻害にかかる減価要因が協働して生ずるところの市場性・担保価値の減退等
b.調査地点の選定
本調査における高圧線下地の調査地点は、次の条件を満たす土地とした。
@高圧線下地を含む土地
A形状が矩形である土地
B間口と奥行の釣合がとれている土地
Cがけ地、無道路地等のその他の特殊な補正を必要としない標準的な画地
V.調査結果の概要
以上の基本的内容を踏まえた上で、「公的土地評価手法の比較」の調査の一環として、A市、B市及びC市において、不動産鑑定評価を実施し、固定資産税評価及び相続税評価との相違について把握したところ次のとおりであった。以下、調査地点所在都市別にA)調査結果及びB)概要をまとめた。
1.A市
- A) 調査結果
B) 概要
(1) 物件番号@
評価対象地は、JR線最寄り駅から当該市の有名商店街に続く商店街の背後地の小売店舗街である。現況は店舗事務所(上階部は居宅)ビルとなっている。
本件では奥行価格補正率及び側方影響加算率が異なることにより開差が生じた。
すなわち、奥行価格補正率及び側方路線影響加算率について、相続税評価及び固定資産税評価では用途地区別に定められた補正率をそのまま適用している。しかし、不動産鑑定評価においては、標準的画地との比較において奥行距離について補正の必要はないと判断され、また、角地の補正については不動産鑑定士が近隣地域の商況等を考慮の上、その効用の程度を7%と判断している。
(2) 物件番号A
評価対象地の所在する地域は、土地区画整理事業により区画整然とした中規模の戸建住宅が連たんする優良住宅地域である。評価対象地は路線価方式における画地条件の補正を必要としない画地規模である。ただし、評価対象地の接面方位は南であり、不動産鑑定評価では、標準的画地(接面方位は北)と比較して居住の快適性が優る点等を考量した格差を付けたため、鑑定評価額が他の評価額より高めに算出された。
(3) 物件番号B
大量評価という路線価方式の性質上、各画地について、基準容積率又は使用可能容積率を算定し、容積率の緩和による価格差を反映させることは困難である。そのため、路線価方式を採用している相続税評価及び固定資産税評価では容積率緩和に関する補正は行われていない。
不動産鑑定評価では、容積率は特に高度利用の進んだ商業系用途地区において、収益に大きく影響を及ぼすことから価格形成要因に占める比重が高い。したがって、本件では他の評価額に対して高めに評価額が算出された。
a.鑑定評価
b.相続税評価
c.固定資産税評価
2.B市
- A) 調査結果
B) 概要
(1) 物件番号@
評価対象地は店舗・営業所等の混在する路線商業地域に所在する。評価対象地の接面状況は角地であるが、側方は北側幅員2m舗装市道であり、セットバックを要する。このため、評価上の個別的要因の把握の相違が生じた。
本件では、各評価の側方影響加算率が異なる。同じ路線価方式であっても、固定資産評価基準の附表と財産評価基本通達の付表に定める補正率は異なる。また、不動産鑑定評価では、評価対象地は角地であるが、角地の効用の程度を判断した格差率を査定している。
次に、セットバックを要する部分について、不動産鑑定評価ではセットバックを要する部分について、全体の地積に占めるセットバック部分の割合及びセットバックによる当該宅地の有効利用の阻害の程度を考慮の上、減価率を査定したが、本調査の価格時点においては相続税評価及び固定資産税評価ではセットバックに関する補正の規定は設けられていない。
なお、対象地は公図で蔭地割合を測定した場合には不整形地補正の適用も検討する余地があるが、現況はほぼ整形地であり、当該敷地に建築物を建築する等の利用に際してやや不整形であることによる影響はないと判断されるため、不整形地の補正は行わなかった。
(2) 物件番号A
評価対象地の所在する地域は、一般住宅と共同住宅が混在し、空地等も見られる普通低層住宅地域である。評価対象地は間口・奥行とも標準的であるが、街路との接面状況が角地であるために側方影響加算の適用を受ける。側方影響加算率は各評価とも同じであったが、不動産鑑定評価では、標準的画地の方位(接面方位は北)と比較して評価対象地は南側に接面するため、居住の快適性の優れる点を考量した評価額となっている。
(3) 物件番号B
評価対象地の所在する地域は、普通住宅地域であり、評価対象地の60%が66,000Vの高圧線下地となっている。各評価額の開差は高圧線下地であることの減価率の格差によるものである。
相続税評価では、高圧線下地は考慮されないため、評価額が高めに算出された。(ただし、高圧線下地の所有者と電気事業者との間には通常@地役権設定契約または、A送電線架設保持に関する契約等の債権契約が締結されることから、相続税評価では、地役権が設定されている場合には財産評価基本通達27−5により利用制限に応じた権利の評価が行われる。)
固定資産税評価では固定資産評価基準上高圧線下地の規定はないが、固定資産評価基準第3節二(一)4に基づく市町村長が行う「所要の補正」で考慮される場合がある。当該市では所要の補正として高圧線下地の減価補正を行っているが、本調査では、所要の補正後の価格は不動産鑑定評価額に対し51.6%となった。これは、評価対象地の標準的使用及び最有効使用が低層住宅地であることから不動産鑑定評価では高圧線下地であることの減価が小さいためと思われる。さらに、不動産鑑定評価では、評価対象地は南西に接面するため、標準的画地の接面方位(北)より居住の快適性等が優るため方位の格差を5%としている。そのため、高圧線下地に係る減価率の格差及び方位格差により両評価額の乖離が大きくなった。
a.鑑定評価
b.相続税評価
c.固定資産税評価
3.C市
- A) 調査結果
B) 概要
(1) 物件番号@
本件では鑑定評価額に対し、相続税評価額はほぼ8割、固定資産税評価額は7割で算定され、評価上の均衡が図られている。
(2) 物件番号A
評価対象地の所在する地域は、中規模一般住宅を中心とする既成住宅団地である。当該地域は相続税評価では倍率地域に指定されているため、ここでは鑑定評価額と固定資産税評価額との関係について問題となる。本件の不動産鑑定評価では固定資産評価基準の附表に定める率ほど角地の効用があると判断されなかったため、結果として若干の開差が生じた。
(3) 物件番号B
本件は、敷地の一部が電圧110,000Vの高圧線下地となっている。
また、前記2.B)(3)と同様に、相続税評価では高圧線下地補正は行われていないが、鑑定評価では規模による格差補正が行われていること等により相続税評価額が低めに算出された。
固定資産税評価については、当該市では高圧線下地にかかる所要の補正が適用されており、固定資産税評価額が低めに算出される結果となった。これは、不動産鑑定評価では高圧線下地に係る減価については、評価対象地が低層住宅地に存することから減価率を固定資産税評価に比べて弱く査定していること、また、標準的画地と比較した場合に、評価対象地の規模が戸建住宅として最適であることを理由に5%の格差を付けた(規模による格差補正)を行ったためである。
a.鑑定評価
b.相続税評価
c.固定資産税評価
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