講演
「地方税をめぐる当面の諸問題」
はじめに
皆さん、おはようございます。ご紹介いただきました総務省自治税務局長の河野でございます。早朝からご苦労さまでございます。
今日は45分時間をいただいていますので、若干駆け足になるかと思いますけれども、当面する地方税の諸問題につきまして、お話をさせていただきたいと思っております。お手元に三十数ページぐらいの資料をお配りしてあるかと思いますので、資料を参照いただきながら、お話をお聞きいただきたいと思っております。
昨日、福田新総理の所信表明がございまして、その中でも税体系の抜本的改革の問題が取り上げられております。まだ税調の議論は本格化しておりませんけれども、年末に向けて、抜本改革にどういうふうに取り組んでいくのか、いずれまた与党の税調でも協議が始まると思いますし、その中で地方税制の課題はいろいろございます。そういったことを中心にお話をさせていただきたいと思っております。
1.地方税収の動向
資料1、2(P.12)を概観いただきますと、資料1は地方税収全体の動きを書いてございます。バブル経済が崩壊して、地方税は低迷といいますか、減ったり、やや上向きながらまた減ったりということを繰り返しておりまして、最近まで、平成9年度は地方消費税が導入された年でありますけれども、ここが税収のピークでありまして、これをずっと超えないできていたんですけれども、平成15年度を底に、国も地方も税収が回復基調になってまいっておりまして、平成18年度の見込みでやっと9年度のピークを上回るというところまできております。
それから、19年度におきましては、三位一体の改革の成果として、3兆円の税源移譲が実施されておりまして、これも含めて、一方では法人二税が相当回復しているということで、地方財政計画ベースの数字でありますけれども、初めて40兆円の大台を超えるというところまで来ております。一時、地方自治が3割自治といったことを言われておりましたけれども、地方財政計画というベースで見ますと、歳入の構成比が、地方税が49%、半分近くまで来ておりまして、かなり地方税の充実というのが進んできているということであろうと思っております。
資料2は地方税の構成をグラフにしてございますけれども、ご覧いただけますように、3兆円の税源移譲も含めて、個人住民税が3割強のウエートになっております。それから法人二税が2割強、1つ飛んで固定資産税が2割強。
一方で、地方消費税は、まだ6.5%程度ということになっておりまして、都道府県、市町村別に見ますと、都道府県では非常に法人二税のウエートが高い、これが後で申し上げます税の偏在の問題でありますとか、あるいは税収の不安定性、こういったことにつながっているわけであります。
一方、市町村は個人住民税と固定資産税を中心に、比較的安定した税体系になっているわけでありますけれども、いずれにしても地方税制全体といたしましては、1つには税収の安定性の観点、それから、全国あまねく税収を確保できる普遍性といいますか、偏在しない税体系をつくっていく、そういう観点から、私どもの今後の課題としては、この地方消費税というのを充実しながら、そういう税体系をつくっていくということが基本方向になっていくものであろうと思っております。
その中で、地方税制の大きな課題は、地方税源を充実していく、そして、その中で税収が偏在しない、できるだけ安定した税収が確保できる、そういう税体系をつくっていくということでありますけれども、これをどういうプロセスで実現していくかということであります。1つには、今年の秋以降、本格的な議論を行って、税体系の抜本的改革を行っていくということになっているわけでありまして、その中での議論。それから、もう一つは、現在、地方分権改革の議論が進んでおりますけれども、その中で地方税の見直しをしていく、こういった2つのプロセスで、今申し上げたような望ましい地方税体系をつくっていくということを考えているわけであります。
資料3(P.13)をご覧いただきたいと思います。これは、国・地方の税源配分というものを資料にしたものでありますけれども、ちょっと数字が古くなっておりますが、17年度の決算ベースで、国・地方を合わせた租税総額が90兆円弱あります。これに対しまして、国民へのサービス還元は、国債、あるいは地方債、赤字国債や、それに相当する臨時財政対策債、こういうものを含めて、ほかの財源も使って、150兆円ほど還元しているわけであります。1つには、こういうサービスの総量と国民の税負担は相当、乖離があるわけでありますので、国・地方を通じて、税負担の増加というものを将来的には検討していくということは避けられないわけでありますけれども、その中で国と地方の税の配分を、上にございますように国税が6割、地方税が4割、こういった割合で税を取っているというのが現在の姿であります。
一方、この歳出をどういうふうに分担しているかと、国から地方に地方交付税でありますとか、国庫支出金でありますとか、そういう財源が移転されて、最終的に使っている歳出でいきますと、国が4に対して地方が6。要するに、仕事の割合でいきますと、税収の入り口とは逆の構造になっております。私どもはできるだけ、地方の仕事は地方の権限と、そして財源でやっていくということが理想の姿だと思っておりますので、できるだけ仕事の分担、役割分担の割合に、国・地方の税収の配分というのを近づけていきたいということを基本方向として考えているわけであります。
現状はこういうことでありますけれども、19年度は3兆円の税源移譲というものが実施されておりますので、右のほうに小さく書いておりますけれども、そういった要素まで入れますと、少しこの配分というのは地方のほうにシフトします。しかし、国のほうも法人税が相当大きく伸びておりますので、基本的な姿は変わらないということで、こういった現状を踏まえて、国・地方の税源配分を1対1に近づけるべく、地方税の充実を図っていきたいということであります。
2.地方分権と税源配分
それを、どういうプロセスでやるかということにつきましては、先ほど申し上げましたけれども、1つは、資料4(P.13)に地方分権改革の関係の資料を入れさせていただいております。昨年の臨時国会で、地方分権改革推進法という法律が成立いたしまして、現在、既に地方分権改革の議論がされております。この中では、1つには、Tにありますように、国と地方の役割分担を見直していく、住民に身近な行政はできる限り、地方公共団体に委ねる、こういうことを基本にして改革していくということが、まずうたわれております。そして、その次にUのところにありますけれども、こういう措置に応じて、国庫補助負担金、交付税、国と地方公共団体の税源配分等の財政上の措置のあり方について検討していく。国と地方の役割分担の見直しをしながら、それに応じた税源配分をつくっていく、こういう検討がされることになっているわけであります。その際には、まずその前段の役割分担の見直しが基本になるわけでありますけれども、そういうことをしっかり議論した上で、それに見合った国・地方の税源配分のあり方を検討して見直していくということを考えているわけであります。
そして、もう一つのプロセスは資料5から資料7(P.14〜15)ぐらいにかけまして、昨年末の与党の税制改正大綱と、それから、今年の6月のいわゆる骨太方針を掲げておりますけれども、税体系の抜本的改革の考え方がそれぞれ書いてございます。資料5でいいますと、下の4行でありますけれども、この時点では平成19年度を目途に、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組んでいくという方針でございます。
それから、資料5でありますけれども、やはり骨太方針の中での税制改革の基本方針につきましても、与党の大綱と同じように、大体、真ん中あたりのところでありますけれども、平成19年秋以降、税制改革の本格的な議論を行い、平成19年度をめどに、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組むということが、政府の基本方針になっております。
ただ、消費税を含む税体系の改革のあり方は、すぐれて政治的な問題でもあるわけでございまして、今年の夏の参議院選挙の結果を踏まえて、そういう状況の中で検討していくということになるわけであります。昨日の福田総理の所信表明の中では、引き続き本格的な議論を進めて、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組んでまいりますと、こういう方針ははっきりとうたわれておりますけれども、この19年度をめどにということは言及されておりません。そこも含めて、どういう形で進めていくのかということが今後の大きな議論になっていくだろうと思っております。
いずれにいたしましても、この税体系の抜本的改革、そして、先ほど申し上げた地方分権改革のプロセスを通じて、国と地方の税源配分1対1を目指して、地方税の充実に取り組んでいきたいというのが私どもの基本的な姿勢でございます。そうした方向は、骨太方針の中にも、明確には書いてありませんけれども、資料6(P.14)下のほうの(5)のところにあります、財源における地方の自立性を高めるため、国・地方の財政状況を踏まえつつ、補助負担金、交付税、税源移譲を含めた税源配分の見直しの一体的な改革に向け――地方債を含めと書いてありますが――検討するという方針は、政府の方針ともなっているわけでございます。
一方、税体系の抜本的改革、あるいは分権改革を通じての地方税の充実の議論と関連し、あるいは、それと関連しない部分もございますけれども、いわゆる税収の偏在の問題というのが大きな課題になってきております。これは資料6、7(P.14〜15)あたりの骨太方針の中にも言及されておりまして、資料6でありますと下3行でありますけれども、法人二税を中心に税源が偏在するなど、地方公共団体間で財政力に格差があることを踏まえて……、いろいろ書いてございますが、地方間の税源の偏在を是正する方策について検討し、その格差の縮小を目指す。これが当面の大きな課題となっているわけでございます。
この背景でありますけれども、既に先ほどご覧いただいた与党の税制改正大綱の中にも、こういった問題の指摘はございまして、平成15年度を底に、法人二税が大きく回復してきているということの中で、地域間の税収の格差が相当出てきているということを踏まえて、こういう問題がクローズアップされているわけでありますけれども、資料8(P.15)をご覧いただきますと、今年の4月の経済財政諮問会議におきまして、当時の菅総務大臣と尾身財務大臣、連名でこの財政力格差の縮小についての取り組みの必要性について、共通のペーパーを出しております。趣旨はここに書いてございますように、近年、法人二税の税収が急速に回復していること等を背景にして、地域間の税収の差が広がっておりますので、財政力の差が拡大する傾向にある、そして、この問題については早急に対応すべき課題であるといった問題提起を行っております。
特に左下のほうに書いてございますけれども、これは東京と財政力指数下位8県で対比して書いてありますが、15年度以降の税収増は東京だけで1兆4,000億近くあるわけでありますけれども、財政力の低い8県を足しても、その10分の1ぐらいしか税収は増えていないということを背景に、こういう問題提起がされてきております。
そして、その中で右下のほうに書いてございますが、この問題については財務・総務両省で、実務者会合を設けて作業もしようということで、現在いろいろな議論を進めているところであります。
この問題にどういうふうに取り組んでいくかということでありますけれども、こういう偏在が生ずる背景でありますけれども、資料9(P.16)なり、資料10(P.17)をちょっとご参照いただきたいと思いますけれども、資料9は人口1人当たりの税収が都道府県間でどの程度差があるか、これは都道府県税も市町村税も含めてでありますけれども、グラフにしたものであります。地方税収全体、左のグラフで見ますと、最大最小が大体3倍ぐらいの開きになっております。これが地方税全体での平均でありますけれども、その中で真ん中にあります法人二税――法人事業税と法人住民税が、一番地域間の差が大きい税でありまして、最大と最小が東京と長崎になっておりますが、6倍強ぐらいの差がある。この法人二税が景気の回復に伴って急速に回復しているということで、地域間の税収の差が拡大する傾向にあるということであります。
一方で、この偏在の度合いということから見ますと、右から2番目の地方消費税、最大と最小の差が2倍弱ぐらいになっておりまして、いろいろな税がございますが、基幹税の中では極めて偏在度が低い税であります。加えて、消費税につきましては、法人関係税と比べますと、景気の変動にあまり左右されませんので、税収の安定性というものも備えた税であるわけであります。
私どもは今後、この偏在の問題を考えていくに当たっては、税体系全体の中で法人二税のあり方をどういうふうに考えるか。そして、地方消費税をどういうふうに考えるか。具体的には、地方消費税の充実というのを基本に置きながら、それにあわせて法人二税の問題を検討し直していく、こういうことで偏在を是正していくのが、より望ましい方向ではないかなと考えております。
ただ具体的な進め方につきましては、いろいろな議論があるところでありまして、資料11(P.17)をご覧いただきたいと思いますけれども、これは5月の経済財政諮問会議におきまして、地方分権改革の関連の議論が行われた際の資料でありますが、菅総務大臣、尾身財務大臣、それから経済財政諮問会議の有識者議員、それぞれが具体的にどういうやり方をするかということで提言をしておりまして、この総務大臣の提言は、地方消費税の充実とあわせて、法人課税の国・地方の配分のあり方の見直しなどにより、税収の偏在を是正していくと。ややわかりにくいですけれども、地方消費税を増やす一方で、法人課税の国・地方の配分のあり方、要するに、地方の法人二税を国に移しかえる、税源を入れかえる形でやれば、その集中度、偏在度が違いますから、全体として偏在の問題の解決にも資するだろうと。こういう考えを提案しているわけであります。
一方で、財務大臣のほうは、地方団体間の調整で対応するとの基本的な考え方でやるべきだと。具体的には、法人二税自体の配分の見直しを検討することが重要だと。ただ、これはいろいろな議論のあるところでありまして、いわゆる法人二税につきましては、分割基準ということで、税収が正しくどこに帰属するべきかという基準を設けておりまして、これまでいろいろな形で見直しを行っておりますけれども、単純な再配分、地方で取った税、課税して徴収した税をよそに再配分するというような手法まで考えるということになりますと、地方税というのは、その都道府県なり市町村の行政サービスに充てるから課税しているのであり、そこに課税の根拠があるわけでありますから、それを行政サービスに還元しないで、よその団体に移転するということになりますと、やっぱりこれは地方税の基本にかかわる問題だろうと、私どもは思っております。
また、有識者議員のほうは、総務大臣の提言、そして尾身大臣の提言、両方をミックスしたような形の提言になっております。いずれにしても、具体的にどういう偏在の是正をするかということは、いろいろな考え方があるわけでありますけれども、私どもとしては、最初に申し上げた地方消費税の充実を基本にして、税収が安定的で、そして、偏在性の少ない税体系をつくっていく、そういう基本方向にできるだけかなったやり方で偏在も是正していきたいと思っておりまして、そういう考え方で、しっかり今年の年末の税制改正の中で議論してまいりたいと思っております。
3.法人事業税関係
それから、税体系の抜本的改革等の中で議論になり得る点が幾つかございます。1つは資料12(P.18)をご覧いただきますと、これは法人課税の関係でございます。特に昨今、企業の国際競争力の観点から、法人実効税率のあり方というものがかなり議論されてまいっております。経済界におきましては、やはり法人税率が高いと企業の国際競争力を損なうということから、できるだけ国際水準に合わせて見直しをすべきだという議論がかねてあります。
我が国におきましても、そういった観点からの見直しは実施してきておりまして、アメリカでありますとか、ドイツでありますとか、こういった先進諸国の水準を念頭に置いて大体40%ぐらいの実効税率まで下げるというところで、現在の税率構造ができ上がっているわけでありますけれども、一方で、最近、例えばドイツにおきましては、EU間での国際競争が激化しているということを踏まえて、法人の税率を10%程度下げるという改革が行われることになっております。それから、イギリスにおきましても、法人税率を少し下げる。あとアジア、中国でありますとか韓国、それからシンガポール、こういったアジア諸国との競争の議論もございまして、我が国よりも実効税率が低いから、もうちょっと下げるべきだ、こういう提言がございます。
この問題につきましては、昨年の政府税調におきましても、少し議論の対象になったわけでありますけれども、税体系全体の中で、どういうふうに考えていくかという問題でございまして、現在のところ今年の年末の議論の中でどこまでこれが議論されるかということは不透明であります。ただ、いずれにしても、この法人の税負担の問題は表面的な税率、実効税率だけの観点ではなくて、例えば課税ベース、どういう特例措置があるかとか、それも含めた法人全体の税負担が重いのか、軽いのか、そういう議論も必要でありますし、さらには、例えば社会保障負担なども国によって企業の負担のあり方が随分変わって、違っておりますので、そういうことも含めた議論、そして、実効税率を含めた法人の負担が国際競争力とどういうふうに関連するのか、そういった議論をしっかりした上で検討していくことが必要だろうと思っております。
特に、その中で地方税の法人課税が高いから、これを下げろという議論はかなりあるわけでありますけれども、これにつきましては資料14(P.19)をご覧いただきますように、国際的な比較は、国と地方を合わせた全体の税負担の水準で議論が必要だと思いますけれども、その中で国と地方がどういうふうに税収を分け合うかということは、やっぱりそれぞれ国内事情が違っているわけでありまして、国と地方の仕事の分担、役割分担というのを基本にして検討していくことが正しいあり方だろうと思っております。
そういう観点からいきますと、資料14にございますように、日本の地方団体は大体、連邦制国家における州を含んだ地方ぐらいの仕事は分担しているわけでありますので、こういった国内の分担から見ますと、日本の法人課税全体として、ある程度、地方が課税のウエートを持つということは、こういった国際的な分析にもかなうものであろうと思っております。いずれにしても、法人実効税率の問題は必ずしも、今年の年末での大きな課題にはならないかもしれませんけれども、もしそういう議論がされるのであれば、私どもとしては、しっかりこういう基本姿勢で議論してまいりたいと思っております。
4.個人所得課税関係
それから、資料15以下、個人所得課税関係で、幾つか資料を入れさせていただいております。1つは資料15、16(P.19〜20)は、今年の6月から具体的に動いております所得税から個人住民税への3兆円の税源移譲の関連でございます。これに関しましては、税負担の変動、所得税が1月に減って、6月から住民税が増えるという2段階で生じますので、うまく理解を求めていかないと住民税増税といった批判もされかねないという問題がございましたので、地方団体の方にもPRに取り組んでいただいているところであります。6月、いろいろな問い合わせ等々は相当あったわけでありますけれども、しっかり地方団体において対応いただいているところでございます。
さらに今後は、この下に書いてございますけれども、この税源移譲に伴って住宅ローン控除が所得税から引き切れなくなった人は、住民税からも控除するという新しい仕組みも入れておりますので、こういった仕組みのPRでございますとか、それから、19年所得が大きく減って所得税がかからなくなった人は、19年度の住民税を税源移譲の前の水準まで減額するという特例措置もつくっておりますので、それぞれしっかり周知していくということが必要でございます。
また資料16をご覧いただきますとわかりますように、移譲の前後で比べますと、下のほうに所得階層別の税額が書いてありますけれども、移譲前におきましては、大体どの階層でも所得税のほうが住民税より大きい、重いという姿でありましたけれども、税源移譲に伴って、右のほうにいきますと、大半の所得階層、ごく高額所得者を除きますと、所得税より住民税の負担のほうが重いという格好になっております。当然、納税者、住民の方の地方の行財政運営への関心は高まっていくわけでありますので、やっぱり市町村、あるいは都道府県当局もそういうことを十分意識した上で、住民すなわち納税者の理解を得ながら行政を進めていくということが、大変大事になっていくだろうと思っております。
それから、個人所得課税の2つ目でありますけれども、資料17、18(P.20〜21)あたりをご覧いただきますと、ふるさと納税の関係の資料を入れております。今年の5月に当時の菅総務大臣が提言されまして、非常に大きな反響を呼んでおります。マスコミ報道も若干過熱気味かなという感じもいたしますけれども、趣旨はここに書いてございますように、1つには、都会に転出した方が成長する過程で、いろいろな福祉や教育にコストがかかっているわけでありますけれども、これが還元できないのかとか、あるいは、生涯を通じた受益と負担のバランスがとれないのか。さらに言えば、都会で暮らしておられる方もふるさとに貢献したいとか、あるいは、かかわりある地域を応援したいとか、そういう声があるので、それを生かすような税制上の仕組みができないのかということで、6月から千葉商科大学学長の島田晴雄先生に座長になっていただきまして、研究会で議論を進めております。6月から9回ばかり開催しておりまして、できれば今週末にも報告書を取りまとめていただければと思っております。
その議論の状況でございますけれども、資料18、かいつまんでお話をさせていただきますと、研究会の議論はまだ途中でありますが、もともとこの議論は、住民税を一部ふるさとに分納できないか、税そのものを納められないかと、こういう議論を含めて検討を行っているわけでありますけれども、やはり税のあり方、性格として、税そのものを分割するというのはとれないことでありますので、寄附金税制を活用していくということで大体、方向性が一致しております。そして、その際に寄附控除ということになってまいりますけれども、対象となる地方団体、ふるさとというのは人によって思い浮かべるイメージがそれぞれいろいろございます。生まれたところという人もあれば、育ったところと言う人もおられれば、学校を卒業したという方もおられるでしょうし、いろいろふるさとのイメージが違いますし、過去にそういう縁があった地域ということだけではなくて、現在いろいろな形でかかわっている地域、最近、二地域居住なんていうのもありますけれども、そういうことも含めて、現在あるいは未来志向のふるさともあってもいいんではないかということで、基本的には納税者の意思に委ねていけばいいだろうということで、限定をしないということで大体議論が進んでおります。
さらに今、寄附控除は所得控除の形をとっているわけでありますけれども、できるだけわかりやすい仕組みにしていく、そして、控除の割合といいますか、効果を高くしていくという観点から、税額控除方式に改めたほうがいいだろう。そういったことを基本に議論がされておりまして、具体的な控除の割合を全額にするのか、あるいは一部にするのか。それから、税額控除に住民間の負担の公平といった観点から、一定の上限を設けるべきではないか、具体的には1割程度がいいのかといった議論をしております。それから、控除の対象となる下限をどうしたらいいか。現在、住民税の寄附控除は10万円が下限になっておりまして、10万円を超えて初めて控除の対象になりますけれども、そこは大きく下げて所得税が大体5,000円でありますので、その程度までは下げたほうがいいんじゃないかという、そういった議論を現在進めていただいているところでございます。
いずれにしても、最終的な議論を行っていただいた上で、できれば今週末、あるいは、まだ若干の議論が残るかもしれませんけれども、近々この研究会の報告書をまとめていただきまして、年末の税制改正の中で実現を目指していきたいと考えております。
それから、個人所得課税に関連しまして、資料19(P.21)以下に、公益法人改革の資料を入れております。公益法人改革は、現在の公益法人制度といいますのは許可主義で、公益性を持っているものを許可によって設立する、こういう基本的な仕組みになっておりますけれども、18年度に、この仕組みを大きく変える法案が既に成立しておりまして、法人の設立そのものは登記さえすればいい、準則主義という形で設立できる。公益性の判断は別途、第三者機関をつくりまして、公益性を認定して公益財団なり社団になって、設立と公益の認定を区分した、分離した新しい仕組みに移行することになっております。
具体的には、現在いろいろな基準等の制度の準備等を進めておりまして、来年の12月からこういった新しい仕組みに移行することになっておりますけれども、これに伴いまして、税制の上では、1つは公益法人に対する法人課税をどうするかという問題が出てまいります。これは基本的には、現在も公益法人は収益事業に対して課税するという原則に立っておりまして、法人税も基本的にはそういう方向で検討していくことになると思いますので、それと合わせた地方税制をつくっていく、こういうことになろうと思います。
もう一つは、個人所得課税の中で、寄附税制をどうするか。これがもう一つの議論になってまいると思います。資料21(P.22)に、現在の住民税の寄附控除の対象を書いてございますけれども、ご覧いただきますように、個人住民税は地域社会の会費であるというのを大原則にしておりまして、非常に対象を絞っております。この中に基本的に公益法人は入っていないわけでありますけれども、それをどういうふうに対象に加えていくのか、あるいは、加えていくべきなのかどうか、こういった検討をしていくことになろうと思っております。
資料20(P.22)に2年前の政府税調の基礎問題小委員会でまとめた考え方では、国が一律に決めるのではなくて、条例で独自に構築されるようなそういう仕組みもあっていいんじゃないかと、こういう提言もいただいておりまして、こういう考えも踏まえながら、年末の税制改正の中で、新しい公益法人制度に対応した寄附金税制のあり方というのを検討してまいりたいと思っております。
それから、個人所得課税ではもう1点、資料22(P.23)でありますけれども、これも今年の年末の大きな議論の対象になろうと思いますけれども、金融証券税制の問題がございます。これは個人住民税だけではなくて、所得税とあわせた制度でありますが、現在、配当譲渡益につきましては、所得税、住民税を合わせた税率を、本則税率、本来20%の税率になっているわけでありますけれども、10%に軽減する特例措置がとられております。これは平成15年当時、大変、株式市況が低迷しておりまして、それに加えて、金融機関のいわゆる不良債権の問題が大変大きな問題になっておりまして、その中で特例として、株式市場を活性化させていくということを目標に、税率を半分に軽減する、こういう制度が導入されて、昨年末まで至っていたところでありますけれども、昨年末、その期限が切れるに当たって、これをどうするかということがかなり大きな問題になったわけであります。
株価の推移からしますと、この制度を導入した当時、株価が日経平均で大体8,000円程度でありまして、底にあったわけでありますけれども、昨年末は大体倍ぐらいの水準に回復しておりまして、そういう状況を踏まえて、この特例措置は見直していいんじゃないかという議論がある一方、しかし、まだ経済は確固たる回復軌道にはないし、この特例を急に打ち切ると、株式市場は非常に制度に敏感でありますので、その影響も懸念されるという議論がございまして、結論として、与党の税制改正の中での考え方は、1年間延長して廃止しようということになっております。1年間延長する間に、金融所得、資産性の所得間の損益通算をどういうふうにしていくか、どういうふうに拡大するか、そういったことも検討して、新しい制度は21年度から導入できるようにしようといったことになっておりまして、課題が残っている格好になっております。そういった昨年末の議論を踏まえて、今年の年末の税制改正でどういう取り扱いをするかということも、大きな課題になっていくだろうと思っております。
5.道路特定財源
次は、ちょっと別の話になりますけれども、資料23、24(P.23〜24)は道路財源の問題であります。道路財源は、よく国の道路財源のオーバーフローの問題でありますとか、そちらに焦点が当たった議論になっておりますけれども、道路財源につきましては、国の道路財源は資料に書いておりませんが、大体3.4兆円ございます。一方で、地方の道路財源が2.2兆円ほどありまして、地方にも非常に大きな道路財源がございます。この中で、道路財源につきましては、国の道路整備の計画とあわせて、本則の税率に上乗せをして、暫定税率という形で税制をしいているわけでありますけれども、2.2兆円のうち大体1兆円ぐらいが、地方の道路財源でいいますと暫定税率分になっております。
昨年まで小泉内閣以来、この道路財源の一般財源化についていろいろな議論が繰り返されたわけでありますけれども、最終的に資料24にございますように、昨年末の時点では、この道路財源の問題につきましては、道路特定財源の見直しに関する具体策というものを政府・与党で合意いたしまして、閣議決定しておりますけれども、その基本的な考え方は、1のところにありますように、道路整備は計画的に進めることとして、中期的な計画をつくっていく。そして、税率につきましては、2にありますように、20年度以降も暫定税率による上乗せ分も含めて、現行の税率水準を維持する。そして、3にありますように、一般財源化の問題については、現在の仕組みは、税収の全額を毎年度の予算で道路整備に充てることを義務づけているわけですけれども、これを見直して所要の法改正を行う。具体的には、毎年度の予算において道路歳出を上回る税収は一般財源とする。こういった整理がされておりまして、ただ暫定税率は今年度末まで残っておりますので、具体的な法案に絡む議論は、さらに今年の年末でも議論されるということになろうと思っております。この中で、地方の道路財源につきましては、一般財源化等の議論は、地方の道路の事情等も踏まえてされていないわけでありますけれども、さらに年末でどういう議論がされるのか、ここはしっかり注意していかなければいけないと思っております。
6.固定資産税関係
あと、固定資産税の関係を、若干の時間でお話をさせていただきます。固定資産税は、資料26(P.25)にございますように、市町村の大変重要な基幹税でございまして、資料26に税収の中でのウエートを書いてございますけれども、全市町村でも固定資産税だけで45%、都市計画税まで入れると半分強。特に町村になりますと、そのウエートが高まっているということで、非常に重要な基幹税でございます。そういう意味で、今後も安定的な確保を図っていくということが大変重要でございます。私ども、そういう方針でいろいろな制度のあり方というのを検討してまいりたいと思っております。
1つ、これは昨年のことになりますけれども、資料28、29(P.26)をご覧いただきますと、企業の国際競争力の観点を先ほど申し上げましたが、こういった観点から昨年、減価償却制度の見直しというものが行われておりまして、法人課税については、従来の償却制度、具体的には、耐用年数経過時点で10%残存価格が残るような償却率を設定して、それから、償却可能限度も全額償却ではなくて、5%を残した償却の仕組みを昨年までとっていたのでありますけれども、そういう制度のあり方を見直すべきではないか、それから、国際的に見て、日本の場合は少し償却速度が遅いのではないか、こういった議論がありまして、詳細なご説明は省きますけれども、上の実線のグラフを下の点線のグラフに置きかえるような制度改正がされております。
これに伴って、固定資産税の評価における考え方も法人税に合わせるべきではないか、こういう議論がされたわけでありますけれども、資料29を入れておりますけれども、法人所得課税における減価償却の考えと、固定資産税における償却の考え方は、税の性格も違いますし、それに従って制度も異なっていいわけでありますので、いろいろな議論をした上で、固定資産税はこの税の性格にかんがみて、法人課税において減価償却制度を見直しても、固定資産税における償却資産の評価の仕組みは、従前の制度を維持するということで議論が決着しております。
具体的には、法人課税というのは、要するに取得価格、投下した資本をいかに費用化するかということで、償却を決めていくわけでありますけれども、固定資産というのは償却するところに意味があるのではなくて、償却して残った資産価値に応じて税負担を求めるということであります。そして、仮に法人課税上、全額償却をした時点におきましても、同様に償却資産を使って企業活動しているということでありますと、行政サービスからの受益を受けているということになりますので、仮に法人課税上の資産価値がゼロなり1円になっても、資産課税としては応分の負担をいただくことが正しいであろう、そういった議論で、いろいろ実務上の観点も兼ね合わせた議論がございましたけれども、固定資産税の評価の仕組みは、基本的に維持するということで決着しているわけであります。
それから、固定資産税に関しまして、3年に1度、評価替えを行っているところでございまして、次の評価替えの年度は21年度ということになります。そういうことで、しばらく次の評価替えまで間があるわけでありまして、資料30、31(P.27)には18年度の評価替えの際の考え方を資料に入れております。ちょっと細かい話になりますので、細かいご説明は省略しますけれども、評価替えにあわせて、いわゆる負担調整措置というものを講じております。急激に税負担が増加しないような仕組みをとっておりますけれども、この18年度評価替えまでの仕組みは、負担水準が均衡化していくまでに非常に長い時間がかかる仕組みでございました。また、これは図に入れておりませんけれども、前年度の課税標準額に一定の調整率を掛けて、負担水準、課税標準を決めていくというやり方でございましたので、評価額とあまり関係なく税負担を決める仕組みをとっていたわけであり、加えてあるべき水準まで税負担が行くのに非常に長期間かかるという仕組みになっていたわけでありますけれども、18年度に見直しをいたしまして、基本的にはこの図にありますように、前年度の課税標準額に評価額の5%を乗じた額を加えた水準に見直していくと、こういった仕組みに直しております。これによって、負担水準の均衡化が促進される仕組みになっているわけでありまして、私ども、やはりこういう考え方、負担水準の均衡化をできるだけ促進していくということを基本に、次の評価替えに臨んでいくということになろうと思っております。その際には当然、地価の動向というものを十分踏まえながら、どういう仕組みがいいのかということで検討してまいりたいと思っております。
7.地方税徴収対策
あと、最後に1点でありますけれども、地方税の徴収の問題でございます。これは固定資産税も含めて、すべての税に関連する話でありますけれども、資料32(P.28)に地方税の滞納額のグラフがございます。ご覧いただきますように、特にバブル崩壊後、地方税の滞納額が急激に増加しておりまして、平成6年度以降、ずっと2兆円を超える水準になっておりました。その後、地方団体もいろいろな工夫、努力をしていただきまして、14年度をピークに減少してまいっておりまして、18年度の見込みでは久しぶりに2兆円の水準を下回るというところまできております。
この間、資料33(P.28)にございますように、地方団体におきましては、民間委託の推進でありますとか、滞納処分にいろいろな工夫を加えたり、それから、体制の面でも、それぞれ組織体制を強化したり、あるいは地方団体間の共同処理や広域化、さらには都道府県、市町村の協力といった形でいろいろな工夫をしていただいておりまして、地方税の徴収に取り組んでいただいております。特に、住民税のところでも申し上げましたけれども、地方税の重みが増しております中で、歳入の確保という観点は当然でありますけれども、それ以上に、やはり課税した税を公平に徴収していく、それによって納税者の信頼を確保していく、こういうことがますます重要になっているだろうと思っておりますので、引き続き、努力をお願いしたいと思っております。
加えてもう一つは、納税環境の整備、いろいろ課題がございますけれども、地方税の電子申告が今後の大きな課題になっていくと思っております。現在は法人関係税、それから、償却資産の電子申告の仕組みを入れておりますけれども、現在、稼働しておりますのは、基本的には都道府県と政令市だけでございまして、一般の市町村では1市だけ参加をいただいております。しかし、今後は私どもは、できるだけ企業も個人も含めて、電子申告の仕組みをしっかりつくって、納税環境を整えていくということが大変重要な課題だと思っております。来年からは個人住民税の給与支払い報告書の電子化の仕組みが稼働することになっております。加えて、公的年金からの住民税の特別徴収も21年度から稼働できればということで準備を進めております。そうしますと現在、都道府県、政令市だけが加入しているわけでありますけれども、一般の市町村も含めて、そういった電子申告、あるいは電子納税の仕組みをつくっていくということが大変重要になっていくと思っておりますので、しっかり一般の市町村の方にも参加をいただきながら、そういう仕組みの構築に取り組んでまいりたいと思っております。
大体いただいた時間でございますので、以上で終わらせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
(資料4)
地方分権改革の推進について
◆「骨太の方針2006」〔平成18年7月7日閣議決定〕(抄)
地方分権に向けて、関係法令の一括した見直し等により、国と地方の役割分担の見直しを進めるとともに、国の関与・国庫補助負担金の廃止・縮小等を図る。
◆地方分権改革推進法〔平成18年12月8日成立〕
T 国は、国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本して、次の措置等を講ずる。(第5条)
@ 地方公共団体への権限移譲の推進
A 地方公共団体に対する事務の処理又はその方法の義務付けの整理・合理化
B 地方公共団体に対する国又は都道府県の関与の整理・合理化
U 国は、地方公共団体が事務及び事業を自主的かつ自立的に執行できるよう、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保等の観点から、Tの措置に応じ、国庫補助負担金、地方交付税、国と地方公共団体の税源配分等の財政上の措置の在り方について検討。(第6条)
V 地方公共団体は、行政及び財政の改革を推進するとともに、行政の公正の確保及び透明性の向上並びに住民参加の充実のための措置その他の必要な措置を講ずることにより、地方公共団体の行政体制の整備及び確立を図る。(第7条)
(資料5)
平成19年度税制改正大綱(抄)
第一 経済・社会を安定的に支える税制に向けて
税制は、平成21年度における基礎年金国庫負担割合引上げのための財源をはじめとする社会保障財源の安定的確保や、平成19年度税制改正で取り組むこととしたわが国経済の活性化、急速な少子化の進行に対応する子育て支援策等の充実、地方税源の充実等の政策目的の実現に資する役割が求められる。これに応える税制の構築に当たっては、国民の所得格差や地域格差、経済社会活動による環境への影響、税制の頻繁な変更による経済取引の混乱回避に留意する必要がある。
(中略)
さらに、法人二税を中心に税源が偏在するなど地方団体間で財政力に格差があることを踏まえ、地方の自立を促しその安定した財政基盤を構築する観点から、地方の税財源を一体的に検討していく必要がある。
このような考え方に基づき、来年秋以降、早期に、本格的かつ具体的な議論を行い、平成19年度を目途に、少子・長寿化社会における年金、医療、介護等の社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通し等を踏まえつつ、その費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく、取り組んでいく。
(資料6)
経済財政改革の基本方針2007(抄)〜「美しい国」へのシナリオ〜
第3章 21世紀型行財政システムの構築
2.税制改革の基本哲学
21世紀の我が国にふさわしい税制を構築するため、所得税、消費税、法人税など税制全般について、「納税者の立場に立つ」「経済社会の変化に対応する」「省庁の縦割りを超え、受益と負担の両面から総合的に検討する」という3つの視点で点検し、税体系の根本的改革を実現する。
平成19年秋以降、税制改革の本格的な議論を行い、平成19年度を目途に、社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通しなどを踏まえつつ、その費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく、取り組む。その際、「基本方針2006」で示された歳入改革の基本的考え方や与党税制改正大綱を踏まえることとする。
【実現すべき6つの柱】
(5) 真の地方分権の確立
・ 財源における地方の自立性を高めるため、国・地方の財政状況を踏まえつつ、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含めた税源配分の見直しの一体的な改革に向け地方債を含め検討する。
・ 法人二税を中心に税源が偏在するなど地方公共団体間で財政力に格差があることを踏まえ、地方税の在り方や国と地方の間の税目・税源配分(地方交付税財源を含む)の見直しなど、地方間の税源の偏在を是正する方策について検討し、その格差の縮小を目指す。
(資料7)
8.地方分権改革
戦後レジームから脱却するため、国が地方のやるべきことを考え、押し付けるという、今までの国と地方の関係を大胆に見直し、「地方が主役の国づくり」を目指す。あわせて、地方分権改革の総仕上げである道州制実現のための検討を加速する。
【改革のポイント】
2.地方財政全体が地方分権にかなった姿になるよう、国・地方の財政状況を踏まえつつ、国庫補助負担金、地方交付税、税源配分の一体的な改革に向け地方債を含め検討する。あわせて、地方間の税源の偏在を是正する方策について検討する。
【具体的手段】
(2) 地方税財政改革の推進
国・地方の財政状況を踏まえつつ、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含めた税源配分の見直しの一体的な改革に向け地方債を含め検討する。あわせて、法人二税を中心に税源が偏在するなど地方公共団体間で財政力に格差があることを踏まえ、地方間の税源の偏在を是正する方策について検討し、その格差の縮小を目指す。
地方公共団体が自ら税を徴収し、住民が負担との見合いで行政サービスを選択することができるようにするため、「住民の選択が機能し、地方公共団体の努力がいきる税財政にする」、「地方分権の時代にふさわしい国税・地方税の設計にする」、「国から地方への財源配分は、予見性・安定性・透明性を重視する」ことが重要であり、このため、「地方分権改革推進委員会」は、「基本的な考え方」に基づき、地方税財政改革を検討する。
また、「ふるさと」に対する納税者の貢献や、関わりの深い地域への応援が可能となる税制上の方策の実現に向け、検討する。
(資料11)
経済財政諮問会議(平成19年5月25日)における論議
@ 菅議員提出「地方分権改革について」(抄)
○ 地域間の偏りが最も小さい地方の基幹税である地方消費税の充実などにより、できる限り偏在度の小さい地方税体系を構築
○ 地方消費税の充実とあわせ、法人課税の国・地方の配分のあり方の見直しなどにより、税収の偏在を是正
A 尾身議員提出「尾身議員提出資料」(抄)
○ 地域間の財政力格差問題は、地方団体間の調整で対応するとの基本的な考え方に立った上で、検討を進めるべき。
○ 地域間の財政力格差の最大要因は、地方法人二税の税収が偏在していること(最大/最小:6.5倍)。このため、財政力格差を是正するには、偏在の原因である地方法人二税自体の配分の見直しを検討することが重要。
B 有識者議員提出「地方税財政改革による自治の確立」(抄)
○ 地方間の偏在度を小さくする工夫を行うべきである
○ 例えば、@偏在度の大きな法人二税について按分を変える方法、A偏在度の大きな法人二税と小さな地方消費税を同額ずつ増減税する方法、B偏在度の大きな法人二税を交付税財源にし、交付税財源である消費税を同額地方消費税とする方法、等が考えられる
(資料17)
「ふるさと納税研究会」の概要
最近、地方公共団体の長などから、都会に転出した者が成長する際に地方が負担した教育や福祉のコストに対する還元のしくみができないか、生涯を通じた受益と負担のバランスをとるべきではないかとの意見が、また、都会で生活している納税者からも、自分が生まれ育ったふるさとに貢献をしたい、自分と関わりの深い地域を応援したいとの意見が寄せられている。
このような「ふるさと」に対する納税者の貢献等が可能となる税制上の方策の実現に向け、幅広く研究するため、総務大臣のもとに研究会を開催する。
本会合は、「ふるさと納税研究会」(以下「研究会」という。)と称する。
(1)「ふるさと」に対する納税者の貢献や、関わりの深い地域への応援が可能となる税制上の方策
(2)税理論上の整理
(3)「ふるさと」とすべき地方公共団体の考え方
(4)納税者の手続及び市町村の事務負担を考慮したしくみのあり方
(5)その他実現に向けて検討が必要な事項
座長 島田 晴雄(干葉商科大学学長) 他9名。
平成19年6月1日(金)から開催。10月初旬目途に報告書とりまとめ。
(資料18)
「ふるさと納税研究会」における検討状況
1.おおむね方向性が一致している事項
・「ふるさと」となる地方団体は限定しない
・「税」を分納する仕組みではなく、「寄附金」税制を活用
・所得控除ではなく税額控除方式をとる
・寄附先は、都道府県、市区町村の双方を対象とし、双方の税から税率比で控除
2.検討中の事項
・税額控除の割合(全額か一部か)
・税額控除の上限額(1割程度)
・対象とする寄附金額の下限(現行の10万円を大幅に引き下げる方向)
・所得税との関係(住民税、所得税双方から控除する方向)
(資料20)
「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」(抄)
三 寄附金税制のあり方
3 地方税(個人住民税)における寄附金税制
国が一律に個人住民税の寄附金控除の対象を定めることについては地方分権の観点からも慎重であるべきであろう。しかし、こうした地域に密着した非営利法人等については、歳出等による支援の手法のほか、地方税においても寄附金控除が可能となるよう見直していくべきである。また、現行10万円の適用下限額についても、大幅に引き下げることが望ましい。
地方税である個人住民税の性格にあった寄附金控除の仕組みは、「民間が担う公共」の領域の役割が重要となっていることも踏まえながら、基本的に条例などにより地方公共団体によって独自に構築されるべきである。その際、控除を行う地方公共団体と寄附金による当該地域の受益との対応関係や、地方公共団体の自主性、市町村・納税者の事務負担などにも留意する必要がある。
(資料24)
道路特定財源の見直しに関する具体策
我が国の競争力、成長力の確保や地域の活性化のため必要な道路整備を計画的に進めることは、引き続き、重要な課題である。他方、我が国財政は極めて厳しい状況にあり、国民負担の最小化のため、歳出削減を徹底し、ゼロベースで見直すことが必要となっている。
このため、昨年末の政府与党合意、行革推進法等に基づく道路特定財源の見直しについては、以下に定めるところにより行うものとする。
1. 道路整備に対する二一ズを踏まえ、その必要性を具体的に精査し、引き続き、重点化、効率化を進めつつ、真に必要な道路整備は計画的に進めることとし、19年中に、今後の具体的な道路整備の姿を示した中期的な計画を作成する。
特に、地域間格差への対応や生活者重視の視点を踏まえつつ、地方の活性化や自立に必要な地域の基幹道路の整備や渋滞解消のためのバイパス整備、高速道路や高次医療施設への広域的アクセスの強化など、地域の自主性にも配慮しながら、適切に措置する。
2. 20年度以降も、厳しい財政事情の下、環境面への影響にも配慮し、暫定税率による上乗せ分を含め、現行の税率水準を維持する。
3. 一般財源化を前提とした国の道路特定財源全体の見直しについては、税率を維持しながら、納税者の理解を得ることとの整合性を保ち、
(1) 税収の全額を、毎年度の予算で道路整備に充てることを義務付けている現在の仕組みはこれを改めることとし、20年の通常国会において所要の法改正を行う。
(2) また、毎年度の予算において、道路歳出を上回る税収は一般財源とする。
4. なお、以上の見直しと併せて、我が国の成長力や地域経済の強化、安全安心の確保など国民が改革の成果を実感できる政策課題に重点的に取り組む。その一環として、国民の要望の強い高速道路料金の引下げなどによる既存高速ネットワークの効率的活用・機能強化のための新たな措置を講ずることとし、20年の通常国会において、所要の法案を提出する。
平成19年度税制改正大綱(抄)
第一 経済・社会を安定的に支える税制に向けて
なお、道路特定財源の見直しについては、「道路特定財源の見直しに関する具体策」(平成18年12月8日政府・与党)を踏まえ、平成20年度税制改正において、所要の税制上の対応を行う。
(資料33)
地方団体における徴収体制の強化
(1)民間委託の推進
・ 徴収に関するノウハウを有する民間事業者の活用(滞納者に対する自主的納付の呼びかけ 等)
・ 収納手法の多様化(コンビニエンスストアにおける収納、クレジットカードを利用した納付 等)
(参考)
・ 地方税の徴収に係る合理化・効率化の推進に関する留意事項について(平成17年4月1日付け総税企第80号)
・ 地方税の徴収対策の一層の推進に係る留意事項等について(平成19年3月27日付け総税企第55号)
(2)人員、組織体制の強化
・ 非常勤職員や再任用職員の活用等を通じた人員体制の強化。
・ 滞納困難な事案に集中的・機動的に対応するための徴収対策室などの設置。
・ 未収の税、使用料、手数料等を一元管理する債権管理部局の設置。
(3)滞納処分の強化
・ 滞納者が保有する自動車に対する一斉差押えやタイヤロックなどの実施。
・ 差押財産に関するインターネット公売の実施。
・ 差し押さえた美術品のオークション(競り売り)の実施。
(4)滞納処分等の共同処理・広域化
・ 徴収困難な滞納案件等について、小規模な市町村ごとに徴収を行うよりも効率的・集中的な徴収や滞納処分等を行うため、一部事務組合等を設立。
・ 平成18年7月現在、1広域連合、20一部事務組合において共同処理。
(5)市町村に対する都道府県の職員派遣
・ 徴収や滞納整理に関するノウハウが乏しい市町村に対し、専門的な知識を有する都道府県職員を一定期間派遣し、市町村職員の徴収スキルを向上。
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