評価センター資料閲覧室
(財)資産評価システム研究センター 

固定資産税評価に反映すべき個別的要因について


 不動産鑑定評価基準における主な個別的要因の内容については、以下のとおりである。

1 日照・通風・乾湿(方位)

 住宅地においては日照は居住の快適性を左右するものであることから価格差を生じる。また、接面街路からの方位による日照、 通風等の変化に伴う快適性の優劣により住宅地等で価格差が生じることがある。
 方位による増減価率はその地域の位置、用途、対象地の規模等により異なるが、ある地域では東を基準方位とした場合に接面方位が北の場合は−2%、 南の場合は+3%、 西の場合は0%としている。


2 間口・奥行・形状

 間口の狭小な土地、 奥行が長大な土地、 形状が不整形な土地は土地の有効利用の障害となり、減価が生じる。
不動産鑑定評価は、 間口・奥行・形状の良否は総合的に判断され、 間口だけあるいは奥行だけ切り離されて格差付けが行われることは少ない。 著しく形状の劣るものは、 −30%程度の格差修正がなされることもある。


3 セットバックを必要とする土地

 幅員4m未満の道路、なかでも特に建築基準法第42条第2項によるみなし道路については、道路の中心線から水平距離2mの線までセットバックしなければならないので、これに該当する分については、有効に利用できる宅地としての面積は減少するため、減価が生じる。


(1) 不動産鑑定評価

 不動産鑑定評価では、 セットバックによる地積部分について総地積に対する減価率を算出する。 例えば、 幅員3mの道路に接面する奥行15mの宅地で−3%程度の格差修正がなされる場合がある。


(2) 相続税評価

 相続税評価においては、セットバックを必要とする部分を有する宅地は、現在の利用には特に支障がない場合であっても、セットバックを要しない宅地の価額に比較して減価することになることから、 将来、 道路敷きとして提供しなければならない部分に対応する価額の70%相当額を控除することとしている。

財産評価基本通達24−6
 建築基準法第42条第2項に規定する道路に面しており、将来、建物の建替え時等に同法の規定に基づき道路敷きとして提供しなければならない部分を有する宅地の価額は、その宅地について道路敷きとして提供する必要がないものとした場合の価額から、その価額に次の算式により計算した割合を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価する。
  (算式)

4 地積(広大地)

 土地の規模は、 土地利用の基本的な条件になるものであり、 過大であっても過小であってもその利用上の非効率から減価要因となる。したがって適度の規模が必要とされるのであるが、土地は一般的にその属する地域の用途、 公法上の規制等により、 その地域で最大の効用を発揮しうると考えられる最適規模が定まってくる。その規模を超えると、単位面積当たりの有効利用度は最適規模の場合よりも低下するのが通例であり、規模が大きい土地は、その規模が大きいことが個別的要因として減価になるケースが多い。
 しかし、地域の最適規模を超える場合においても規模のまとまった土地が細分化された土地利用に比べて単位面積あたりの土地の効用が増加することがあり、 この場合その規模が大きいことによる増価もある。
 このようにいろいろなケースが考えられ、どちらが価値的に高いかということは一概には言えず、結局対象地の属する地域における将来動向の予測をも考慮した地域的特性及び対象地自体の最有効使用の判定との関連において判断することとなる。


(1) 不動産鑑定評価

 広大地の鑑定評価に際しては、鑑定評価の主体(不動産鑑定士等)が地域の標準的画地(規模)を設定し、市場動向を考慮の上、評価対象地の規模との格差(減価)を査定することになる。具体的な評価方法については、不動産鑑定評価基準で以下のとおり示されており、標準的画地の面積より大きな土地については開発法によって求めた価格を比較考量することとされている。この場合、最有効使用の判定に留意する必要がある。例えば、住宅地に属する宅地については、道路・公園等を設けて戸建住宅を造成するか、マンション用地として利用するか標準的宅地との比較において検討することになる。戸建住宅の場合は、規模や地域によっても異なるが、潰れ地だけで20〜40%を要することから、−30〜−50%の格差修正を行う場合がある。


不動産鑑定評価基準各論第1章第1節T宅地
1.更地
 更地の鑑定評価額は、更地並びに自用の建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。当該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等においては、さらに次に掲げる価格を比較考量して決定するものとする(この手法を開発法という。)。
(1) 一体利用することが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地に最有効使用の建物が建築されることを想定し、販売総額から通常の建物建築費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格
(2) 分割利用することが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地を区画割りして、標準的な更地とすることを想定し、販売総額から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格
 なお、配分法及び土地残余法を適用する場合における取引事例及び収益事例は、敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきである。

(2) 相続税評価

 開発行為を行うとした場合に大量の潰れ地が生ずることとなる土地(※)の評価に当たっては、その土地の地積から公共公益的施設用地となる部分の地積を控除した地積がその広大地の地積に占める割合(いわゆる有効宅地化率) を求め、この割合を奥行価格補正率に代えることとする取扱いを定めている。

財産評価基本通達24−4
 その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条(定義)第12項に規定する開発行為(以下本項において「開発行為」という。)を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(22−2(大規模工場用地)に定める大規模工場用地に該当するものを除く。以下「広大地」という。)の価額は、原則として、次に掲げる区分に従い、それぞれ次により計算した金額によって評価する。
(1) その広大地が路線価地域に所在する場合
 次の算式により計算した数値を15(奥行価格補正)に定める補正率として、15から20−5(容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価)までの定めによって計算した金額(算式中の「公共公益的施設用地となる部分の地積」とは、その広大地について経済的に最も合理的であると認められる開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地となる部分の地積をいうことに留意する。)
(2) 略

(※)開発行為を行うとした場合に大量の潰れ地が生ずることとなる土地
 都市計画法(昭和43年法律第100号)(以下「都計法」という。)に規定する開発行為を行う場合には公共公益的施設用地が発生する。公共公益的施設用地とは、都計法第4条第14項に規定する道路、公園等の公共施設の用に供される土地、都計法施行令第27条に定める教育施設、医療施設等の公益的施設の用に供される土地、その他これらに準ずる施設で、開発許可を受けるために必要とされる施設の用に供される土地等をいう。したがって、総地積から宅地となる部分を控除したこれら公共公益的施設用地が潰れ地となる。本項においては、既に開発行為を了しているマンションなどの敷地用地、現に宅地として有効利用されている建築物の敷地用地は該当しない。

5 接面街路との関係

(1) 用水路等を介して道路に接面する宅地

 水路を介して敷地が道路に接する場合、接道義務(※)を満たすために水路に橋を架けることとなるが、水路部分は河川管理者の占有許可等が必要である。したがって、許可にかかるリスク、橋の架設コスト、接道幅の制約等の点から減価が生じる。
 これについては、用途、地域性、水路の幅等によって格差が異なるが、鑑定評価上は既に幅2mの橋が架かっている場合で−5%程度の格差修正を行う場合がある。
(※) 接道義務
 都市計画区域内においては、建築基準法第43条により、建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならない。

(2) 接面道路との高低差

 住宅地においては居住の快適性・利便性が地価に影響を及ぼすため接面道路との高低差により、増価・減価が発生する場合がある。接面道路より高い場合、排水・日照・景観・通風の面で優れるために増価、交通上の利用障害(階段の設置、堀込駐車場等)により減価が生じる。接面道路より低い場合、排水・日照・景観・通風・プライバシーの面で劣るため減価となる。
 これについても、用途、地域性等によって格差が異なるが、鑑定評価上は接面道路より3m高い場合で−3%程度、接面道路より3m低い場合で−10%程度の格差修正を行う場合がある。

6 騒音・振動等のある土地

 鉄道や高速道路等の騒音・振動により生活環境が悪化し、減価が発生する。工場や学校が騒音源になる場合もある。騒音・振動による減価はその程度や地域によっても異なるが、不動産鑑定評価の実務においては−3〜−10%の格差修正を行う場合がある。

7 高圧線下地

 電圧の種別は電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号)により低圧(直流750V、交流600V以下)、高圧(直流750V、交流600V〜7,000V以下)、特別高圧(7,000V超)に分けられる。「高圧線下地」とは、特別高圧の架空電線下の土地のことをいうとされる。
 送電線に係る規制は、電気事業者と土地所有者との当事者間の約定による私法上の規制もあるが、公法上の規制が原則的である。公法上の規制としては、工作物の建設等の作業を行う場合の感電防止のための規則(労働安全衛生規則第349条)等があるが、送電線と建造物とが接近または交差する場合の規定として、電気事業法に基づき通商産業省の定める「電気設備に関する技術基準を定める省令」(以下「技術基準」という。)第133条により、電気事業者に対する規制の反射的効果として、事実上、土地所有者に対する建造物の建築規制が生ずる。すなわち、同条項は主として保安目的のために、7,000V超ないし170,000V未満の電線を施設する場合の電線の使用資材及び電線の施設方法として建造物との離隔距離に関する電線施設者の義務を定めている。したがって、このような規定に則り、施設された電線に接近して建造物を築造するときは、建築規制として当該離隔距離を維持しなければならない。また、より高圧な170,000V以上の電線付近においては、建造物の建築は禁止されているものと解釈されている。
 高圧線下地部分を含む土地の減価要因としては次のようなものが考えられるが、これらの要因を考慮して、更地としての価格を求めるためには地役権、賃借権等権利価格との関係を考慮する必要がある。

(1) 土地利用障害による物理的減価

 技術基準第133条の規定により電力会社は特別高圧架空電線と建造物の接近状態について施設制限を受ける。このため通常は電力会社と承役地の所有者との間に地役権が設定されること等により、当該線下地部分は建築制限され、又は禁止されることになる。
@ 離隔距離によって建物の高さが制限又は建築禁止
A 屋根等の材料規制
 35,000ボルト超170,000ボルト未満の特別高圧架空電線と接近する建造物の上部造営材は、不燃性又は自消性がある難燃性の建築材料によらなければならない。
B 一定の場合に建築が禁止(火災時に爆発・災害の拡大し易い建物、建築禁止の特約等)

(2) 快適性阻害等による心理的減価

@ 嫌悪施設としての心理的不快感
A 強風時における不快音の発生
B 塩害時の放電に伴う継続音の発生とラジオ・テレビに与える影響
C 眺望阻害
D 架線切断等送電線事故に対する不安

(3) その他

 地役権等の登記があることや以上のものが協働して生ずるところの市場性・担保価値の減退等
 なお、高圧線下地を含む土地の鑑定評価上の減価は、用途、地域性、契約内容、高圧線下地割合等によって異なるが、住宅地で高圧線下地割合が100%の場合で−50%程度の格差修正を行う場合がある。

8 地下阻害物

 地下鉄道が埋設されていることにより、次のような減価要因が生じる。
(1) 快適性阻害等による心理的減価(騒音・振動)
(2) 区分地上権等の設定による土地利用上の制限
(3) 以上のものが協働して生ずるところの市場性・担保価値の減退等

 ただし、地下鉄建設に係る区分地上権等が設定されているため、更地としての価格を求めるためには権利価格との関係を考慮する必要がある。
すなわち、地下鉄道・トンネル・ケーブル等地下鉄線上の画地については、区分地上権が設定されるのが一般である。また、設定に当たっては、地下鉄道のために必要な部分を登記簿上、分筆した上で分筆後の画地に当該権利を設定することが多い。
 ここで区分地上権の設定によって土地利用がどのように制限されるかについては、地下鉄道における地下の一部を利用するための設定契約で明示されることが多い。当該土地の地上空間の一部についての利用を禁止する条項として、例えば、「重量○○トン以上の物件の設置の禁止」「地上○○階以上の建物の建築の禁止」というものがある。
 また、区分地上権の設定登記においては、特約条項として「土地所有者は高架鉄道の運行の障害となる工作物を設置しない」旨の記載がなされるのが相当とされている(「借地法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱について」昭和41年11月14日付民事甲第1907号法務局長、地方法務局長宛民事局長通達)。したがって、地下阻害物の存する画地の減価要因のうち区分地上権の設定行為に付随した部分は、公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱第20条第1項(「空間又は地下の使用に対しては、前条の規定により算定した額に、土地の利用が妨げられる程度に応じて適正に定めた割合を乗じて得た額を以て補償するものとする」)の規定に基づき、補償されていると考えられる。
 なお、地下阻害物が存する土地の鑑定評価は、地下鉄建設に係る区分地上権等が付着している土地の評価として、設定契約の内容、地積割合等によって異なるが、商業地で地積割合が100%の場合で−50%程度の格差修正を行う場合がある。

9 地上阻害物

 高架鉄道、高速道路等の高架下の土地は、次の理由で減価が発生する。
(1) 立体利用阻害
(2) 支柱等による平面的阻害
(3) 騒音、振動、日照阻害、通風・換気障害等の環境悪化
 なお、高架鉄道、高速道路等の高架下の土地の鑑定評価においては、通常の宅地に比べ−50%程度の格差修正を行う場合がある。

10 横断歩道橋

 横断歩道橋に対面する土地は、次の理由で減価が発生する。
(1) 宣伝効果の減少
 商業地にあってはショーウィンドウや広告板が見えにくく、宣伝効果が減少し、収益に影響を及ぼす。
(2) 交通障害
 有効歩道幅員が狭くなり、自動車の出入、建物利用者の出入等に障害となる。また、柱等による平面的阻害が生じる。
(3) 環境悪化
 横断歩道橋による日照妨害・景観阻害及びプライバシー侵害が問題となる。また、横断歩道橋の階段下がゴミ捨て場、自転車置き場等になりやすく不快感を抱かせる。
 なお、横断歩道橋に対面する土地の鑑定評価においては、地域性、周囲の状況、対面割合等によって異なるが、商業地で対面割合100%の場合で−5〜−10%程度の格差修正を行う場合がある。

11 忌み地

 墓地等が開発されて宅地になったような場合等で、市場性が劣る場合が多い。
 なお、忌み地の鑑定評価においては、忌み地の内容や地域性等によって異なるが、−5〜−20%程度の格差修正を行う場合がある。

12 隣接不動産等周囲の状況

 産業廃棄物処理場、残土処理場、廃屋等に近接する土地は安全性、快適性の点で劣るため減価の要因となる。
 なお、隣接不動産等周囲の状況が異なる場合においては、その内容や地域性等によって異なるが、−3〜−10%程度の格差修正を行う場合がある。

13 埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態

(1) 埋蔵文化財
 文化財保護法第57条で規定された埋蔵文化財が包蔵されている土地については、次の理由により減価を生ずることがある。
@ 文化財保護用法に基づく発掘調査、現状を変更することとなるような行為の停止又は禁止
A 設計変更に伴う費用負担
B 土地利用上の制約等


文化財保護法(昭和25年法律第214号)
(調査のための発掘に関する届出、指示及び命令)
第五十七条  土地に埋蔵されている文化財(以下「埋蔵文化財」という。)について、その調査のため土地を発掘しようとする者は、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、発掘に着手しようとする日の三十日前までに文化庁長官に届け出なければならない。ただし、文部科学省令の定める場合は、この限りでない。
2 埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、文化庁長官は、前項の届出に係る発掘に関し必要な事項及び報告書の提出を指示し、又はその発掘の禁止、停止若しくは中止を命ずることができる。

 不動産鑑定評価においては不動産鑑定評価基準運用上の留意事項でその取扱いが示されているところである。

不動産鑑定評価基準
1.土地に関する個別的要因について
(1) 埋蔵文化財の有無及びその状態について

 文化財保護法で規定された埋蔵文化財については、同法に基づく発掘調査、現状を変更することとなるような行為の停止又は禁止、設計変更に伴う費用負担、土地利用上の制約等により、価格形成に重大な影響を与える場合がある。
 埋蔵文化財の有無及びその状態に関しては、対象不動産の状況と文化財保護法に基づく手続きに応じて次に掲げる事項に特に留意する必要がある。
@ 対象不動産が文化財保護法に規定する周知の埋蔵文化財包蔵地に含まれるか否か。
A 埋蔵文化財の記録作成のための発掘調査、試掘調査等の措置が指示されているか否か。
B 埋蔵文化財が現に存することが既に判明しているか否か(過去に発掘調査等が行われている場合にはその履歴及び措置の状況)。
C 重要な遺跡が発見され、保護のための調査が行われる場合には、土木工事等の停止又は禁止の期間、設計変更の要否。

(2) 地下埋設物

 宅地の地下に防空壕やトンネル等が残っていたような場合には撤去に膨大な費用がかかるため、大きな減価が生じる場合がある。
なお、 埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態は、 事前に詳細が把握されている場合には、 調査や除去等に要する費用と期間に基づく減価を行う。 ただし、 ほとんどの場合は事前に詳細が把握されていないため、減価の実例は少ない。

14 土壌汚染の有無及びその状態

 土壌汚染が存する場合には、汚染物質に係る除去等の費用の発生や土地利用上の制約により、土地の価格形成に重大な影響を与える。土壌汚染対策法 (平成14年法律第53号)の施行により不動産鑑定評価基準においても個別的要因としての把握に際しての留意事項が示された。


不動産鑑定評価基準
1.土地に関する個別的要因について
(2) 土壌汚染の有無及びその状態について
 土壌汚染が存する場合には、汚染物質に係る除去等の費用の発生や土地利用上の制約により、価格形成に重大な影響を与える場合がある。
 土壌汚染対策法で規定された土壌汚染の有無及びその状態に関しては、対象不動産の状況と土壌汚染対策法に基づく手続きに応じて次に掲げる事項に特に留意する必要がある。
@ 対象不動産が、土壌汚染対策法第3条(※)に規定する有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地を含むか否か、又は同法の施行の前に有害物質使用特定施設に相当する工場又は事業場の敷地であった履歴を有する土地を含むか否か。
A 対象不動産について有害物質使用特定施設の使用の廃止に伴い、土壌汚染対策法第3条に規定する土壌の汚染の状況についての調査義務が発生しているか否か、又は同法第4条の規定により都道府県知事から土壌の汚染の状況についての調査を実施することを命ぜられているか否か。
B 対象不動産について土壌汚染対策法第5条に規定する指定区域の指定がなされているか否か、又は過去において指定区域指定の解除がなされた履歴が有るか否か。
C 対象不動産について土壌汚染対策法第7条の規定により都道府県知事から汚染の除去等の措置を講ずべきことを命ぜられているか否か。

(※)土壌汚染対策法に規定される特定有害物質
鉛、 砒素、 トリクロロエチレンその他の物質であって、 それが土壌に含まれることに起因して人の健康被害を生ずるおそれがあるものをいう。

 なお、土壌汚染の有無及びその状態は、既に詳細調査が行われている場合には、土地利用阻害、浄化コスト等及びスティグマ(Stigma)による減価の査定を行う。浄化コストは土地価格と相関はないため、極端な場合は土地価格(総額)を上回る例もあるといわれている。

15 特定道路までの距離による容積率緩和のある土地

 容積率とは、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。
 容積率は土地面積の単位あたりの建物延べ床面積を規定するものであるが、建物延べ床面積が大きくなるということは宅地としての単位あたりの効用を高めることにつながるものであり、特に収益性が重視される商業系の用途地区においては容積率の土地価格への影響は大きい。しかし、住宅系の用途地区においては都市計画のなかで指定容積率が低く抑えられていることによって良好な環境が保たれているといった側面もあることに留意する必要がある。容積率には、指定容積率(用途地域等の区分に従い、建築基準法第52条第1項第1号〜第6号のうちから都市計画において定められた容積率)と基準容積率(建築基準法第52条第1項、第5項及び第6項の規定による容積率で、指定容積率に前面道路幅員による制約、異なる指定容積率の区域等にまたがる場合の加重平均、特定道路からの距離による緩和等を考慮したもの)がある。
 特定道路までの距離による条件により容積率の割増を認められる場合、基準容積率が指定容積率を上回ることから増価が生じる。

建築基準法(昭和25年法律第201号)第五十二条第六項
 建築物の敷地が、幅員一五メートル以上の幅員(以下この項において「特定道路」という。)に接続する幅員六メートル以上一二メートル未満の前面道路のうち当該特定道路からの延長が七十メートル以内の部分において接する場合における当該建築物に対する前各項の規定については、第一項中「幅員」とあるのは、「幅員(第六項の特定道路に接続する同項の前面道路のうち当該特定道路からの延長が七十メートル以内の部分にあつては、その幅員に、当該建築物の敷地が接する当該前面道路の部分までの延長に応じて政令で定める数値を加えたもの)」とする。

 例えば、次図において、商業地域で指定容積率600%の場合、通常の基準容積率は、前面道路の幅員に6/10を乗じた360%の容積率となるが、この規定の算式により求められた敷地の容積率は540%となり、この基準容積率と都市計画で指定された600%とを比べて小さい方の数値である540%が当該敷地の容積率となる。



 このように、使用可能容積率が緩和されることによって、例えば事務所街であればより高層の建築物の建築が可能になり、その分テナントへの賃貸面積が増加するため収益が多く見込めることになるため、特定道路への距離による容積率緩和は増価をもたらすことになる。
不動産鑑定評価の実務では、格差は地域性、指定容積率、特定道路までの距離等により異なるが、指定容積率が高い(600%以上)場合で、容積率緩和のない場合に比べ、+20%程度の格差修正を行う場合がある。

16 壁面線の指定による容積率の緩和のある土地

 壁面線の指定がある場合で、容積率の割増を認められる場合、増価が生じる。

建築基準法第五十二条第八項
 前面道路の境界線又はその反対側の境界線からそれぞれ後退して壁面線の指定がある場合において、特定行政庁が次に掲げる基準に掲げる基準に適合すると認めて許可した建築物については、当該前面道路の境界線又はその反対側の境界線は、それぞれ当該壁面線にあるものとみなして、第一項から第六項までの規定を適用するものとする。…(以下略)

 例えば、下図において、商業地域で指定容積率600%の場合、通常の容積率は360%、52条8項の許可による容積率は480%となる。
 通常の場合の容積率  =6m×6/10=3.6(360%)
 52条8項許可の容積率=8m×6/10=4.8(480%)

      

 不動産鑑定評価の実務では、格差は用途、地域性等により異なるが、容積率緩和のない場合に比べ、+15%程度の格差修正を行う場合がある。

17 容積率の異なる2以上の地域にまたがる土地
(1) 不動産鑑定評価

 容積率の規制は地域的(面的)になされているが、敷地によっては2以上の地域にまたがる場合がある。敷地に2以上の容積率の指定がある場合には容積率は敷地面積比の加重平均となるため増減価が生じる。

建築基準法第五十二条第五項
 建築物の敷地が第一項の規定による建築物の容積率に関する制限を受ける地域、地区又は区域の二以上にわたる場合においては、当該建築物の容積率は、同項の規定による当該各地域、地区又は区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下でなければならない。

 例えば、下図において敷地全体の面積を400uとし、この敷地のS1(300u)、S2(100u)の部分にV1(第1種住居地域、指定容積率300%)、V2(近隣商業地域、指定容積率400%)が定められている場合、敷地全体に対する容積率の限度及び敷地全体の延べ床面積の限度は次のように求める。
      

 不動産鑑定評価の実務では、格差は用途、地域性等により異なるが、容積率緩和のない場合に比べ、+15%程度の格差修正を行う場合がある。

(2) 相続税評価

 例えば、幹線道路沿いの広大地等の場合には、幹線道路沿いの部分は高い容積率が、背後は低い容積率が指定されている。相続税評価の正面路線は幹線道路沿いの高い容積率に対応した路線価が付設されているため、これで計算すると全体として過大な評価額になってしまう場合がある。このため、財産評価基本通達では容積率の低下を反映した減価を規定している。

財産評価基本通達20−5
 容積率(建築基準法第52条(延べ面積の敷地面積に対する割合)に規定する建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)の異なる2以上の地域にわたる宅地の価額は、15(奥行価格補正)から前項までの定めにより評価した価額から、その価額に次の算式により計算した割合を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価する。この場合において適用する「容積率が価額に及ぼす影響度」は、14−2(地区)に定める地区に応じて下表のとおりとする。

○容積率が価額に及ぼす影響度

18 余剰容積率の移転

 余剰容積率の移転とは、歴史的建造物等の敷地で容積率の使い残し(余剰容積率)がある場合に、隣接地等への移転を認めることである。例えば、再開発地区では、神社との共同開発で敷地内の社は高い容積率を必要としないため、容積率を隣接の商業施設ビルへ移転させ、敷地全体の容積の有効利用を図ったりする場合がある。その場合には移転元の減価、移転先の増価となる。

(1) 不動産鑑定評価

 不動産鑑定評価では後述の相続税評価とほぼ同様の増減価がなされる。
余剰容積率の移転に伴い、余剰容積率が移転している宅地は減価し、余剰容積率の移転を受けている宅地は増価するが、その率は例えば指定容積率の高い商業地域の場合、余剰容積率を移転している宅地で−10から−50%程度の格差修正、余剰容積率の移転を受けている宅地で+10〜+50%程度の格差修正になる。

(2) 相続税評価

 財産評価基本通達では次のとおり増減価することとなる。

財産評価基本通達23
 余剰容積率を移転している宅地又は余剰容積率の移転を受けている宅地の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。
(1) 余剰容積率を移転している宅地の価額は、原則として11(評価の方式)から21−2(倍率方式による評価)までの定めにより評価したその宅地の価額を基に、設定されている権利の内容、建築物の建築制限の内容等を勘案して評価する。ただし、次の算式により計算した金額によって評価することができるものとする。
 上の算式中の「A」、「B」及び「C」は、それぞれ次による。
「A」=余剰容積率を移転している宅地について、11から21−2までの定めにより評価した価額
「B」=区分地上権の設定等に当たり収受した対価の額
「C」=区分地上権の設定等の直前における余剰容積率を移転している宅地の通常の取引価額に相当する価額
(2) 余剰容積率の移転を受けている宅地の価額は、原則として11(評価の方式)から21−2(倍率方式による評価)までの定めにより評価したその宅地の価額を基に、容率の制限を超える延べ面積の建築物を建築するために設定している権利の内容、建築物の建築状況等を勘案して評価する。ただし、次の算式により計算した金額によって評価することができるものとする。
 上の算式中の「D」、「E」及び「F」は、それぞれ次による。
「D」=余剰容積率の移転を受けている宅地について、11から21−2までの定めにより評価した価額
「E」=区分地上権の設定等に当たり支払った対価の額
「F」=区分地上権の設定等の直前における余剰容積率の移転を受けている宅地の通常の取引価額に相当する価額
(注)余剰容積率を有する宅地に設定された区分地上権等は、独立した財産として評価しないこととし、余剰容積率の移転を受けている宅地の価額に含めて評価するものとする。

19 土地区画整理事業施行中の土地

 土地区画整理事業は都市計画区域内の土地について公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るため、土地区画整理法(昭和29年法律第119号)の定めるところに従って行われる土地の区画形質の変更及び公共施設の新設または変更に関する事業である。事業の種類には、都市計画事業として行われる公的団体の施行によるものと、民間施行のものがある。前者は郊外の大規模な住宅地の造成や駅前広場の開発等で、後者は主に良好な住宅地造成を目的に行われるもので、ニュータウンのほか既成市街地の事業が該当する。
 事業の流れは次のとおりである。


 換地処分を行う前に工事の必要がある場合には、従前の土地の使用収益を停止し、仮換地を指定することになる。つまり、仮換地の指定は、換地計画の決定から換地処分の行われるまで実際かなり長期間を要するので、その間従前の土地についての使用収益の状況と同様の状況を仮に換地について認めるため行われる。仮換地は土地区画整理事業の換地処分又は認可を受けた換地計画に基づいて行われる。換地計画には換地設計、各筆換地明細、清算金明細、保留地等が詳細に定められる。
 したがって、仮換地の指定が行われた場合、従前の土地の使用収益はできなくなる(土地区画整理法第99条)。そこで、従前の土地について使用収益の権原を有する者は、仮換地を、従前の宅地について使用収益していた内容と同じ内容で使用収益することができるようになる。本項で土地区画整理事業施行中の土地とは「仮換地指定中」を意味する。
 しかし、仮換地の指定がなされても造成工事未了の場合には、宅地としての効用を果たし得ない。そこで、不動産鑑定評価及び相続税評価においては、仮換地指定の効力発生の日から造成工事完了までにはある程度の期間を要することからその利用上の制限を考慮した評価を行う。

(1) 不動産鑑定評価

 鑑定評価においては地域の標準的な画地との比較において、仮換地の指定後使用収益が開始されるまでの期間の収益格差により減価率を査定する。
 不動産鑑定評価の実務では、使用収益の開始が仮換地指定から1年から2年を要する場合、−8%〜−15%程度の格差修正を行う場合がある。

(2) 相続税評価

 土地区画整理事業が施行中の土地に仮換地が指定された場合で、造成工事の完了までなお1年以上かかるものについては、一定の減価(100分の95)を行うこととしている。

財産評価基本通達24−2
 土地区画整理事業(土地区画整理法(昭和29年法律第119号)第2条(定義)第1項又は第2項に規定する土地区画整理事業をいう。)の施行地区内にある宅地について同法第98条(仮換地の指定)の規定に基づき仮換地が指定されている場合におけるその宅地の価額は、11(評価の方式)から21−2(倍率方式による評価)まで及び前項の定めにより計算したその仮換地の価額に相当する価額によって評価する。
 ただし、その仮換地の造成工事が施工中で、当該公示が完了するまでの期間が1年を超えると見込まれる場合の仮換地の価額に相当する価額は、その仮換地について造成工事が完了したものとして、本文の定めにより評価した価額の100分の95に相当する価額によって評価する。
(注) 仮換地が指定されている場合であっても、次の事項のいずれにも該当するときには、従前の宅地の価額により評価する。
1 土地区画整理法第99条(仮換地の指定の効果)第2項の規定により、仮換地について使用又は収益を開始する日を別に定めるとされているため、当該仮換地について使用又は収益を開始することができないこと。
2 仮換地の造成工事が行われていないこと。


20 違法建築物の敷地

 建築許可を受けないで建築された建物の敷地等で、再建築が全くできない場合と新たに許可等を受ければ何らかの建築はできる場合等がある。
不動産鑑定評価の実務では、再建築が全くできない場合と新たに許可等を受ければ何らかの建築はできる場合等で、格差率は大きく異なるが、前者の場合で−50%程度の格差修正を行う場合がある。

21 都市計画施設予定地
(1) 都市計画施設予定地の価格

 都市計画法で定める都市施設には、交通施設(道路、都市高速鉄道等)、公共用地(公園緑地、広場等)等があるが、都市計画のなかで定められた都市施設を都市計画施設という。これらの施設のうち、都市計画決定の告示から都市計画事業の認可・承認までの期間において「都市計画道路予定地」となっている区域内においては、都市計画法の規定により通常2階建ての建物しか建築できない等建物の建築に制限を受けることから、宅地として通常の用途に供する場合に利用の制限があると認められる。
また、このような土地の価額は、道路用地として買収されるまでの期間が長期間にわたることが一般的であり、現在の利用には特に支障がない場合であっても、その宅地の価額は、都市計画道路予定地の区域内にない宅地の価額に比較して減価することになる。

(2) 都市計画施設予定地の建築規制

@ 都市計画施設の区域内において、建築物の建築をしようとする場合には、原則として知事の許可を受けなければならない。
(都市計画法第53条)
A 建築可能なものは下記のとおりである。
@) 政令で定める軽易な行為
A) 非常災害のための応急措置として行う行為
B) 都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
C) 都市計画施設又は市街地開発事業に関する都市計画に適合するもの
階数2以下かつ地階を有しないこと、主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であり、容易に移転し、又は除去することができるものであると認められるもの
(都市計画法第53条第1項、第54条)

(3) 不動産鑑定評価

 事業認可の時期が不明の場合には、前記の規制が長期間継続するので、特に高度利用が可能な地域では土地価格に対する影響は大きいが、事業認可後の段階においては、事業施行者に用地買収されることになる。この場合、建設省の直轄の公共事業の施行に伴う損実補償基準(昭和38年3月20日建設省訓令第5号)第8条により、当該事業の影響がないものとしての当該土地の正常な取引価格によることとなる。したがって、買収を目的として施行者より依頼されて行う鑑定評価の場合には前記の規制等がないものとして評価されることになることから、経済的に影響はないこととなる。

建設省の直轄の公共事業の施行に伴う損実補償基準
第8条 取得する土地(土地の附加物を含む。以下同じ。)に対しては、正常な取引価格をもって補償するものとする。
 (…略)
3 第1項の場合において、土地を取得する事業の施行が予定されることによって当該土地の取引価格が低下したと認められるときは、当該事業の影響がないものとしての当該土地の正常な取引価格によるものとする。

 ただし、事業施行者による用地買収以外の目的での鑑定評価の場合においては、2階建ての建物しか建築できない等建物の建築に制限を受けることから、戸建住宅の多い地域ではほとんど減価が生じないが、容積率の高い商業地域では−30%程度の格差修正が生じる場合もある。

(4) 相続税評価

 都市計画道路予定地の場合、いずれは、道路用地として時価で買収されることから、宅地としての通常の用途に供する場合に利用の制限があるとしても、買収までの期間が短期間であれば、土地価格における影響は小さいものである。しかし、一般的には、道路用地として買収されるまでの期間は相当長期間であることから、その土地の利用用途(商業地、住宅地等の地区区分の別)、高度利用度(容積率の別)及び地積の関係によって土地価格に影響を及ぼすこととなる。
 すなわち、地域の土地利用が高層化されているなど立体的利用が進んでいるほど、都市計画事業による土地の効用が阻害される割合は大きくなり、また、評価対象地に占める道路予定地の面積の割合が大きくなるほど、土地価格に及ぼす影響は大きくなる。
したがって、このような財産基本通達では、都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価に当たり、地区区分、容積率、地積割合の別によって定めた補正率を乗じて評価することとしている。

財産評価基本通達24−7
 都市計画道路予定地の区域内(都市計画法第4条第6項に規定する都市計画施設のうちの道路の予定地の区域内をいう。)となる部分を有する宅地の価額は、その宅地のうちの都市計画道路予定地の区域内となる部分が都市計画道路予定地の区域内となる部分でないものとした場合の価額に、次表の地区区分、容積率、地積割合の別に応じて定める補正率を乗じて計算した価額によって評価する。