評価センター資料閲覧室

第11回 固定資産評価研究大会概要 固定資産評価の効率化に向けて〜IT化:連携・透明・責任〜

パネルディスカッション

「固定資産評価の効率化に向けて 〜IT化:連携・透明・責任〜」

 
 
コーディネーター

 総務省自治税務局固定資産税課長
  大橋 秀行
 
 
パネリスト

 埼玉県上尾市市民部資産税課長
  井上 建一
 
 横浜市行政運営調整局主税部固定資産税課長
  村山 登
 
 朝日航洋株式会社資産情報事業部事業企画室専任部長
  高瀬 忠志
 
 株式会社パスコ技術部固定資産GIS課課長
  今村 裕
 
  総務省自治税務局資産評価室長
  深澤 俊樹
 

はじめに

【大橋】  ただいまご紹介いただきました総務省の固定資産税課長の大橋でございます。よろしくお願いいたします。
 今日は、私は、総務省の立場というよりも、コーディネーターとして、この後、約100分間お時間を頂戴して、今日ここにお越しいただいている5名の方々の議論、意見交換なりを引き出す立場で進行させていただきたいと思います。
 お題として今日いただいていますのは、「固定資産評価の効率化に向けて」ということで、いわゆるIT化というものをもって固定資産評価の業務をどういうふうにして効率化していくことが可能なのか。あるいは現実にどういうような効率化が進んでいるのか。あるいは今後に向けてどういう課題があって、それを行政の立場、あるいは民間企業の立場で、何をなし得るのか、こういう話を中心として進行してまいりたいと思っています。
 今日は、パネラーには、そういう意味で、私たち総務省の人もいれば、自治体で現にその業務をマネジメントされていらっしゃる方もいらっしゃれば、民間の企業の立場でそれを支えてこられた実績を持っていらっしゃる方もいらっしゃいます。なるべくフランクな話を、濶達にいただきたいと思っておりますので、皆様方、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 今日の全体の進行を少しご紹介させていただきますと、パネラーのほうから簡単に10分程度ずつ立場立場でのお話をしてもらおうと思っています。当然そのテーマは、固定資産評価というものについて、ITを利用した効率化とは、いかなるものかというようなことになってくるわけですけれども、当然、固定資産評価業務というものだけを捉まえて今、IT化が進んでいるわけではありませんので、さまざまな部門、例えば都市計画とか、防災といった部分とのシステムの共有の問題であるとか、あるいは効率化という、その、いわば攻めの面とは別に、職員の高齢化が進んでいく、あるいは数が減少していくという中でどうやってそのナレッジ、ノウハウというものをつないでいくのか、そういう守りの面もあると思います。今日ここにお越しの皆様方の中には、自身がそういう問題解決をこれから進めていかなければならない立場から、今日のこの議論を一つの参考にしていきたいという思いで参加いただいている方もいらっしゃいますと聞いています。
 そういう面で、まず、私のほうから最初にお願いとしましては、自治体の立場から固定資産評価の合理化の現状、例えばIT化が現実にどのぐらいに進んでいるのかとか、あるいはそのIT化に当たって何に留意をしているのかというようなことについて、まずご紹介をいただく時間をとらせていただこうと思います。その後、今度は民間の側としていろいろと今、取り組んでいらっしゃることがあると思いますから、それを引き続きご紹介いただくというふうにして進めてまいりたいと思います。

1.自治体における、固定資産評価合理化の現状と課題

【大橋】  では、早速ですけれども、井上様のほうからまずご紹介をいただき、続いて、村山様にお願いをするということで進行させていただきたいと思いますので、井上さん、よろしくお願いします。
【井上】  それでは、上尾市の現状と課題ということをお話ししようと思うんですが、まず最初に、上尾市というのはどういうところであろうかということを簡単にご説明したいと思います。(資料1〜3、P.49、50)
 まず、位置ですが、都心から約35キロメートル、埼玉県の南東部に位置していまして、起伏の少ない平坦な地形でございます。面積は、45.55平方キロメートル、人口は、今年9月1日現在で約225,000人です。平成19年度の実績ですが、土地の評価総筆数は約13万筆です。このうちの約75%に当たる約98,000筆は宅地です。それから、家屋ですが、約63,500棟あります。このうちの約80%に当たる51,000棟が木造で、さらにこのうちの85%に近い43,000棟が専用住宅です。なお、スクリーンにはご紹介していませんが、平成18年新造分家屋は木造1,150棟、非木造273棟、そのような状況になっております。
 土地・家屋の評価、課税の調査を行う体制でございますが、土地担当11人、家屋担当9人であります。資産税課職員の平均在課年数と平均年齢ですが、今年9月1日でそれぞれ2.2年、36歳となっています。在課年数2.2年といいましても、経験年数でいいますと10年以上の者が3人ほどいますので、特に経験不足が問題視されるようなケースというのはありません。上尾市の場合も、年々人事異動のサイクルが早まっておりまして、そのようなことから在課2.2年、こういう状況になっております。
 さて、上尾市の固定資産評価の現状についてお話ししますが、土地台帳、家屋台帳ですが、これはずっと基幹系のシステムで処理しています。基幹系のシステムといいますのは、住民記録でありますとか、市税全般というような市の代表的な業務を大量処理するシステムであります。それで、この基幹系のシステムで土地の画地や所有者の異動、あるいは家屋の所有者の異動といったもの、そういったものを処理しております。家屋の評価計算は、別に家屋評価システムを管理していまして、現在使っているシステムは、平成11年度に導入したものです。家屋評価システムによって作成したデータですが、これは基幹系のシステムに送って家屋台帳に登録しています。それから、家屋評価システムには、建築確認申請のデータも入力しまして、登記済み、評価済みのデータと合わせて評価漏れを防ぐ仕組みもセットしてあります。
 土地の評価替えにおいては、価格の形成要因の調査、路線価図の作成は外部に委託しています。
 GISの活用ですが、平成15年度から固定資産評価専用の固定資産情報システムを導入しています。固定資産情報システムは、データとしては、航空写真、この航空写真ですが、これは毎年賦課期日現在を撮影しています。それから、地番図、家屋図、家屋異動情報を管理していまして、家屋図には家屋台帳の情報もつけてあります。固定資産情報システムは、家屋の新築、増築、滅失、地目の変換や画地の変化というような、課税客体の存在であるとか、変化については、これを把握するためのツールとして非常に有効であるという認識で使っています。
 ただし、土地と家屋では使い方に差があります。土地評価におきましては、あくまで現地調査のほうを重視しています。その現地調査において地目であるとか、画地であるとか、住宅用地の認定、そういうものについて判断に迷うようなケース、あるいは一通り現地調査を行った後、調査結果の確認をする場合に、あるいは現地に出向く前の事前の情報収集ということに利用しています。現地調査の予習・復習に使っていると言っていいのだと思います。上尾市は、区域もあまり広くなく、平坦な地形でありますし、11人の担当で手分けして調査いたしますので、全区域を回っても比較的容易に調査が可能となっています。現在もこのシステムの導入前と同様に、どの土地についても必ず年1回現地に出向いて調査を行っています。土地評価についていいますと、先ほどお話ししたような予習・復習といったようなシステムの使い方でも相当評価の精度が高くなったものと、そのように考えています。
 家屋評価におきましては、家屋の新築、増築、滅失などの異動情報を把握する手段として積極的に活用しています。といいますか、固定資産情報システムそのものが家屋評価中心のつくりになっていると、そのように思います。土地とは逆に、まず、このシステムで未評価の新築家屋、増築家屋、滅失家屋を見つけまして、これらの事情のある家屋の調査に出向くというような流れになっています。このシステムを使うことによりまして、登記されない家屋についての賦課漏れや、既に滅失していて存在しないといったような、そういうものに対する誤った賦課ということは相当防ぐことができています。
 ところで、固定資産情報システムですが、この10月、昨日からですが、統合型のシステムに移行しました。上尾市においては、固定資産情報システムのほか、道路情報管理システム、下水道情報管理システム、都市計画決定情報管理システムと全部で4つのGISが存在していまして、それぞれ固定資産税、市道、下水道、都市計画を担当する部署で別個に管理されていました。情報施策を担当する部署は、前々からこれら4つのGISを統合してデータを市役所全体で有効利用しようという考えを持っていまして、そのような考えから今年度統合が実行されました。統合されたことによりまして、毎年、撮影する航空写真データも市役所全体で利用することができるようになり、全体の事務効率も相当に向上するものと考えられます。システムの管理も、情報施策を担当する部署に移りまして、管理面においても合理化が進んだものと考えています。
 しかしながら、固定資産情報システムの機能自体は変更、改良したわけではありませんので、今後解決すべき問題が残っています。まず、システムそのものに課題がありまして、先ほど固定資産情報システムは家屋評価中心のつくりになっているとお話ししました。固定資産情報システムは、家屋評価についてはまずまず合理的なデータ構成になっています。しかし、土地評価をサポートする機能はついていません。土地評価についてシステムをあまり使っていないのは、使いたくても機能が備わってないからと言ったほうがいいのだと思います。データの家屋図ですが、これはデジタル化されていまして、家屋番号からの検索も可能になっています。また、家屋台帳の登録内容も調べることができます。一方、地番図はデジタル化されていないため、地番からの検索ができませんし、土地台帳の登録内容も調べられません。土地評価における効率化の可能性を考えた場合、デジタル化は急ぐべきであると考えています。また、統合されたGISにおきましては、地番図は固定資産評価だけでなく、ほかの部署でも利用いたしますから、市役所全体の事務効率の向上のためにもデジタル化は必要だと考えています。この場合、費用の問題、費用の捻出の問題がありますが、現状ではかなり困難じゃないかというふうに考えています。
 それから、システムの問題ではないんですが、土地評価事務上の改善課題がありまして、上尾市では、土地の現地調査を10月ころ集中的に行っています。現地を見た上で画地評価をしていますが、10月に調査しているものですから、賦課期日現在の状況とは違います。現在のところ、現地調査のときに工事中であったとか、何らかの変更が予測されるようなケースを除きまして、賦課期日までの2カ月ちょっとの期間の変化というのは現実問題調べてません。この期間の変化は、固定資産情報システムを使えば、1月1日現在の航空写真を撮っているわけですから容易に確認できます。ですから、全件について確認することができるのですから、そのように改善していく必要があるのではないかと考えています。今、お話ししたのは、土地評価における改善点の一例であります。もう従来式の評価のやり方も見直して、GISの活用を前提とした方法に変えていくことも必要な時期に来ているのではないかと、そのように思います。
 以上が上尾市の現状と課題です。
【大橋】  ありがとうございました。
 今、井上さんからご紹介がありました上尾市の人口規模22万ということでありますので、大き過ぎず、小さ過ぎず、おそらく国内には相当数の同規模の市町村、存在するんだろうと思います。どこも同じようなレベルで同じようなことに取り組んでいるわけではなくて、例えば統合GISの話を含めて上尾市は、かなり先進的な事例を積極的に取り進められていらっしゃるんだろうなという感想を持っておりますが、今日、ここにお越しいただいているのは、そういう先進事例をむしろご紹介いただくためというよりは、等身大にいろいろな問題意識をこれまで持たれた、その問題意識に現実にどういうふうに取り組んでいらっしゃって、その中から何を問題として、これからどうしていくのか、そういうことをこの後いろいろと話し合っていただくための、まさに等身大のディスカッション、議論をお願いしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 さて、続きまして、今度は横浜市の村山様にプレゼンテーションをお願いしたいと思っております。非常に大きな街でありますので、また、上尾市さんとは違ういろんな取り組みなり、問題意識なり、お持ちだと思います。よろしくお願いいたします。
【村山】  それでは、横浜市の固定資産税の効率化の取り組みにつきましてご説明いたします。
 まず最初に、横浜市の固定資産の状況について、ご説明させていただきます。資料4(P.51)には平成5年度と平成19年度の一応数字を載せてございます。この15年間の評価対象数、そういうものの推移をあらわしたものでございます。土地について見ますと、97万筆から107万筆、家屋の棟数について見ますと、71万棟から80万棟、それぞれ10%以上増えています。償却の資産件数につきましては10%減となっておりますが、このことは、事業者が減少していることなどを反映したものかというふうに考えております。この中で特に顕著な特徴といたしまして、いわゆる納税者数の大幅な増加でございます。84万人から114万人、この15年間で30万人、36%増えているという状況でございます。このことは、居住形態で区分所有マンションというのがかなり増えているということがその背景にあるのではなかろうかと思っております。
 このように評価対象数、あるいは納税者数の増加というのは、事務量の増加に結びつくわけでございますが、この間の横浜市の税の職員につきましては、平成5年度は458人、これは管理職も含んだ数字でございます。今年度、平成19年度につきましては、399人と13%減少しているわけでございますが、このことは、この間の評価課税事務の効率化の取り組みが一定の効果としてあらわれたというふうに私どもは考えてございます。
 それでは、資料5(P.52)に移りまして、この間の取り組みの推移についてご説明したいと思います。実は、横浜市では、平成元年度から納税通知書に課税明細書を添付して送付いたしました。このことは、明細書の送付は、納税者が自らの課税内容を検証できること、そのことによって課税の透明性を高めるという目的のもとに行いました。その結果、平成2年度に明細書を検証いたしました納税者の皆様からのご指摘によりまして、950件の課税誤りが判明いたしました。これらの評価、課税の誤りの再発防止策の一環といたしまして、そちらに書いてありますような取り組みを行ってきております。
 まず最初に、取り組みましたのが、先ほど上尾市さんにもございましたけれども、課税対象を的確に把握するための手段といたしまして、賦課期日での航空写真の撮影、それと、それに基づきます家屋の経年異動判読にまず最初に取り組みました。それから、次に、土地・家屋現況図というふうに書いてございますが、要は、いわゆる航空写真に基づく家屋の形状と、それから、土地の評価に使っております公図、これを重ね合わせた図面でございます。それをまず整備しました。それによって課税対象をより的確に把握できるという趣旨でございます。さらには、それらの地図に課税情報も結びつけました形で地図情報システムというものを最終的には構築してございます。これらにつきましては、一度にはできませんでしたので、平成3年度から7年度の5年間をかけて整備した状況でございます。
 それから、平成5年度でございますが、課税事務のオンライン化でございます。横浜市は、評価、課税事務につきましては18の区役所で行っております。それまでは入力票等を電算センターに搬入する、いわゆるバッチ処理で行ってきたわけでございますが、このオンライン化によりまして端末機でのデータ入力となり、事務の平準化が図られたということと、あわせて、どこの区役所に行っても、いわゆる固定資産の証明がとれるなど、市民サービスの向上にも寄与したというふうに考えてございます。
 以下、平成6基準年度におきましては、木造住宅の比準評価の導入を行いました。このことは後ほど少し説明させていただきます。
 そして、今回、平成18年度の基準年度におきましては、土地評価替えシステムの導入ということで、土地評価替えのうち、用途地区、状況類似地域の区分、それから、標準宅地の評定、それに比準してのその他路線の価格を評定する、ここまでを先ほどの地図情報システムを活用しまして行いました。これによりまして、評価替え作業につきましても、平準化が図られたかというふうに考えております。
 それでは、次の資料6(P.52)に移りまして、先ほど申し上げました木造住宅の比準評価につきまして、ご説明したいと思います。
 皆さん、ご存じのように、評価基準では、家屋の再建築費評点の算出方法といたしまして、部分別と比準の2方式をとっております。それまで横浜市では、原則といたしまして、木造家屋、非木造家屋については部分別で評価してまいりました。これらの中で評価の簡素化を図り、事務の効率化や、あるいは調査時間の短縮、そういうことを図るために木造住宅等の比準評価を平成6基準年度から導入いたしました。まず最初に行いましたのは、サンプルの収集ということになるわけですけれども、これにつきましては、市内の評価済み家屋約2,000棟のデータを抽出いたしました。このサンプルにつきまして、標準家屋の類型化でございますとか、類型別比準表を作成するわけですけれども、そのためのその調査分析につきましては専門的な知識、技術が必要でございますので、これらにつきましては、事業者の方に委託して行ったということでございます。
 具体的な内容を見てみますと、じゃあ、比準評価の対象家屋はどれくらいかということなんですが、資料6の中段の右側にありますように、現在、木造専用住宅と、それから、軽量鉄骨づくりの専用住宅・共同住宅、面積要件がございますが、これらについて比準評価をやっているわけですが、18年度新築家屋として課税したものは、合計で横浜市内全体で約15,000棟あるわけですけれども、そのうちの1万棟について、今、申し上げました比準評価で評価を行っております。割合としては66%ということでございますので、約3分の2の家屋につきまして比準評価で行っているということでございます。
 具体的な流れにつきましては、まず最初に、各判定項目の分類選択を行います。区分としては、屋根からユニットバスまでの11項目がございます。それらについて、仕上げ内容等判定選択すると。それから、中段に移りまして、当該その評価対象家屋は、どのクラスの家屋、どのクラスの標準家屋に該当するかという選択場面でございますが、そこにも書いてございますように、木造専用住宅につきましては、AからGの7クラスがございます。その判定をするということでございます。それに基づいてタイプ別の評点が決まっております。先ほどの判定項目の格差率、それから、必要な場合は、さらに総合補正ということで、例えば外壁のタイルの割合が標準よりも多いですとか、あるいはロフトがあるとか、あるいは逆に一棟の中にユニットバスが2個あると。そういう場合は減点になるんですけど、そういう総合補正を行う場合もございます。で、先ほど申し上げた、本体単位当たり評点に、今、申し上げた格差率を乗じまして、本体評点を算出すると。建築設備につきましては、部分別と全く同様の方法で行っております。ですので、先ほどの本体評点と建築設備評点を合計して再建築評点を算出するというふうな手順でございます。
 次の資料7(P.53)は、比準評価した場合の横浜市で使っております木造家屋調査表の例でございます。下のほうに、一応先ほど申しました各判定項目の例として、和室、洋室、建具の判定項目例をあわせて下のほうに載せさせていただきました。
 次の資料8(P.53)が、部分別で評価した場合の木造家屋調査表でございます。2枚の調査表を比較していただきますとわかりますけれども、比準評価による簡素化というのは、ある程度この調査表の中からもご理解いただけるのではないかなというふうに考えております。
 時間につきましては、調査から評価計算まで、従前の部分別に比べまして、ちょっとその人の技術にもよるんですけれども、半分ぐらいにはなったのかなというふうな形で捉えております。
 時間の関係で、その後、家屋の経年異動判読事務と、それから、土地評価替えシステムについてそれぞれ資料を用意させていただきましたが、時間の関係もございますので、そちらはちょっと省略させていただきます。
 航空写真の撮影なんですけれども、先ほど上尾市さんは、たしか毎年度行っているとおっしゃっておったと思いますけれども、横浜市につきましては、3年に1度、基準年度の賦課期日に行っています。したがいまして、賦課漏れですとか、滅失漏れの把握のために家屋の経年異動という作業をやるわけですけれども、それは3年間のデータをまとめて基準年度に行うというふうな形で実施しております。
 最後に、課題といたしましては、これまで説明してきましたように、評価資料、あるいはシステムを使って効率的に実地調査を行って、評価、課税の適正化を継続的に推進するということがやっぱり大事かなと思います。それから、もう1点としては、いろいろなシステム等を使っているわけですけれども、システムの標準化ですとか、簡素化などを通じてコスト削減というものが一つの課題になっております。
 横浜市の取り組みとしては、以上でございます。
【大橋】  はい。村山さん、ありがとうございました。
 時間の関係があって十分説明をいただけてない部分もあろうかと思いますが、おそらくこの後、パネルの中で、議論の中で折々またご説明いただくようなこともあろうかと思いますので、ひとまず前に進めていきたいと思いますけれども、いずれにしましても、木造住宅の比準評価、あるいは土地評価替えのシステムというあたりに、いわゆるITというものを活用してきていると。そこからいろいろな現実的な効用も生まれてきているし、一方で、解決していかなければならない課題というものも浮かび上がってきているだろうと思います。

2.民間企業から見た、固定資産評価の合理化

【大橋】  このあたりを受けて、さて、今度は、実績としてこれまで民間の立場から自治体の業務の効率化ということを推進してこられた企業を代表して、朝日航洋さんとパスコさんに今日は参加をいただいております。ついては、お二方に自社の今までの取り組みなどを少しご説明いただきたいと思っておりますので、まず、高瀬様からでよろしいですか。じゃあ、高瀬様、引き続いてよろしくお願いいたします。
【高瀬】  ただいま紹介いただきました朝日航洋でございます。今日は、このような場でちょっと宣伝じみておりますが、私どもが実際今までどのような業務をさせていただいているのかと。今まで、先ほどまで上尾市様、横浜市様から実際のお話しをいただきましたが、当然全国の市町村さんにおきましてはそれぞれ特徴がございますので、ちょっと変わったやり方といいますか、一般的なものを含めてそういうご紹介をここでさせていただければと思います。
 一般的に、通常支援業務ということでやらせていただいております業務の範囲というものを資料14(P.57)に載せてございます。航空写真の撮影から始まりまして、土地評価業務用の資料作成、家屋の比準評価システム、あと、業務の支援ができるようなツール関係までを一般的にやらせていただいております。
 一例としまして、土地利用のサンプル図(資料15、P.57)を載せさせていただきました。このような形で、今まではどちらかといいますと、宅地を中心にしました資料の作成というものをさせていただいておったんですが、昨今ですと、どうも市町村合併の関係もございまして、宅地以外の、要は、俗に言う農地ですね、田畑山林の状況類似の設定、説明用の土壌図を含めましたバックデータとしての基礎資料の作成というようなものが整備ということで求められてきております。この3枚はそちらのイメージとしてサンプル的に提示させていただいております。
 続きまして、時間の関係でかなりはしょった説明になって恐縮なんですが、先ほど横浜市さんの話の中にもありました家屋の比準評価(資料16、P.58)です。大体こういうようなサイクルで、基礎分析から評価項目の抽出、クラス分け分析、格差率設定分析、精度検証、それと、最終的には評価替えごとにやはり部分別評点が異なってまいる場合がございますので、それを生かした形でのメンテナンスというようなサイクルでやらせていただいております。サンプル的にちょっとグラフ等載せてございますので、このような形の分析を繰り返し行いまして、もちろん最終判断は業者の私ども、できませんので、市町村さんのご意見を聞きながら繰り返し作業を行っていくというような例ということでご理解ください。
 続きまして、償却資産(資料17、P.58)です。実は、なかなか償却資産の作業といいますのは、お手伝いさせていただくケースがほとんどなかったんですが、たまたま土地の地目、もしくは家屋の異動客体調査の作業の一環として、航空写真の判読で償却資産の把握ができないかというようなお声をいただきまして、試しにやった例というものを今回ご紹介させていただいております。昨今ですとオルソの写真がありますので、真上からの撮影というものになりますから、かえって看板とか見づらくなってはきているんですが、逆に、いわゆるコインパーキング、駐車場の整備といいますか、コイン、計算をするための機械、もしくはアスファルト舗装の有無等は十分わかりますので、それらの参考資料としてお出しできるかなと思っております。残念ながら、償却資産に関しましては、なかなかそこの所在地番がといいますか、そこに所在しているものがその所有者が持っているものだということではないケースが結構多いものですので、あくまでも参考程度しか出せないんですが、このような形のものを載せさせていただいております。
 続きまして、業務支援システムの一例(資料18、P.59)ですが、従来、私どもも、どちらかといいますと、システムといいながら、参照を中心としたようなシステムというようなことが多かったんですが、あまりGISにこだわらずに、業務を本当の意味でフォローできるようなツール群をつくるべきかなということで、これをつくりました。スマートアシストと言っておりますので、今日、実は5階のデモブースでも展示してございますので、もしご興味がある方があればご覧になっていただければなと思います。分合筆から始まりまして、ここにありますように、写真も出てまいりますので、地目のある程度の確認、それと、最終的には画地条件の取得、所要の補正の入力まで含めまして、ホストに送るデータが一通りでき上がると。それもナビゲーションの機能をある程度持たせておりますので、その流れに従ってやっていけば、とりあえずはでき上がるというような流れになっているシステムでございます。
 続きまして、資料19(P.59)は、変わった例としまして、昨今ですとオルソの写真とかあるかと思うんですが、それに国のほうで整備しております50メーターメッシュの高さデータを使いまして、立体的に表示したらどうなるのかなというような形でつくったものです。これ、今、例えば等高線といいますか、高さによって色分けをしたり、当然立体図ですから、このような形で立体的に見ることもできます。直接これが作業に使えるかどうかというのはまた別次元の話だとは思いますが、住民の方々への説明の材料の一つとしては十分使えるかなと思っておりますし、作業的な話でいいますと、今、線を引いておりますように、例えば低地の部分だけを別な状況類似に分けたらどうなるのかなというようなチェックを含めました部分に使えていくのかなと思っております。ちょうどこれで今、青の線になりましたけど、低地の部分だけですね。ここだけを別な状況類似にするかというところだと思います。
 あと、もう1点、実は、当然高低差はわかりますので、今、直線を引いておりますが、この直線の部分、どのような傾斜になっているのかなというようなことが調べられます。先ほどの線のところを、こんな形で線を引いた形に従いまして断面図というような形で出せますので、その地域がどのぐらい傾斜しているのかなというような形の資料としても使えるかなと思っております。この資料、先ほど最初に言いましたとおり、50メートルメッシュのデータでつくっておりまして、これから地理情報表示の関係もあって、国のほうで5メーターメッシュを今、推奨しておりますので、当然5メーターメッシュになれば、より精度の細かい、精度のよい高低差がわかりますから、路線、例えば傾斜度合いとかというような要因、もしくはより細かくなれば、筆と路線との関係、接面道路の高低差含めまして、そちらまでの拡大が可能かなというふうには考えております。
 最後に、私どもなりの外部委託に関する意見ということで簡単にまとめさせていただいております。
 まず、外部委託の範囲なんですが、こちらに関しましては、私ども、業者としましても、基本的な分担は総務省からの通達のとおりだと思っております。つまり、評価の作業にかかわる資料づくりまでは十分いろいろな面でお手伝いできますが、その決定及び賦課業務に関しましては、市町村様のほうにお願いせざるを得ないだろうと。
 ただ、外部委託することによりまして、もしくはIT化することによりまして、生じた時間的な余裕というのを、私どもとしましては、住民説明を考えますと、現地調査をより充実させることで生かしていけるんではないかなというふうに考えております。
 2番目としまして、データの標準化と広域評価など、ここ数年の評価センターさんの報告にもありますが、それの泥臭い部分だということでご理解いただきたいんですが、標準化はぜひともさせていただいたほうが業者としてもありがたいというのが本音なんですが、実は、標準化に向けてつまらないことなんですが、評価方法の細部の統一が必要な部分があるんじゃないかなというところを懸念しております。例えば路線価の算定でも掛け算でやっている市町村さんと足し算でやっている市町村さんがあるような形で、単純に計算の式が少し違ってくるとか、そういう初歩的な部分の統一性がある程度必要ではないかなというふうに考えております。
 同じように、2番目としまして、広域評価実現に向けましては、法令上の部分も若干ちょっと変えていただくなり、ご検討いただく必要が出る部分があるのかなという。例えば家屋の比準評価の場合には、標準家屋は一応市町村さんの内部にある家屋から選ぶという形になっておりますが、それを、例えば広域的に見た場合に、隣の市町村さんが選ばれた標準家屋を使って比準評価はできるというようなことになれば、広域評価の実現はより進むのではないかなと。
 最後に、異動更新関係に関しましては、先ほどの現地調査にも絡みますので、これはもし人的余裕が市町村さんのほうにあるのではあれば、私どものほうはツールを極力整備させていただくことで、実際にそれを使って処理をされるのは市町村様というほうが、住民説明のための現地調査を含めまして効率がいいのではないかなと。市町村さんの規模にもよりますが、それらのことを考えております。これらにつきましては、この後のディスカッションの中でも多分絡んでくると思いますので、とりあえず今の時点では私の発表ということで、以上で終わらせていただきます。
【大橋】  はい、高瀬さん、ありがとうございました。
 今の話の中にありましたのは、昨今のIT技術というものを使うとこういうことができるんだ。そのできる可能性というものの提示というよりは、むしろ現実にこういう、いわば商品を既に高瀬さんのところは提供されていらっしゃると、こういうご紹介があったと思います。では、自治体側から見てこういうものがどうなのよという話はまた後に譲るといたしまして、制度面の問題としての外部委託云々という話、これも後ほど総務省のほうに少し水を向けて、このあたりの議論もしてみたいと思っているところですが、まずは、パスコの今村様にも引き続きプレゼンテーションをお願いしたいと思いますので、それからディスカッションに入っていこうと思います。よろしくお願いします。
【今村】  それでは、パスコから引き続きお話をさせていただこうと思います。
 IT化の実績を有する企業ということでお呼びいただきまして、非常に感謝いたしております。私どもも、朝日航洋さんと同じく、もう昭和60年ぐらいには固定資産の分野に参入しておりまして、いろんな自治体さんとお仕事させていただくことができております。もともと測量業に分類される会社なんですけども、そういった会社が固定資産に参入できたということは、評価の仕組みを自らのものにするために努力したという部分もあるんですが、ITというものに対して比較的積極的に投資をかけてきた、その先行利得というんでしょうか、そういったものがあるかなと思っています。ですので、皆さんに参考になる情報かわかりませんけれども、いろんなチャレンジがありましたよというお話をさせていただこうかなと思います。
 では、まず最初に、ちょっと歴史を振り返りたいと思います(資料22、P.61)。課税台帳の電子化ということで、オフコンが広く導入されたと思います。大量のデータを扱って計算し、印刷すると。まさにコンピューターが一番得意とすることなんですね。やっぱり、固定資産税の仕事というのはITに向いているとつくづく思うところです。ただ、計算して印刷するだけであれば年金と変わらないじゃないかということもあります。私どもが加わってこれたのは、まさに固定資産そのものを扱えたこと、例えば地図ですね、そういったものが扱えたことということがかなり大きな理由になっているかと思います。どこをとか、何を評価したかということが視覚的にわかるサービス、こういったものを多く喜んでいただけてきたのかなと思っております。
 地図の電子化が進んだということですけれども、ヤフーとか、グーグルとか、そういうものをイメージしていただければよろしいかと思います。パソコンの浸透もありまして、今、検索サイトのベース・コンテンツで一番人気あるのは地図というように挙がるような状態です。それと、私どもの会社の営業マンがやたらオルソオルソとついて回ってご説明するようなことも多いかと思うんですけれども、ちょっと前まではできなかったレンズのひずみなどを補正するような革新的な技術があって、航空写真がすごく見やすくなったと、そういうことも、例えばグーグルアースみたいなものをイメージしていただければすごいわかりやすいかと思うんですね。あれをご覧になったら、もう私なんか神様の気分になったような気になりましたが、皆さんも一連に連なった航空写真というのをご覧になったときに、もうこれからはこういう時代だというふうに思われたことじゃないかなと思います。私どもは、もともとITに向いていたところにこういう商品提供して参入できていったということになります。
 じゃあ、次(資料23、P.62)、お願いいたします。
 今、こうやって振り返ると、固定資産、ITに向いていると断言できるんですけども、10年ぐらい前からもう既に統合型GISという商品はございました。当時私どもも、道路ですとか、上下水ですとか、都市計画ですとか、そういったものに広く花が咲いて統合型GIS万歳という時代が来るのかと思っていたんですが、この10年実際見てみて、販売実績からいうと6割強が固定資産なんですね。固定資産と同じように、地番図をベースマップにしている農業委員会さんが使うようなGISを含めると、実際75%ぐらいがこの土地絡み、固定資産絡みのGISになっています。こういうGIS、たくさん納品してまいりますと、ほかの種目と明らかに違うのは、常用される割合が非常に高く、たくさん使っていただいているという感じがします。たくさん使われるがゆえに、当然いろいろ、「いや、もっとこうのほうがよかった。」ということも多いですから、そういうニーズとシーズの切磋琢磨で私たちも育てていただいたんではないかなと思っております。
 固定資産のIT技術(資料24、P.62)、ほかより一歩進んで常用されてきたわけですけれども、やはり情報照会ではなくて、情報収集するというところに強い動機があったんじゃないかなと思っております。GISでIT化をお勧めするときに、都市計画のデータも見れますよっていうお話をしたときに、ほとんどお客さんの心にさざ波を立てるようなことはできなかったんですね。それよりも問い合わせに早く答えたいとか、正確に評価したいということに、正確にお答えする技術提供することで、私たちもお仕事がいただいてきたと思っております。情報収集、評価という部分が大事だと思います。先ほどもそのようなご説明があったように記憶しております。
 IT化で、実際検討段階に入りますと着目されることですが(資料25、P.63)、まず、資料への疑問ですね。もう今どき、車の助手席で地図を見て泣きそうになっているということはあまりないと思うんですね、ナビゲーションもあります。ですけれども、まだまだマップロッカーの前で奮闘しているということはよくあることなんではないかなと思います。そういうふだんの感覚とちょっと違う部分、そういったところを解決したいんですけれども、一般のインターネットと違うのは、皆さんの使いたい地図がどこにでもあるわけではないということが問題かと思います。そういった段階を踏まなければいけませんので、当然先行投資、地図電子化整備みたいなことがやはり課題になってくるかなと思います。業者として、その辺に対してより競争力のあるご提案をしたいというふうにも思っております。
 それと、評価技術のほうなんですけども、もうエクセルとかそういったものを使った後で、紙で資料をつくるというような感覚はやはりもう皆さん持っていらっしゃらないと思うんですね。三角スケールももう廃れるでしょうし、キルビーメーターももう廃れるだろうと思うんです。ただ、そういう古い道具が悪いというわけではないと思うんです。やっぱり人為的なミスを潜在的に減らせる、ちょっとしたノウハウが記録できるという意味で、コンピューターにそれを置きかえておくことということにこだわりを持たれた方と過去たくさん私はおつき合いしてきました。そういった部分が実際商品を育てたというふうにも思っております。最初は、IT化が切り口なんですけれども、だんだん地図を見直したり、また、機能を見直したりということでスパイラルを繰り重ねて業務のフローが改善していくというのは、導入されたどのお客さんでもよく見れることです。
 次(資料26、P.63)、お願いします。
 具体例として3つほど挙げさせていただきます。
 1つ目が、画地の評価をIT化するというところです。これについては、別に当たり前じゃないのと思われるかもしれません。この提案でどこがキーだったかというと、地番図の整備を民間委託にかけているという、ちょっと「あれっ」という部分ですね。なぜかというと、東北だとか、九州みたいな国土調査の済んでいるところは問題ないと思うんですけれども、公図が混乱している地域で職員の方が自ら加除修正やられるとすると、ものすごい労力になるんですね。そういうところは定型的であるし、委託をかけ、画地認定については、何をおいても職員がやるべきだという強いご意見がございますので、その辺のすみ分けを考えた提案ということで、実際これを採用していただいたお客様には、残業の縮減といいますか、そういった形で効果あったよというふうなお話はいただいております。
 次(資料27、P.64)に、家屋調査についてIT化したという部類ですね。従来ですと、家屋の異動判読とか、あと、登記が上がってきたり、建築申請が上がってきたり、それから、自分たちで評価した評価台帳があったりと、いろいろな様式の資料がばらばらであったと思うんですね。それを標準化、電子化するだけではだめなんですね。例えばDMなんかは電子データですけども、あれはGISのIの部分がかなり欠けています。何かを検索しようとしてもなかなか検索できません。皆さんが使いたいと思われるのは、GISのIの部分が強くないとだめなんですが、そういったところを標準化するという努力をすることで、実際の現地調査の残の把握ですとか、計画的な人員配置ですとかということが達成できて、何より安心感、「あと幾らある」というのが見えるというところに非常に安心感があるというふうなお話をいただいております。
 土地評価(資料28、P.64)ですが、これについては、宅造に伴う路線の追加だけではなくて、評価替えもできるというようなシステムで導入はいたしました。しかし、そういう評価替えをシステムでやる職員を抱えていらっしゃる自治体はそう多くないんではないかなと。ですので、どちらかというと、そういう大きな自治体さんの時間的なメリットよりも、評価技術を皆さんの手に戻すというようなところで重要だったかなと思っております。お話を伺っていると、土地価格比準表というのはちょっと見えづらいようなご意見をよく伺います。しかし、地価形成要因の調査ですとか、現地の調査というのは、委託業者よりも職員の方がよくやられているということもございますので、場合によっては、こういったシステムで職員の方が路線の開設、画地認定、画地計算、一連でぱっと終えて、おおよそ、「ああ、幾らぐらいの評価額なんだな」ってつかめるという、楽な部分が感じ取れていただけるということで、そこそこ評価をいただいたということがあります。
 まとめ(資料29、P.65)ですけれども、今、ご紹介したのは、画地、家屋、土地評価、ばらばらです。IT化は、それぞれ自治体さんによって課題も違いますので、処方せんは私は一つではないんだろうなと思っております。皆さんとしては、パッケージ商品とか、ランニングコストの安い商品ということで、できるだけ「1回買ったらおしまいね」というふうなことを願われるんだと思うんですけれども、使われる方も異動すると、その使われる新しい方の意見というのもそれぞれ変わってきたりして、それなりにこういうシステムは動きます。やっぱりエクセルを買うわけでもなしい、ホストを買うわけでもない。どちらでもない、その中間ぐらいのシステムを皆さんは望んでいらっしゃるような気がするので、私どももよくよく打ち合わせさせていただいてふだんご提案しているというようなことです。
 やっぱりそういうことをしていますと、課題として思うのは、まず、自治体間でこういったものに対する情報が気楽に検索できる、手に入るというようなことがあれば、まず、私どもが出しゃばらなくてもある程度業務計画は進むのかなというふうなことを思うことが多うございます。
 以上でございます。
【大橋】  はい。今村さん、ありがとうございました。今の話の中で、ニーズとシーズの話が出ていたと思います。ここまでの話、今のITを使ってどういうことができるのかということをいろんなケース、ご紹介いただきましたし、今の話の中で画地評価、あるいは家屋評価、あるいは土地評価という具体的なIT利用のその事例ということもご紹介をいただきました。

3.自治体から見た、IT技術活用への課題

【大橋】 さて、ここからいよいよパネラーの方々のディスカッションに入っていきたいと思いますが、今日のテーマは、固定資産評価の効率化に向けてITというものがどう生かし得るか。あるいは課題は何か。そのあたりを少しでも掘り下げていきたいというのがテーマでございます。したがって、せっかく今、朝日航洋さん、あるいはパスコさんから、こういうシステムが今、商品として提供できる、すなわち、自治体側が望みさえすれば、これを利用できる状態にあるということでありますので、では、自治体の立場の方にお聞きしてみたいと思います。
 今のご紹介をいただいたシステム、もちろん初めて目にするというなものではなくて、常日ごろの業務との関係の中で、何を目的としたシステムか、どういうメリットがあるのかということは重々ご理解いただいているんだろうと思いますが、現実問題として、では、こういうシステムを自治体としてどういうふうに活用していきたいと思うか。あるいは活用していくためには何が足らないというふうに感じていらっしゃるか。このあたりのことを少し意見交換という形で話を展開していきたいと思いますので、まず、村山さんのほうに水を向けたいと思います。
 いろんなコストの問題とか、あるいは住民の方々への説明責任の問題とか、いろんな問題があろうかと思いますが、今まで取り組まれてきたIT利用ということの実績とこれからの展望を踏まえて、お二方の今のプレゼンテーションについて少しコメントを寄せていただけますでしょうか。
【村山】  横浜市のIT化につきましても、専門的な知識、技術を持ちます事業者の方の協力をいただいてこれまで実施してまいりました。今、伺った両社の提案からは、技術的にはさらに高度な利用が可能であることが十分わかりました。
 一方、横浜市では、これらの取り組みの背景といたしまして、評価、課税の適正化と納税者への説明責任を果たすことがポイントでございました。そういう経過からしますと、ITを活用した評価資料でありますとか、あるいはシステム、これらを道具にしまして、調査、評価、課税、納税者説明を一連のものとして行うことがやはり大切じゃないかなというふうに考えております。
 もう一つ、コストの関係でございますが、これにつきましても、横浜市として大きな課題でございます。例えば一度システムを導入いたしますと、その内容ですとか、あるいは事業者さんを変更するということがなかなか難しいと。そうした中で競争が働きにくいというふうな問題もあるんじゃないかなと思います。そういうものを解決する一つとして、標準化といいますかね、そういうことの中でこれらの問題がある程度解決するとか、そういうふうな面で事業者、専門家の助言をいただければありがたいなと思います。
【大橋】 ありがとうございます。今のご指摘の中に一連のものとして、あるいは事業者間の競争のための標準化、こういう問題提起をいただいたと思っております。このあたり、また後ほどパスコさんなり、朝日航洋さんにも少し水を向けてみたいと思いますけれども、その前に、井上さんにはもう一つご意見をお聞きしておきたいと思いますのは、横浜市さんの場合には非常に大きな市でありますから、こういうシステムの導入に対して、予算面も含めていろんなその対応の仕方というのが可能性としてはより広がっているんだろうと思います。
 一方で、小規模自治体の場合に、こういうものができるのはわかるけれどもと。しかし、現実にそれを導入しようとすると、いろんな問題がそこに顕在化してくるという気もいたします。そういう面で、その小規模自治体の立場に立ってお答えいただくとすると、こういうシステムの導入ということにおける問題点というのが一体どういうところにありそうなのか。このあたりを少しコメントいただければと思いますが、いかがでございましょう。
【井上】  パスコさん、朝日航洋さんの2社の方からIT化の事例、それで、今あった話というのは、ここまでできますよ、あるいはこういうやり方はどうでしょうかというようなお話であるというふうに理解しています。しかし、今、ご紹介いただいたような事例というのは、大都市、あるいは人口、課税客体、そういうものが多い自治体には多分向いているのじゃないかなと思いますが、ちょっと小規模な自治体には、お金をかけてここまで用意する必要があるのか、あるいは本当にこれで効率、逆にそのシステムを持つことが重荷にならないかって、そういう気もするわけです。面積も小さくて、土地の異動も少ない団体におきましては、画地評価をシステム評価で行うとしても、対象自体が少ないですから、かける費用のことを考えれば、これは合理化にならないと言えると思います。
 それから、家屋調査における情報集約なんですが、調査待ちがある程度件数が多ければいいと思うんですが、あまりなければ合理化されたというところにはいかないんじゃないかな、そういうふうにも思います。
 それから、家屋比準評価の提案なんですが、年間、たしかおよそ800棟ぐらいの新築家屋があれば費用対効果でもプラスじゃないかというお話があったと思うんですが、上尾市の場合、人口22万人ですが、この規模でも、しかも、上尾市の場合、都内から転入者が非常に多いというような、そういう状況もありますが、そういった上尾でも家屋の新築というのは年間1,500棟ぐらいです。ですから、800棟にいく自治体というのはそれほど多くないのではないか、そのような気がします。
 また、これは予算規模なんですが、当然小規模な自治体がIT化を進めるに当たっては、使える金額というのが非常に小さくなってしまう。そういうものがあると思います。
 それから、自治体の規模の大小に関係ないことですが、私、最初のほうで基幹系のシステムで台帳を処理していると、家屋台帳、それから、土地台帳、そういうものはそのシステムにあるというようなお話ししましたが、その既存のシステムとの関係、その辺の調整をどうやっていくかという問題もあると思います。うまく言えませんが、賦課計算、台帳管理、画地計算などを行う既存の基幹系のシステムが従来からありまして、そのシステムの守備範囲にIT技術が進歩した結果、食い込んできたというところじゃないかと思いますが、自治体としてはもともとあったものをどうしようかという、そういう問題もあると思います。
 私のほうで気がついた点というのは以上です。
【大橋】 ありがとうございます。今、いろんな問題を多分提起いただいたんだと思います。いずれもまさにその業務の効率化ということを考えていくときに、単にバラ色のものを共有していくということにとどまらず、むしろ、現実にそれを導入する立場に立って予算をそこに向けていく。当然そのためには相応のメリットということが内外に説明できなければならないわけですから、一つの効率化の手段としてITというものを捉えますときに、それを商品として提供されていらっしゃる企業の方々には、むしろ今、提起されているような問題に対して一つ一つ答えを出していってもらわなければいけないんではないかと思っています。

4.コストと効率

【大橋】 そういう面で、今、指摘のあった話、取りこぼしがあるかもしれませんが、幾つかこの後、掘り下げていってみたいと思いますけれども、まず、今の話の中で、もともとこういうシステムというのは買えばおしまいというものではありませんので、むしろ、買った後、このシステムを維持していくため、いろいろなコストがかかってくるだろうと。一方で、特に中小の自治体にとってみると、本当にそれだけの可能性がそれによって生まれてきて、効果を上げることができるのかということに対する不安、心配というものがあろうかと思います。
 こういう導入コストという問題について、当然導入する側は、少しでも安く、少しでも簡単にこれを導入し維持していく、そういうサービス、商品というものを求めていると思うんですけれども、この点について、サービスを提供する側の企業として、どういう提案、あるいはどういう取り組みを進めていらっしゃるのか、少しご紹介をいただくようなことは可能でしょうか。この先、どちらにというわけではないんで、適宜マイクを取ってお話をいただければと思いますが、いかがでしょう。
【今村】  やっぱりコストの問題というのは、何を求めているかということとの交換だと思うんですね。私たちも10年近くこういうことをやってきますと、それこそ小さなガレージしかお持ちでない自治体さんにジャンボジェットを持っていったというようなこともないわけじゃございません。そういう失敗をしてきて、やっぱり思うのは、「あそこに家、建ったことは知っているよ」というような自治体さんと、それこそ、「もう写真撮って異動判読でもしなければ何もわかんないよ」というような自治体さんは、同じ商品ではないんだろうなというふうには思います。とはいえ、じゃあ、みんな一個一個個別化して話を難しくしましょうということでは、やっぱりもう今の時代性にも合わないと思います。企業側の努力として、標準的なものについては安くできる努力というのは必ず重ねていかなければいけないというふうには思っています。今日ももう既に何回かお話で標準化みたいな言葉が出ておりますが、まさにそこは痛感しているところでございます。
 それと、機能というのは、コンピューターのことですから、人間のやった手順というのは何でもプログラミングしようと思えばできるものだと思います。それこそ微に入り細に入りつくることはできるんですけども、そこをすればするほど維持費、例えば5年間それを維持しようとすると、それなりの保守だとか、システムの運用教育とかいうのも必要になりますので、私たちも、シーズは大きいとはわかってはいるんですけれども、まずニーズをお聞きするところから、でいかなければいけないのかなというふうに今、思っているところです。
【高瀬】 ちょっと補足といいますか、私どもなりに思っていることでいいますと、結局GISとか、IT化とかいっても、私は電卓だと思っているんですよ、格好いい簡単な言い方をしますと。より効率がいい、つまり、今まで暗算で計算していたのを間違いなく計算できるような電卓がありますよと。それがGISになってきましたよというだけかなと、極論で言うと思います。ですから、先ほど私、説明の中でナビゲーションのついたシステムをつくりましたというのは、ご紹介しましたけども、あれももっと端的な言い方をしますと、地目の認定が間違っていれば、間口、奥行きをとるのかとらないのか変わってきちゃいますよね。けど、そこが一番問題だと思うんですよ。ですから、システムでできる部分とできない部分があって、じゃあ、それに対してどういうチェック機能を使われる方々がご理解されていらっしゃるのかなという点が1点。
 それと、システムにどこまで、先ほどの話ですから、複雑にすればするほどメンテナンス費用は正直言うとかかります。それを今度は、逆に業者である私どもは、本当に各市町村様を回りまして、どのシステムが一番効率的かなと思えるものを適宜提案するという気持ちを失っちゃ終わりだなと。私どもだけではなく、多分お隣のパスコさんも基本的にはその2つは同じ考えだと思います。抽象的なちょっと言い方でしかできないんで恐縮なんですが、以上でございます。
【大橋】 はい、ありがとうございます。

5.IT化や民間委託に関する制度整備の方向性

【大橋】 この辺でもう一方、参戦いただこうと思います。総務省のほうに水を向けてみたいと思いますけれども、今の話の中で基幹系のシステムの話が出ていました。それとの整合を考えていかなければいけないと。特に統合システムなどを今後展開していこうとされていらっしゃる自治体にとっては非常に大きな問題だろうと思います。また、自治体の取り組みは、当然さまざまな制度的な制約、制限の中でいろんな縛りがあります。単にこれは住民の方々の安心のため、あるいは安全のために設けられた制度である場合もあれば、行政上のさまざまな必要からあるものもあろうかと思いますが、いずれにしても、この制度論ということについても、しっかりと見据えながらこの業務の効率化ということを考えていかなければならないと。これは、当然我々自身の自戒の念を込めて課題として認識をしている部分でありますが、ここで深澤さんのほうに少し、そういうシステムデータの標準化の問題、あるいはそれを含む制度面でのさまざまな課題ということについて、総務省としてどういうふうに今、考えていて、どういうことをこれから取り組んでいこうとしているのか。そのあたりをまず少しお答えをいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
【深澤】 IT化とか、民間委託という問題になろうかと思います。古いデータで恐縮ですけれども、平成17年の7月現在で市町村の税務職員は全国で6万人おります。このうち固定資産の評価を担当しているのが、この約4分の1で15,000人おります。一方で、例えば県の税金を100円取るのにどのぐらいかかるかというと、大体1.96円という数字が出ております。固定資産税を100円取るのには3円強かかっております。評価に携わる人間が大変多いということ、また、比較的固定資産税は徴税コストが高いということ、こういったことを考えると、やはりIT化、あるいは民営化によって、できれば職員を削減するなり、事務の効率化を図っていくということは必要なことだろうという基本的な認識を持っております。
 また、先ほど上尾市さんのほうから、職員構成の話がございましたけれども、アンケートをとってみましたら、これは人口10万人以下の市町村でとったデータですけれども、固定資産税を担当する職員の半分ぐらいは経験年数が3年未満というデータもございます。これを人材の育成をしていくというのも、ベテランも少ないということで大変だなという状況でございます。
 これも民間委託等によって民間の知恵をおかりする、専門的な知識を確保すると、これを継続的に確保するということは必要なことだろうと考えて、今年の3月末に、実は固定資産税課長から、こういったことについては民間委託ができるでしょうというふうな通知を差し上げたところでございます。その通知によりますと、もう既にやっていることですけれども、例えば航空写真の撮影だとか、評価計算ソフトの作成だとか、あるいは家屋の比準評価システムの資料の作成というようなことは、民間委託に大変なじむのではないかという、そういった文書を差し上げているところでございます。こういった民間委託ができると考えられるか、できないと考えられるかというところの境界線は、やはり公権力の行使というところがそのポイントになるのだろうと思います。
 公権力の行使に該当しない事務、例えば航空写真の撮影などは民間への委託に適するということですけれども、そうであれば無条件に民間に委託していいのかということになりますと、やっぱりそうでもなかろうと思います。固定資産税の評価というのは、課税の前提になる行為でございます。裁量的なこと、あるいは判断的な要素、こういったものが相当含まれるわけでございまして、不正が発生したりだとか、あるいは情報が漏えいしたりだとか、利害相反だとか、さまざまな可能性が生じてくるわけでございます。ですから、無条件に参入を認めるということではなくて、法律上の根拠、そして、一定の規制というものが必要になるのであろうというふうに考えております。
 そういうわけで、IT化、あるいは民間委託を進めていく上で、その前提となる環境を整備していかなくちゃいけないと考えるわけでございますが、その環境整備を3段階にわたって整理したものが去年報告書にまとまっております。若干ご紹介したいと思います。
 3段階といいますのは、まず、民間の事業者の方が参入する第1ステップでございます。事業者に参入していただきまして、毎年毎年事業者が変わるというのは必ずしも好ましくないと思いますけれども、逆に、特定の事業者がもう毎年既得権のようにやっていくと、他の事業者の参入を困難にするということで好ましくないということでございます。ですから、競争入札によるのが基本的に好ましいわけでございますけれども、能力があまりないといいますか、こういうパスコさんとか、朝日航洋さんはそんなことはないんですけれども、安かろう悪かろうの業者がまた参入してきても、これ、困るということでございます。ですから、第1点目、整備するべきは、やはりモデル仕様書のようなものを整備する必要があるのではないかと考えているところでございます。
 また、業者が年によって変わったりもいたしますので、その引き継ぎのマニュアルなども整備が必要だろうと、これが第2点目の整備の必要なものでございます。
 また、場合によっては、その事業に参入する際に資格要件を設けるということも検討する課題だろうというふうに考えております。
 これが参入の時点での環境整備ですけれども、第2ステップとして事業を実際民間事業者がやっていく際の適正さを担保するといいますか、そういった環境整備も必要だろうと考えております。民間委託をした場合に、公務員と同じような仕事といいますか、仕事内容が公的な仕事に近いわけですので、それなりの制約、規制が必要であると同時に、一方で、例えば公務執行妨害罪とか、そういったような保護も必要であろうと。規制というのは、守秘義務だとか、盗用禁止だとか、そういった規制が必要だろうということでございます。
 事業が終わりまして、第3ステップになりますが、事後の対応といたしましては、審査委員会での弁明ですとか、納税者への説明ということが出てまいるかと思います。ここで公権力の行使を伴わない仕事をしている民間事業者の方がどのような説明ができるか、補助的な説明になろうかと思いますが、どのような説明ができるか。説明をだれがどの場面でどの程度するかというシステムをあらかじめ構築しておく必要も、これ、あるだろう。構築しておく必要もあるでしょう。また、さらに事後の対応といたしましては、民間事業者の方が作成したその評価資料が、故意あるいは過失などによりまして不正なものであったという場合の何らかの制裁措置というようなものも準備をしておかなくちゃいけないだろうと。そのようなことでございます。
 また、一方で、評価でございますので、評価がバランスがとれたものでなければならないというのは当然でございます。民間委託ということになりますと、市町村が全部を評価している場合と異なりまして、例えば年度によって事業者が変わる場合もございます。あるいは同じ年度でも広い市域にわたって複数の事業者が委託を受けるというような場合がございます。そのような場合がございますので、そういった業者間の評価の均衡というものをとるために、統一的なマニュアル、事業者間での引き継ぎマニュアルを作成するということが不可欠であろうと思います。
 一番いいのは、評価基準をうんと簡単にして、だれが見ても同じ答えが出るというものがいいのかもしれませんが、逆にあまり簡単にし過ぎますと、また、公平性の観点から問題もあろうかと思います。
 さらに、市町村において、出てきた結果をチェックできる体制を整備しておく必要があろうかなと思います。先ほど、朝日航洋さんから、ITというのは電卓のようなものですよというお話、まさにそのとおりだと思います。我々、昔は、そろばんやら暗算やら筆算で計算をしておりましたので、1足す1はどうして2になるのかというのは頭の中で理解をした上で2という答えを出しておりましたが、IT化が進んでいきますと、インプットしてアウトプットを出すということで、その過程がわからなくなってしまう。どういう考え方で、どういう補正で、どういう資材をどう判断してみたいなところは全くわからなくなってしまう。いわゆるITの部分がブラックボックス化してしまうという、これは非常に大きな問題だろうと思います。また、評価の知識も失われてしまうと。これはまた取り返すのがほとんど不可能な状態でございますので、その辺の知識を確保しておく手段をどうするかと、研修とか、人事ローテーションを考えていくということも必要だろうと思いますが、そういった手当てをしておく必要があろうかと思います。
 いずれにしても、最終的な評価の責任、価格決定、課税の責任は市町村長の責任ということで、これを民間事業者やら、コンピューターのせいにするというわけにもまいりませんので、そういった上がってきた仕事を分析できるマニュアル、そういったものもやはり整備をしておく必要があろうかなと思います。
 いろいろ整備をしておくべきマニュアル、何種類か申し上げましたが、そういった環境の整備、あるいは法的な整備、そういったものがIT化、民間委託には欠かせないだろうと思います。
 以上です。
【大橋】 はい、ありがとうございました。もともと業務委託ということの目的というのは、業務そのものを効率化していく、あるいはより正確に正しい判断をしていく。そういう、いわば攻めの部分とは別に、実際のその専門知識を持っていらっしゃる方々がどんどん高齢化していく、あるいは流出をしていくという中、人事サイクルそのものがむしろどんどん短期になっていく。こういうものに対してどういう備えをしていかなければいけないか。ある意味、非常に中期的・長期的な視点を持って取り組んでいただかなければならない課題だと思いますし、そのためにITというものを上手に利用していくということが大事なんだろうと思います。
 その考え方に立って民間の事業者の方々に何がしかの業務を委託していくというのは、ある意味自然な流れだと思いますから、我々総務省の立場からしますと、そもそもその業務委託というのは、決してしなさいではなくて、できるということを規定しているにすぎない。すなわら、市町村の判断で何をどこまでどうするのかということを要は決めていってもらう。その際に必要な環境を我々、準備をしていく、制度面の整理、整備をしておくということなんだろうと思います。

6.固定資産評価業務の民間委託に向けて

【大橋】 では、我々が具体的にこういう業務委託の今日、あるいはこれからを視野に置いたときに、民間事業者の立場から、この民間委託の問題についてどういうふうにお感じになっていらっしゃるか。あるいは何か我々総務省に、あるいは自治体に、あるいは自身の問題として課題を挙げていくとすれば、それはどういうものなのか、少しコメントをいただければと思いますが、お二方、いかがでございましょう。

(1)現行制度下での民間委託
【高瀬】 民間委託に関してなんですが、私、自分の説明の中でも申し上げましたとおり、範囲としてはやはりあそこの範囲なのかなと。今、総務省のほうからお話もありましたけど、公権力もございますので、あの範囲が業者にできるところなのかなという考えではおります。ただ、逆に自分で発注する側になったらどうなるのかなというふうに考えたときに2つ思うことがあります。
 1つは、やはり民間に委託したほうが効率がいいな。具体的な言い方をしますと、作業量がめちゃくちゃ多いような作業ですね。こういうようなものを選んで民間に委託して、そのときに、ただ注意しなきゃいけないのは、当然ある時点での調査なり、評価になりますので、それ以降のメンテナンス、異動更新をどういう形でやっていくのか、そこにどうシステムを絡めるのかというご計画のもとにやっていきませんと、せっかくある時点で、例えば地目調査で言えば、一旦地目調査をしたものが3年後にもう一回全部やらなきゃいけないとかということになりかねないと。その辺の計画性を含めたご提案をさせていただくのが私ども業者の立場かなと思っているのが1点です。
 それともう一つは、やっぱり市町村さんの規模と申しますか、職員の方が20名、30名いらっしゃるところと1名しかいらっしゃらないところで当然提案内容は実は異なるべきなんですが、実は1名様のほうがいろいろ提案すべきなんだと思うんです。そこに費用対効果の問題が絡んできますので、そこのところというのを考えたときに、何らか広域評価に基づくようなことができないのかなというようなところが、実は私個人的に思っているところでございまして、そういうところのご検討を今後も総務省様含めて進めていただけると非常に業者としてはありがたいですし、もっと幅の広いのお役に立てる部分があるのかなというふうに考えております。
【大橋】 はい。せっかくですから、井上さん、村山さんにもう少し民間への委託ということについてのコメントを少し寄せていただきたいと思います。
 おそらくもともと自治体の立場からすると、何がしかの問題があり、その解決のために必要なものを必要なものとして切り出していく、アウトソースしていくと。そういう発想だと思いますし、それがむしろ健全なんだろうと思いますが、そういう面で今、既に民間の方々に業務委託の形でお預けしているもの以上に、例えばこういう問題が発生してくることが考えられるので、こういうようなものをアウトソースしていくことを考えなきゃいかんなとか、あるいはもしこういうことができるならば、むしろ、そちらのほうに向かっていくことが自治体そのものの効率化に大きく寄与するのではないかとか、いろんなお考えがもしあれば、少しご紹介をいただければと思いますけれども、いかがでございましょう。まず、井上さん、いかがでございますか。
【井上】 まず、上尾市の現状なんですが、外部委託としましては、評価替えの要因、いろんな価格形成要因がありますが、その要因の調査、それから、要因を調査した結果の比準表の作成、それから、路線価図の作成、そういったところは委託で処理しています。これは、要因というのは、上尾市の場合、区域はあまり広くはないものの、一つ一つの私道まで入ってといいますと、職員ではとてもやり切れないというところで委託しているのが現状です。それで、今はそれ以外にといいますと、航空写真を撮ったその資料化の部分、データベース、それを、データを変更する、そういった作業も委託はしていますが、それ以外にはあまり大きなものを委託しているというような状況はありません。
 ただ、その辺の考え方というのは、今の人数、経験年数であれば、まず今ぐらいの委託の度合いで十分やっていける。ただし、今後、人数がさらに少なくなる。それで人数が少なくなる傾向が出てきますと、当然ベテランも少なくなる傾向が同時についてまいりまして、そういう中でやっていくというと、もう少しここまで委託できるんだというようなところがはっきりするとありがたいなというふうに考えています。権限行使のところは当然自治体側がやるんだというのはわかっているんですが、その具体的なことも確かに例示はされているんですが、さらにそのはっきりとしたその辺の、境目の情報というのがいろいろ出てくると、私どもとしては非常にありがたいな、そのように思っています。
【大橋】 ありがとうございます。村山さんは何かございませんでしょうか。
【村山】 そうでございますね。先ほど総務省の深澤室長がおっしゃっていましたように、民間委託の中でどういうふうな形で競争性を確保していくのかということが横浜市でも大きな問題だと考えておりますので、そういう面でガイドラインとか、そういうものを示していただければ、調達運用についてもそういう形で運用することによって、コスト削減とか、そういうことも図れるのかなというふうに考えております。
 それから、現在は、横浜の場合、航空写真、あるいは比準評価にしても、いずれも単独でやっているわけですけれども、これも考え方によっては、近隣の市町村と共同でやることによれば、多分さらにそのスケールメリットが働いてコストも削減できるんじゃないかなというふう考えていますので、それを市町村で共同でできるような仕組みといいますか、そういうふうなものが今、必ずしもないのかなと思っていますもので、そういうものがあれば、さらにそういう点での改善もできるのかなと思っております。
 ちなみに比準評価につきましても、一度その標準家屋なり、あるいは評定表をつくって、それで終わりということじゃないんですね。基本的には部分別の評点が基礎になりますので、基準年度ごとにその見直しをしなくてはいけないという面がございます。そういう面でいきますと、例えば県レベルでそういう標準家屋等を設定して、そういうための費用もそれぞれ支出しながら運用できれば、さらに、メリットの面では大きな部分が出てくるのかなというふうに考えております。
 あと一つ、先ほど比準評価のご説明がありましたので、横浜市では、次基準年度、平成21年度に非木造のマンションについても比準評価を導入できないかというふうなことで現在検討しているところでございます。
 以上でございます。
【大橋】 はい、ありがとうございます。

(2)家屋評価制度の将来
【大橋】 今の村山さん、それから、井上さんの指摘を受けてといいますか、それに関係して、深澤さん、何かコメントをちょっと寄せていただけませんか。

【深澤】 感じますのは、固定資産税、土地、家屋、償却資産、ありますけれども、土地については、ある程度航空写真の撮影から比準表の作成、路線価の付設、その辺のIT化という手法といいますか、実績といいますか、これはかなり確立されてきているなという感じを持っております。むしろ、家屋の評価についてのIT化についてはなかなか難しいということ。家屋が倉庫のようなものから、店舗から住宅までいろいろある、木造も非木造もある、内装も全然違うというようなことで、なかなかその標準化、IT化をするのが難しいということではあろうかと思います。ただ、人がいなくなり、技術を持った人が少なくなるというようなことであると、やはりIT化を進めていかなきゃいけない。そう考えたときに、今の部分別の再建費方式を原則とする家屋評価の考え方が果たして今から生きていけるんだろうかという危惧を実は持っているわけでございます。
 実際に横浜市さんではかなりの部分を比準評価でされております。こういった先進的な事例を参考にしながら、比準評価、それも、広域の比準評価について相当研究をしていく必要がある。あるいは平米単価方式というのをかつて研究したこともありますけれども、そういった方向も選択肢の中に入ってくるのではないかなというふうな感じを持っております。
【大橋】 はい、ありがとうございます。

おわりに

【大橋】 そろそろ時間が参りましたので、いろいろまだ話、尽きないこともあるんですけれども、そろそろ締めていきたいと思います。
 テーマにありますように、今日は、IT化ということでいろいろと話を進めてまいりました。業務の効率化、あるいは人事サイクル、あるいは専門家のいろいろな問題、いずれもこれはある意味、自治体の中の問題に対してITをどう利用していくのかということでありましょう。一方で、見失ってはいけないのは、これはあくまで税の問題でありますから、当然徴税される側の住民の方々にとって、この種の委託の問題、IT化の問題が何を意味するのかということをしっかりとこれは常に意識をして取り組んでいかなければならない課題だと思いますし、我々総務省のほうは、そういう問題意識を持って市町村の方々が取り組まれる課題のための、いわば環境整備、制度面の議論ということを進めていくことになると思います。
 一方、民間の方々は、いわば、先ほど来、話がありますように、その道具としていろんなものをこれまで開発をされてきているし、現に提供もされてきている。これがここ何年か急速な、いわば技術革新の流れの中で大きく様変わりしようとしているんだろうと思います。以前のような、大規模なシステムをぼーんと自治体の方々に買っていただいてというようなビジネスモデルでは、これからは多分なくなっていくでしょうし、インターネット等のブロードバンド環境を利用すれば、いろんなアプリケーションサービスプロバイダーとしての活躍、活動ということが、結果として、自治体側のコストを大きく下げていく一因にもなっていくんだろうと思います。そういう意味では、この道具は非常に進化の激しいものでありますから、自治体の方々にはある意味、先入観を一度脱ぎ捨てていただいて、どういうようなものが現実に提供されていて、それが自分たちのニーズ、わがままにどこまで寄り添ってもらえるのかということを、じかにいろんな情報を収集するなりにして、あるいは自治体間で情報を交換するなりにして取り進めていただければというふうに考えているわけです。
 総務省としては、当然でありますけれども、いろんな機会を捉まえていろんな情報を提供していきたいと思っていますし、今回の主催者であります一般財団法人資産評価システム研究センターでも、いろんな機会を用意してくださっております。今後とも、この、業務の効率化という問題について、関係の方々皆さんが引き続き関心を持っていただければと思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 時間5分過ぎてしまいました。申しわけありませんでした。
 では、これにて、このパネル、ひとまずお開きとさせていただきたいと思います。どうも長い時間、ありがとうございました。











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