評価センター資料閲覧室

第4回固定資産評価研究大会 パネルディスカッション討議録

「固定資産税制の50年」
−その果たしてきた役割と分権時代におけるあり方を考える−

コーディネーター 金子  宏  学習院大学法学部教授
   パネリスト 神野 直彦  東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授
   パネリスト 片山 善博  鳥取県知事
   パネリスト 井上 源三  自治省税務局固定資産税課長
   パネリスト 齋藤  熙  東京都主税局資産税部長

金子 それでは、ただいまからパネルディスカッションを始めますので、よろしくお願いいたします。「固定資産税制の50年−その果たしてきた役割と分権時代におけるあり方を考える」ということで、パネルディスカッションを始めたいと思います。
 このパネルディスカッションは、次の4つの項目に分けて行いたいと思います。1は、シャウプ勧告の意義と固定資産税の歴史であります。2は、固定資産税を取り巻く最近の状況。3は、地方分権と固定資産税。4は、目指すべき固定資産税のイメージ。この4つの項目に沿って、すなわち言いかえますと、過去、現在、未来を軸としてパネリストの各先生方からご発言をいただきながら、固定資産税の50年間に果たしてきた役割と分権時代のあり方ということを議論していきたいと思います。
 まず第1のシャウプ勧告の意義と固定資産税の歴史でございますが、ここでは昭和24年に出されたシャウプ勧告の意義と、その後50年間の固定資産税制の歴史を振り返りたいと思います。初めに、シャウプ勧告の意義と固定資産税の歴史についてご意見をいただきたいと思います。そこでまず神野先生からは、シャウプ勧告の概要についてご発言をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

1.シャウブ勧告の意義と固定資産税の歴史
神野
 それでは、シャウプ勧告の概要について述べさせていただきたいと思います。ご案内のとおり、シャウプ勧告というのは、税制にかかわる勧告でございますけれども、同時に国と地方全体の財政制度一般について述べられているものでございます。シャウプ勧告はその点について、「国、都道府県、市町村は複雑な財政関係の網で結び合わされている。租税はこの網のほんの一部分にすぎない」と言っております。私はきょう、ちょっと重いんですが、シャウプ勧告を持ってまいりましたけれども、このシャウプ勧告はそういう財政制度一般を前提にしながら地方税について論及しておりますけれども、このシャウプ勧告の内容というのは今でも地方分権を進める上での導き糸になっているだろうと私は考えております。というよりも、シャウプ勧告の勧告がまだ実現されていないと考えた方がいいかもしれません。
 シャウプ勧告は、当時の日本の地方財政の問題点を次の5つにわたって述べています。「1、市町村、都道府県及び中央政府間の事務の配分及び責任の分担が不必要に複雑であり、また重複している。」「2、この3つの段階の統治機関の間における財源の配分が若干の点において不適当であり」、現在は若干かどうか、ちょっとわかりませんが、「また中央政府による地方財源の統制が過大である。」「3、地方自治体の財源は、地方の緊要経費を賄うには不足である。」「4、国庫補助金及び交付金は独断的に決定されることが多い。」「5、地方団体の起債の制限は極めて厳重に制限されている」と述べておりまして、依然としてこの課題は解決されていないと考えられるだろうと思います。
 シャウプ勧告は、こういうふうに問題点を指摘した上で、次の4点にわたって地方財政の改革案を出していると言っていいかと思います。1つは、地方自治を実質的に確立するため、地方財政の充実の強化を図る。その際、市町村の財政の強化を最も優先する。これは、市町村優先主義と言われているところでございますが、第1番目がそういうことです。第2番目が、国、都道府県、市町村の間で担当事務の再配分を行い、事務の分担とその責任を明確にする。これは、責任明確化の原則と言われているところです。3番目、地方税制度において独立税主義をとる。これは皆さんもご存じの通り、シャウプ勧告は、地方税を勧告するに当たって独立税主義と応益原則をとりました。それまでの日本の地方税制度というのは付加税主義、国の税金にタックスオンするしかなかったわけですが、独立税をちゃんと設けましょう。国の財源、つまり国税とは税源を分離した強力な税源を地方政府に付与し、租税政策に関しても地方政府の自由裁量権を確立する、これがシャウプ勧告の目的です。したがって、市町村に対しては全く独立した税源である固定資産税をつくりましょう、それから道府県については国の税源とは全く独立した付加価値に課税する、つまり現在の言葉を使えば外形標準で課税される事業税をつくりましょうと勧告したわけです。これが独立税主義の考え方でございます。シャウプ勧告は付加税を認めたのは所得だけ、つまり住民税にかかわるところだけに付加税を認めまして、あとは独立税と決めたということでございます。4番目が、地方財政調整制度として平衡交付金を設けて、財政調整のみならず、財源の保障を強化する。これに伴って補助金を大幅に整理削減して、地方財政への国の統制を可能な限り排除すること。この4つをうたったわけでございまして、これは現在でも生きているだろうと思います。
 現在、交付税についてはかなりいろいろな批判がありますけれども、これはヨーロッパ地方自治憲章でも認められ、かつ交付税についての批判のうちには課税力だけで財政需要をカウントするな、などという愚かな議論がございますけれども、これについてもヨーロッパ地方自治憲章は財政需要と財政収入の均衡化を果たさなければいけない。シャウプ勧告はまず最初に財政需要の均衡化でございますので、そこを果たさなければならないとうたっているわけです。これが、今現在国連で世界レベルでこれをつくろうという動きをしておりますので、もしも現在日本で言われているような地方交付税のいわばダウンが行われてしまうと、どういう形で形成されるかわかりませんけれども、この国連がつくる自治憲章を批准できないというような事態に立ち至ってしまうだろうと思います。と同時に、ちょっと最後に強調しておきたい点は、これはシャウプが勝手に思いついたものではないということです。これは、日本の市町村が地方分権を求める長い歴史の中でかち取ってきたものであるということです。これも別な会合のときにちょっと申し上げましたけれども、今回の地方分権の運動は、日本の歴史の中で2度目です。1度目は大正デモクラシーと言われている運動で、この大正デモクラシーの合い言葉は両税移譲、当時の地租、現在の固定資産税と、それから営業税、現在の事業税、これを地方公共団体の独立税として設置しようというのが、大正デモクラシーの運動だったわけです。この運動を推し進めたのは、三重県の度会郡の、今は大宮町に合併されておりますけれども、七保村の村長なんです。全国の町村に檄を飛ばして、全国町村会をつくった。当時でいいますと義務教育国庫負担金、これは現在の交付税と同じ役割を果たしていたわけですが、その増額と、それからきちんとした独立税を地方によこせ、現在の固定資産税と事業税を地方税としてきちんと移譲しろという運動を、全国の町村に檄を飛ばして、そしてできたのが全国町村会なんです。全国町村会の運動に基づいて、それを踏まえてシャウプ勧告は今のような勧告を行い、これがまだ私の考えでは道半ばであるというのが現状ではないかと思います。

金子 ありがとうございました。シャウプ勧告の内容を非常にきちんとまとめてお話しくださったわけでありますが、シャウプ勧告は昭和24年で、昨年がちょうど50年目、ことしがシャウプ勧告に基づく税制がつくられてから50年ということで、このシンポジウムの趣旨はそういう時点でこういうシンポジウムを開こうということであろうと存じます。
続きまして、井上固定資産税課長から、固定資産税制の歴史についてご発言をお願いしたいと思います。

井上  自治省の固定資産税課長の井上でございます。先ほど基調講演されました片山知事は、固定資産税課長の大先輩でございまして、我々が今の固定資産税制に一番詳しい方だと呼んでいる方でございますけれども、私はまだ駆け出しの課長でございます。先ほどの基調講演を聞きまして、おっしゃることはもっともだと思っておりますけれども、担当課長として、では具体的に今後どう政策に実現させていくかということになりますと、大変大きな重い宿題をいただいたなと思っているわけでございまして、また今日ご参加の皆様方にいろいろ知恵を今後ともかりていきたいと思っております。
 そこで、今、神野先生からシャウプ勧告のお話があったわけでありますけれども、その後、現在の固定資産税制ができまして50年をことし迎えるわけでございます。50年の歴史をこの数分間でご説明するのはまず至難のわざでございますが、基本的に50年間一つの制度が続いてきたということは、これは大変なことだというか、大きな意味を持つものではないかと思っております。ただ、50年前と今では大きく時代が変わっておりまして、その50年間続いた制度というのは、これまでと全く一緒というわけではなくて、時代に応じて変貌を重ねてきて現在の姿がある。そうでなければ50年間も続いてこなかったと思うわけであります。
 それでは、固定資産税はどうかということでございますけれども、基本的に3年に1度評価替えがございますので、その都度何らかの見直しが行われております。誤解を恐れずに言うと、これまでの制度改正の中で大きなものとしては、昭和39年、それから48年、平成6年のものがあったのではないかと思っております。39年は、昭和34年に総理府に固定資産評価制度調査会が設けられまして、36年にその答申が出ておりますけれども、それに基づいて固定資産評価基準の全面改正がなされまして、固定資産の評価の方法が全国統一されたというものでございます。48年は、住宅用地の特例措置が創設されました。それから、39年の評価替え以来乖離していた評価額と課税標準額を3年間で一致させるという、かなり踏み込んだ大胆な措置を実施した年であります。平成6年度は、皆さんご承知のとおり、地価公示の7割評価が実施されたということでございます。
 これらの制度改正は、そのときどきの経済の状況、地価の動向と密接不可分であります。39年は、高度成長が30年代から始まりまして、岩戸景気が33年から36年ぐらいでありまして、地価がぐっと上がったところであります。それを受けて、時価に比べて土地とか家屋の評価額の水準が低い、市町村間に大きなばらつきがあるのではないかということから、固定資産評価制度調査会が発足したということであります。48年は、列島改造でありまして、ここも地価がぐんと上がったところでありました。評価額が1.8倍程度に上がり、それを踏まえて評価額と課税標準の乖離を一気に埋めなければいけない、また住宅用地の税負担の軽減をしなければならないということが責められたわけであります。平成6年は、昭和60年代から平成3年ぐらいまでのバブルの影響があることは、皆様方ご存じのとおりであります。
 こういうふうに見てみますと、固定資産税の土地の評価と課税の歴史は、地価の動向と、それに伴う税負担の水準をどうするかという歴史であったということは、否定できないのかなと思っております。このことがこれまでの固定資産税制に関する最大の議論の中心であったわけでありますし、これからもこの議論は続いていくだろうと思うわけであります。その過程の中で、先ほど知事の方からお話がありましたように、いかにわかりやすい税制を築いていくのか。つまり、現在、負担調整措置があり、また負担水準という概念があって、単に評価額から税率を割り出すだけでは、固定資産税の額が全くわからない。かなり難しいことを計算しなければわからないという、大変わかりにくい制度ではないかという議論があるわけでありますので、それを今後どうするか。また、その過程の中で評価の均衡化、負担の均衡化というのが大きな課題となっております。現在、市町村の中の個々の土地でも負担水準にばらつきがあります。同じ都道府県の市町村間でもばらつきがあります。都道府県間においても大きなばらつきがあるわけでございます。これを現在の制度でもって均衡化しようとすれば、ある一つの計算によれば大体40年ぐらいかかってしまうということでありますので、先ほど知事がおっしゃったわかりやすい税制は、現行制度を続ける限りにおいては40年間変わってこないというか、40年間たたないとあるべき方向が出てこないということになるわけですので、そうした問題をこれからどう解決していくのかというのが課題となるわけでございます。この辺の問題については、後ほどまた時間があればお話しさせていただきたいと思っております。
 また、シャウプ勧告は、先ほど神野先生からお話がありましたように、市町村の有力な財源にする、税制にするということが大きな目的であったわけでございます。現在、固定資産税は市町村税に占める割合が44%。個人、法人の市町村民税で43%でありますから、市町村民税を追い越して、現在トップの税のブランドということになっているわけでございます。シャウプ勧告が出されたときは40%でありました。その後、昭和30年がピークで48%、その後高度成長期でほかの税制が伸びましたので、昭和40年から50年代は30%前半のパーセンテージでございましたけれども、この数年、特別減税、恒久減税等がありましたので、また現在チャンピオンに躍り出ている。また、そのことにより、いろいろな風当たり、批判もあるというのが現在の固定資産税の状況でございます。以上でございます。

金子 どうもありがとうございました。
 続きまして、東京都の齋藤資産税部長より、戦後の地方自治の動きにつきましてご発言をいただきたいと思います。

齋藤 戦後の地方自治の動きということでございますけれども、どうもお話が前後という形になろうかと思いますが、大ぐくりのテーマが「シャウプ勧告の意義と固定資産税の歴史」ということでございますので、固定資産税制を念頭に置いてお話をさせていただきたいと思います。
 地方自治法は昭和23年に日本国憲法と同時に施行されたわけでございますが、その前に少し地方自治の成り立ちというもの、その経緯を見てみたいと考えております。
 私は、明治以来今日までの地方自治の動きを考えてみますと、大体5つの段階に分かれるのではないかと考えております。
 明治4年に明治新政府が廃藩置県を発しまして、その翌年には、従来無税でございました市街地に対しまして、土地の永代売買の解禁を条件にして地券を発行し、地租を課税することとしたわけでございます。当時は国税でございました。このとき、評価の方法としては、所有者の申請に基づくということで、申請された価格があまりにも低い、不適当だというときには増加するように説得し、これにも応じられなければ土地を希望者に入札させたといった状況だったそうでございます。
 翌6年でございますが、農村部にも地券が発行されるところになったわけでございます。年貢にかえて、田畑にも地租が課税されることになりました。このときに、現在の地籍でございますとか公図のもとが作成されたわけでございますが、明治政府が直接やったわけではございませんので、農民にやっていただいたわけでございますので、皆様いろいろ苦労されているような縄延びといったものが出てきたということだと聞いております。
 明治8年には国税、府県税の区別を定めまして、11年には地方税規則が郡区町村編成法でございますとか府県境規則とともに3新法として制定を見ました。その後21年に市制、町村制が制定され、23年には府県制、郡制が制定されたわけでございます。このとき、直接税、間接税の区別、あるいは府県税の徴収は市町村の責任においてやる、義務とするということが決められました。また、この間の明治22年には大日本帝国憲法が発布されまして、納税義務の明記でございますとか租税法律主義といったものの確立を見たわけでございます。
 固定資産税関係では、明治32年に家屋税が新設されました。大正8年には地方税として都市計画特別税が設けられました。こういった地租家屋税の国から地方への移譲は昭和15年の地方税法の制定で実質的になされたわけでございますが、このとき、府県税として不動産取得税が新設されたわけでございます。また、現在の地方交付税制度の前身でございます地方運用税法が制定されたのも、昭和15年のこのときでございます。昭和18年には、私ども東京都に都政が施行されました。このような経緯の中で、昭和20年の終戦を迎えたわけでございます。このあたりまでを現行制度の前身制度というのでしょうか、その創設期と考えてはどうかと思っております。
 こうした経過をたどりまして確立してきた地方制度でございますとか資産税制でございますが、昭和20年の敗戦でもって根本的な見直しが迫られたわけでございます。昭和22年の日本国憲法の制定によりまして、地方税法も改正され、あわせて地方自治法も施行されたわけでございますが、このときの地方税法の改正で地租家屋税が府県の独立税として位置づけられました。
 翌23年でございますが、地方財政法が施行されております。さらに地方税法もこの年全部改正が行われまして、地方税体系の分離独立の徹底でありますとか、地方税財源の充実が図られたわけでございます。
 こうして戦後における経過的制度の創設期を経まして、昭和24年の第1次シャウプ勧告が出されたわけでございますが、このあたりにつきましては今、神野先生のお話がございましたので、省かせていただきます。
 この辺をかいつまんで申し上げるといたしますと、ちょっと重複いたしますが、昭和22年の地方自治法の制定から、23年には地方財政法、24年のシャウプ勧告、25年の地方税法の全面改正と来まして、29年には地方交付税法が制定されました。この期間を私なりに、現在の地方自治制度の創設期と考えてはいかがかと思っております。
 昭和28年でございますが、税制調査会が設置されまして、29年には地方税法の改正がございました。その後平成6年の改正まで、幾多の税目の新設改廃が行われたわけでございます。また、この間地方制度調査会でございますとか臨時行政調査会といった調査会の答申を受けまして制度の見直しが行われたわけでございますが、私ども都におきましても、49年に地方自治法の改正があって特別区長の公選制が復活したということがございます。
 今、井上課長からのお話もございましたように、資産税制におきましても昭和39年の新評価制度の実施でございますとか、48年の住宅用地の特例の新設、また特別土地保有税の新設といった大きな動きもございました。この期間を見直しの時期と考えてはどうかと思っております。
 平成6年11月の第24次の地方制度調査会におきます地方分権の推進に関する答申、また平成7年の地方分権推進法の制定、そして地方分権推進委員会の発足、さらには平成11年の分権推進のための地方自治法の改正を経まして、現在に至る地方自治制度の抜本的改革期を迎えていると考えております。
 簡単でございますが、以上でございます。

金子 どうもありがとうございました。
 続きまして、片山鳥取県知事から、固定資産税制度の実務に携わった際の経験談についてご発言をいただきたいと思います。片山知事は、先ほどもお話に出ていましたけれども、平成7年から2年半、自治省固定資産税課長を務めておられました。ちょうど平成6年から採用された7割評価と複雑な税額計算等の原因によりまして、固定資産税に対する不信感と怒りが全国的に渦巻いていたころでございます。このあたりの当時の経験談をお話しいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

片山  私は、平成7年の7月から今ご紹介いただきましたように固定資産税課長をやっていたんですが、その前に昭和52年から固定資産税課で仕事をしていたことがありまして、私と固定資産税のかかわりはそのときから始まるのであります。
 実は、これは余談でありますが、きょうのこの会の主催者の一翼を担っておられます資産評価システム研究センターというのは、私が固定資産税課におりましたときに設立されまして、実は名前も当時の私ぐらいの年代の人が提案いたしました中から採用されたんですが、たまたま私の提案した名前が採用されたのが資産評価システム研究センターで、これについては非常に感慨深いものがあります。
 平成7年に私が固定資産税課長になりましたときには、これは大変な時期でありました。といいますのは、今、金子先生からご紹介がありましたように、固定資産税については平成6年度の税制改正でかなり大幅な改正をやったわけです。そのときの改正は、いわゆる地価公示の7割で評価しましょうということにしたわけで、一挙に評価額が4倍とか、場合によっては10倍とかになったところが多いわけです。ところが、税負担はそんなに一挙に4倍とか10倍にするわけにいきませんから、匍匐前進というんでしょうか、少しずつ上げていくということで、いわゆる負担調整措置というのを絡み合わせたものですから、非常に複雑怪奇になってしまったのが平成6年度の改正であります。
 これはもちろん、それなりに事情があってそういう改正になったんだろうと思います。それを今から忖度しますと、それ以前のちょうどバブルの時期に固定資産税が大きく揺さぶられたわけです。といいますのは、バブルの時期に土地投機というものが起こって、その土地投機の原因というものが固定資産税が低いからではないかという議論があったわけです。冷静に考えてみると、本当は固定資産税が低いから土地投機が起きるということではなかったんだろうと思います。やっぱり金融が緩和していて、行き場のない金が土地投機に向かったんだろうと思うんですが、その際に土地の保有コスト、すなわち日本では固定資産税が中心になりますが、その保有コストというものが安いから土地投機の対象になったのではないかという議論が非常に盛んだったわけです。そこで、固定資産税というものをもっとしゃんとしなさいと、もっともっと取るべきだという議論が、バブルのころには一つありました。
 もう一つは、評価というものが非常にわかりにくい。特に、地域間で非常に差がある。あまり客観的に公平でないということがありましたし、その評価自体が不明瞭である、よくわからない。
 もう一つは、我が国の公的土地評価というのは随分いろいろなものがあります。地価公示があり、相続税の評価があり、固定資産税の評価があり、それらが全部ばらばらで、同じ税金を使って評価をしているのに全部がばらばらというのは、国民としておかしい、どうも割り切れない、一本化すべきだという乱暴な議論があったんです。本当に一本化しなければいけないのかどうかというのは、冷静に考えたらそんなことはないんだと思うんですが、当時はそういう議論が横行していました。
 それに対応さぜるを得なくなったのが当時の固定資産税の平成6年度改正でありまして、そこでの結論は、固定資産税は地価公示の7割で評価しますといういわゆる7割評価。相続税は8割で評価しますということになったわけであります。しかし、さっき言いましたように、税負担をそんなに4倍とか10倍に一挙に上げるわけにはいきませんから、複雑な税額計算の仕組みを設けたのが負担調整、もっと言えば臨時特例とか、暫定特例とか、今になったら懐かしいそういう制度を思い出す方もおられると思いますが、そういう制度を設けたのが平成6年度改正です。ですから、当時のバブルのころの状況に非常にパッチワーク的に対応した改正だったわけです。
 しかし、その改正をやった後、いろいろな副作用が生じました。まず一つは、極めてわかりにくい。何が何だかさっぱりわからない。評価額と課税標準額との関係が、どうやって説明を聞いてもわからない。私もよくわかりませんでした。それから、課税の上限が一体どこまでいくのか。評価額が10倍になった。確かに税負担は毎年何%ずつひたひたしか上がらないから、負担増というのは当面はそんなに深刻ではありませんが、しかし評価額と課税標準が、例えば課税標準が評価額の2割ぐらいしかない土地はいっぱいありましたから、その土地が毎年毎年何%かずつではあるが上がっていって、将来例えば何十年かたったら今の10倍になるんですか、5倍になるんですかという不安感が納税者に生じたわけであります。税負担の上限が明確でなかった。こんなことがありまして、現場は大混乱しました。それは恐らく皆さん方、特に大都市では大混乱を起こした経験があると思うんです。
 私も当時は担当課長でありますから、いろいろな機会にいろいろなところに呼び出されまして、例えば法人会でありますとか、青色申告会でありますとか、商工会議所でありますとか、いろいろなところに呼び出されまして、まずはこまめに行くようにしました、現場が大切というのは私は今もやっているんですけれども、当時から私は現場が大切ということで現場に出向いていまして、いろいなことを納税者の方から聞きますと、どんなにしても答えられない。さっきの講演でも言いましたけれども、自分で堂々と説明できない、そういうことがこの平成6年度の改正にはいっぱいありました。今、アカウンタビリティーという言葉があります。説明責任能力、きちんと物事を説明できますかどうですかという、このことが今の行政には問われているわけでありますが、まさしくそのときにアカウンタビリティーがないと思いました。説明しようにも、自分で自信を持って説明できない。私は今でもそう思うんですが、きちんと人に説明できない制度はやはり欠陥があると思います。いろいろな問題を含んでいても、何とか説明すると相手がなるほどと思ってくれる制度はまだ脈があるんですけれども、自分で自信を持って説明できない、人の受け売りでしか説明できないということは、これはアカウンタビリティーがないというわけで、それは制度自体に欠陥があると思いました。今でも思っていますけれども。したがって、自分で現場に出向いて説明できないことは、これは変えなければいけないと思ったのが、平成7年からの私の取り組みになったわけであります。
 そこで、平成6年度の税制改正のときの副作用、例えばわかりにくいとか、どこまで税負担が上がるのかが説明できないとか、そういう問題をとにかく解消しようというので、平成9年の改正をしたわけであります。そのときに、評価額と課税標準との関係を少なくとも当時の制度よりは明確に説明できるというので、負担水準というのを設けて、評価額に対して今の課税標準は一体幾らになっているのか、それを当面どこに収斂させようとするのか、上限は評価額いっぱいいくんじゃなくて、評価額の8掛けで、したがって地価公示で言いますと7掛ける8で56%のところを上限にしますというような新しい天井を設けたり、ある一定の水準以下の人はここまでは少なくとも上げさせてください、そこまでいった人は足踏みしてくださいというような一応の天井を設けて、納税者の不安感を解消した、それからさっき言いましたような評価額と課税標準との関係がある程度わかりやすいようにしたというのが、平成9年の税制改正であります。そのことによって完全には問題は解決しておりません。まだ微温的と言えば微温的でありますが、少なくともそれまでに平成6年度改正で生じた納税者の税制に対する非常に強い怒りと不信感というもののある程度は解消できたのではないか、少なくとも固定資産税が納税者から信頼感をある程度得る道筋はできたのではないかと思っております。
 その後平成12年度にどうなるのかということは、実は私は外から見ていて非常に関心がありました。といいますのは、平成12年度にはもう一挙にピシャッと負担水準をどこかの線に合わせてしまうという選択肢もあったわけであります。でも、多分それは無理だろうから、そうすると、もう少し幅を縮めて、課税標準の割合、すなわち負担水準をだんだん収斂させていくということをどこまでできるかということに非常に関心があったんでありますが、9年のときよりも多少前進したと私は思います。これも、今の担当課長の井上課長が言っておられましたけれども、まだまだ微温的かもしれませんが、しかし前進はしたと思います。これをさらに今後の税制改正でどこまで負担水準というものを収斂していくのか。これが税制の公平さにつながりますから、それはこれからの課題だろうと思っております。

金子 どうもありがとうございました。
 片山さんが課長をしていたころ、私も研究会などでご一緒することがありましたけれども、負担水準という観念が制度上、片山さんが課長をしておられたときに導入されたわけですが、この負担水準という観念は、前向きに固定資産税制度を改革していく上で非常に重要な観念ではないかと思います。また、これについては後ほど触れるところがあるかと存じます。
 以上4人のパネリストの方から、シャウプ勧告の意義とこれまでの固定資産税制度の歴史についていろいろとご発言をいただきまして、これまでの歴史、それから過去は振り返ることができたと思います。次に、現在の状況について明らかにしたいと思います。
 そこで、2番目の項目である固定資産税を取り巻く最近の状況という問題について考えていきたいと思います。それでは、初めに井上課長から、平成12年度評価替えの状況や昨年末の税制改革論議についてご発言をいただきたいと思います。

2.固定資産税を取り巻く最近の状況
井上
 平成9年度の評価替えのときの税制改正につきましては、今、知事の方からお話がございました。ことし12年の評価替えでございますけれども、その制度の設定が昨年の末の政府税調なり党税調の場で議論されたわけでございます。そのときに、経済界、それから不動産業界などから固定資産税を大幅に引き下げるようにという声が強く展開されたわけでございます。幾つかの論拠がございますけれども、一番わかりやすくといいますか、よく言われたのは、地価が下がっているのに固定資産税が上がっているではないかという議論でございます。ただ、これは先ほど平成9年度のときに負担調整の措置、そして負担水準でもって必ずしも固定資産税がこのままでずっと増え続けるというわけではないという制度ができたわけでございまして、例えば平成10年度の状況で見ますと、もう特別区23区の中では全体の土地の72%は引き下げか据え置きという状況でありました。大阪市でいきますと78%が引き下げか据え置き、大都市の計でも50%が引き下げか据え置きですから、地価が下がっているのに固定資産税は上がっているではないかというのは、少なくとも大都市のかなりの土地ではそういう批判は当たらないという状況であったわけでありますので、かなり一部誤解もあったのではないかと思っております。
 では、なぜそういうふうになったかといいますと、先ほどの平成9年度で、負担水準が8割以上の土地については引き下げる、負担水準が6割から8割、そして地価下落が全国平均以上のところについては4割5分の部分までは据え置く。したがって、負担が上がっているところは、もともと負担水準がほかの土地に比べて低かったというところについて、少しずつなだらかに引き上げていくという極めて公平な観点から妥当な措置がされたわけでございますので、そうした観点から、先ほど申し上げた大都市においては、少なくともかなりの土地については据え置きもしくは引き下げという状況であったということであります。
 それから、地方税全体で税収が落ち込んでいるのに固定資産税だけが上がっているのではないか、だから固定資産税は実質的に増税しているのではないかという、先ほどの議論とも結びつく話でございますれども、そういう議論があったわけでございます。ただ、少なくとも平成12年度は、固定資産税は昭和25年制度発足以来初めてトータルとしてマイナスという数字になっております。平成11年度も若干のプラスはございましたけれども、そのプラスの要因はいわゆる宅地面積の増加と家屋の新築による影響でございまして、これらの影響を除けば11年においてもほとんど伸びていないという状況であったわけでございます。だから、固定資産税だけがほかの税収が落ちているのに伸びているという状況でも必ずしもないということであります。
 それから、企業の方でありますけれども、企業の固定資産税負担額は高いのではないか、国際的な比較をしても極めて高いという議論があったわけでございますが、少なくとも国民所得に対する不動産の保有課税の割合は決して国際的に高くない状況でございまして、アメリカ、イギリス、フランスに比べても低い水準であるということでございます。ただ住宅については、小規模住宅は6分の1の特例がございまして、一般住宅も3分の1の特例がございますので、他の商業地についてはそういう措置がないということもあって、そういうご批判があろうかと思いますけれども、企業の場合は固定資産税は損金算入がされているという、一般の個人の方々とは違う経理の状況もあるということもございます。
 こういう議論が実際にあったわけでありますけれども、民間の場合は血のにじむようなリストラをしているのではないか。他方、地方公共団体は一応そこまでやっているのか。行政改革をきちんとやっているのか。固定資産税は応益原則で安定的な税源であり、伸びるということで、ある意味では欲しいままに惰眠をむさぼっているのではないかといった議論が実際ございましたし、そうした感覚が企業の方々にはあったのではないかと、今でもあるのかもしれません。いささか感情的な感覚であろうと思いますけれども、我々としても、そして地方公共団体の方々も、そうした声があるということは耳を傾けることが必要ではないのかなとは思われます。
 そうしたさまざまなご批判がございましたけれども、12年度の制度改正は基本的には大きな3つの原則といいますか、そこを維持した上で制度が構築されたわけでございます。
 まず1つは、固定資産税の安定的な税源であるというその基本的性格を損なってはいけない。経済界等が大幅な減税という議論をされていたわけでございますけれども、そうすると市町村の収入は大きく落ち込んでしまうわけでございまして、ただでさえ景気が悪い中で全体の税収が落ち込んでいるところにさらに固定資産税が落ち込むと、市町村が基本的な仕事ができない。地方分権という中で、地方財源の充実確保が必要と叫ばれる中で、固定資産税が大きく減少するわけにはいかない。したがって、固定資産税の安定性は損なうべきではないという基本的な考え方が1つであります。
 それから、負担水準の均衡化を図っていくという道が平成9年度にできたわけでございますので、それを一歩たりとも後退させてはいけない。さらにそれを進めるべきであるということが第2の基本的考え方です
 3つ目は、そうは言っても、住宅用地に比べて商業地の税負担、特に大都市中心にして高いのではないかという状況については、やはり耳を傾ける必要があるのではないか。そのところについてはある程度配慮する必要があるのではないかということが基本的考え方でございます。
 それをもとにして12年度の制度ができ上がったわけでございます。端的に申し上げますと、これまで負担水準80%以上のところについては80%まで引き下げるということにしていったわけでございますが、12年度、13年度は75%まで引き下げ、14年度は70%まで引き下げるという措置をしたわけでございます。また、据え置き年度においても下落修正措置を講じるといった措置をし、先ほど申し上げたように、そうしたことによって平成12年度の固定資産税収は昭和25年の制度創設以来初めて減収となった。減収とはなりましたけれども、大幅な減収は避けることができたということであったわけでございます。
 以上でございます。

金子 ありがとうございました。
 続きまして、齋藤部長より、行政サービスと租税負担の関係という観点からご発言をお願いいたします。

齋藤 行政サービスと租税負担の関係ということでございますが、先ほどの基調講演にございましたことの繰り返しになりますが、一応申し述べさせていただきます。
 地方自治の原点でございますが、これは行政サービスと、それに必要な負担のあり方を住民自らが決めることにあると考えております。地域の実情と住民の思惑に従いまして、多様な制度や仕組みをつくり上げられることこそが、地方自治の意義でございます。これまで、国土の均衡ある発展と地方の格差是正ということが言われてまいりました。しかしながら、都市の豊かさの意味が改めて問われると同様、地方の豊かさや格差の意味も再検討が必要な時期に来ているのではないかと考えております。
 昭和50年には全国1位でございました東京都の平均寿命が、平成7年には男性が20位、女性が33位に下がっております。ディーゼル車の排出ガスによります肺がんの死亡率は、北海道の3.1%に対し、東京都は16.3%という数字が出ております。千葉県はもっと高いと聞いております。さらに、都市の表面的な華やかさの陰には、人と人の関係性が希薄なコミュニティーができたり、経済競争からの取り残された貧困でございますとか、公園や水辺等の快適環境の喪失、そして狭隘な住居と申しましょうか、平均1時間半を超える過酷な通勤といった多くの問題が解決されずに残されているわけでございます。地方分権の推進でございますが、こうしたいたずらな格差の主張を繰り返しまして画一的な没個性の町を全国に蔓延させるといったことから、個性的で魅力ある地域づくりを進め、地域差でございますとか個性差の発揮へと大きくかじを切りかえるときに来ているのではないかと考えます。それに伴いまして高い水準の行政サービスが求められるのであれば、当然高い負担を伴うことになりますし、負担を低くすればまた行政サービスの水準も低下せざるを得ないということで、それぞれの地域の住民自らが決めることになろうかと考えております。
以上でございます。

金子 どうもありがとうございました。
続きまして、神野先生から、地方分権の動きと固定資産税制のあり方という観点からご発言をお願いいたします。

神野  地方分権というのは、先ほど知事の基調講演にもありましたけれども、それぞれの地域の住民がそれぞれの地域のニーズに従った公共サービスをそれぞれの住民がどういう負担で負担し合っていくのかということを決めることができること、これが地方分権の原点だろうと思います。そのことによって、地方分権推進法第1条は地方分権の目的を規定しておりますけれども、ゆとりと豊かさの実感できる社会をつくること、ちゃんとニーズに合ったサービスが出てきて、ゆとりも豊かさも実感できる社会をつくっていこう、これが地方分権の目的だと考えております。
 固定資産税という税金は、先ほども申し上げましたとおり、これは独立税でございまして、そういう意味では市町村の基幹税では唯一の独立税でございますので、この独立税をもとにして地方公共団体が自ら公共サービスをどうやって負担し合っていくのかということを決めればいいわけです。片山知事も強調されましたように、その地域社会でどういうふうに公共サービスを負担し合っていくのかということを決定できる権限をその地域の住民が持つこと、これが分権にとって一番重要なことなわけです。私たちの公共サービスの内容をまず見て、財政の原則は「入りをはかって出を制する」、収入がまず決まって、出が後で決まる、つまり収入の範囲内で出を決めなさいという議論がありますが、これは財政学では一回もそんなことを教えたことはありません。財政学では常に、企業とか家計とか民間の経済主体は「入りをはかって出を制する」だ。なぜなら、収入の方が市場で決まってしまうからです。企業であれば生産物の販売価格、それから家計であれば労働市場の賃金と、入る方がまず決まってきます。そして、後の方をそれに基づいて決めなくてはいけない。これに対して公共部門、つまり政府は、まずどんな公共サービスがこの地域で必要なのかという出を決めて、そしてではその公共サービスをどうやって負担し合っていくのかということを決めなくてはいけないわけです。出が決まらないうちに幾ら税金が必要だということは決めようがないわけで、原則を間違えては困るわけです。
 そういう公共サービスがあるということが決まってきたときに、ではどういう公共サービスを負担し合うのかなということでございますけれども、固定資産税の場合に、先ほど知事からレイトのお話がございまして、イギリスではレイトという税金がかかっています。これは救貧税と言われた税金でございますので、イギリスではこう考えたわけです。公共サービスは応益原則で課税されなければいけないけれども、救貧活動による利益はだれが受けるのか、それは救貧活動によって社会秩序が維持され、そして社会秩序が維持されることによって土地の所有権を安定させるから、土地所有者に帰着するだろう、実際には占有者ですが、そしてその税金を払ってくださいと言ったわけです。かつ、それぞれの地方公共団体がそれを決められるように、知事がおっしゃったように配賦課税で決めました。配賦課税というのは、課税標準をまずそれぞれの地域社会ごとに決めておいて、後で必要額で割り戻して税率を決めるというやり方です。知事は、世界の国々がやっているのに日本はやっていないではないかというお話でしたが、日本もこれをやっておりました。戦前はすべて配賦課税です。市町村は戸数割という税金が配賦課税の最後のラストリゾートでもって割り戻しで決めておりました。それから、道府県は家屋税が配賦課税になっておりましたので、現在の固定資産税の一部を形成している家屋税が配賦課税で、必要な公共サービスの額を決めておいて、後で課税標準をそれぞれ決めておいて割り戻して税率を決めていたわけです。
 ところが、これをやったためにどういうことが起きたのかと申しますと、ちょうど昭和恐慌のときに、都市と農村との格差が広がって、税率の格差が急速に広がりました。家屋税で申しますと、私の記憶に間違いがなければ、東京都と沖縄県で税率に14倍の差ができたわけです。これが都市、農村の疲弊を生み、ご存じのとおり、悲劇を生んだものですから、これをどうにか是正しようということで導入したのが、現在の交付税、財政調整制度ということになるわけでございます。
 そういたしますと、私たちはこの財政調整制度と先ほど知事が言ったような独立税で税率を決定するというのを両立させていくという道を選ぶとすると、課税標準も本来は地方公共団体が決めた方がいいのですが、そうすると財政調整がうまくいかなくなりますので、課税標準はどうにか一律で決めていく。そのかわり税率の方で、先ほど自動的に負担が高いとか何とかと言いましたけれども、本当はそれも自由に決めればいいわけです。それは税率で決めるというやり方に決め直せればいいのではないかというのが、固定資産税のあり方で目指すべき方向ではないかと思います。
 きょうの研究大会のテーマはシャウプ勧告ですから、シャウプ勧告も地方税について必要なことを4つ指摘しております。まず第1番目は、簡単でなければならない。これは知事が再三強調されていたことです。それから、地方税というのは地方行政を可能ならしめるものでなければならない。その次には、国と道府県と市町村の間に税源がきちんと分離していなければならない、つまり、独立でなければならない。最後に言っていることは、地方団体は税率を上下する権限を持たなければならない。つまり、税率の操作権を持ちなさい。税率の操作権を確保するということが、分権の時代にとって重要なのではないかと思います。

金子 ありがとうございました。
 続きまして、片山知事から、地方財政の状況、国から地方への税源移譲の必要性ということについてご発言をいただきたいと思います。

片山 地方財政は、今非常に困窮しています。これは、私も今鳥取県の知事をやっておりまして、私のところの台所を見ましても、もう明らかであります。非常に借金がたまっておりまして、鳥取県でいいますと税収の9年分ぐらいの借金が今たまっているところであります。これをどうやって返していくのか。今でも借金をどんどんせざるを得ないという状況であります。これは全国どこでもそうでありまして、地方財政全体の借金が今180兆円ぐらいあると思いますが、これをこれから借金をしながら返していくというのは至難のわざでありまして、本当に頭の痛い問題だろうと思います。
 きょうは東京都の部長さんも来られていますが、今、地方団体で一番苦しんでおられるのは、実は従来豊かだったところなんです。税収が非常に豊かだったところ、税収の割合が多いところが、今の税収が減っているこの時期にダメージが大きいわけであります。東京などは交付税が行かないところでありますから、税収が1割減れば、もう即歳出規模も1割近く圧縮せざるを得ないというようなことになってしまう。私どもの鳥取県は税収の割合が幸か不幸か非常に低いものですから、税収が1割減っても、歳入全体に占めるダメージというの、今のところはそんなに多くないんです。ですけれども、今国税がどんどん減っていますから、これから交付税が減るようになるということになりますと、鳥取県などのようなところ、税収の割合の低いところも今度はダメージが大きくなるという、不安を非常に抱えながら今綱渡りの財政を運営しているところであります。
 したがって、ぜひ地方財政全体としての税源を国税から移譲してもらうというのは、これはもう一番ベストであります。私も自治省におりましたときにそのことを一生懸命やっておりましたが、今は国の台所も火の車でありまして、国から財源をよこせといっても一体何を持っていくんですかという話になると、国の方の台所も痛々しいほどの惨状でありますので、なかなか胸を張ってよこせというわけにもいかない実情であるんだと思います。ですから、大幅な国からの税源移譲というのはもう少し長い目で見ないと実現できないのかなという気が、正直しております。今のところは、分権の時代の中で移譲団体の税のメニューは随分増えました。例えば法定外税も、法定外普通税だけではなくて目的税もいいとか、許可制度がなくなって協議制でいいとかになりましたので、ある程度柔軟に動けますから、今、鳥取県でも法定外税の検討をしています。例えば、産業廃棄物処分場をつくるということに今随分の労力を要します。コストも要します。行政面でのコストも要します。そういうものを賄うために、法定外目的税として産業廃棄物処分場設置税を設けたらどうかといった検討もやったり、森林を涵養するために、上流と下流との間で、下流の人が上流に向けてコストを負担するという森林涵養税みたいなものを検討しています。そんなことをやっていますが、しかししょせんそんなに大きな財源として調達できるわけではありません。一種のわき役のような形で今検討していますが、それも重要ではあると思います。
 あと、私は今財政を運営していまして一番気になるのは、安定性ということであります。都道府県は税制が非常に安定していません。市町村の場合はうらやましいのであります。市町村の場合には、固定資産税という比較的安定した税がありますし、個人の住民税のウエートが高いですから、これも法人の所得課税に比べますとかなり安定しています。ですから、市町村税というのは随分安定しているいい税制になっていると私は思っております。
 ところが、道府県の税制というのは、法人所得課税、例えば法人事業税が中心なものですから、法人の企業の経営状況によって、景気の状況によって税収が随分変動します。これが都道府県の財政構造を非常に脆弱にしているところでありまして、都道府県の税制の構造というのはもっと安定化しなければいけない。特に法人所得課税に依存している体質を変えなければいけないということが基本的にあるわけです。それを変える手段として、現在の法人事業税、これは今所得に課税していますが、これを所得以外の何らかの基準、例えば外形基準という所得以外の基準に変えたらどうだろうかというのが、今非常にホットな議論になっているわけです。これが実現すれば、道府県の税制の構造はかなり安定化します。
 もう一つは、私は、道府県の税制というのは法人所得課税から個人の所得課税の方に少しシフトしたらどうだろうかという持論を持っております。これは手法としては、例えば国税との間でやりとりをして、今の道府県の持っている法人所得課税を国税に少し移譲して、そのかわり国税が持っている個人の所得課税、いわゆる所得税というものを道府県の個人住民税として移譲を受ける、こういったバーターをしてもいいのではないか。その方が都道府県の税収としては安定しますし、もう一つは、地方自治の精神からいっても、負担分任という、みんなで負担し合いましょうという精神からいっても、個人の所得課税がもうちょっと多くなってもいいのではないか、こんなことも今考えております。
 それからもう一つは、これは従来から政府の景気対策でよく減税というものがあるわけです。これは所得税と個人住民税とセットでやるんですけれども、これは非常に地方団体に混乱を招きます。といいますのは、地方団体の税というのは、本来は、さっき神野先生が言われたように、地方団体のものいりの分をみんなでどうやって分担するかというのが地方税の基本なんですが、それと関係ないところである日突然減税がボーンと決まってしまうと、一体地方団体の歳入と歳出の関係はどうなるのだろうか。本来は、さっき先生が言われたように「出るをはかって入るを制す」。ところが、税の入ってくる方をもう国がピシャッと制してコントロールしてしまうと、歳入と歳出の関係なんか全く無関係で動いてしまうという非常にいびつな構造になっていまして、私は、これから果たして政策減税というものがあるのかどうかわかりませんが、もし国策としてやる場合には、それは国だけでやってもらいたい。地方の方にはそういう影響を及ぼしてもらいたくない。そういう税制の安定性も必要だろうと思っております。
 いろいろ申しましたが、国税から税源の移譲を受けるのが、これはベストであります。しかし、タイミングとして今はなかなかそれは現実には難しいでありましょうから、中長期的な問題として考える。当面は安定性というものが非常に求められるので、そのための努力は必要であるということだろうと思います。

金子 ありがとうございました。
 以上、固定資産税の過去の問題、それから現在の問題を議論してまいりましたけれども、これからは地方分権と固定資産税という問題、つまり未来の問題について検討していただきたいと思います。
 地方分権の時代において、その必要財源を賄うこととともに、住民による施策の選択の手段としての役割が期待されているという観点から、固定資産税のあり方を考えてみたいと思います。つまり、3番目の項目は地方分権と固定資産税ということでありますが、まず井上課長から、政府税制調査会中期答申の概要についてご発言をいただきたいと思います。

3.地方分権と固定資産税
井上 
政府税調の中期答申が7月に出されました。21世紀の税制のあり方をどうするかという中期的な展望に立っての答申であったわけでございます。大変分厚いものでありまして、読むのもなかなか苦労するわけでありますけれども、現在の国税、地方税の現状とその課題、今後の方向性みたいなものがかなりコンパクトに、かつ必要に応じて詳細に書かれておりますので、市町村の税務担当者、そしてまた税に関心のある方々は、もし時間的余裕があれば一度手にされてお読みになればいかがかなと思うものでございます。ただ、大変分厚いものでございまして、固定資産税だけでも10ページを使って答申をしております。この内容もすべてお話しするとかなりの時間がかかってしまいますので、先ほど片山知事がこれからの税制、1つはわかりやすく、2つ目は情報公開、オープンにすべきだ、3つ目は市町村の裁量の余地を広げるべきだというお話をされたわけでございますけれども、その3点についてこの政府税調は何と言っているかということをお話ししたい思います。
 まず、わかりやすい仕組みにすべきであるということについてでございますけれども、この中期答申では、「固定資産税の評価は専門的過ぎてわかりにくく、あるいは税負担の調整措置が複雑で理解できないといった声をよく聞きます」という問題認識を持っております。ただ、若干の弁解をしておりまして、「固定資産税は資産価値に応じて課税されるものであるので、個々の固定資産の価格を可能な限り適正に評価する必要がある。また、納税者にとっても、自己の資産を公平かつ適正に評価してほしいという要請があるので、評価方法は精緻にならざるを得ない部分がある。また、税負担の調整措置は課税の公平の観点から負担水準の均衡化を進める一方、税負担の急激な変動が生じないよう配慮する必要があり、ある程度複雑な仕組みとなってしまうこともやむを得ない面がある」と言っています。「このような現在の制度になっているのは、公平かつ適正な評価と課税を確保するためであり、一面やむを得ないものであると考えられますが、今後ともわかりやすさという要請にこたえるための工夫を行っていくことが必要です」という書きぶりでございまして、具体的にどのようにやるかということは必ずしも明確ではないわけでありますけれども、その一つとして、先ほど来議論になっております負担水準の均衡化を今後とも図っていくべきであるというようなことを言っておりまして、負担水準にばらつきが存在することは課税の公平の観点から問題である、これを是正することが重要な課題であるということであります。ただ、直ちに負担水準の均衡化を図ろうとする場合には、税負担が大幅に急増する土地が生じてしまうことなどの問題があるので、納税者の税負担への配慮、市町村財政への影響なども勘案しながら進めていく必要があると言っているわけであります。
 先ほど私が申し上げましたとおり、現在の平成12年度の制度を仮に今後とも維持していくとするならば、ある程度きちんとその負担水準が均衡化になるのは40年近い歳月がかかってしまうということでございまして、これをもう少し早く進めるべきではないかということになるわけでございますけれども、そうなってしまいますと、現在の負担水準の低い土地はどうしてもかなりのピッチで上げざるを得ないということになるわけでございますので、それを納税者の方々に十分ご理解いただいて納得していただけるかということが最大の課題となっていくわけでございます。
 先ほど知事からもオープンにすべきだというお話がございましたので、この議論はこれからオープンな形で、負担水準が現在どういうばらつきがあるのか、それを均衡化するためには具体的にどうすればいいのかということを、市町村の現場でご苦労されている方々のご意見も十分聞きながら、いろいろと検討してまいりたいと思っております。ざっと見たところ、大都市部よりは地方の方で負担水準の低い市町村が多いようでございますので、そうすると、仮に住宅用地であれば、ある程度の上げ幅を持ってもそれほど具体的な税額としての大きな負担増にならないのではないかというような見方もできないわけではないかとは思います。しかし、物事はそう簡単ではないと思いますので、そのあたり、これから市町村の方々とのお話も聞きながら、よく検討してまいりたいと思っております。
 次に、情報公開の関係でございます。政府税調の答申は、固定資産税はこれまで路線価の公開、課税明細書の送付など、情報公開の観点から実施してきたとまず書いておりまして、「固定資産税の課税情報については、今後とも積極的に納税者に開示していくべきものと考えます」と言っておりますが、一方で「自らの情報を開示される者のプライバシー保護の要請にも留意していかなければなりません」と書いてあります。現在、個人情報保護法制という検討が進められているわけでございまして、基本的に課税情報をオープンにしていくといった場合に、個人情報保護との関係をどういうふうに整理していくのか。そこは法律を出すということにもなると思いますけれども、それが一般国民の方に受け入れられるか受け入れられないのか、その辺はよく考えて対応していく必要があるのかなとは考えております。
 3点目の裁量を増やすということでございますけれども、中期答申は「地方分権の趣旨から市町村が自らの判断で税率を決定していくことが重要であるとの意見や、現在進められている負担の均衡化がある程度図られた段階で議論すべき課題であるとの意見などがあります」と、若干これは両論併記的になっております。現在の制度は、基本的に標準税率が定められておりますけれども、それ以下の税で課税してはいけないと書いてはいないわけでありますけれども、先ほどの話にありましたように、別途地方財政法で標準税率を下回って課税する団体については起債制限があるわけでございますので、現在1.4%未満の団体は皆無という状況でございます。これは、地方分権の観点から平成18年度国との同意付の協議の対象になります。同意が得られればそれは可能となってくるという仕組みとなって、それがかなり時間のかかり過ぎではないかという議論もあろうかと思いますけれども、現在の制度はそういうふうになっているということでございます。
 負担水準との関係でございますけれども、これから税率の自由化といいますか、地方公共団体がある程度自由に税を決めていくというときに、他の市町村との税の負担の状況はどうかという比較の議論は当然あろうかと思いますけれども、その場合負担水準にこれまで同様の大きなばらつきがあるとか、評価の仕方がかなり違うというようなことであれば、的確に比較でできないということにもなってくるわけであります。また、わかりやすい税という観点からも、同じような土地は同じような評価になり、同じように課税標準になるということがあるべき姿だろうと思いますけれども、そういうことからすれば、やはりまず負担水準をできるだけ均衡化を図っていくということが先決ではないのかなというのがこの後者の意見であるわけでございますので、我々はその辺も十分考えながら検討していきたいと思っております。以上です。

金子 ありがとうございました。
続きまして、片山知事から、分権時代における市町村の役割についてご発言をいただきたいと思います。

片山 地方分権時代の主役は市町村というのが私の考え方であります。我が国の地方自治制度は、都道府県があって市町村があるという2層制になっております。従来は、国があって、その次に県があって、その下に市町村があるというイメージであったと思いますが、地方分権推進法にも書いてありますが、国も県も市町村も対等であるというのが本当だろうと思います。わけても、私はこれからの地方分権時代の地方行政、地方自治を考えた場合には、市町村が県よりももっと重要である。もちろん県もいろいろな重要な仕事をしていますから大切な機関でありますが、一番住民の皆さんに近い、現場に近いという意味では市町村の役割がこれから県よりももっと重要であると思います。県は広域団体として、その市町村のお手伝いといいますか、市町村の仕事がうまくいくように条件整備をしたり支援したりする、そういう役割になってくるのではないかと思っております。しかし、そのためには単に市町村が重要であると言っただけでは何もならないわけで、なぜ重要かというと、住民の皆さんに直接接しているからでありまして、ということは住民の皆さんの意向というか考え方を市町村がまず的確にとらえるということが必要になってくる。とらえる機能があればこそ、市町村が重要になってくるという意味であります。最近の例をご紹介しますと、鳥取県ではいわゆる総合開発計画、第何次鳥取県総合開発計画というものをもうやめました。これは、従来から5年ごとの計画期間をもってつくってきたんです。そのつくり方というのは、国の動向を見ながら鳥取県でも計画をつくる。網羅的に役所を中心にしてつくる。それを見ながら今度は県が自分のところになぞらえて同じようなものをつくっていくというやり方をしていたんです。国があって計画をつくり、県がまた計画をつくり、それを見ながら市町村がつくる。これをもうやめようと、やめました。そうしたら、市町村からいろいろクレームが出ました。県がやめると我々のところはつくれないじゃないかという声があったんですが、私が市町村長さんに申し上げたのは、「皆さんがまずつくってください。それは、皆さんが市町村の住民の皆さんの要望、意向を的確に酌み取って、自らの町のこれからのあり方というものを、地方自治法にも基本構想というものがありますから、基本構想でも何でもいいから、自分でつくってください。それを見ながら、県全体として、では何をやっていくのか、市町村の計画のあり方を見て県の仕事のやり方も決めていきますという、視点を全く逆にします」というやり方を今しています。市町村はちょっと戸惑っていますけれども、恐らく定着すると思います。県はもうつくらないことにしましたから。そうやって県も直接住民の皆さんから意向を聞くし、もっと市町村は聞いてください、それを反映してくださいということを今やっております。
 そこでまた出てくるのが、市町村の議会の役割であります。市町村議会の役割は大変重要だろうと私は思います。住民の皆さんの意向を酌んで、首長も市町村長さんも酌むけれども、議会もそれぞれ直接選挙で選ばれる代表でありますから、自分たちの支持してくれる住民の皆さんの意向を酌んでそれを政策に反映させる、その場が議会であるはずで、もっともっと議員立法がなければいけないし、議員からの提案がなければいけない。そのことを市町村の議会の皆さんにも言っています。
 ただ、今の市町村の議会の実態を見ますと、私はちゃんと住民の意見とか住民の考え方がまんべんなく反映されていないという危惧を持っています。といいますのは、議員になっておられる方を見ますと、鳥取県などの場合ですと、農業の方が多い。それから、土木建設業の方が多い。これが実態であります。ところが、現実に市町村の財政を支えている、税を支えているのは、実はサラリーマンなわけです。サラリーマンがほとんど議会に代表されないという実態にある。多分皆さんのところもそうだろうと思うんです。これからの住民に一番身近な市町村の議会は、もっとまんべんなく住民の代表として構成されるように変えなければいけないと思うんです。それには、今の選挙制度がおかしいと思うんです。といいますのは、サラリーマンはまず選挙に出られません。議会の議員になろうと思ったら、恐らく仕事をやめないと出られない人が多いです。公務員などは特にそうです。
 私は今でこそこんな仕事をしていますが、2年前の今ごろは自治省で仕事をしていましたから、国家公務員でありました。目黒区に住んでいまして、子供が小学校に通っていまして、パソコンの教育というものがあまりうまくいっていないというのが参観日に行くとわかるものですから、校長先生に「もっといいパソコンを導入したらどうですか」と言ったら、「いや、予算が」どうのこうのと言われるものですから、本当に目黒区議会議員にでも立候補して、もっと教育に金を使うように言ってあげようと思ったんですが、私はその当時、目黒区議会議員に立候補しようと思ったら、国家公務員をやめなければいけないわけです。国家公務員住宅に入っていましたから、区会議員になろうと思ったら住みかも離れなければいけない。結局、自分たちの意見を議会に反映させようと思ったら住民であることをやめなければいけないという矛盾が今の制度にはあるんです。
 私は、市町村の議会ぐらいはもっともっとサラリーマンも、先生だっていいし、郵便局の職員だっていいし、議会に普通の市民が気楽に出られるような仕組みにしなければいけないと思います。そうでないと、今の一番住民に身近な市町村が住民の声を的確に反映させるのは難しいだろうと思うんです。支えているサラリーマンがほとんど代表として出てこないというのは、ちょっといびつな感じがしてならないんです。ハードルが非常に高いです、我が国の選挙に出るのは。市町村の議会ぐらいはもっとハードルを低くして、仕事をしながら普通のサラリーマンをしながら議員になって、自分たちの日常的な要求を議会を通じて政策に反映させるという我が国の地方自治の実態にしないといけないなと最近思っています。本当にこれから市町村の役割はどんどん増えていきます。介護保険とか、今、市町村は苦労されていますけれども、これからも重要な仕事が地方分権で市町村にどんどん増えてきます。本当に住民の皆さんの意向とか考え方とかを的確に反映しながら市町村が重要な仕事をこなしていこうと思ったら、その市町村を支えている納税者の皆さん、サラリーマンの皆さんがもっともっと政策形成に登場しなければいけない。そういう地方自治制度の大幅な改革が必要だろうと私は思っております。ちょっと話がそれましたけれども。

金子 ありがとうございました。
 分権時代におきましては、増大する市町村の行政サービスのニーズを果たすためには、財政基盤をより一層強化することが必要であります。また、いかに税収を確保していくのかということが課題であります。そこで、各都県の税制検討委員会に招聘されておられます神野先生に、各都県の税制検討委員会の論議をご紹介していただきながら、地方公共団体の課税自主権という問題についてご発言いただきたいと思います。

神野 先ほど井上課長の方から中期答申についてのご説明がありましたが、私はちょっと中期答申にクレームをつけたい点は、国税について、これは会費論を取っているんです。税は会費であるという考え方は、地方税にしかありません。会費であるというからには、入退自由でないといけないんです。入会するか退出するかは自由でないと。国家は自由じゃない。だから累進税率で税金をかけられたりするわけですけれども、地方の場合には会費のようなもので、それはその地方から出ていったり、出入り自由なオープンシステムの政府だからです。だから、会費のようなものだというのは地方税にしか当てはまらないわけです。したがって、地方税では固定資産税のような動かない税源や、それから、私は会費なんだからできるだけ比例税率にして、先ほど知事もおっしゃったように個人所得税を国から地方に移譲しようと考えておりますので、そういう会費のような税源を移譲してもらう。政府が国税は会費だと言い始めたのは、累進税率などで税金がもう国税として課税が困難になってきたということを言っているのであれば、わざわざ国に一たん取っていただいて配っていただかなくて結構ですと。会費であれば、もう地方でちゃんと取れますのでということを言えば、ちゃんと税源の移譲はできるはずです。そして、税源が移譲されれば、その地方公共団体が自分たちの公共サービスに合わせて税負担を決めますのでむだがなくなるということになるわけですから、大きな政府でもない、小さな政府でもない適切な政府が実現するはずだと思います。したがって重要な点は、今、会費のように国税全体がなっていくのであれば、つまりフラット化していくのであれば、十分に国税から地方税に移譲できる。
 知事は先ほど、今移譲したら国の財政も破綻するので、この景気が非常に不況なときに大変なことになるのではないかというご心配でございますが、そういうご心配は多分しなくてもいいでしょう。なぜなら、大改革というのは大危機のときにやって、そしてその危機から脱出して新たなものができてくるんです。国税と地方税の税源の入れかえをやった経験は、1926年、大正15年の大改革がございますが、これも大不況のさなかで、金融恐慌のさなかでやります。それから、1940年、昭和15年の税制改革で、これは国税と地方税と全部入れかえるわけですけれども、この改革も戦争を始めようとする混乱の時期にやるわけです。そして、シャウプ勧告でやったときは一体どうだったのか。ドッジラインで日本経済がもうどうしようもなくなったときにやって、その後の高度成長につながっていくわけです。今こそやるべきであって、今こそ地方公共団体がきちんとした税源をもらって、そして人々が生活が安心できるサービスをきちんと出してあげるということをすれば、十分いけるのではないかということです。もちろん、課税自主権で、移譲された税源についてはそれぞれがきちんと必要に応じて税率を設定するということが重要ではないかと思うんです。
 市町村あるいは都道府県で今私などもいろいろ招かれて新しい税金をつくってはおりますが、シャウプ勧告はこれはだめだと言っているんです。シャウプ勧告を読んでみますと、例えば北海道町村会の報告によれば、77種類の法定外税ができている。こんなことをやっていたのではもう無理だと。だから、固定資産税みたいなものをきちんと地方に与えて、地方の財政の基盤を確立しなさいと教えたわけですから、あまり細かな税金をつくって財政基盤を確立しようとしても無理だと私は思っています。それではなぜやるのかと言えば、税源移譲が進まないので、財政基盤を確立するのではなくて、税金をかけることによってどうにか、公共サービスではなくて税金でもって人々のサービスを提供するような工夫がないかということでやっているということです。
 隣の隣にいます井上課長が撮ってきた写真で見ると、これはスウェーデンの自動回収機ですが、スウェーデンではデポジットの税金をかけておいて、びんとか缶とかペットボトルとかというのをここに返していくと、税金が戻ってくるんです。今EUはEU指令で自動車の使い捨て税を指令していますので、自動車に重い税金をかけておいて、そしてその車をちゃんと市町村や道府県の指定したところに持ってきて廃車処理をすれば、そこにかかっている税金プラスアルファ運び賃も返してくれるといったことをするということだと思うんです。これは税収を目的にしません、運び賃をプラスアルファしているんですから。しかし、町はきれいになるということをやっていく。こういう施設をつくると、1億総国民が廃品回収業に走ります。とにかく拾ったものを持っていってどんどん返していけば全部きれいになるわけですから。そういう工夫を組み込んで、環境的な問題を組み込んで解決するということしかないんです。だから、財政基盤はちょっと無理だと考えながら工夫をしているところであります。

金子 ありがとうございました。
 続いて、齋藤部長から、増大する市町村負担を支える安定した財源の必要性ということについてご発言をいただきたいと思います。

齋藤 ことしの4月、東京都におきましても清掃事業等が特別区の方に行ったわけでございます。私も10年ほど前に清掃事業をやっておりまして、これがいかに予算的に大変な事業であるかということは思い知らされたわけでございます。当時は清掃事業が区に行くなどということは清掃局の人間は一人も考えておりませんで、一体的にやらなければ絶対に成り立たない事業であると考えていたわけでございますが、10年をたたずして移管がスムーズに行われたわけでございます。
 例えば清掃工場でございますが、今はどうかちょっとわかりませんが、当時、清掃工場建設に1トンにつき大体1億かかりました。ですから、1つの清掃工場が300トンから600トンぐらいになるわけでございますので、300億から600億かかります。これは毎年メンテナンスはかかりますし、一度建ててしまえばそれで済むというわけではございませんで、何年に1回かは焼却炉を交換しなければなりません。その都度何百億かはかかるわけでございます。極めてそうした財源、負担が市町村にかかっていくわけでございます。一例でございます。
 我が国の税制を貫く原則といたしまして、国税は応能、地方税は応益がふさわしいということになっております。その代表例といたしまして、国税におきましては所得税、法人税、都道府県税におきましては事業税、市町村税については固定資産税がそれぞれふさわしいとされてまいりました。
 しかしながら、事業税につきましては、原則といたしまして所得を課税標準としておりますために、特に法人におきましては事業活動の規模が大きいにもかかわらず、欠損によって税を負担していないといった法人が極めて多うございまして、全法人の7割近くにもなっております。こうした法人事業税につきましては、応益課税として税の性格の明確化を図る観点からも、外形標準課税の導入が必要と考えております。
 また、固定資産税につきましても、応益原則に基づきました自主性、自立性に富んだ安定性にも優れた独自財源でございますけれども、いかんせん、その制度の難解さ、わけてもその評価基準の複雑さについては、皆様ご承知のとおりでございます。今、神野先生が言われましたように、私も今各市町村、自治体が施行している雑税的な動向というものは必ずしも財源を安定したものにするものではなかろうと思っております。やはり基幹税目を何とかしなければならんと考えているところでございます。そういう中で、こういった税目につきまして、先ほど基調講演でございましたように、もっと簡素でわかりやすいものが必要ではなかろうかと。
 固定資産税についてでございますが、地方分権の要請に基づきまして、こうした増大する負担を支えるために、市町村の裁量の範囲を大幅に増やしまして、市町村それぞれの事情に応じまして独自に決定できる領域を増やす必要があるということにつきましては、私も知事のご意見に賛成でございます。それが地方自治の原点であります行政サービスとそれに必要な負担のあり方を住民自らが決めることにも結びつくと私は考えております。以上でございます。

金子 ありがとうございました。
 今までのご議論で、シャウプ勧告の意義と固定資産税の歴史、固定資産税を取り巻く最近の状況、それから地方分権と固定資産税という3つの項目、つまり過去、現在、未来とご発言をいただいてまいりましたが、最後に、今までの議論を踏まえまして、分権時代における固定資産税の姿としてどのような制度が望ましいか、パネリストの各先生から所見を述べていただきたいと思います。恐れ入りますが、時間の関係がございますので、お1人5分以内ということでお願いいたします。まず神野先生から、どうぞお願いいたします。

4.目指すべき固定資産税のイメージ
神野 
私たちは今市場社会に生きているわけですが、市場社会というのは、生産物市場、人間がつくったものを取引する市場が存在している社会ということを意味しているわけではありません。それはずっと昔からあるわけです。市場社会というのは一体何かというと、私たち人間がつくったものではない自然、これを市場で取引すること、それから私たち人間がつくったものではないんだけれども、私たち人間と、人間そのものの行為である労働、これを市場で取引する、そういう社会です。そうすると、2つのシャドーが出てきます。シャドーと言うのは変ですが、例えば自然を取引してしまいます。土地というところに所有権をくっつけて、神がひとしく与えたもうた土地を市場に乗っけて売り買いしてしまうわけです。自然に所有権を設定して、そして自然を取引しますと何が起こるかというと、私たちはそういうことで自然に所有権を取りつけて自然に働きかけて、自然から人間の生存に必要なグッズ、有用なもの、いいものを取り出しますが、片一方でバッズ、人間の生活を破壊してしまったり、あるいは人間の生活を保障してくれる自然の再生力、生まれ変わる力を破壊してしまうものが出てくるわけですが、これは市場に乗らないわけです。シャドー、陰に隠れてしまって、どんどんグッズだけが市場に乗ってくる。そうすると、今問題になっている環境、私たちのアメニティー、生活環境を守らなくてはいけないというのに大きな課題とは何かというと、実は自然というものを取引してしまった。それは表舞台に乗らない裏舞台があって、その裏舞台が実は市場で取引されないんだと。市場で取引されないものを処理する任務、これは公共部門の任務、政府の任務ですから、そこは何らかの形で負担をつくってやって課税していかなければならない。
 私は、固定資産税の今後の役割というのは、今申し上げたような意味での私たちの生活環境、生活のアメニティー、人間にとって快適なアメニティーを充足するようなまちづくり、こういった財源として使われる。目的財源ということではありません、繰り返すようですけれども。利益というのは一般補償、税金は一般補償ですから、そういう使い方の税金として一つの大きな主要な柱になっていくだろうと思います。
 これも井上課長と行ったときに送ってもらった写真なんですが、もう既にフランスのストラスブールでは、まちづくりは、自動車を入れないで、LRTという電子制御で動くトラムだけが動き、あとは自転車と。日本でも最近走っていますね。BMWがこの間までは27万円だったんですが、今度は56万円ぐらいの自転車になっていますし、ポルシェが90万円ぐらいの自転車を出した。これも日本だとどんどん盗まれてしまうという話ですが、その自転車と歩く人しかありません。そして、LRTというのは芝生の上を走りますので、もう道は芝生でいいんです。芝生敷きのまちづくり。こういう新たなまちづくりは、先ほど言った自動回収機を初めとして、新たな人間の生活する空間、この財源がどうしても必要になってくる。そういう財源として、固定資産税というのが重要な財源になってくるんじゃないかということです。
 それからもう一つは、人間の労働そのものを私たちは市場で取引しました。そうすると、有償労働と無償労働、つまり家族の中で必要に応じていろいろな子供の世話をしたり、お年寄りのお世話をしたりする無償労働というのが、つまり市場のシャドーでやっぱり必要だったんです。これがないと人間の生活というのはできないんです。ところが、このシャドーをしている労働、私たちはこれを大体女性に押しつけてきたわけですが、情報や知識が進んで知識産業になってくると、女性も有償労働に入ってくると、無償労働をやる人々が少なくなってくる。シャドーを処理するのは必ず地方公共団体と政府の役割ですから、市町村の役割として重要なのは、お年寄りの養老、それから子供たちの育児、家族内のシャドー、つまりシャドーワーク、無償労働でやっていたこと、市場の下でやっていたことをサービスとして提供してあげることです。こういうサービスの財源というのは恐らく、シャドーワークの財源ですから、有償で労働している人々がそのシャドーをやるべきですから、住民税として負担すべきだろう。
 今言った2つの考え方からいうと、固定資産税と、そして住民税を機軸にしながら、これからの市町村というのは私たちの快適な生活空間、そして快適な生活そのものを支えるサービスを提供していくということが、今後の分権型社会に重要なのではないかと思っております

金子 ありがとうございました。
 それでは次に、片山知事、お願いいたします。

片山 私は基調講演のときにも申し上げましたが、とにかく、固定資産税に限りません、これは税制について、できるだけわかりやすく、納税者が容易に理解できる、そういう税制にすべきだと思います。特に固定資産税というのは、原則で言いますと、評価をしてそれに税率をかければ税額が出てくるというのが一番基本でありますから、このシンプルな基本にできる限り近づけること、これが固定資産税の一番の課題だろうと思います。その際に、齋藤さんもさっきおっしゃられましたが、評価基準が本当にわかりにくくなっているし、本当にあの評価基準どおりにやろうと思ったら、ものすごくコストがかかるし、そこまでやる必要が本当にあるのかと思います。もっともっとシンプルでいいと思いますし、細部にわたっては地方団体のそれぞれのやり方というか、流儀というか、そういうものにゆだねる部分があってもいいと思います。
 それから、評価も今は市町村それぞれ単独でやることを基本にしていますが、もっと広域的にやられたらいいと思います。鳥取県でも、3分の1の市町村は今広域的に評価をしようかという検討もしております、実現できるかどうかわかりませんが。私はもっと言えば、県が評価をして、それに市町村が市町村で決める税率をかけていくというやり方もあり得るのではないかという気もしています。これはいろいろ検討の余地があるでしょうが。
 それから、税負担は税率で決める、これが一番わかりやすいやり方です。その税率は市町村の財政需要と連動しながら決めていくというのが、これからの地方分権時代のあり方だろうと思います。一定の範囲内の中で、仕事が増えれば税率が上がる、仕事が減れば税率は下がるという関連性というものがこれから必要だろうと思います。
 税制が非常にわかりやすくて納税者に信頼されるものになっても、行政自体が信頼されなければこれは意味がないわけで、税制は非常にすばらしいけれども、行政がだめだという話になったら困るわけで、これからの地方行政というのは、行政自体が納税者、住民の皆さんから信頼される、むだのない、効率的で、そして住民の皆さんのニーズに的確にこたえる、そういう行政でなければならない。これは、今私が実践していて、常に忘れてはならないことだと思っております。納税者の皆さんが行政を信頼し、喜んで固定資産税を払う、そういうことが理想的な固定資産税だろうと思っております。

金子 ありがとうございました。
 それでは、井上課長、次にお願いいたします。

井上 役人の立場といたしましては、先ほど申し上げました中期答申の答申を踏まえて鋭意検討していきますと言うしかないわけでありますけれども、これまでの議論でおわかりのように、固定資産税のこれからの方向としては、片山知事が何回も言っておられますように、まずわかりやすい税制をどう築くか。それから、負担水準の均衡化をどう図っていくか、すなわち公平な税制をどう築くか。それから、地方分権の制度にいかにするかということであるわけであります。我々としてはその3つを満たすいい制度はないのかというのが大きな課題であるわけでありまして、なかなかすぱっと割り切れるような制度が短期間でできるかどうかということでありますけれども、大いに検討していきたいと思っています。酒を飲みながらいろいろ雑談しながら言うのは、平成18年度に先ほどの起債制限の緩和がされますので、そこで分権的な税制を築いていくとなれば、15年の税制改正で例えば負担水準の均衡化をさらに進めて、18年でそれを一段と進めながら、分権的な、そしてわかりやすい税制に持っていくという方法があるのかなと酒を飲みながら言いますけれども、それがどういうことになるのか。先ほど知事が霞ヶ関だけで考える税制にいい税制はないということでありますので、市町村の皆さん方のお考えもよく聞きながら検討していきたいと思っております。
 それから、家屋の話は一切しておりませんで、家屋の担当の方もおられると思いますけれども、現在の再建築価格方式で部分別評価と比準評価がありますけれども、これも大変納税者にとってなぜ家屋がこの評価になるのかというのがなかなかわからないという問題がありますし、家屋の担当者の方々も、今は平均3年ぐらいだと言われておりますけれども、その3年間の中できちんと家屋の再建築価格部分別評価の仕方を習得するというのはなかなか困難ではないかという議論があります。また、今ある建物を今その場所で建てればどれだけのお金になるかということになるわけでありますけれども、建築工法はどんどんかわっておりますし、建築資材も極めて多様化しておりますので、例えば30年前に建てた建物を現在建てれば幾らかということがきちんと本当に把握できるのかという問題もあるわけでございまして我々としては、基本的には再建築価格方式を維持しつつ、もっと納税者にとってわかりやすい簡素なやり方というのがあるのかないのか、ここは大いに検討、研究していきたいと思っているわけでありまして、その点につきましても実際実務でご苦労されている方々のご意見をこれから大いに聞かせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

金子 ありがとうございました。
 それでは最後に齋藤部長、よろしくどうぞお願いします。

齋藤 せっかくの機会でございますので、私は自治体の立場での提案ということで言わせていただきたいと思います。
 目指すべき固定資産税のイメージということですが、それはとりもなおさず今後の地方自治の動向がどうかということでございますが、この春の一括法の施行に伴って、名実ともに地方分権の推進ということでございます。であるならば、固定資産税が市町村の基幹税として強化されなければならないのはもう十分ご理解いただけたことだろうと思っております。そういう意味から何点か私なりに、これは私見でございますが、考えさせていただきました。
 まず、固定資産税の標準税率でございます。これにつきましては、先ほどもいろいろございました。これを下回った場合に、要するに地方債の発行機能が失われるというようなことがございます。私は、標準税率については課税自主権を強めるという意味からも廃止したらいかがなものかと。また、国による政策特例措置につきましても、大幅な縮減が必要ではなかろうか。市町村税でございますので、その市町村にとっての政策的にどうかということが問われればいいのではないだろうかと私は思います。すべてなくせということではございませんが、もっと縮小していいのではないだろうかと考えております。
 それから、評価基準でございます。これは先ほど来複雑ということでございます。私も15年ぶりに固定資産税をやったわけでございますが、実は私の15年前の感覚では今の評価制度が全く理解できませんで、そのころの常識が今はほとんど非常識になっております。評価方法を、先ほどちょっと私も明治にさかのぼって自治制度の中で固定資産税を申し上げたのは、いろいろ見てきますと、明治5年の地租の当初を言うわけではございませんが、昭和25年の固定資産税制の中で、最初はまず地租の賃貸価格をもとに価格を決定しておりました。そして、昭和39年には精通者価格をもとにした路線価方式がとられました。次に、平成6年でございますか、公示価格でございますとか、不動産鑑定士の先生によります状況類似地区といったものの方式に変わってきております。そういうふうに見てきますと、適正な時価の求め方というのは、はっきり言って何でもありじゃないのかと。そういう観点からすれば、その市町村に合った評価の仕方ということもひとつ考えてみてもいいんじゃないだろうか。私は、何もすべて東京のような都会も、それから農村地帯も、全く同じ現在の評価方法に統一するほどのことはないんじゃないか。これは先ほど知事もちょこっとおっしゃっていたようにも思うんですが、そういうふうにも私は個人的には思っております。
 それから、負担調整措置でございますが、これはもっと自治体の特性を反映したものにしたらいいんじゃないか。例えば現在、東京都区部でございますが、土地の負担の状況を見ますと、商業地等の非住宅用地が78%、住宅地が残りの22%となっております。これを納税義務者数の割合で見ますと、逆に商業地が17%、住宅地が83%となっております。簡単に言えば、全体の2割の商業地の所有者が8割の税負担をしているということになります。これを平米単位で比較いたしますと、課税標準額ベースで住宅地が約4万円、商業地で約32万円と、8倍の格差が生じています。本年度の負担水準の引き下げによりまして格差は約7.6倍と若干縮まりましたけれども、全国平均が4.5倍でございますので、これと比較しますとかなりの格差がございます。また、平成12年度の商業地等の宅地に係る都道府県別の負担水準の状況を見ますと、東京都や大阪府、また北海道につきましては60%を超えております。その反面、まだ30%台やそれにも満たない県もございます。全国平均で54.6%となっております。こうした格差がある中で全国一律の負担調整措置を設けるということは、逆に言えば極めて高い税額のアップにつながったり、思い切った引き下げをしなければならないことになりますので、全国一律という考え方が本来いいのかどうかということもここで考えなければならないのではないかと考えております。
 そういったことで、今後、先ほど来申し上げていますように、各自治体の行政サービスとそれに必要な負担のあり方を住民自らが決められるような固定資産税制というものの実現が、今後の固定資産税のイメージとして言えるのではないだろうかと私は思っております。以上です。

金子 どうもありがとうございました。
 各方面のパネリストからいろいろな示唆に富んだご発言をいただいてまいりましたけれども、会場内からのご質問、ご意見等がございましたら、お寄せいただきたいと思います。時間の関係がございますので、20分以内ということにさせていただきます。それから、お1人1回ということにさせていただきたいと思います。それから、発言される前に、所属とお名前と、どなたに対して質問をするのかということをあわせて述べていただきたいと思います。それでは、ご質問のある方は手をお挙げください。

質疑応答
質問 
固定資産税をお手伝いして18年になるんですが、100点満点の評価を求めようと思って悪戦苦闘していますけれども、いまだに答えが出ておりません。それで、井上課長の方にちょっとお伺いしたいんです。
 先ほど片山知事もおっしゃっていましたように、固定資産評価の精度を上げれば、プロ的な対応をしなければならない。そうしますと、今のように生保の係とか道路の管理をやっていましたという人が辞令一枚で税務課に来て評価替えをやろうといっても無理なんですね。用語はわからん。図面も読めない。下手をすれば大体2、3年です。長くて6年。8年もいると能力がないと言われていますから、ほとんど素人同然ですよね。しかも、私は北海道から来ましたけれども、人口1,500人とか2,000人ですと、土地からの税収が2,000〜3,000万円しかございません。そこで鑑定評価だ、現況調査だといって500万、1,000万という金をかけていますと、土地からの税収の大半を徴税コストに振り向けてしまうということになって、考えてみたら土地から税金を取らない方がもっと安くなるんじゃないか、納税者のためになっちゃうという実態があるわけです。
 これを今のような状況でいきますと、課税と評価を分けたらどうか。しかも、町村単独でやっている時期ではもうないだろう。プロ化していかないと、もう納税者にもいわゆるアカウンタビリティー責任は対応できない。したがって、やっぱり課税と評価を分けて広域的に評価の専門家集団をつくっていくという仕組みにしない限り、さっき言った負担水準の均衡化といったって、評価がちゃんとできているということが前提条件でございますから、結局評価をきちんとやるためには、膨大なコストと人材の養成、仕組みを根本的に変えていかないと無理だと思うんです。
 私の経験から言ったって、先ほど言いましたように、負担調整措置がかかっていますから、課税標準が隣同士、向かい同士で倍とか半分なんていうのはざらにあるわけです。こんなのを全部さらけ出したら、評価は一緒だけど税額は2倍も違うなどというのはたくさんあるわけですから、こんなものをいつまでも放置しておいていいのかというのが私の実感なんです。相談されても、私は処方せんを書けないと言っているんです。同じエリアの中で課税標準が倍違うとか半分になっているというのはざらにあるわけですね。おまけに山林、農地、原野に至っては、北海道なんて1円50銭とか2円ですよ、山なんて。公示価格水準は20円、30円で、10分の1、50分の1などというのがざらにあるわけです。では、宅地の均衡化はいいけれども、山林、農地、原野はどうするか。もうめちゃくちゃな状態になっているわけです。これは今の制度を何ぼいじってもどうにもならない。しかも最近の訴訟を見ますと、極めて細かい。つまり、訴える方も、訴えられる方も、全部鑑定士が対応している。鑑定レベルでものを言っていったら、税制的に全部破綻してしまうわけです。コスト的に耐えられないわけです。だから、どこかで線を切らないともうやっていけないんじゃないかと個人的には思っていますので、抜本的にもう一度広域的な評価も含めて自治省としてどうお考えか、お聞きしたいと思います。

金子 それでは、井上課長、お願いいたします。

井上 私に対するご質問でございますので、お答えさせていただきたいと思います。今のお話のような状況があるということについて、我々としてもよく考えていかなければならないと思っております。いずれにいたしましても、7割評価を入れる前はそれぞれの土地の評価の仕方がさまざまあって、地価公示との差といいますか乖離があまりにも激しい。それをきちんと客観的公平にしようというのが7割評価の位置づけであったわけです。やはり同じような土地は同じような値段がつくというのが課税の公平からして極めて重要であると思っておりますから、平成6年度に7割評価をした段階で、標準地40万地点に置いてはきちんと鑑定評価をして、適正に客観的公平にやっていこうというのが現在の趣旨であるわけであります。
 ただ、では今のお話のように、そういうことがきちんと市町村の現場の中でできているのか、できていないのか。そこは我々としてもよく検証していかなければいけませんし、もしきちんとできていないという事態があるとするならば、それはきちんと是正していただいて、あるべき姿に持っていっていただくと言わざるを得ないのではないかと思っています。
 その際に、今おっしゃったように、個別の市町村だけで対応できるのか、もっと広域的な対応をどうするか、それから評価に対する専門集団をどう育成するか。シャウプ勧告においても固定資産税については評価の専門家を育てるようにということが書かれているわけでございますので、そうした観点に立って、現在はどうあるべきかというのは我々としても十分に考えていかなければならないと思っています。いずれ、鑑定というのを、土地の評価というのを、先ほど知事のお話もありましたけれども、個別市町村だけでやるのがいいのか、広域なのか、場合によったら県なのかという議論もあって、これが地方分権との関係で一体どういう関連になるのか。課税の税率は地方がきちんと自主的にやっていく。ただ、評価についてはきちんとある程度全国的に統一がとれた、少なくとも同一県の中であればきちんと統一の目で見てやれるようなシステムがあってもいいのではないかなと私も個人的に考えています。イギリスは、もう完全に評価は国がやっています。アメリカは、州がやったり市町村がやったりしておりますけれども、仮に市町村がやっても州がかなりチェックするという仕組みになっておりますので、分権であれば必ずしも全部市町村が自由に評価をして、何でも評価をすればいいというわけではないというのが世界の例でありますので、今おっしゃったようなご指摘は我々としても十分よく考えていきたいと思っております。また、市町村の方々のご意見もよく考えていきたいと思っております。来年からすぐというわけにはいかんと思いますけれども、今後の問題として、よく考えさせていただきます。

金子 ご質問された方、それから井上課長、ありがとうございました。ほかに、どうぞ。

質問 片山知事にご質問ですが、今回、地価公示の方では、道路の接面方位によって価格を地価公示ベースでは出すことになっていまして、これについてどんな問題が起こるかなと思いますと、地価公示の方の標準地がすべて標準宅地の方に影響してくる。標準宅地をやると、今度は各方位を画一の評価をやらなければならないというようなことに陥るのではなかろうかと。そうだとすると、私らの考えでは、地価公示ベースで7掛け方式をやっているんだから、地方においてはそういったものを導入しなくてもいいのではないかと私は考えるんですけれども、費用対効果の関係でいつもどういう道路が、画地がどっちの方向に向いているかなどということを果たして調べる必要があるのだろうか。あるいは、東京で言えば南側に接道しているものは10%ぐらい違うと思いますけれども、地方においては300坪とか200坪の土地で道路はどっちにつこうと建物は南向きというような地域もありまして、こういうことはどうなのかなと思いますけれども、そういうことは地方分権、あるいは評価上の問題なんだから、公共団体独自に定めればよろしいということになるんでしょうかどうかというあたりです。

金子 ありがとうございました。それでは片山知事お願いします。

片山 私が答えるのも変なんですが、感想を申し上げますと、私は地域の実情に応じて簡素化するところは簡素化されたらいいと思います。先ほどの北海道の方も言われてましたけれども、やっぱり徴税費用最小の原則というのは、これは税制の基本にもありまして、あまり細かく細かくやって、そのコストの方が増大するというのは、やっぱりおかしいんですね。東京都なんかの実情と、やっぱり地方地方は違うと思うんです。ですから、納税者の皆さんの関心も非常に細かいところに精緻を極めるような納税者が多いところと、そうではなくてもうちょっと大ざっぱなおおらかな納税者が多いところというのはおのずから違ってきますし、私はそれぞれの地域の実情によってその精度というのは変えたらいいと思います。ですから、せっかく地価公示というものを一つのよりどころにしようということを平成6年に決めたわけですから、その地価公示から持ってくるときの持ってき方についてもいろいろなやり方があっていいと思うんです。地価公示だけでは足りないからもっともっとやりたいというところはやってもいいでしょうし、地価公示を基本的に信頼してずっと地価公示から敷衍していくということを採用したいところはそれでもいいと思いますし、いろいろだと思います。
 ただ一つ気になりますのは、当時も気になっていたんですが、地価公示に対して不服申し立てだとか異議を申し出る制度がないでしょう。たしか今でもないと思います。そうしますと、地価公示によりかかったときに、納税者から不満が出たらどうやって解決するのかというのが一つあるんです。私が固定資産税課長をやっていましたときに、国土庁に、地価公示をもっと基礎資料から公開して、そして地価公示に対して疑問がある場合には、地価公示の制度の中で不服申し立て制度をつくるべきではないかと。従来は地価公示というのは公共工事の土地の買い上げからスタートしたものですから、あまり不服申し立て制度はなかったんですけれども、今のように相続税だとか固定資産税と連動する場合には、納税者の権利義務といいますか、納税者の利害に随分関係していますから、地価公示自体に不服申立て制度をつくったらどうかと提案したんですが、まず聞く耳を持たなかったので、そうだとすれば、地価公示によりかかる以上は固定資産税の制度の中で地価公示自体の検証を行うという仕組みがビルトインされる必要があるんだろうなと思います。そういうことを前提にすれば、地価公示をどれだけ信頼してそれに寄りかかるかというのは、それぞれ地域の実情に応じていいと私は思います。ただ、今は別の立場ですから、個人的な感想になりますが。

金子 どうもありがとうございました。
 それでは、ほかにございますか。どうぞ。

質問 自治省の井上固定資産税課長にご質問があります。一応、平成6年の税制改革によって、公示の7割、負担調整措置というのが生まれたと思うんですけれとも、これに対して現在どのように考えていらっしゃるか。と申しますのは、先ほど話をいろいろお聞きしましたら、バブルは、金融機関の資金がだぶついて、それによって土地投機に走ったと。その土地投機に入ったということは、保有税といいますか、それに問題があったのではないかということで、それを抑えるために要するに税制改革があったというふうに承ったんです。
 今ご承知のように非常に不景気でございまして、よりよい公共サービスをということで市町村の方も頑張っていらっしゃると思うんです。市町村にいろいろ寄せられる苦言というのがやはり商売をやっていらっしゃる方とか、市町村の方もいろいろ対応に苦慮されていると思うんですけれども、我々鑑定士に対しても、過疎化のあるような地域では特に苦しい時期なので、市町村の方からもちょっと下げてもらえないかというご要望もございます。そういうふうにバブルを抑えるために7割ということで調整措置も生まれて、そういう施策はとられたと思うんですけれども、アメリカとかいうのは意外と経済状況によって機敏な対応が行われるんですけれども、率直な意見なんですけれども、その辺がどのように。先ほど知事様とか東京都の資産税部長様の方のお話では、各市町村の実情に応じて、標準税率もちょっと問題があるというご意見でございまして、なるほどなとは感じたんですが、国の方のそういう10年の負担調整措置とか、いろいろなあれがありましたですけれども、それに対してどのようなお考えをなされているのか。その辺をちょっと、率直な意見で大変申しわけございませんが、お伺いしたいと思いますが。

金子 どうもありがとうございました。それでは、井上さん。

井上 まず7割評価でございますけれども、先ほどの政府税調の答申のところでご紹介しませんでしたけれども、基本的に維持すべきであるというスタンスに立っておりまして、私どもとしてもそう考えております。やはり、これまで地価高騰等があったときにきちんと評価を上げてこなかったということが、評価の仕方がかなりばらついている、そして地価公示との乖離が極めて大きくなっているといったことを踏まえて、地価公示の7割ということで客観的公平に評価をしようということが定められたわけでありますので、それは今後とも堅持すべきであろうと考えております。
 ただ、先ほど申されたのは、負担が大きくなるから評価を下げてほしいという声があるということでありますけれども、評価は評価としてきちんとやり、負担をどうするかというのは、負担水準といいますか、負担調整をどうしていくか。また、より分権的な時代になれば、その税率をどうしていくか、そちらの方で基本的に決定すべき問題ではないのかなと思っております。基本的に、評価はできる限り客観的公平に、そして全国一律同じような土地であれば同じように評価をするということがやはり大事ではないか。そして、市町村の裁量の範囲、自主性、地域の実情に応じて税収をどうするかという税の税率の問題は、これからよく考えていかなければならないということではないのかなと思っております。
 以上でございます。よろしいでしょうか。

金子 ありがとうございました。
それでは、ほかにございますか。特になければ、パネルディスカッションの最後に私が取りまとめをする予定になっておりまして、時間がもうほとんどございませんけれども、ほんの数分間をいただいて取りまとめを行いたいと思います。それで、私の取りまとめは、パネリストの皆さんのご意見が食い違っていた点もありますので、多数意見と思われるところに従って、私の意見も交えながら、ちょっと簡単にまとめてみたいと思います。

地方分権時代に適応する固定資産税制構築に向けて−とりまとめ−
 固定資産税は、市町村にとって大変に大きな財源である。しかも、安定性に富んでいる。つまり、大きな安定財源である。それから、偏在性が比較的少ないということ。それから、地方独自の財源であるという幾つかの優れた特色を持っております。そういう意味で、固定資産税は地方税の中の優等生のような存在であると言ってよろしいと思います。地方分権の推進とともに市町村がなすべき仕事というのは今後ますます増えていきますので、そういう意味では固定資産税を今後とも大切に育てていく必要があるのではないかと考えます。
 そのためには固定資産税に対する納税者の信頼を確保する必要がある。これは片山知事が基調講演で力説しておられたところですけれども、信頼の確保ということが大変必要であります。納税者の信頼を確保するためには何が必要かと申しますと、第一には公平が必要である、これが一番重要なことではないかと思います。幸いに、平成9年に片山知事が課長のころに負担水準という概念が政府として導入されたわけですが、これは長期的に見て、ストラテジーと言うと変ですけれども、固定資産税の制度を改革していく上で非常に有効で機能的な概念なのではないかと私自身は考えております。そして、導入時には商業地等について上限80%、下限60%、その20%の中に課税標準を収斂させていくという方針がとられて、そしてことしの改正で、上限はことしと来年については75%、再来年については70%ということで、60から70%に収斂させていくという方針が採用されたわけです。なるべく早く大部分の土地についてそういう収斂が終わることを期待したい。そうすると、課税標準がそのようにして均衡化しますと、負担の公平も実現できるということになるわけです。そして、60〜70%に収斂されたら、次は例えば65〜70%に収斂させるとか、そのようにして幅5%の程度であれば誤差の範囲内とも言えるわけですから、それによってほぼ公平な課税が実現できるのではないかという感じがいたします。
 それからもう一つは、これも既に述べられたことですけれども、透明性の確保ということが、固定資産税に対する納税者の信頼を確保するためには大変必要なことであると思います。そして、縦覧の問題について先ほど出てまいりましたけれども、縦覧というのは、だれでもだれの分でも見られるというのが本来の縦覧という法令用語の意味するところでありますが、運用上は閲覧と同義に解されている。そして、最高裁判所の判例も、プライバシーを理由としてそういう解釈を公認したものですから、結局は制度を変えなければ縦覧はできないということになりますが、なるべく早く制度の改正がその点についても行われるということを期待したいと思います。
 それから、今年度の改正で手続と、それから固定資産評価審査委員会の救済手続というのはかなり改善されましたけれども、今後とも必要に応じて改善を図っていく必要があるのではないかと思います。
 法定外目的税については、大した税収は期待できないのではないかということも出ましたけれども、これは私の意見になってしまいますが、租税をめぐる議会の審議の活性化のためには非常にいいのではないか。恐らく議会がそれによってフォーラムになっていくであろう。そして住民もみんな関心を持つであろう。そうなれば大変にいいことである。
 先ほど申しました固定資産税についての課税標準がほぼ収斂すれば、あとは税率をどう決めるかということは、標準税率は地方税法で決めるといたしまして、それぞれの市町村で必要に応じて決めていく。行政サービスはもう少し少なくていいから、固定資産税を低くしてほしいとか、あるいは固定資産税はもっと高くてもいいから、行政の水準をもっと上げてほしいとか、そういう議論が自由闊達に行われるという時代がやってくる。そして、それが議会で活発に議論が行われて、住民もみんなそれについて関心を持つという時代が来れば、我が国における地方自治というものも本物に近づいたと言えるのではないかという感想を持ちながら、きょうの皆様のご意見を伺っておりました。
 非常に簡単な不行き届きな取りまとめかと存じますけれども、一応そういうふうに取りまとめさせていただきたいと思います。
 それでは、きょうはパネリストの皆様には大変活発なご意見をいただきまして、ありがとうございました。それから、ご出席の皆様にもご清聴いただき、またいろいろな質問をしていただきまして、ありがとうございました。
 それでは、きょうのパネルディスカッションはこれをもって終わりたいと思います。