トップ > 事業紹介 > 評価センター資料閲覧室 > 固定資産評価研究大会 講演録・討議録 > 第5回固定資産評価研究大会 パネルディスカッション討議録 評価センター資料閲覧室第5回固定資産評価研究大会 パネルディスカッション討議録「納税者の眼から見た固定資産税」
1.目的・趣旨 福井 ただいま紹介いただきました福井でございます。きょうは長時間よろしくお願いいたします。 さて、本日のパネルディスカッションの構成をスケジュールに沿いまして簡単にご案内しておきたいと思います。本日のパネルディスカッションは2部構成といたします。前半は、私どもだけでいろいろなテーマにつきまして問題提起なり、意見発表なりをさせていただき、皆様方の頭の中の整理ということで、パネルディスカッションを行い、それを第1部といたしまして、第2部は、その間に皆様方にご記入いただきました質問票を間にあります休憩時間、そのときに回収いたしますので、それに沿ってお答えしながら、また議論を発展させていただきたい、それが第2部になります。時間的には前半を大体3時20分あたりを第1部の終わりとしまして、それから、20分ぐらい休憩をとって、それから後半にまいるという進行を考えております。 では、本日のパネリストを簡単に紹介いたします。向かって、こちらに近い側ですけれども、大阪学院大学の前田高志先生です。先生には、地方税の研究者として意見を発表いただこうと思います。また、次は、税理士の塩川紀子先生です。塩川先生は、大阪市の固定資産評価審査委員もされていらっしゃいますので、納税者の意見とともに、その評価委員としての経験もおしゃべりいただこうと思います。また、次は、NHK解説委員の水城武彦さんです。水城さんは、いろいろな税や財政にかかわる委員もしていらっしゃるんですけれども、本日は納税者のお立場からご発言いただくつもりでおります。次に、総務省の株丹課長です。株丹課長は、固定資産税課長としまして、今、最前線でどのような動きを考えていらっしゃるかをご披露いただこうと思います。最後に、横浜市の固定資産税課長の猪山さんです。猪山課長には、情報公開で先駆的な動きをされたご経験などをもとにどうあるべきかのさまざまな意見をいただこうと思います。 さて、本日の大会プログラムの中でも、私、多少文章を載せておりますけれど、アカウンタビリティが今後ますます市町村に求められてくる資質になると思います。経済学の分野でもこのアカウンタビリティという一つのシステムといいますか、チェック機能をもとに、どうやって納税者と市町村経営というものを結びつけていくのかといった研究も大変盛んになってきております。特にアカウンタビリティは、今は説明責任だとか、じわじわと日本語の中にも表現されつつありますが、それでも概してまだ片仮名でしか語られないということは、その事実そのものが、まだそれほど日本国内の中に見られないということのあかしとも言えます。対して、欧米の研究では、また、実際にアメリカの自治体ヒアリングをした感触からも、アカウンタビリティというのは、単に説明責任、行政のほうから説明できるとか、また、何らかの施策を行うときの裏打ちとして責任を持つといった、そういったレベルをさらに超えて、最後には納税者のほうから選挙という採択を受けて、その政策が認められるかどうかと、その採択までも含めてアカウンタビリティで、結局市町村経営というのを納税者ニーズに沿ったものに変革していくと、そういった位置づけが最近なされてきているものが多うございます。 そう考えますと、アカウンタビリティという点でいろんなことを見直すと、行政も仕組みから、実行から、またその情報公開に至るまで、やり方も変わってくるのではないかと思われます。特に固定資産税は、市町村の方からすれば、納税者との接点では最前線、しかも、毎年ですし、後でご披露します資料にもありますように、多くの方が何らかの形で固定資産税を払っているといった実態を考えますと、アカウンタビリティを積極的に導入する分野としては筆頭に挙げられると思います。 そこで、第1部のパネルディスカッションは、議論の構成を2本柱にいたします。1本目が情報公開です、資産評価における情報開示はどうあるべきかと。言ってみれば、ホットな話題なんですけれど、これについてパネリストの方々からご意見をいただこうと思います。2本柱の2本目は、納税者にわかりやすい制度、納税者にわかりやすい固定資産税の税制度はどうあるべきかというテーマにしたいと思います。 2.情報公開と納税者のプライバシー 福井 さて、1本目のほうの情報開示に関しての問題意識ですが、開示をするということは、はっきり言ってしまえば、行政と納税者のポジションを対等にスタート地点として立たせるということにほかならないのではないかと思うんですね。これまで我が国のお役所のあり方としては、どうしてもお役所全能主義といいますか、お役所のすることに間違いはないということを前提といたしまして、神とまでは申しませんけれど、正しいことを前提にそのまま納税者に対しては「与える」といった、上意下達的な情報公開が多かったんですけれど、こと固定資産税にかかわりましては、税金ですし、毎年かかって毎年払うものですから、そういう姿勢ではなかなか理解を得られない。特にこんなふうに不況になって経済が停滞しているのに、税額が上がっていくというようなことに関しまして、素朴な疑問が納税者の間には充満していると思うんですね。 公開というテーマをもとにしたときに、公開に耐えられる内容であるのか、また、公開のあり方、公開の具体的な開示の仕方としてはどんなふうなところまでが適正かといったことに関してパネリストの方々から具体的な意見をいただいて、あるべき開示のあり方ということをきょうお考えいただこうと思います。きょういらっしゃっている参加者の7割が市町村のご担当の方とお聞きしております。皆さん共通の悩みだと思うんですね。 また、残り3割の方は民間の方、特に評価に携わっていらっしゃる不動産鑑定士や、また、制度にかかわっていらっしゃる方々がご参加していらっしゃると聞いていますが、果して標準地評価、内容が正しいのかとか、またバランスは果してとれているのかとか、実際の評価の現場の声を聞きますと、科学的とはとても言えないような手作業で、バランス調整会議というような言い方で、まさに談合的な価格のあり方がなされていて、実態は公開に耐えられるかどうか、甚だ疑問という切実な心配の声があちこちで聞かれます。そういったことも今後、公開の流れが必至となったときに、果して評価にダイレクトにかかわっていらっしゃる鑑定士方々、現在のようなやり方でいいのかとか、また、納税者全員にかかわってきます標準地から路線価、それからまた、全戸個別評価に至るこの一連の流れでも標準ポイントでとまって、路線価敷設のところは面倒見ないというような、そういうふうな部分的責任でいいのかとか、現在責任のとり方があいまいになっておりますけれど、そんなところも議論になるのではないかなと思います。 さて、それから、2本目のわかりやすい税制度のところは、もうこれはまさにわかりにくいというのが全国の納税者の素朴な言い方で、これはどこに行っても言われる話でありまして、あまり税負担に配慮するあまり、仕組みとして一言で説明できないような複雑さになっているので、これは複雑さからくるデメリットのほうが、税負担の配慮のメリットよりももう大きくなっているんじゃないかというのが実態ではないかと思うんですね。ですから、きょうは思い切ってこういうふうに変えたらいいのではないかということをいろんな角度からご披露いただこうと思います。 では、長くなりましたが、皆さんのほうにきょうは2つ資料がセンターのほうから配られていると思うんですけれど、これも一応説明しろということなので、説明させていただきます。 これは、A4サイズの3枚組の資料でありまして、右肩のほうに第5回固定資産評価大会パネルディスカッション資料となっているものです。これは全体構成が2種類ありまして、最初の1枚が、センターの固定資産税に関する研究会の、もうすぐ中間報告書となって出てまいります、これは開示のあり方に対しての主な検討事項の披露であります。それから、終わり2枚というのは、縦覧をどうすべきかの資料となる国政モニターのアンケート結果をまとめたものであります。簡単に資料の説明をいたします。 1枚目の主な検討事項ですが、まず、縦覧制度の改正につきまして、読ませていただきますと、現在、固定資産課税台帳の縦覧範囲は、自分の資産、自己の資産に関する部分に限定されておりますけれども、これをほかの土地や家屋の評価額、これは同一市町村内ですが、ほかの評価額と比較できるようにするため、次の事項を記載した縦覧帳簿というのを新たに整備し、納税義務者の縦覧に役立てるということが検討項目に挙がっています。それは、要するに、所有者というものが載ってないというだけで、評価額までもこの縦覧帳簿に載せて好きに見てよいというふうに変えたらどうかという検討項目ですね。これを土地、家屋につきまして、このような項目で新しく開示したらどうかという考え方であります。償却資産というのは申告制度でありますので、これは縦覧の対象としないと。 それから、2番目は、こういったふうに縦覧に関連して改正したいなと思っているポイントを挙げているわけですけれども、これは主に時期の問題でして、市町村の方々からすれば、ああ、助かるなというような、もしこれが実現すれば助かるなということだと思うんですが、まず、縦覧開始の日付を納税通知書を送る日とするということで、現行は3月1日ですけれど、送る日に変えるということで、1カ月ゆとりが出るということになります。 それから、2番目は、これは納税者のほうの権利の拡充ととってもいいと思うんですけれども、つまり、審査申し出の期間を現行30日を60日間に延ばすと。 それから、3番目は、市町村が適正な評価を行うために十分な期間、今まで十分でない短過ぎる、早過ぎるという意見が多かったんですけれど、これに関しまして、納税通知を3月1日、それで縦覧も3月1日とした関係で、現行は2月末に結果を出さないといけなかったのを3月末に結果を、つまり、評価額を決定すればよいというふうにしてはどうかというのが検討項目に挙がっています。それから、償却資産に関しましても、申告事務については、これは納税者にとって非常にありがたいことですが、申告期限を2月末でよいと。 それから、3番目は、前進すれば非常におもしろいんですけれど、借地人・借家人、この人たちも所有者とほぼ同じ扱いで、固定資産課税台帳の閲覧や評価額の証明というのを法令に位置づけまして、その中で借家人・借地人に関する借地借家対象物件の固定資産税の閲覧証明制度を創設する。 それから、4番目が課税明細書の記載事項、これをさらに充実しましょうというのですけれども、今まで盛り込まれておりません負担水準や下落修正率など、こういったものを必要記載事項としまして、その送付を法令に位置づけると、これが検討に挙がっています。 それから、その他ですが、現在もうほぼ99%路線価は公開されておりますけれども、これを法令に位置づけてきっちりしたものにしましょうという話、それから、標準宅地の場所の公開は、公示地も公開されていることですし、公開したらどうかと。それから、鑑定評価書の開示、これについても法令に位置づけようということが検討項目に挙がっております。 あと残り2枚は、固定資産課税台帳縦覧というものに関しまして、国政モニターという制度があるんですけれど、ごく一般的な方、国民から応募のあったモニターの方々に意見をもらうという、これを利用しまして、今年の8月に実施いたしましたところ、回答数が6割を超える343名からありまして、これに対して4つの質問に対してお答えいただいております。最初の納税状況は、ごらんのように、「土地について納めている」、「家屋について納めている」、それから、「両方について納めている」というア、イ、ウ、これを合計いたしますと、アが一番上でずうっと真っ黒いところまでです。全体としては76.4%の方が何らかの形の固定資産税を納めているということになります。 それから、2番目の信頼感なんですけれど、「信頼している」と「まあ信頼している」という2つを合わせますと、7割近くの信頼を得ているということになります。 それから、次のページは、本日のテーマにダイレクトにかかわるんですけれど、情報の開示につきまして、質問としては、評価額を比較できるようにすることが必要との意見がある一方、プライバシー保護の観点からも検討する必要があるというふうに、この両方の情報を与えつつお聞きしたんですけれども、まず、縦覧期間中に周辺の評価額と比較できるようにすることにつきましては、賛成の方がごらんのように75.2%と、多くの方が賛成という意見でありました。また、その公開のやり方を常時、それから対象者を限定せずというふうに、全くアメリカ的にやるというふうなことについてはどうですかといいますと、それについては賛成45.5%というふうに大体半々、賛否両論という結果が出ております。 このような参考資料を踏まえまして、では、早速パネルディスカッションに移りたいと思います。では、最初に、どうでしょう、やっぱり納税者の立場からお2人の方にご発言いただきたいと思います。最初に、塩川さん、いかがでしょうか、ご意見お願いいたします。 塩川 固定資産評価研究大会におきまして、初めて納税者の立場ということで発言の機会をいただきました。ほんとうに情報化の流れというのは加速をつけて進展しまして、今まで非公開だったものが次々に公開され、開示されていっております。その中で福井先生からもあり方研の中間の発表、検討事項ということで説明がありましたように、路線価等の公開をお願いしたいということが、第1点目でございます。 公的土地評価の適正化及び市町村間の均衡化が達成された現況下において、路線価図の公開、それから、土地利用の状況をもとにした住宅地域、商業地域、工業地区等の地区区分をした用途地区区分図、これまでが公開されておるところですけれども、さらに地籍図の公開をしていただきたいということでございます。これは、所在地番だけではその資産の位置や場所を特定できないために、地籍図から特定させる必要があるためです。もともと登記所においては公図というものが設置されているわけなんですが、現実には必ずしも整備が行き届いているとは言えない状況でございます。そのような中で地籍図もあわせて公開する必要があるんじゃなかろうかと思います。 次に、開示についての問題なのですが、標準宅地の開示をお願いしたい。これは、固定資産の評価が納付する固定資産税と密接な関係にあるため、納税者としては、自分の所有する土地の評価額が適正かどうかを判断できるように、評価に係る資料や情報を当然に入手できるべきであると考えております。したがいまして、標準宅地の地点、それから、標準宅地の鑑定評価書、これまではなかなか開示されておらないし、また、十分に開示されておらないところだったのですが、ぜひとも開示をお願いしたいと思います。 それから、縦覧制度についてなのですが、固定資産課税台帳の縦覧制度というのは、納税者が自分の資産の評価が適正であるかどうかを判断し、不服がある場合に審査申し出を行うことを可能とするための制度でございます。縦覧できる範囲が自己の資産に関する部分に限られているが、この取り扱いの制限を変えていただきたいと思います。昭和62年の最高裁の判例によりまして、納税義務者及び納税義務者に準ずる者に限るというふうにされているところでございます。なぜならば、借地借家契約において固定資産税の増減が賃料の増減につながる内容になっている場合が多いわけですね。したがって、少なくとも借地人・借家人―これは言葉を変えていいますと、固定資産税の実質的負担者になるということも言えると思います。したがって、借地人・借家人には当然にその権利があるものと考えられます。 また、縦覧におきまして、自分に関する部分を見ただけではほかとの比較ができず、資産の評価の適正さを判断することができません。情報化の流れの中で、プライバシーとの関連を考慮しながら、縦覧本来の姿、だれでも自由に見られる縦覧制度に改善を望みたいと思います。 それからもう一つ、課税明細書についてでございます。従来の納税通知書にかわりまして、新しい納税通知書には課税明細書がつけられております。所有資産の明細が確認できるので、私どもはありがたく感謝しております。しかしながら、この課税明細書から税額計算を行うことができません。記載事項として少なくとも前年度課税標準額、平成9年度の価格の記載がないと、負担水準も、それから、価格の下落率も計算できません。これらを充足していただきまして、自分で自分の税額計算ができる制度にお願いしたいと思います。また、課税標準の特例を適用されている旨を記号ではなく、文字で表現していただきたいと思います。 福井 ありがとうございます。 では、同じ納税者の立場として水城さん、お願いします。 水城 初めにお断りしておきますが、私は公共放送でございますので、テレビ、ラジオのマイクの前に立ちますと、あまり独断と偏見に基づいた意見は言えないことになっているんですが、きょうは別に全国放送じゃございませんので、あくまでも個人の意見として、公共放送はちょっと置いておきまして、それからもう一つ、このパネラーの方みんな専門家の方でいらっしゃいますが、私だけ多少仕事の商売柄普通の人よりは固定資産税をわかっているつもりですが、限りなく素人に近い立場でございますので、もう素朴な納税者の立場から申し上げます。ですから、きょうお集まりの実務家の方から見ると、とんでもないことを言うかもしれませんけれども、素朴な納税者から見るとそういう意見もあるのかなということでご参考にしていただきたいと思います。 第1のテーマは、情報の開示ということですが、固定資産税というのは、一番大事なことは、所得税、法人税、消費税のように申告して納税するんじゃないんですね。申告でしたらある程度自分で計算して、何がしか納得して申告納税するんですが、これは市町村長、東京都区部にあっては東京都知事から一方的にあなたの税金幾らだと、こういうぐあいに言ってくるわけでございますからね。やはり率直に納税者の疑問に答えていく必要がある。ですから、この情報開示というのは非常に大事だ。したがって、固定資産課税台帳の縦覧につきましても、これは他人の部分につきましても、特に土地については、路線価の基本的なことからもう公開されておりますし、登記簿で名前もありますので、もうほぼ全面的に公開すべきである。ただ、家屋については、これは家の中の構造に絡む問題ですから、これはプライバシーの問題と正面から衝突いたしますので、これはなかなか悩ましい問題だな。私、これも公開すべきだと思うんですが、国政モニターだけじゃなくて、一般の住民の人の意見も十分聞いて、できるならば公開したらいいと思うんですが、ここは慎重な検討を要すると思います。 それからもう一つ、これはプライバシーの問題と同時に、まさに本日お集まりの皆様方、役所の窓口が相当混乱するんじゃないか。ひょっとしたら大勢の人が来て、いろいろ不平、不満を述べて、行政にパニックを起こすんじゃないか、あるいはそういう心配をされていらっしゃるかもしれません。これは2番目のテーマとも絡むんですが、今、非常に税制が複雑でわかりにくいんですね。だから、みんな納税者は不満を持っているということでございますが、これが簡素化されれば、だんだんそういう行政の混乱というのも避けられるんじゃないかと思います。さらに、先ほど言ったように、これは一方的に課税されますから、皆様方も納税者の疑問には何とか頑張って対応してほしいと思います。それから、ささいな税金のために情報公開して窓口が大変だというなら、これは費用対効果で問題もございますけれども、これは、市町村にとって最大のドル箱ですからね。この税金に対する理解を深めて、そして、安定的な税収を確保する、そういう目的があるわけでございますから、ぜひ役所のほうも総力を挙げて、この情報公開に伴う窓口の対応を頑張っていただきたい、ご苦労ですが、そういうぐあいに申し上げます。もし反論がございましたら、後でお聞かせをいただきたいと思います。 もう一つ申し上げますが、先ほど塩川さんからお話もありましたが、納税通知書とか、課税明細書、これは、先ほど一方通行の課税だと言いましたけれども、納税者と税務当局を結ぶ、これはもう命綱なんですね。私のところへ送られてくる明細書、これ、市町村ばらばらだと思いますが、いろいろお知らせ、課税の仕組みとか、それから、Q&A、土地が下がっているのになぜ税額が増えるんですかなんてことに答えて、なかなか工夫してやっていらっしゃるんで、私は評価しているんです。ただし、それでも、にもかかわらず、これだけではなかなかわからないんですね。ですから、もうちょっとこの命綱を利用して、私の言うのは、先ほど塩川さんからご指摘のあった点に加えて申し上げますと、むしろこういうお知らせだとか、Q&Aとか、付録ですね、これが大事なんですね。これ、何とか工夫する余地はないか、私はたくさんあると思いますね。この辺、総務省も何か市町村にそういう指導といいますか、そういうことをして、もうちょっと納税者の理解を得るための努力が必要であろう、こんな感じを持っております。 福井 ありがとうございました。 今の納税者の方々からのいろんなご意見を踏まえまして、では、実際担当していらっしゃる猪山課長はどうでしょうか。 猪山 今、塩川先生と水城先生に納税者のご立場から、我々市町村の窓口でよく聞くご意見を代表して言っていただいたということで、私は、実務を担当している立場から、現在の縦覧制度の現状と、それから、その縦覧制度がどうあるべきかというようなことで、これはかなり私見が入りますので、私の考えとして聞いていただきたいんですが。現在、固定資産税の情報開示として縦覧制度というのがあるわけでございますけれども、これは、先ほど塩川先生のお話にもありましたが、市町村が一方的に決めた固定資産税の価格を、税金をかける前、すなわち納税通知書をお送りする前に納税者の方にお知らせして、それで、この価格に不服がある場合には第三者機関の固定資産評価審査委員会、塩川先生も委員をされているようでございますが、こちらのほうに不服申し立てができる。こういった目的を持っておりまして、行政側とすれば、このような手続を経て、課税台帳に登載した価格を確定して、これを根拠に課税する、こういった目的を持った制度だと思うんですね。 しかしながら、この縦覧制度の利用率は非常に低いんです。横浜市でもほんの数%ということで、ほとんどの納税者がこの制度を利用されていない。これは課税台帳を見るためにわざわざ役所に行かなければならないということと、時期も年度末の3月ということで、何かと忙しい時期なんですね。ですから、こういった時期とか、場所ということもこの制度が利用されてない一つの理由ではないかなと。 それから、最近、課税明細書が納税通知書についておりますので、わざわざ役所へ行かなくても、課税明細書を見れば、ご自分の資産の価格はわかるということになっておりますので、あえて縦覧を利用しなくてもいいのかなと、これも理由に挙げられるのではないかと思います。 現在の縦覧制度というのは、もともと台帳を手書きで作成した時代ですよね。それで、コピーもままならない、昔、青焼きというのがありまして、年がわかるんですが、スピードが遅くて濡れた紙で出てくるような、そんなコピーの時代だったんですが、そのような時代を背景につくられた制度ですので、現在のように課税台帳の情報がすべてコンピューターで管理されて、パソコンが企業とか、家庭にかなり広く普及しているわけですね。また、携帯電話、私も最近新調したんですが、携帯電話でも欲しい情報が即座に入手できる。そういう時代になってきているわけです。したがって、そういう時代にあって、かなり昔につくられた縦覧制度そのもののあり方が問われているのではないか、これは改善していかなければならないのではないかと思います。 それから、先ほどの納税通知書についている課税明細書ですが、これはまだ法律で決められているわけではないんですが、全国でも99%の市町村で実施されています。これを法律で制度化することによって、縦覧にかわるべきものとして、これで納税者の方に価格をお知らせすることができるわけですから、縦覧にかわる制度として位置づけられるのではないか。したがって、自分の資産しか見られないような現在の縦覧制度というのは、もう本来の趣旨においても形骸化しているのではないか、こういうふうに思います。ですから、これにかわる新たな制度の導入というものが求められているのではないかなと思います。 それから、とりわけ固定資産税の場合には、土地、家屋とも、その所有者に着目して課税するわけではなくて、建物ですとか、土地だとか、そういった資産に着目して、その資産価値を価格で表示する。土地にあっては、地価公示の価格から路線価を付設して個々の土地の評価をするということですので、その価格自体は、所有者が変わっても何ら変わらないわけです。ですから、その価格自体は個人の情報というよりも、それは資産に帰属している情報ですので、あまりその価格については、プライバシーの問題はないのではないかなと思います。 それから、先ほどのこの中間報告書の次に、国政モニターの結果があって、ちょっと意外に思ったんですが、私自身は、固定資産税の価格というのは、年間を通じてオープンにされるべきだと思います。それで、全国のすべての土地に価格がついているわけですから、これは国民共有の財産情報として、固定資産税の世界だけじゃなく、もっと広く活用されるべきではないかな、こんなふうに考えています。 福井 わかりやすくてありがとうございました。 それでは、株丹課長はいかがでしょう。 株丹 きょうのテーマ、納税者の立場ということなんですけれども、おそらく私に期待されているのは少し違う部分かなと思っております。個人的に言うと、まず、私、固定資産税の納税者でなくて、もう少し頑張って納税者にならなきゃいけないと思っています。最初にちょっとお断りしておきたいんですが、今までのお話のように、また、私自身、あるいは総務省としても、情報開示は非常に大事だと思っております。私、実は若いころに税の関係の仕事をして、久しぶりに税の仕事に従事させていただいているんですけれども、公務員はそれぞれいろんな立場で大変苦労されているわけですけれども、税の職員というのは、与えられた条件の中で非常に最善を尽くしている、非常に厳しい状況の中で最善を尽くしている、公務員の中でもそういう部門ではないかと思っております。 ただ、場合によっては、確かに悪い事例というのも出てくるかもしれません。そういう場合にその悪い事例で公務員、行政全体を、見られてしまうようなことが今の時代なのかなと思っていまして、そういうことも踏まえて、情報の開示ということを考えるべきではないかなあと思っています。税の場合は、ご案内のとおり、税の情報というのは、いわば公権力を通じて集めることができるということがありますので、それだけいろんな意味で、普通に言うところのプライバシーの問題というのに非常に敏感であったということがあると思いますが、ほかの行政分野と同様に、情報開示によって得られる効果というのは非常に大きなものがあると思っております。 3つほど思っているわけですけれども、1つは、納税者に税、特に税額ですけれども、根拠を理解をしていただくと。そのことが納税者の方の行政に対する信頼感の向上につながる。それから、2つ目が、多くの納税者の方が税務行政をチェックをするということにもなるわけでありまして、税務行政の適正化ということにも資するであろうと。これはもちろん間違いがあっていいということではなくて、間違いなければないにこしたことはないわけですけれども、人間ですのでどうしても間違うこともあるということを前提として考えた場合に、特に固定資産税の特色は、非常に大量な1億7,000万筆を対象とするような、しかも、一時期にそれを全部適正に評価をしなきゃいけないという事務でありますので、そういうことを前提として考えた場合には、そういう部分というのは非常に大事であろうということでございます。それから、3点目は、透明な税務行政を推進をするということで、これが、いわゆる情報公開の流れにも合致をするものだと思います。 今、挙げたようなことは、別段税に限らずすべての行政に通じるものであって、そういう意味では、こういう問題に取り組むというのは時代の流れということでも言えるのだと思いますが、さっきも少し触れましたけれども、今までの税務行政の考え方というのは、そのときに保護すべきものとしてプライバシーというものの存在に非常に重きを置いていたということがありますので、そのプライバシー保護との調整をどういうふうに考えるのかということが非常に大きな問題だと思います。 これについての考え方、もちろんいろいろあろうかと思いますけれども、今、考えておりますのは、1つは、保護すべきプライバシーの範囲というものが国民の意識なり、考え方なりによって変わっていくものではないかということだと思います。先ほど猪山課長がおっしゃったように、もともとプライバシーの範囲について考えれば、公共性の高い土地、あるいは家屋というようなものについての情報はプライバシーではないんではないか、あるいはあったとしても、その程度は薄いんじゃないかという考えはもちろんあるわけです。そういうことも含めて今のような論点があるのかな。基本的にプライバシー、個人の特定する情報と考えるのか、あるいは一般に知られていなくて、ほかの人に知られてないことについて、知られてないほうがいいんだと、利益を有する事実かどうかというような判断というのがあるわけですけれども、その場合、つまり、本来は守秘義務の対象になるようなものであっても、開示をしないことでメリットがある部分と、開示をすることによって出てくるメリット、これを比較をするという考え方で、どっちに軍配を上げるかということではないかと思っております。 もちろんそれについてはきちっとした根拠というものが必要で、一般的に言えば、法律できちっと整理するのが妥当なんじゃないかなと思っております。そういう観点で今、コーディネーターの福井さんのほうからご紹介いただいたような研究会での議論も進んでいますし、私ども総務省という役所の立場でも、こういうご議論を踏まえて、役所の言葉ですから、どういうふうに言えばいいのかというのがあるんですけど、前向きに取り組んでいるところでございますので、皆様のご議論をぜひちょうだいしたいというところでございます。 福井 課長のお立場で前向きにというのは、かなりの決意を表現していらっしゃると思いますけれども、それでは、前田さんは研究者のお立場として、また納税者なのかどうかもお聞きできたらと思いますけれど、いかがでしょうか。 前田 おかげさまで納税者をさせていただいております。研究者の立場から理想論めいたものをお話しさせていただきます。 先ほど矢野委員長さんのほうより、あるいは石井局長さんのほうから、地方分権の時代にあって固定資産税の位置が非常に重要になるという話がございました。残念ながら住民税のほうが、これから高齢社会に入っていきますので、納税者の多くの方が年金生活者に入っていかれます。そうすると、今の制度のままですとどうしても住民税というのは、それから、もちろん日本経済の右肩上がりの時代が終わりましたので、住民税の税収のほうはどうしても制約されることになります。そういたしますと、ますます固定資産税、資産課税に対する地方税財政上の位置づけというのは高まっていくと思います。それなればなるほど基幹税としての固定資産税に対する納税者の信頼度、信頼性というものが重視されていくのではないかと当然考えられるわけです。 ところで、その信頼性というものは何によって担保されるのでしょうか。私ども、学生相手に財政学の講義をしますときに、租税論という話のときに租税を課税するときのルールって3つあるんですよという話をします。1つは、その課税は公平・公正でなくてはいけないということ、それから、2つ目にマーケットに対するディストーションがあってはいけない、中立的な税制でなくちゃいけないという話をします。それで、3つ目に簡素でなくちゃいけない、わかりやすくシンプルでなくちゃいけないという話をします。ところで、基幹税としての位置が高まっていく固定資産税に関して今、最も求められているのは、この1つ目の課税の公平・公正に関して納税者の方がどれぐらい安心してといいますか、信頼して納税をしておられるでしょうか。まず、自分の税がどういうふうに決まっていくのかなかなか見えてきにくいという、そういう現実があれば、公正さというものは担保されないわけでございます。 一方で、先ほどアカウンタビリティという言葉が福井先生のほうから説明がされました。このアカウンタビリティという言葉、実は15年以上前だと思うんですけれども、アメリカのパブリックアドミニストレーションとか、パブリックバジェッティングの本をずっと読んでいましたら出てくるんですね。そのころ、アカウンタビリティという、今、日本語でも片仮名で横文字でそのまま使われておりますけれども、それをどう訳していいかわからなかったんです。今は説明責任という言葉が使われたり、それから、アカウンタビリティそのまま使われたりしますけれども、どうも公会計のところが出てきていて、もともとは会計学とか、経営学の用語みたいだと当時、考えたわけです。本来は企業が株主さんに対して情報を開示して、ディスクローズして、自分のところの経営に関してちゃんと説明ができるよということなんですね。したがいまして、アカウンタビリティ、アカウント、もともとアカウント・フォーという、要するに、説明するのですけれども、エクスプレーンとは違うんですね。説明する、こうなっていますよというだけじゃなくて、こうなっていて、それに対して相手が納得し得るかどうか。ですから、アカウンタビリティというのは、単に説明するだけじゃなくて、説明された側がそれでああ、なるほどそうなんですね、固定資産税に関してそういう仕組みであれば、それが理解できました、そして、なおかつそれであれば、地方の基幹税として我々は万全の信頼をおけますねという話に、そういう段取りになっていくわけです。そのアカウンタビリティを確保するということが、繰り返しになりますが、固定資産税の信頼度を高めるために不可欠でありまして、そのための第一歩が今回あり方研究会の中間報告の中で出てくる課税台帳の縦覧制度の拡充ということでございます。 ただし、問題が少し錯綜している部分があります。錯綜しているのは別にあり方研や、それから、総務省さんが錯綜しているんじゃなくて、情報開示とか、情報公開とかいう言葉が、あるいはアカウンタビリティという言葉が混同して使われている。まずフェーズ1として、その縦覧制度の拡充に対して求められるものは、先ほど言いましたように、各人が納めておられる固定資産税が公正である、公平であるということを納得していただくということがまずフェーズ1でございます。そのためには、例えば今までであれば自分の資産に関して、それがどういう評価がなされているかというところまでしか見られなかったと。それもその評価がどうやってなされるかまではわからないんですがね。一応こういう評価ですよということは自分のものに対してはわかる。ところが、まず、とりあえずは、例えば自分と同じような資産を持っている方がどういう形で課税されているかということを比較することによって、自分の資産に関する評価が適正であるかどうかを比較考量によって見ていきましょうというのが、今、進められようとしています課税台帳の縦覧の内容でございます。ですから、これは、あくまでの自分の資産がちゃんと評価されているかどうか見たいということでございますから、遠く離れた地域の資産を見る必要はありません。あるいは東京の方が千葉県の郡部の資産がどう評価されているかというのを見る必要もないわけであります。それがまずフェーズ1で公正さ・公平さということを実際に制度から裏づけるためのまず第一歩としてそういう縦覧制度があるということです。 ところが、第2段階、フェーズ2となりますと、これ、情報公開のほうが中心になってきます。情報公開というのは別に課税だけでございませんでして、行政全般に関して今、求められているものでございます。情報公開、すなわち行政のいろんなシステムが適正に行われているかどうかを、透明性を拡充する中で明らかにしていこうという流れがございます。これは、情報開示の話と少し違う、つながっているんですが、もう少し先の話になります。情報公開の段階になりますと、それは、例えばどこの地域のデータであっても、それはだれが自分の住む自治体でなくても見ることができるということを進めていく必要があるかと思います。ただし、それは、直接的には課税の、固定資産税課税における公平・公正、当面求められている問題とは少し離れた問題ではないかと、全く無関係ではございませんけど、とりあえずは関係ないんではないかというふうに考えます。 また同時に、違う局面からこの縦覧制度、あるいは路線価、それから、標準宅地の公開というものが固定資産税課税、あるいは地方行財政とは全く違うところから求められている流れもございます。それは、実は私も不勉強で、夏暑くて弱っておりまして、勉強してなかったんで、先日、総務省の固定資産税課の方から教えていただいたんですが、内閣府に置かれました総合規制改革会議が7月24日に重点6分野に関する中間取りまとめというのをされまして、いろんな分野、福祉とか、教育とかいろんな分野に関しまして規制緩和の方向を打ち出しております。その中で都市再生というのがございまして、都市が非常に停滞していて、都市の停滞を克服して都市を再生するためには、不動産市場を活性化しなくてはいけないと。不動産市場を活性化するためには、不動産市場改革ということで情報公開を進めなくちゃいけない。そのためには情報公開するその具体的な手段として、例えば地価公示価格の透明性及び社会的信頼性を高める観点からその情報を一層の開示を図りなさいよということを言っております。 それともう一つ、固定資産税評価額については、当面固定資産課税台帳の縦覧対象の範囲の拡大を図るほか、さらに、情報開示の拡充を進めるべきであるとしています。これはマーケットを活性化するため、もともと財政、政府の役割は、マーケットにおきまして情報が不完全であれば、それを補完するのは財政、行財政の仕事でございます。したがいまして、情報インフラの整備というものも、これは箱物のインフラだけと違って、情報インフラの整備というものも、政府に課せられた重要な役割でございますので、地方自治体の役割としてそういうのが入ってくるかもしれません。ですから、そういった面からも実は非常に貴重なデータとして、この固定資産税に関する評価情報の公開というものが好むと好まざるにかかわらず求められてくる、そういう局面を我々は考えなくちゃいけないというふうに考えております。 福井 いろんな観点が出ました。まず、比較しなくちゃ情報開示と言えないんじゃないかということで、縦覧という用語のそもそもの本来の意義に立ち返ろうというそもそも論もありましたし、現実問題としまして、どれぐらいプライバシーとの関連で公開を進めるべきかに関しましても、実は、プライバシー保護と言いつつ、実際は情報開示のメリットのほうが大きいと考えられるんじゃないかというような趣旨の意見のほうが多かったかなあと思います。我が国も、もともと縦覧制度という名前が示すとおり、昔はだれでも見れる制度だった。それがいつの間にやら、多分非公開になっていった背景としましては、市町村の中の評価自体に自信が持てないというようなこともきっとあったんだと思うんですね。ですから、プライバシー保護のプライバシーって、もしかしたら市町村のことだったかもしれないんですけれども、今はこういった情報化、時代の流れといたしまして、そもそもおかしいということになったんじゃないかなあと思います。 ちなみにアメリカでは、ほとんどの州で固定資産税に関する評価情報というのはもうだれでもいつでもオープンであります。パソコンがあれば、遠く離れた海外の、この日本の夜中からでもケンブリッジ市のどこどこって、全然名前も知らなくても、適当な地番を打てばぱっと所有者とその評価額が出てまいりますし、人の名前がわかっているんであれば、その人の名前をチョコチョコと打てばすぐ地番と評価額が出てまいります。もうフリーアクセスそのものであります。ですから、価格情報というのはプライバシーではない。価格はだれのものかといった場合に、みんなのものであるということが貫徹しているんじゃないかなあと思うんですけれども。 さて、ここで、でも、そうは言いながらも、ほんとうに公開してしまったらどんな混乱が起きるだろうかと心配していらっしゃる市町村の方が多いと思うんですね。そこで、経験上似たような情報開示を先駆的に行って、また、大量のクレームをもらった経験のある猪山さんはどんなふうにお考えになるのか、ちょっとご披露いただこうと思います。 猪山 ただいまのご質問は、覚えている方もいらっしゃると思いますが、先ほどの課税明細書ですけれども、横浜市では平成元年度に納税通知書に入れてお送りしました。それまで、固定資産税の課税情報そのものを法務局からいただいたり、あるいは自分たちで現地調査に行ったりして情報を集めてくるんですが、今のように情報を収集する手段が進んでない時代からの積み重ねでございますので、どうしても法務局からの所有者の変更の通知ですとか、あるいは建物の滅失ですとか、そういった情報が全部収集できればいいんですが、時々漏れてしまう。横浜市の場合には、登記情報は今でも年間20万件きます。20万件のうち1件、2件1年間に漏れたとしても、10年もたつと10件、20件となり、1件、2件というわけにいきません。 当時、職場の中で請求書に明細がついていないのは、NTTの請求書と固定資産税の納税通知書じゃないかという議論が起こりまして、それで、内部では昭和60年ぐらいから検討はしていたんですが、もうぼちぼちタイミングだろうということで、平成元年度に納税通知書に課税明細書をつけて送りました。ところが、最初に納税通知書に課税明細をつけたときには、納税通知書の綴りの一番上が納税通知書、2枚目が1期分、3枚目が2期分、続いて3期分、4期分とくるわけなんですが、課税明細は一番後ろのページにつけておいたんですね。そうしたらば、課税明細書をお送りして、しばらくは、何も問題なさそうだな、やれやれというふうに思っていましたら、ある納税者の方が最後の4期分の税を金融機関で払っていただいた時に、その納税者の方が、「何じゃこれは」というふうに課税明細書を見られたと。初めてそのときになって課税明細の中身を見たらば、「どうも、私がしばらく前に手離した土地が載っているよ」ということになりまして、それで、そのことがその方だけでおさまればよかったんですが、たまたまマスコミの、これは新聞社の方でしたが、そちらのほうにその情報が入りまして、これが新聞にニュースとして載ってしまったというようなことで。課税誤り事件と我々は言っているんですが、その時には相当マスコミなどからたたかれました。それで、納税者が誤って納め過ぎたものをどうやって返そうか、あるいは今後課税誤りが出ないようにするにはどうしたらいいかと、いろんな対策を考えました。ちょうど10年ぐらい前の話になりますが、そういった苦労をしてきたことがあります。 しかし、先ほど塩川先生や水城先生から納税者の代表ということでご意見をいただいたり、また、前田先生からもいろいろご意見をいただき、それから、コーディネーターの福井先生からもご指摘があったように、これからはやはり閉鎖的な形での税というのは通用しなくなるだろうと思います。どんどん自分たち行政の側から課税情報をオープンにしていって、ご指摘をいただく。それで人間がやることですから、間違っていたらごめんなさいで直す。そして、正しければこれは正しいということで、今度は税の公平・公正という観点で、審査委員会なり、訴訟なり堂々と自分たちの税の正しさを主張していく、こういったことが必要なんじゃないかなと思います。 格好いいことを言っているように聞こえると思いますが、現実問題として、今、私どもはそういう形でやっておりますし、いろいろご指摘いただいている標準宅地の鑑定評価書、それから、標準宅地調書、路線価の計算書、すべて納税者が窓口に来られた場合にはオープンにしています。画地計算だけではありません。鑑定士から鑑定評価書をいただいて、その鑑定評価書の内容も個人情報にかかわる、例えば、売買実例等の所在等についてはマスクをかけますけれども、それ以外についてはオープンにして正々堂々と納税者の方にご説明する。間違っていればごめんなさいということで税額を変更するという手続もとります。そういったことが一つ一つ非常に厳しいですけれども、そうしていかなければ、これから市町村の財政を一番担ってくれる固定資産税をもっともっと大きな税として育てていかなければいけないわけですから、そういった苦労を重ねていって、最後に納税者の信頼を得ると、こういうことが大事じゃないかなと考えています。 水城 今のお話に関連してですが、だから、私、課税明細書、これの付録が大事だと申し上げたんです。横浜市の場合もせっかくいいことをされながら、ミスが見つかってマスコミにたたかれたということでしたけど、これは、やりようによってはかなり避けられたと思うんですね。つまり、それを出されるときにちょっとお便りというかね、入れまして、「今度からこういう課税明細書を入れてありますと。それで、万事間違いないようにしてはいるけれども、もう何万件も扱っているんで、念のためにお確かめください」とか、何かちょっと一枚入れておけば、そんなに納税者が怒ったりしない。もう納税者はみんなわがままですからね、役所で膨大な数を扱っているなんてわかりませんから、いや、それでも間違っちゃいけないんですけど、しかし、中にはそういうミスというのはあり得るわけですから、ちょっと一言、そういう親切な、きめ細かな、これがもうほんとうにさっき言ったように、納税者とを結ぶ命綱ですので、これを最大限に利用して対応したらいいんじゃないかなという意味でさっき申し上げたわけでございます。 株丹 私のほうもちょっと関連してお話しさせていただきたいんですけれども、私も行政の中に二十数年ぐらいいるんで、いつも考えているんですが、行政というのは大体継続だというふうにいっていると思います。私個人は、どちらかというと変えたほうがいいのではないかというときには、比較的変えるほうを選んできましたので、そういう意味では、猪山課長が言うところのごめんなさいというのはかなりやってきたことでもあるんですが、変えないということになった場合には、結構変えないなら変えないで大変つらい場合というのも、実は行政の場合多くて、今回のような情報開示、ある意味で私はいろんなことを変えるきっかけになるのではないかと。これは別段今までのが間違っているという前提ではありませんけれども、そういうふうに前向きにとらえることができるんではないのかなと思っております。 それで、きょうは個人の立場で来られたわけでございますけれども、水城委員もぜひお立場に戻られたときには、公共放送としてこういうような行政の動き、つまり、物事を前向きにとらえて変えようとするような場合には、仮に間違いがあっても、向こう傷として少しお褒めといいましょうか、プラスのほうもあるんだというようなことでご評価いただけると、公務員が非常に気にかけているものは、もちろんいろいろありますけれども、最も大きいは公共放送をはじめとするマスコミであり、つまり世論であると思っていますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。 それから、さっきの福井先生のお話なんですが、ご指摘のように、固定資産課税台帳、言葉としての縦覧という言葉は、縦に見るといいましょうか、ほしいままに自由に見ることができるんだというふうに言われていたところでございますし、お話がありましたように、昭和30年代まではだれでも自由に見ることができると、こういうことでございました。これは厳しいご指摘をちょうだいしたわけですけれども、必ずしも市町村、あるいは旧自治省なりがとても見せられないと思ったから隠そうとしたということ、そういうご意見もありますが、そうではなくて、今の固定資産課税台帳の中をごらんいただきますと、まさしくプライバシーそのものといっていい部分があるということがございますので、当時の判断としてはそれはそれで一つの選択であったと思っております。これは、今回のお話に後ろ向きだということではないんですが、今までの流れとしてはそういう部分があったと思います。 それから、アメリカのお話、私、アメリカ、よくわからないので、むしろ前田先生なりからご指摘をいただいたほうがいいかもしれませんけれども、確かに情報公開については多くの州で法令上も位置づけられているということではあるんですけれども、その前提としては、不動産情報の公開といいますか、不動産もその情報も非常に流通をしているということがあって、日本とはその辺が少し感じが違っていたものと思います。 ただ、いずれにしても、先ほど前田先生からご指摘がありましたけれども、今のあり方研なりの考え方の整理というのは、あくまでも税の考え方としての整理ではありますけれども、将来的には、ご指摘がありましたような、不動産情報ということをどういうふうに考えていくのかという、整理は必要になろうかとは思っています。 福井 ほんとうに価格情報を開示するということになれば、今は市町村の方は7割評価にシステムが変わって、しかも、標準地のほうに鑑定を入れるということで、あたかもそれを免罪符のようにして、評価だけは適正化に向かっているというポーズがとれているとは思うんですけれども、それは表面の形式の話でありまして、もしこれがほんとうに全面開示になったとき、果してそれでもつかどうか。今こそ開示を前提にした場合に評価額自体のさまざまの矛盾が表に出てくるかもしれないですよね。その意味で、先ほど塩川さんから意見があったように、実際納税者からの希望としては、自分の額だけがわかってもしかたない。また比較できたとしても、結局行き着く先が標準地の評価額が適正かどうかに行き着くわけです。そうなりますと、今度は公示ポイントが適正かというところにも飛び火する可能性は必至ですし。そういった意味で鑑定書の公開というのが車の両輪のように求められてくると思います。 市町村の担当職員の方がご存じかわからないですけれど、今からは運命共同体ですから、鑑定の現場の実態をよく見ないと、ただ任せているではすまなくなる。実に非科学的な談合的な体制で行われているところがあることを知る人は知っていて、大変心配していらっしゃるんです。特に問題はバランス、域内のバランス、それから、域間バランスもありますし、また、路線価への敷設の状況のところも、まあ、科学的とは言いにくい実態がある。きょうの大会のリーフレットに、いろいろな文章が載っている中で、大会の実行委員長の矢野さんの言葉の最後に、一層の科学化・合理化というお言葉があって、私は、さっきからウーンと感心して読んでいたんですけれど、今はもう、科学的なアプローチやコスト面や納税者の方々の質の向上を踏まえたもう合理化、そこまで現実のニーズはきているんじゃないかなあと思うんですね。その意味であり方研のほうに評価書の開示というのが検討項目で挙がっているのは、現実をよく踏まえた議論だと思います。 3.納税者に分かりやすい税制度の確立に向けて 福井 さて、時間は幾らあっても足りないので、後半の2本目の柱、このほうがもっとおもしろいかもしれませんけれども、わかりやすい税制度へ向けてのテーマのほうに移りたいと思います。とにかくわかりにくいというのが最近固定資産税にイメージとして定着しつつある感があり、大変によくないと思います。まず、現場にいらっしゃる猪山さんのほうから、窓口で納税者の方、大体どんなご質問が主にされるんでしょうか。 猪山 そうですね。今はやはり土地の価格が下がっているのに、何で税金は下がらないのと、これが圧倒的に多いんじゃないかと思います。納税者の心理としては、これはもっともな疑問だと思うんですね。評価額が下がれば税金は下がる、これはもう当たり前のトレンドですので、ところが、今の税制でいくと上がってしまう場合もあるし、せいぜい変わらないというようなものが多い。その辺が固定資産税の税制がわかりにくいというのを端的にあらわしている部分ではないかなと思います。 これは、ご存じのように、土地の場合には2つの課税標準額と負担水準というものがあるわけですけれども、これに住宅用地の課税標準の特例、これが絡んできますので、もう複雑のきわみ、難解のきわみに達している。実務者の私が言うんですから間違いないと思うんです。 また、住宅用地と商業地と、いわゆる非住宅用地と言っていますけれども、これについては現行の負担水準の上限が違うんですね。住宅用地の場合には、地方税法の本法に規定されています価格掛ける、小規模の場合には6分の1、これが本法に規定された課税標準の額になるんですが、非住宅用地の場合には価格が課税標準額になる。これで住宅用地の場合には負担水準の上限が、価格×6分の1、すなわち100%のところまでいっているんですが、非住宅用地は現在75%、来年度の14年度は70%というふうに法律で決まっておりますけれども、それぞれ負担水準の上限が違いますので、同じ負担水準であっても受けられる負担調整措置の内容が違う。こういった点も複雑にしている一つなのかなと。 それで、現在の負担調整措置の制度というのは、これは全国的にも、あるいは市町村の中でもその負担水準にばらつきがありますので、このばらついている負担水準をある一定の割合の中に収れんさせていって、将来的には価格イコール課税標準額というふうに、非常に簡素な税制にもっていきたいと。そういう形で過渡的に平成9年度から導入されてきて、平成9基準年度、12基準年度と継続しているわけですけれども、あんまりこの過渡的措置が長過ぎると、今の制度を導入した意図そのものが意味がなくなってしまうんではないか。非常に社会経済厳しい環境ではございますが、地価が下落している、あるいは横ばいの今が一番この負担水準の均衡化に向けて是正を図るチャンスではないかと思っています。税負担の問題はあるんですが、これを逃すと非常に難しくなってくるのかなというのが現場の実務者としての考え方であります。 それから、これは私の私見なんですが、総務省の方を目の前にしてこういうことを言うのもなんですが、小規模住宅用地の6分の1の特例というのは、資産課税として非住宅用地に比べてあまりにも格差が大き過ぎると思うんです。それで、この6分の1の特例を従来の4分の1に戻して、それで、負担水準の天井を70%、要するに、非住宅と同じにするというふうにすれば、多少は短期的には簡素の方向にいくのかなと思います。 また、それから、住宅用地の特例制度そのものも、きょうは納税者の代表の方がいらっしゃるんであんまり大きな声では言えないんですけれども、もっと簡素なものにすべきじゃないか。今は家屋の床面積の10倍までが住宅用地で、そのうち200平方メートルのところが小規模住宅用地で6分の1の特例ですね。そのほかの200平米以外の家屋の10倍の面積のところまでは3分の1の特例、この10倍まで住宅用地というのはもういかがなものかな。ですから、住宅用地というのは小規模住宅用地部分だけに限ってしまって、現行の200uを多少250とか、300uぐらいまでアップさせるにしても、それ以外のところはもう住宅用地という時代じゃないのではないか。ウサギ小屋に住んでいるわけですから、そういう時代じゃないのではないのかなと思っています。そういった案も考えられるのかな。 固定資産税というのは、もともと資産価値に応じて課税する物税、財産税ですので、それと同時に応益的な性格を持っている税ですから、中長期的には住宅用地の特例のような人的要素というのは排除して、本来の資産税としての性格をもっと強めていくべきと。そして、地方分権が進んでいく中で分権型社会というのはだんだん熟成してくると思います。そうすると、市町村が自主的に税を課税することによって財源を獲得していく中で、どれだけの財政需要があって、どれだけの財政収入が必要になるかがわかるわけですから、そのときに市町村の中の資産の総評価に対してどのくらいの税率をかければどのくらいの収入を賄えるのかを判断していく。こういう時代が遠からず来るんじゃないかと思うんですね。そのときに一番固定資産税というのは、市町村の基幹税として、また、屋台骨として頼りがいのある税になるのではないかなというふうに考えています。 福井 今、大体論点が整理されたかなあと思うんですけれども、株丹課長のほうは追加やまた意見ございますか。 株丹 最初に固定資産税は複雑だということの、何といいますか、共通認識という言葉は適切ではないんでしょうけど、そういうふうになってきているだというお話がありましたので、ほんとうはそうじゃないんだと、簡単なんだと言いたいわけですけれども、なかなかそういうふうには申し上げられないと。猪山課長が言われたことが非常に典型的な例だと思いますし、窓口でもいろいろそういう対応に苦慮されていることが多いと思います。今のような地価が下落をしているのにもかかわらず、税の負担が下がらない、据え置きを含めていぶかしく思うと、こういうことはあると思います。 私どものほうとしては、全体、これは広く固定資産税、全国津々浦々その全体、あるいは市町村の中でも市町村全体と個々の納税者の方の考えと、その区別をする必要もあるのかなと思っておりますけれども、全体の話をさせていただければ、地価が下がっていて、固定資産税がどんどん上がっているというのは明らかに誤解でございます。負担水準の高いところ、特に大都市については、ご案内のように、頭打ちをさせていますので、これはこれで複雑な部分があるわけですが、頭打ちをさせていますから、土地分については減収になっているわけです。 確かに負担が増加をするというところはあって、地価が上昇している部分については、それはそれで説明がつきやすいわけですけれども、それ以外の部分というのは、これまたご案内のように、もともとの税負担の水準が相当低い土地であるわけでございまして、ここの部分、どういうふうに説明するのかということにはなります。ご指摘がありましたように、本来は一気に税の負担が変わらないようにするためということで始めているわけですけれども、それが長くなり過ぎていて、かえって説明としては難しくなりつつある。難しくなりつつというよりも、もともと難しかったけれども、さらに難しくということかもしれませんが、そういう状況だと思います。そういう点では、次のチャンスに思い切った負担水準の均衡化のスピードアップなりということが大きな課題だと思います。 ただ同時に、これは別段固定資産税に限りませんけれども、税の方向性を決めるというのは、地方税も含めまして、非常に大きな政治的な課題でございます。ご記憶のとおりだと思いますけれども、6年にしろ、9年にしろ、12年にしろ、非常に大きな議論の末に決まってきたということがありまして、市町村、あるいは納税者の方を含めて納得のいただけるような方向に少しでも近づけていくためには、日ごろから今の固定資産税の問題、特に言えば、公平という点で、同じ評価の土地について同じ税額に全国的に見た場合に全くなっていないということについてまず十分ご理解をいただいて、それから、よりよい方向に少しでも近づけていけるのかなと、こういうことだと思います。 あと、家屋の評価などにつきましても、今、事務的にいろいろ整理をしまして、要は、市町村の担当の方も含めてとてもわからないぐらい複雑になっていると。これを精緻というふうに評価するかどうかという問題もあるわけですが、全体的にはかえって問題があるんじゃないかという考えで直していきたいと思います。ただ、これも一挙に、例えば平米単価が幾らだと、構造ごとに単価を決定するというところまでいかないものですから、ものすごく変わるとまではいかないけれども、そういうことも含めてできるだけわかりやすいというものを求めていこうと思ってございます。 福井 ありがとうございます。 さて、前田さんのほうからはこの制度のわかりやすさに向けてというのをぜひご意見をいただきたいんですけど。 前田 先ほど来お話がありますように、固定資産税というのは、分類上は物税になります。それから、地方公共団体からのサービスに応じて課税される応益課税でございます。一応租税分類上はこういうふうになっております。ただし、別に固定資産税に限らず、資産課税全部そうなんですけれども、実態として税の負担というのはフローからなされます。所得からなされるわけですね。したがいまして、物税とは言いながら、実際には実態として納税者という個人がおられるわけですから、どうしてもその個人の担税力というものに配慮せざるを得なかったのではないかと、そういうご苦労が課税当局にあったと思います。ですから、昭和38年の制度改正によりまして、本来従前は地域によってばらばらになされていた評価というものを全国的に統一した基準を入れて、これから公正にやっていこうよという制度が導入された時点で、39年の評価替えから新しい、従前の平成9年度のスキーム以前の負担調整制度というものをずうっとやってきた。それは急激な負担の上昇は避けようということです。これは、おそらく物税でありながら人税的な配慮をせざるを得なかったわけですね。 その結果、意図せざる結果として、本来38年の制度改正が目指したところの公正な課税というものが達成できないものになってきた。むしろ、その格差というのが広がっている部分があったので、そこで、またもう一度平成6年に7割評価に変えたわけです。で、7割評価をより具体化するために、ここでも個人、実際の納税者の負担というものに配慮して、平成9年以降は新しい負担調整スキームというのを導入されたわけでございます。ですから、分類上物税、あるいは応益課税というふうに簡単に分類してしまうんですけれども、実際にはそこには納税者に対する配慮というのがどうしても必要になってくる。 しかし、そうは言いながら、ここまででもお話がありましたように、平成9年度のスキームでいいますと、これは、当時の自治省さんも計算されておりますし、私自身も計算したんですけれども、平成9年度のスキームでいきますと、負担水準といいますか、評価割合のばらつきがある。それが是正されるのを、平均的な全国平均、もちろん個別の資産でいろいろばらつきがありますけれども、都道府県単位で出てくる平均を収れんのレンジまでもっていくのに時間が、実は昭和38年の改正から平成6年、9年までと同じような時間がまたかかるというわけですね。特に小規模住宅地に関してはかなり時間がかかる。沖縄県は、当時平成9年の段階では負担水準が十何%じゃなかったでしょうか、ちょっと今、正確な数字を覚えておりませんけど。そうすると、最後の沖縄が下限の60%のところまで、商業地でいいますと60%まで上がってくるのに三十数年の時間がかかってしまう、これは非現実的ではないか。 じゃあ、その期間を短縮するためにどうすればいいか。例えば負担調整のスピード、負担調整率というものをもう少し上げていきましょうと。例えば15年で目標のレンジに全員達成するためにはどうしたらいいかといいますと、そうすると、一番下のレンジの辺で負担調整率をいきなり2倍になるような調整をしなくちゃいけないと、これまた非現実的な答えが出てしまう。これは非常に当局としてのジレンマがおありだったと思うんですが、ところが、同じ計算を平成12年に関しましてもう一度やり直しますと、従来三十何年かかっていた調整のスピードが、商業地に関しましては30年を切って二十何年で済むようになってくるわけですね。それから、住宅地に関しても同じようなことになる。 これは、何が影響しているのかというと、実は負担水準の計算の仕方の分母の部分で、新しい年度の評価というのがありますけど、それが地価の下落を反映して、要するに、分子の部分、前年度の課税標準に随分近づいてきているわけです。ですから、地価の下落、今、景気悪くて、デフレで地価が下がっていますが、これはこの時期、それともう一つ、負担調整の仕組み自体がきいてきているということで、その2つのこと、特に地価が下落していることの恩恵で、思っていたよりも均衡化が進んでいます。先ほど石井局長さんからありましたように、随分公平化が達成されてきましたよというのはそういうことなんですね。 ですから、一気に、もし同じ資産、同じ価値を持つ資産を同じように課税するという当たり前のことを実現するということを本気で考えるのであれば、まず、平成9年度のようなスキームしか現実には考えられないし、それであるならば、今、地価が下落しているときに思い切ってやらないと、基本的には平成9年度のスキームというのを踏襲しながら、それをさらに強化して、思い切って課税の公平を達成しないと、未来永劫に今まで昭和38年からやってきたようなことをまだずうっと何代、何年にもわたって繰り返さなければならない、という問題が起こってまいります。 とはいえ、先ほども言いましたように、実際に納税をしておられる方の負担をどう考えられるのだということは、その現場におられる市町村の課税担当の方はご苦労の点だと思います。そこら辺につきましては、時間が限られておりますので、後ほどまたお話しさせていただきたいと思いますけれども、そうした納税者の負担を考えられる部分は考えて、なおかつ、課税のまず公正というものを達成するための措置を急いでしないと、この機を逃せば、もうそれはあきらめなくちゃいけないという、そういう非常にせっぱ詰まった状況に今あるということを納税者自身も理解しなくちゃいけない。納税者自身がわかりにくい、税金わかりにくいと言いながら、それをわかりにくくしてきたのは政治を通じて納税者がそういうことを要求してきたわけですね。税金を上げるなというプレッシャーをかけてきた。どっちかにしてもらわないと、わかりにくくするのか、それとも税金を上げなくていいというふうにするのか、その場合は税金を上げなければ地方財政はパンクしますよということになりますけれども、そうしたことをはっきりと納税者に知らせること、それもアカウンタビリティの一種だと思うんですね。ということです。 福井 はい。今、論点がいろいろと整理されたと思いますけれども、この間飛行機の中の通信販売のカタログに知恵の輪の上級編とかいうのが売ってあってびっくりしたんですが、現在の固定資産税の制度も、もう最高級の上級編の難しさになっているんじゃないかと思うんですけれども、担当者の方や国の方からそれの解き方を事細かにいろいろ指導されても、解けないものは解けないと、納税者としてはもっと簡単な知恵の輪にしてほしいというのがほんとうは意見としてはあるんじゃないかなと思うんですね。どうでしょう、納税者のお立場からして、水城さん、いかがでしょうか。 水城 そうなんですね。確かにね、もう担当課長でさえおっしゃっているんだから、我々がわかるわけがないので、簡素化してほしいんです。ところが、この問題の難しいことは、納税者からいいますと、簡素でわかりやすくしてほしいと同時に、もう一つ、これは大変矛盾したことなんですが、例えば自分の土地の評価、自分の土地は大通りからかなり奥まったところにあるんでちゃんと安く評価してほしいとか、そういう気持ちがあるわけですね。それからまた、これから固定資産税の改革をやるわけなんですけれども、そのときにあまり急激に負担が増えたり、そういうのはなだらかにしてほしいとか、いろんなことがあるわけですね。それに応じようとすると、どうしても仕組みはある程度は複雑で精緻なものにならざるを得ないわけです。ですから、納税者のいろんな要望を聞きながら、しかも、簡素でわかりやすいと、すぱっとわかると、もうそんな手品みたいなことは私はなかなかできないと思うんですね。しかし、そういうことも頭に入れながら、それでも知恵を絞って、ここから先はかなりテクニカルな問題になりますので、私は具体的にこうしたらいいというなかなかその知恵はありませんけれども、ぜひこれから申し上げる納税者の声も背景に簡素にしてほしいということが1点です。 それからもう一つは、これは、株丹課長に質問も含めて申し上げるんですが、そもそもわかりにくくなった根源は、例のバブル期の土地税制、平成6年の改正で公示価格の7割と、こうやっちゃった。そうすると、大変な増税になるんで負担調整しなきゃいけない。その後また地価が下がってきた。それでまたそれに対応するということで、もうぐちゃぐちゃになったわけでございますが、そもそもこの生まれ方が、私に言わせると納税者不在であった。つまり、あのころは地価税が脚光を浴びて、これで終わりかなと思ったら、12月の年度改正に突如当時の自治省が公示価格の7割だということを言い出したわけです。それまでほとんど議論が行われていなかった。突然そういうものが出てきたわけでございます。ですから、今回の改革に当たっては、ぜひ時々素案とか原案とか出して、できるだけ透明性をもってみんなが、納税者が議論できるような、そういう機会を与えていただいてやっていただきたい。そういう意味で、これから固定資産税の改革、先ほど猪山さんからも指摘があったように、いろんな不均衡もございますから、そういうことも含めて固定資産税の改革、これからどういうスケジュールですね、再来年ですか、評価替え、その辺が目標になるのかどうか、そういうことも含めて後で教えていただきたいというのが1点でございます。 それからもう一つ、先ほど猪山さんから指摘がありましたように、大変これ、不均衡が拡大しております。特に商業地と住宅地の問題、大都市と地方の問題、ものすごい格差が生じております。特に商業地についていいますと、これ、特に東京がひどいのです。私も東京都税制調査会に加わっているのでそんなことも聞かされているのですが、東京23区の場合は、全納税者のわずか8%の商業地等の納税者が全体の固定資産税の8割も負担している、こういうことなんですね。ですから、東京商工会議所なんか、特に中小業者から悲鳴に近い声が出ているわけでございますが、これはぜひ是正すべきであると。税制が原因で企業活動の活力を失うというようなことは断じてあってはならないということでございます。 それから、それに反して住宅地については、先ほど猪山さんから指摘がございましたように、6分の1とか、3分の1とか、特例がございます。先ほど猪山さん、個人的意見だということでしたが、もう去年7月に出た政府税調の中期答申でも、6分の1、3分の1というのは、それ以前の4分の1、2分の1に戻すことを検討すべきだと言っておりますし、私の東京都税調もやはり同じ趣旨の答申を去年11月に出しているわけでございます。 ですから、これは、当然これ、検討課題になるわけでございますが、ただ、難しいのは個人の納税者の立場からいきますと、住宅地というのは生活の基盤でもありますから、負担の適正化というと聞こえはいいのですが、要するに、負担が増えるわけでございますね。今の状況では、住宅地が非常に恵まれている。そして、それに反して商業地等が非常に大きな負担になっているわけでございます。これは、固定資産税の本質からいたしましても、私は、固定資産税は町内会費だと思っているわけでございますが、どこかがたくさん負担して、どこかが安過ぎるということではあってはならない。でありますから、これから住宅地の問題については、納税者の理解を得るようにいろんな角度から努力をしていかなきゃいけない。きょうは会場でお聞きになっている方は、市町村中心にまさに税務の担当者でございますが、この会場の皆さんが一般住民であるというようなね、タウンミーティングといいますか、そういうことを各地でやったりして、固定資産税に対する理解を得て、住宅地と商業地の負担調整、大事な問題です。 それから、大都市と地方、これも、時間もございませんから、数字一々申し上げませんが都道府県別の負担水準が大都市はもう六、七割くらいになっているのに、3割台ぐらいの地方都市もあるわけでございまして、これはやはり是正すべきである。まだまだ徴税努力の余地があるんじゃないか。税源移譲ということを私も賛成でございまして、国から地方への税源移譲は賛成でございますが、それを言う以上は、自分のおひざ元、市町村にあっては固定資産税、それから、都道府県にあっては外形標準課税の問題ですね、きちっと自分のところでやるべきことをまずやる、徴税努力をやる。という上で税源移譲を言わないと、これ、迫力がないわけでございます。ここら辺もこれからの大きな課題ではないかというふうに考えております。以上でございます。 福井 はい、どうぞ。 株丹 水城先生からご指摘ございましたので、1、2点触れさせていただきたいと思います。 1つは、来年度といいましょうか、次の評価替えに向けて、当然今、議論いただいたようなことをいろいろ踏まえて作業ということになろうと思いますけれども、そのときにご指摘として納税者、これは当然市町村も含めてというふうに考えますけれども、そちらのほうをちゃんと向いて作業を進めるというご指摘だと思いますので、ちゃんと踏まえてやりたいと思います。 それから、もう一つですけれども、今の地価公示の7割という評価に関連してのご指摘でございます。私の理解では、これもご案内のとおりだと思いますけれども、バブル期に土地の価格が非常に高騰したと。そのときに一つの方策として土地保有のコストというものをどう考えるかと。それを高くして、そのことによってバブル退治といいますか、土地に対する投機というものについて抑制的なことをやってはどうかという考え方が一つあったと思います。旧自治省としては、必ずしもそのような考え方に対して固定資産税を政策的に活用するということについては積極的ではなかったと思いますが、そのようなことが背景としてあったということと、もう一つは、地価の見方について、公的なところが幾つかの地価を出していて、その間の関連が整理をされていないと。そういう中にあって、実際の固定資産税の評価については、納税者の負担というものをある意味でにらみながら評価を行っていたということで、これについての、いわば整理をする必要があって、地価公示についての、割合はともかくとして、これにリンクをさせていくということがとられたということかと思います。地価公示の7割、今もそういうことで評価をお願いをしているわけですけれども、評価の公平化の効果がようやくあらわれてきたと思っております。ただ、評価の問題と税の負担の問題というのは少し分けて考えると、こういうことではなかろうかと思います。その点だけつけ加えます。 福井 それでは、最後に、塩川さん、お願いします。 塩川 納税者の立場から、この土地については非常にわかりにくい税制になってしまったということになります。それは、一つの原因は平成6年の地価公示価格、これで全国的に統一しようと、そこに踏み切られたためにいろんな措置が必要になったきたんだと、そういうことにしか尽きないかと思います。したがって、評価額と課税標準額の関係が非常にわかりにくい。そこにバブル崩壊後の果てしなく続く地価下落の中で、土地の価格が下がっても税額が据え置きになったり、あるいは上昇することもある。もうこういう訴えが非常に多いわけなんです。これは納める側にとって、当然にその背景はいかんであれ、直感的に感ずることでして、それが非常に難しい説明を聞かないとわからない。ここに問題があるんじゃないかなと思います。 それから、住宅政策の目的で住宅用地の特例が設けられているということで、先ほど猪山課長さんのほうから、その当時4分の1だったのが6分の1になり、また、2分の1だったのが3分の1になったということで、非常に非住宅用地、いわゆる商業用地との格差が大きくなってきたと。これでは負担のあり方において大きな問題になっているんじゃなかろうかと思われます。また、家屋や償却資産に対する課税方式というのは、評価額×税率=税額と、ほんとうにシンプルになっております。したがって、土地に課する固定資産税においてももっとすっきりした形で税額が算定できるように改正を望みたいと思います。 それから、家屋についてなんですが、再建築価格というのは家屋の構成要素として基本的なものであり、評価の方式化も比較的に容易にできることです。そのため家屋の再建築価格方式が採用されているところなのですね。これによりますと、評価の対象となった家屋と同一のものを評価時点においてその場所に新築するとした場合に必要とされる建築費とされております。この評価方法において、評価過程についての情報開示をもっと進めるべきであります。この評価過程を納税者に説明できるように簡素化すべきであります。現在、登記所においては、新築建物の表示登記をする場合には、固定資産税評価額に基づいて登録免許税が決定されております。それが固定資産税評価額が決定される前に登記がなされる場合には、登記所の簡易な評価方法、いわゆる構造用途とか、あるいは木造2階建てとか、非木造だとか、その程度の簡単な評価方法で登録免許税が決定されております。それらを考え合わせると、もっと簡素化してもいいのではないかと考えております。 それから、償却資産についてでございます。償却資産に係る固定資産税の賦課期日を事業年度終了の日としていただきたいと。これは以前にも要望があったことかと思いますが、ほんとうに切実な要望として申し上げます。償却資産に係る固定資産税は、申告を基礎として賦課徴収の方法がとられております。そのために納税義務のある償却資産の所有者は、毎年1月1日現在における償却資産の状況を1月31日までに市町村長に申告しなければなりません。納税者の立場からすれば、決算手続とは別に固定資産税の申告手続を要求されるわけです。納税者の事務負担の簡素化のために、税務会計上の課税期間と償却資産に対する固定資産税の課税期間を一致させてほしいと思います。そうすれば、事業年度末日、いわゆる決算日を賦課期日として償却資産の申告ができることになります。 また、償却資産申告書には、個人については、所得税の減価償却計算書、法人については、別表16と、それから、減価償却資産の個別明細書を添付させてその申告内容の正確性を担保する方法を提案したいと思います。 福井 ありがとうございました。どうぞ。 株丹 実は、塩川先生からはほかにもいろいろご質問をちょうだいしていて答えなきゃいけないんですけれども、とりあえず2点ほど、1つは、償却の関係なんですけれども、確かにご指摘のようなご要望というのはあると思います。ご案内のように、法人税の関係というのは、それぞれの会計年度の関係が一定のところでおさまっていないものですから、ちょっと固定資産税のほうの整理とうまく合ってないということがございまして、いずれにしてもご要望ということでございますので、それを踏まえて検討をしなきゃいけないと思います。 それで、家屋のほうのお話でございます。今の家屋の話につきましては、今の家屋の評価のやり方自体で大変ある意味で難しくなっているということを踏まえてのご指摘だと思います。私ども、それについては確かにそういう面があるということで、できるだけ簡素化をしていきたいと、次の評価のときにはそれが間に合うようにしたいと思っておりますが、他方で、これは、実はこの間、韓国のほうで、これも言葉は違うんですけれども、固定資産税に似たような税を韓国でも家屋なりについて取っておりまして、そのときの評価のやり方について、韓国のほうは、逆に非常に簡素にしていて、こういうようなたぐいの構造の家だったらば全国共通幾らですと、こういうようなやり方をとっておられるようなんです。大変単純化しておりますけれども、韓国では逆に家ごとに同じ構造でも金をかけている方とかけていない方との差がないというのが問題になっているというようなこともあって、いわゆる平米単価なりでやるということについては、今後直すことを検討していかなきゃいけないのかなというような考え方をお持ちのようでもございました。現状としては、新しい建物を今の段階で建て直すとすればということで評価を考えるというのが一つ基本になるのかなと思っています。 それで、もう1点申し上げたいのは、建物について古くなれば価値が下がっていくのに、あんまり変わらないじゃないかというご指摘も結構あるのかなと思っていまして、この点につきましても、時期の問題があって、たまたま私が言うのは今いい時期なのかもしれませんけれども、以前であれば相当インフレでしたので、建て直しをするというふうに考えると再建築費用が高くなるので、多少経過年数がたっていてもあまり結果的には評価額が変わらないと、こういう時代だったと思うんですが、今では、評価替えをいたしますとかなりの家屋というのは減税といいましょうか、評価が下がるということであろうかと思います。 それで、ただ、非常に古くなっていても相当の税額がかかるじゃないかということについては、これは古くなりましても使っていただいているということであれば、それなりに行政サービスに対応するので、ある程度のご負担というのはお願いしてよいものと、こういうことでご説明するものだと思っております。 福井 今、納税者の方々から期せずして、導入の背景はそれとして、7割評価が大もとでさまざまな複雑さが生まれてくるというような糾弾がなされてちょっと驚いたんですけれども、確かに地価公示価格は、ずうっと10年下落、税収の点からも今後を考えると皆さんご心配だと思いますけれど、その水準も、新聞報道によると10年前の水準に戻ったどころではなくて、水準自体はもっと激しくて、20年前の地価水準に戻っているというゆゆしき事態が発生しております。私どものシンクタンクの考え方でも、いわゆるバブルは直近の昭和58年に始まった都心三区の記憶に新しいバブルだけを指すのではなく、多分戦後一貫して私どもの国の商業地なり、住宅地は、負担水準を超えてインフレ的な膨張を続けてきて、50年間でインフレを続けてきたのではないかと主張しておるんですけれども、もしこれが正しいのであれば、公示価格はまだずうっと下がる可能性が大きいです。そうなりますと、根幹税としての固定資産税はどうなるのか。特に先ほどのご紹介があったように、商業地がその割合としては大きいという場合、ほんとうに大きなテーマになるのかなあと思います。 ですから、7割評価導入というのをもう揺らぎないものとして、さあ、どうわかりやすくするかというアプローチと、いや、そもそもの公示地価リンクというところからもう一回考え直すというアプローチと、これはまた全然違うことですので、ぜひその2つとも検討のまないたの上に上げていただければと思いますが。 さて、そろそろ休憩時間に差しかかりますが、前半で言い足りないとかというようなこと、たくさんあると思いますが、前田さん。 前田 7割評価の話が出たんですけれども、7割評価を7割にするか、8割にするか、6割にするかを決める際に7割になったのはバブル以前の水準に合わせればという、その他もいろんな基準があったんですけど、まあ、7割になったわけで、大事なのは、要するに、何割と決めることが大事だったわけですね。地価公示価格そもそもという話になれば、それまた話が別になりますけれども、仮に6割でもよかったんですが、要に、それで均衡化させようと、何か目標をつくろうというのがねらいであった。7割が入ったからわからなくなったんじゃなくて、それ以前もわからなかったんですよ。わからなかったけれども、バブルというのがあって、一方ではバブルのときは、東京になると評価額が実際の取引される価格の2割とか、1割とか、すごく違ったじゃないかとか、そういう問題があって、それを是正する。だから、時期が悪かった、導入されたときには既に地価が下落局面に入っていたということが問題であって、それは7割がいいかどうかは別にして、何割かという基準はこれ、やっぱり考えるべきであったというふうに私は考えます。 福井 そうですね。だから、7割云々というよりは、さっき前田先生がおっしゃったみたいに、公示地価リンクだとか、もっと水準としてどうなのかという議論なのかもしれない。ただ、結局は、負担のほうから見てどのあたりを目指すのかというのがまだ今のところ定説がない。そこが元凶かもしれないですね。 前田 ですから、ただ公示地価といっても使えるかどうかとなると、先ほどの内閣府の話じゃないんですけれども、それが使えないとするならば、不動産市場の情報の不完全性にあるんであって、そういう意味からも、先ほど申しましたように、固定資産税に係る情報の公開というのが求められるかもしれませんね。 水城 ちょっと関連して、誤解のないように申し上げますけど、7割評価、それをきっかけに負担調整をして複雑になったという、私は、その歴史的な事実を申し上げたわけで、7割評価がいけないとかそういうことを言っているわけでは決してないわけです。ただ、これからどうするかということを考える場合に、固定資産税というのは市町村の最大の税源でございますから、地価の動向によって税収が急に増えたり、税収が急に減ったり、そういうことは絶対あってはならないと思うんですね。そのために一種の、これ、外形課税でございますから、安定した税収、なだらかに増えていくというのが望ましいわけでございます。 そうするためにはどうしたらいいかというのは、これは非常に技術的な問題ですが、いろんな試算ができると思います。物差しは必要だと思いますから、固定資産税の7割というのが適当であるならば、それを基礎に今後も作業をしていったらいいし、また、別のやり方のほうがよければ、そっちのほうを採用したらいいわけであります。要するに、固定資産税の税収が急に増えたり、減ったりしない、安定して増えていく、少しずつ増えていく、そういう形を前提にこの基本になる公示価格の7割とかどうかとか、そこら辺を考えていくべき問題ではないかな、そういうふうに私は考えます。 塩川 このなぜ7割評価なのですかという問題に関しましては、平成6年、平成9年、それから、平成12年、いまだに審査委員会のほうに申し出が続いております。なぜ7割なのかというのにやはり答えていく必要があるんじゃないでしょうか。 猪山 やはり実務の立場からいくと、地価公示の7割評価によって、初めて固定資産税の評価の全国的な均衡が図られてきたと思うんです。それ以前の平成5年以前は、3年ごとに評価替えがあるんですが、3年間の負担調整措置、税負担と評価というのは常に連動していたんですね。ですから、3年間負担調整措置をやって、例えば2.197倍という数字が私の頭の中にあるんですけれども、1年に3割ずつ負担を上昇させていく、つまり1.3の3乗が2.197なんです。そうすると、地価が急激に上がっても、上昇率が2.197倍以上になる評価替えを行なっても、次の評価替えまでに積み残しが出てしまいますので、価格をそこまで上げて納税者から批判を浴びるよりも、評価で頭を抑えてしまう、こういうことをやって評価で税負担を調整していた。ですから、今、負担水準のばらつきというのはそういう部分も出ているのではないか。ですから、評価額の水準も地価公示の1割5分のところも2割のところもある、あるいは3割のところもあるというような状態にあったわけですね。それを少なくとも価格と税の負担というのは切り離すべきだ。資産税である以上、資産価値に応じて課税するべきであり、資産価値というのは最も均衡がとれたものでなければならない。ということで地価公示の7割評価が入ってきたのだと思います。 土地の評価というのはすごく専門性が高いわけですね。これは収益還元法とか、原価法とか、開発法とか、あるいは取引事例比較法とか、いろんな手法がありますけれども、行政の職員が携わって現場で一番均衡がとれる評価というのは、やはり取引事例比較法なのかなと。ですから、先ほど地価公示価格についてもいろいろ問題があるというご指摘がありましたけれども、固定資産税の評価の均衡という面からは、地価公示をもっと増やすとか、あるいは標準宅地をもっとオープンにしていく、それで標準宅地とか、地価公示のポイントから路線価の価格を付設していく。ただ、そこの手順がないんですね、今。 ですから、ここのところを、横浜市の場合には、以前国土庁の土地価格比準表というのを使っていたんですが、これは道路の状態だとか、駅への接近の状態だとか、あるいは商業地の場合には繁華性だとか、そういったものの程度の違いを判断して、路線価を付設していたんですが、これも非常に使い方としては難しい。定性的な判断を要する部分がありますので。これを我々、実際には今、区役所に土地だけではなくて、土地家屋含めて数百人の職員がいるんですが、二、三年のサイクルで職場をかわってしまう。二、三年でかわってしまう職場の職員にどうしたら正確に評価の均衡を徹底させるかというと、現場へ行って計測してきた定量的な事実に基づいて、だれがやっても同じ評価になる工夫をする。こういうことが評価の適正、均衡化ということで、まず現場としては大事なことではないかなと思います。 評価理論で収益還元法とか、取引事例比較法とかいろんな手法があるけれども、そこはやはり専門の分野の不動産鑑定士の先生方にお任せする。平成6年に地価公示を導入した当時は、確かに面的な面から見てバランスは失しているものがあったのではないかと思いますけれども、3回の基準年度を経て、地価公示価格も、それから、都道府県の基準地もかなりバランスがとれてきた。そして、標準宅地の価格もバランスがとれてきた。今、地価公示価格も収益還元法的な考え方からいけば高い含み益の部分があるかもしれませんけれども、かなり評価のバランスはとれてきている。ですから、固定資産税をこれから国民の信頼を得る税制にしていくには、今の地価公示の7割評価、あるいは6割がいいのかもしれませんけれども、そういった一定の評価の水準を維持して、全国的な均衡化、適正化を図っていくということは、これは僕は続けていくべきではないかなと考えております。 福井 はい。もう一回後半のほうで発言の機会がありますので、それでは、このあたりで休憩に入りたいと思います。3時50分から再開させていただきます。 事務局 ここで、事務局からお願いがございます。質問がおありの方は、この休憩時間の間に質問票のご提出をお願いいたします。質問票は本日お配りしている資料の中に入っている資料一枚紙物をご利用ください。質問票の提出は、このコスモスホールを出たところに受付箱を持った事務局職員がおりますので、事務局職員にお渡しくださるようお願いいたします。質問票の提出期限は休憩時間終了5分前、3時45分でございますので、ご協力をお願いいたします。 4.質問コーナー 福井 お待たせいたしました。 では、後半は皆様のほうからたくさんご質問いただきましたので、できるだけたくさんお答えしていこうということで、まず最初ですが、質問をされた方のお名前がありませんが、猪山課長に、最初のテーマですね。情報公開に関してのご質問がきております。あり方研の公開ということの検討事項を踏まえて、縦覧に供する項目内容、それとプライバシーについてご見解をお願いしますということです。 猪山 はい。縦覧に供する場合に他の所有者の方の資産も見られるということになった場合には、その項目についてすべてがいいのか、あるいは我々が現場で職務上調査している中で知り得た個人のプライバシーの部分もあると思うんですね。例えば土地の場合、所有者については、基本的には登記簿上の所有者から相続とか、あるいは贈与によって次の世代に移っている。あるいはまだまだ相続の遺産分割協議が整わないで、とりあえずこの方を所有者にということで、現に所有する者というような形で納税義務者を認定している場合もあろうかと思います。それとあと、所有者の住所、これも登記簿に載っている住所が変わっている場合があります。それで、いろいろな都合で今、居所はあまり明かしたくないというような方もいらっしゃるわけですね。ですから、そういった点について配慮しなければならないのかな。ですから、所有者名とか住所までは、これは自分の資産価値が正しく評価されているのかどうなのかということを見る上では、あまり必要ないんではないかと思いますので、いわゆる個人に属する情報、そこの部分というのは縦覧でも省いたほうがいいのではないのかな。 それからあと、家屋については、もともと今の評価が再建築価格方式ですので、お隣、あるいは近所の自分の家と同じような建物を見ても、どうしても価格だけでは納得してもらえないと思うんですね。これは家の中で、応接間はどういったものが使われているのとか、あるいは床暖房があるのとか、給排水衛生設備はどうなっているのかとか、いろいろ個人のプライバシーに踏み入った説明をしないとご理解いただけない部分が出てくる。価格だけオープンにしても、先ほどのような説明責任を果たせない、個人のプライバシーの問題で果たせない部分もある。そういったこともありますので、そのような点も含めてこれから検討していっていただかなければいけない部分があるのかな。 ただ、土地の価格だけをオープンにするというのは、制度の中では難しい話だと思いますので、そういった点も含めてどういった方策がいいのか、幅広い議論が必要じゃないかなというように考えております。 福井 次のご質問は、星野光男さんからのご質問で、家屋の情報公開につきまして、こちらは株丹課長に質問ということなんですが、平成15年度の縦覧のときに家屋の評価額のほかに家屋調査評点表も公開するのですかという質問がきています。どうでしょうか。 株丹 まず、お手元のパネルディスカッション資料の中で、縦覧制度の改正というところがございまして、土地、あるいは家屋についてこういう項目につきまして縦覧帳簿というものを新たに整備しましょうと、こういうことが書いてございます。その中で家屋につきましては、評価額ということまで入れておりまして、ご指摘の家屋調査評点表というのは、このあり方研の中間報告書の、いわば案のようなものでございますけれども、その中で言えば入っていない、公開しないという方向性でございます。 それで、土地と家屋につきまして、確かに今、猪山課長おっしゃっていただいたように、全く同じように考えていいのかどうかと、こういう問題はあると思っております。ただ、これもおっしゃっていただいたわけですけれども、現状の中で自己の、自分の資産、それとほかを比較をすると、ほかの人というよりも、周辺のということになろうかと思いますけれども、それの評価額を比較をしてもらうことによりまして、相対的に妥当性というものについて考えていただく、納得していただくということを考えますと、制度としては、土地と家屋というものを分けて、家屋の場合はだめだというのは、理屈としてはちょっと難しい部分があるのかなあという感じを今の時点では持っております。 そういうような状況で、あと、償却資産については一番最初に福井さんのほうからおっしゃっていただいたように、これは申告制度をとっているものですから、あまり比較というような点でのメリットがないという考え方で整理をしたということでございます。 福井 はい。次の質問は、2つ目のテーマのわかりやすい税制度に向けてということに関する質問ですけれども、こちらご質問者は石川一郎さん。答えてほしい方は、前田先生と塩川さんと水城さんということになっています。ご質問は、簡素な税制を実現するためには、税負担の急激な上昇を避けるために実施している負担調整を廃止してはどうでしょうか。国民も同じ土地であるのに税額が違うということがわかれば、その不公平感のほうを問題とするのではないでしょうかということなんですけれども、じゃ、前田さんからお願いします。 前田 納税者といってもおそらく2つのグループがありまして、現在、負担水準が低い納税者の方、それから、現時点で負担水準が比較的高い納税者の方に分れると思います。おそらく情報開示というものを進めていきますと、納税者の中に出てくる意見というのは、1つは、現在、負担水準が低い方たちがどこまで上げるんだと、しかも、先ほどから論じられておりますように、地価が実際に下がっているのにどこまで負担を上げていくんだと、これはおかしいじゃないかという考え方、もう少し負担の上げ方というものを調整してほしいという意見も出てくるかもしれません。一方、今現在、負担水準が高い方たちにとりましては、負担水準の低い方の分もある意味で税金を自分たちが負担しているということになりますので、地方財政の運営コスト、その方の分も負っていることになりますので、そういう方からは早く不公平を是正しなさいと、低いところは早く上げなさいという意見が出てくるものと思われます。 ところで、我が国の固定資産税というのは、本則課税の部分と、それから、さまざまな負担調整によって、現実に課税価格と課税標準とが大きく乖離するという仕組みになっている二重構造の問題をずうっと抱えてきておりまして、繰り返しになりまして申しわけございませんが、その二重構造を是正するための一つの試みが地価公示価格の7割に統一しようよということでした。ただし、いきなりいってはいけないから、平成9年度スキームという形で、負担調整措置を新たに導入しましょうよということをやってきているわけでございます。これも先ほど申し上げましたように、もし課税の公正という大前提を優先することに納税者の方が納得していただけるのであれば、場合によっては一挙に7割に合わせて、そのかわり税率を下げると。それから、マクロでの税負担は動かないようにして、税率は今の1.4%から下げるということももちろん選択肢としてはあるわけでございます。ただし、それに対して納税者の、先ほど言いました2つのグループの方たちが相反するそれぞれ考え方を持っておられまして、そこら辺の調整がどういくかということが問題になってくるかと思います。 もし課税の公正さ、公平さという大前提を優先するんであれば、本則課税に戻りまして、なおかつ、公示地価の一定割合でもって統一して評価するというシステムが喫緊の課題となるわけでございますが、ただし、そのときには負担水準の低い方たちは大幅な税負担のアップになることになります。 そのときに一つ考えなければいけないのは、現在の我が国は非常に高齢社会化が進んでいる、超高齢社会に向かって突き進んでいるという状況でございます。したがいまして、多くの納税者の方には、多くの高齢者の方が含まれています。全国消費実態調査で見ていきますと、高齢者の方の資産分布、金融資産を除きまして住宅、土地に関する資産分布を見てみますと、1,000万から3,000万の方と、それから、5,000万超の方という形に二極分解しております。これは平成6年で、新しい平成11年分がもうすぐ出ると思うんですけれども、高齢者世帯のデータがまだ出回っておりませんので、平成11年度分については調べてないんですけれども、平成6年に関して見ますと、もちろん資産の保有率は一般の現役の方より高うございます。ただし、持っているんだけども、1,000万から3,000万という比較的お安い資産を持っておられる方と、5,000万超という比較的価値のある資産を持っている方に両極分解している。それで前者が4割でございます。5,000万以上のグループというのは6割でございます。ただし、どちらもフローは少ない。収入は年金収入等に限られている方が多うございまして、実際にそれを負担する力は果してあるのか否かが問題となります。 また、別の資料で最近、公表されました土地基本調査の結果を見てまいりますと、きのう見ていたんですけれども、70歳以上の高齢者の方で土地を持っておられる方がいつその土地を取得されましたかというのを見ますと、戦前に取得したよという方が2割おられます。それから、戦後昭和35年までに取得された方が2割おられます。実はその35年まで、すなわち戦後の地価の高騰が起きる以前に取得されたという方が5割以上でございます。それから、65歳から74歳の高齢者の方について見てまいりますと、1割の方が戦前に取得し、2割弱の方が20年から35年までの間に取得しています。両方合わせますと3割の方が、65歳から74歳までの年齢層におきましては、全体の3割弱の方が地価高騰までに土地を取得している。比較的古くから土地を持っておられるわけです。 なおかつ、そうした土地がどういう土地かというのを見てまいりますと、戦後35年まで、戦前のデータはございませんので、戦後35年までに取得された土地の1世帯平均の土地の面積が353平米ございます。以下36年から45年、もう高度経済成長に入っておりますけれども、そのときは333平米という1世帯平均でございます。それから、46年から50年に300平米を切りまして285平米、平成9年、バブルのころから、バブルのころは少し持ち直したんですが、現在、平成9年のデータが一番新しいんですが、平成9年は1世帯当たりの土地面積186平米でございます。200平米を切っております。 ですから、この2つの数字からおそらく予想されることは、高齢者の方は比較的古い時期に比較的広い土地をお買いになっておられると。取得時期が古うございますから、一般論的には、そうした土地は、負担水準は最近造成されて新たにつくられた土地よりも、負担評価割合というのは低くなっているんじゃないかと考えられます。それと高齢者の方のフローが少ない。なおかつ、高齢者の中でも資産をたくさん持っておられる方、そうじゃない方、二極分解しておられるということを照らし合わせて考えますと、もし負担の均衡化ということを急いだ結果何が起こるかというと、高齢者の中で今、住んでいる家を売らないと固定資産税を払えないよという方が出てこられるおそれがございます。 それに対する対策としましては、猪山課長も同じようなお考えをお持ちのようでございますけれども、例えば固定資産税の枠外での措置しか考えられないわけですね。固定資産税を払われる高齢者の方には住民税を減免しましょうとか、ただし、それは高齢者であればということではなくて、それは収入の実態を把握しなくちゃいけないかと思いますけれども。一方で、ただ、いや、住民税も払ってない、年金生活ですから住民税、ほとんど払っていませんという方はどうするか。補助金を出すか、こういう形はあんまりよくないかもしれません。 もう一つ考えられるのは、アメリカでやっているリバースモーゲージみたいな考え方でございます。その方が生きている間には固定資産税を延納しておいて、それで、死後清算させていただくと。ただ、これはこんなご時世でございますからなかなかやりにくいではないか。実際にこれは、福祉関係に関しまして、武蔵野市とか、三鷹市で既に導入されておりますが、利用率は非常に低うございます。リバースモーゲージのリスクというのは、地価変動リスクと、それから、実際その方が何年生きられるかわからないという寿命リスクというのがございまして、なかなか、それで、実際に自治体が直接やるかというと、直接やらずに、例えば信託銀行と組んでやることになります。クレジットカード、クレジットみたいな方式ですね。ところが、信託銀行というか、金融関係がまたこういう情勢ですからなかなか乗ってこないだろうという問題もございまして、すぐ制度を整備できることは難しいかもわかりませんけれども、ただ、何か新しい方法を考えていかざるを得ない。 ただ、一昨年評価センターのほうからアメリカに視察に行かせていただきまして、そのときにリバースモーゲージを実際に導入しているカリフォルニアとか、ワシントン州の実態を見てまいりましたら、制度は整備されているけども、利用される方は非常に少ないということでございました。なぜかと聞きましたら、アメリカ人の感情にはそういうのは似合わないというような説明しか返ってきませんでした。ですから、制度を整備しても実際にそれが定着するかどうかというのは、これは国民感情、国民の特性によりますので、一概に言えませんけども、何かそういう、もし課税の公平というのを重視して均衡化、課税の公正の実現を急ぐべきであると思いますが、それには何らかの別途の措置、固定資産税という枠にとらわれずに考える必要があるかというふうに考えます。 福井 はい。では、今の負担調整はもう廃止してはどうかというご質問、塩川さんはいかがですか。 塩川 固定資産税というものは、いわゆる市町村から受ける行政サービスに対するものであると。それが一応応益負担の原則に立っているわけなんですけれども、評価が同じだから、税額がイコールというのは、これはちょっときつ過ぎるんじゃないかと。ましてや、この経済情勢の中にあって納税者はそんなに負担できるものではない。だから、負担としてはある程度調整していただかないと急激な上昇には耐えられない。少しぐらいの、この均衡を失しない限りでの負担というのは、これは応じられるであろうと、そういうふうに考えられます。 福井 はい。では、水城さん、いかがですか。 水城 負担調整を廃止して、具体的にどういうふうになるのか、いま一つ私もイメージがつかめませんので、適切なお答えになるかどうかわかりませんけれども、将来的に地方分権がどんどん進んでもう地方主権というようなことになった場合に、かなり地方自治体で独自にいろんなことができるようになるわけですね。住民が合意すれば、ご指摘のような問題も大いに検討に値するんじゃないかと思いますけれども、現状では全国的に負担がいろいろばらばらだと。やっぱり何か物差しが要るということで、公示価格であろうということで、現在それを基礎にやっているわけでございますので、やはり負担調整というのは避けられないんじゃないのかというふうに考えます。 先ほどこのご指摘も簡素な税制を実現するために指摘されているわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、幾ら簡素といっても、いろんなところに配慮はしていかざるを得ないのが現状で、負担調整もその一つでございまして、ある程度その仕組みが複雑になるのはやむを得ない、そういう宿命を負っているのではないかなというふうに考えます。 福井 はい。どうぞ。 塩川 先ほども言いましたように、簡素な税制といいましても、これは税率だけを掛けるものでもないと。この税率というのは、市町村によって自由に採択できるような形にもなり得るわけです。地方税法の固定資産税に関する規定では標準税率、制限税率が設けられております。ただ、標準税率以下になると起債制限があるとかいろんな制約があるようですが、これもいろいろ考えていただきたいと思う問題があります。その中で、税率についての高低を設けることが可能と思われます。それから、税額控除という制度も考えられるんじゃないかなと考えております。 福井 わかりました。では、早速次の質問にいかせていただきます。山下晴司さんとお読みするんでしょうか、間違っていたら済みません。こちらのご質問は、固定資産税を安定税制というけれども、納税者の給与は毎年下がっており、税金は上がる。こういうことに納税者はどこまで我慢できるのか、疑問だと。我慢にも限度があるのではないかということで、多分これは負担のあり方、どこまで我慢できるのかというのは負担水準についてのご質問だと思います。こちらについては猪山さん、いかがでしょうか。 猪山 この方の質問の前提には、固定資産税はどれだけの社会資本を投資したかに改めたらどうかという前提のもとでそういったご質問が出されているんですが、まさに固定資産税というのはそういうものだと思うんですね。社会資本が投下されて、基盤整備が進んでくれば、その地域の資産価値が上がってくるわけですから、評価が適正にされていれば、社会資本が整備されて資産価値の上がったところは上がったなりの負担、社会資本がまだ未整備のところで資産価値が低いところについては、評価が適正であれば低い水準の負担ということになると思うんですね。 それで、どれだけ社会資本をこれから投下していくのかということは、今、諸先生方がおっしゃっているように、これからどんどん地方分権が進んでいく中で、その市町村の中で固定資産税の税負担と、それから、住民が望んでいる行政サービス、これをはかりにかけて、その市町村の中で決めていく、そういった時代を今、展望しているんだと思うんです。ですから、そのような時代を展望している中で、今、抱えている矛盾を早く解決しなきゃいけない。負担水準の問題もそうですけれども、そういう時期にあると思います。先ほど申しましたように、過渡的な時期にあるわけですね。ですから、そういったいつまでも我慢すればいいのかという納税者の声は、これは一方的に税率が決められているという意識があるから出てくると思うんですが、これが地方の議会の中で、税率について、その市町村の需要と収入のバランスを考えて決めていく、毎年税率が変わっていってもいいじゃないか。そういう発想で住民自治の中で税負担を決めていくということになれば、一方的に押しつけられているという意識での我慢とか、疑問というのはもう少し緩和されてくるのではないのかな。 そのときに、例えば高額な税負担が地方の議会で決まっていけば、先ほど言いましたように、今度は地方の中でリバースモーゲージとか、サーキットブレーカーとかというような、税負担の安全弁、負担弱者、負担のできない高齢者や低所得者に対しては、その市町村の中でそういった制度をつくり上げていく中で負担の緩和を考えていく。そういった長期的な将来の展望を考えた上で、今の税制の仕組みが動いていると思うんですね。ですから、そういった今、過渡的な位置にあるんだけれども、非常に内在している問題が大きい。これはバブルがあったり、バブルがはじけたり、今までの社会経済の大きな変動の中で荒波にもまれているわけですから、これをどこまで我慢できるかということもありますが、できるだけ早く解決していかなきゃいけない課題じゃないかなというふうに私は個人的には考えております。 福井 はい、どうぞ。 水城 ちょっとこの質問に関連してですが、この固定資産税、安定税収ということについてのご指摘でございます。私は、さんざん市町村の最大のドル箱だとか、税収を安定させなきゃいけないとか強調いたしましたので、ある意味では私に対する質問ではないかなという受けとめ方でちょっとコメントするんですけど。今、国・地方の財政、税制を見ますと、国は、ご承知のように、相当税収減でございます。これは、国税は応能課税が中心でございますから、景気がこういう状態だとどかっと下がる。それから、都道府県にあっても最大の税目である法人事業税、これも所得によって大きく変化いたしますから大幅減でございます。しかし、市町村にあっては、固定資産税、いろいろ問題を抱えてはおりますけれども、ほかと比べますと、国とか都道府県に比べますと、比較的増減がこんなに激しいということではなくて、安定税源になっているということは、固定資産税の持つ外形的な性格ですね、この強み、この特色は大事にして守っていかなきゃいけない。確かに不況で給料は下がっている。それなのに固定資産税がむしろ上がると、これは我慢できないというお気持ちはよくわかるわけでございますけれども、このあたりは誤解を解いて、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、固定資産税のなぜこうなっているかということを十分PRをして守っていかなきゃいけないんじゃないかと思います。 ついでに申し上げますと、さっき冒頭で申し上げましたけどね、私の住んでいる自治体は、こんな納税通知書の中にQ&A、「土地の価格が下がれば税額は下がるんでしょうか。むしろ上がるのはなぜですか」とか、こういうことで親切に回答はしてきているんですが、ただ、こんなのを読みますと、「本則課税標準額が基準課税標準額まで下がっておりませんので、税額が下がらない仕組みになっています」とか、書いてあるわけですね。もちろんその前に本則課税標準額とは何かとか説明はしてあるんですよ。でも、これはわからないですね、やっぱりね。せっかく努力するならもうちょっとわかりやすく、これね、私も商売柄ニュース解説しているんですが、わかってもらわなきゃいけないんで、どうしているかというと、かみさんに「わかったか」って聞くんですね。そして、わからないと。どこがわからないかと。そうすると、意外に意外な指摘をしてくれるんですね。ですから、こういうお知らせなんかする場合も、ご家族の方とか、お友達とか、それから、役場の固定資産税課でない別のポジションの方に、これ、読んでわかるかと、わからない、どこがわからない、ここがわからない。そうしたら、もうちょっとわかりやすくみんなにPRすることができると思うんですね。そういう努力も重ねながら、固定資産税というのを安定した市町村の税源として守るために努力していくことが大事じゃないかというふうなことを申し上げたいと思います。 福井 はい。私も大学で教えている生徒たちにいろいろ説明しても、彼らから後で聞くと、やっぱり使っている用語、もうすべてが暗号のようだと言うんですよね。だから、日ごろなれ親しんで、その専門の職場ではわかりきっている言葉でも、一般の人には何のことやらと。そのときわかっても、もう二、三日もすればまたわからないということになりますしね。このあたり難しいなあと思います。 それから、安定税制ということを考えたときに、私も一言だけ簡単に申し上げたいんですけれど、一番心配されるのは、公示地価リンクでもうずうっと下がっていったらどうなるんだろうというのがほんとうに心配であります。むしろ、先ほどの商業地と住宅地のアンバランス、負担であまりにも商業地がきついという話ともリンクさせますと、収益還元的な評価をここらあたりで商業地に対して入れていたほうが、むしろ、将来的には税収アップ、安定税収ということにつながる可能性もあるんじゃないかなあということを随分前から主張しているんですけれども。 さて、次の質問にいこうと思います。松本一芳さんとお読みするんでしょうか。ご質問は株丹課長あてなんですけれど、地価公示価格の7割評価を4割評価とか、5割評価に改正し、特例や負担水準などを撤廃するというようなことは検討はないのでしょうかと。追加のコメントとしまして、下を引き上げて上を下げている状況にあるのでという質問がきております。いかがでしょう。 株丹 まさにご指摘にありますように、負担水準の上のほうということでいけば75%、それから、14年度は70%ということで下げてきております。片や負担水準の下のほうは緩やかに上げるということで、地価が著しく落ちている部分は除けば、60%ないし70%というのが今の、いわば目標値のように見えるかと思います。それからすれば、7掛け7で公示地価の約5割、あるいは7掛け6で約4割ということでのご指摘ではないかと思います。 それで、休憩前にも少しお話し申し上げたわけですけれども、今の公示価格に一定割合、それが7割ということでやっているわけですけれども、基本的に地価公示価格の一定割合でリンクをするということについては、一番重要であったというのは、猪山課長さんなんかも言っておられましたけれども、もともとの評価について市町村の間、あるいは市町村の中でも非常にばらつきがあった。それを均衡化しなければいけない、適正化をしなければいけないという要請があったわけです。その際に、当時としては相続税の評価についても、今、8割ですけれども、7割というのが一つの目安であった。それから、地価安定期だというふうに言われておりました昭和50年代の地価公示価格とその固定資産税の宅地の基準地の評価の割合など、総合的に判断をしてということで、7割というものが出された。 これについては、私自身7割評価によって全国的な評価が公平化をされたということで、その評価が上がりつつあるんだということで、評価をすべきものだと思っています。ただ、評価の問題と税の負担というのを分けて考えるべきではないかということで、申し上げたわけであります。今後はできるだけ負担調整のスピードを上げなきゃいけないわけでありまして、どのタイミングでかというのは今の時点では申し上げるのは難しいわけですけれども、いずれかの段階でそういう議論というのが中心になろうかと思います。その場合には、適正な時価かどうかということで、公示価格に対するその評価の割合というものを考えることになるんではないか。あまりにも低過ぎれば果して適切かどうかという問題は出てくるだろうと思います。ちょっとあんまりわかりやすくない、水城先生の後でわかりやすくない答えをするのは嫌なんですけど、現時点で申し上げればこんな感じの答えになると思います。 福井 はい。では、もう30分切ってしまいました。これを最後の質問のご紹介にしたいと思います。お名前は向井伸さんとお読みするんでしょうか。現在、審査申し出等に対応して土地評価をあまりにも詳しくし過ぎではないのか。複雑であればよいというものではない。どのように簡素化を図っていくという努力も必要であるということで、図もかいていただきまして、簡素化と公開は相反するものだというご質問ですね。また反面、簡素化すると、本来こういう減価があるのが何でみてくれないのかというような問い合わせが多くなって、公開しづらくなる面もあるというふうにジレンマを抱えていらっしゃいますが、こちらもご質問、株丹課長あてになっています。 株丹 税の基本的な考え方として、前田先生もおっしゃっていただいたわけですが、公平・中立・簡素の原則というのが、それ以外にもいろんな原則があるわけですけど、特に大きなものだと思います。こういう土地評価、先ほど家屋評価についてある程度簡素化をしていきたいというふうに申し上げましたけれども、確かにできるだけ簡素化をする、そのことがわかりやすさにつながるという面はあると思います。同時に、納税者の方からの要請としては、可能な限り適正に評価をしてほしいという要請もあると思っていまして、特に土地の場合であれば、まさしく周辺の土地との比較でもって相対的に納得ができるといいましょうか、そういう部分が非常に重いのではないかと思います。 確かに公開について言えば、それだけ説明をしなければいけない。必ずしも固定資産税の世界だけで終わるものではなくて、リンクをする先の公示地価との関係というようなことも含めての議論というのも考えられるわけでありまして、その点を含めて、難しい部分というのは確かにあると思います。しかし、方向性といたしましては、全体を通して説明ができるというふうにしなければ、税についての信頼というのはなかなか確立しないんじゃないかと思っていますので、これまた、やや中途半端な感じのお答えだなと自分でも思うわけですけれども、その簡素化と公開、あるいは公正さ、両方の要請にこたえることができるように検討していかなければいけないと思っております。以上です。 前田 ちょっと補足といいますか、簡素と公開とは矛盾しなくて、簡素が求めている部分というのは、課税価格×税率=税額という、税金の計算の価格決定から後の部分について簡素にしたほうがいいんじゃないですかという話でございまして、課税価格の決定に関しましては、これはより緻密に、たとえ制度が複雑になっても、より正確にするべきであるというわけですが、その課税価格の決定まではこれは簡素ではいけない。ただし、それはわかりやすいというか、納税者にとってちゃんと説明したらこういう段取りでこういうふうに決定されるんですよということが説明できなくちゃいけませんけれども。ですから、簡素というのは、課税価格が決まった後、最終的に税額がこういうふうにして算出されますという部分です。例えば住民税とか所得税というのは、この課税価格の決定というのは、これはたとえ自分で申告しようが、源徴であろうがわかっているわけですよね。事業者の方は複雑かもわかりませんけれども、一般サラリーマンの場合、極めてわかりやすいと。その部分が固定資産税では必ずしも明確でないので、課税価格の決定のところは、より複雑になったとしても正確にするべきであるというふうに考えます。 福井 はい。ほんとうにまだたくさん、例えば評価方法などについてもご質問いただいているんですけれども、時間の都合上、また別の機会にと思います。申しわけありません。 5.納税者の視点に立った固定資産税制構築に向けて 福井 では、残りの時間、ごくシンプルに皆さんもう一回ずつご発言いただこうと思うんですが、仕切りといたしましては、1本柱の情報開示に向けては、ほぼ皆さんのトーンはそう違わなかったのではないかと。皆さん前進の方向に向けて温度差もそう違わなかったと思いますので、できましたら、2番目のわかりやすい制度へ向けてのところに力点を置いてご意見を簡単にいただければと思います。特に出たポイントとしまして、例えば分権化の中での独自性だとか、税率を動かす可能性までも指摘がありましたし、高齢者、配慮はどうするべきかという新しい視点も出ました。また、大きなテーマとしましては、公示地リンクへの疑問とか、7割への疑問、それから、是非ということも大きなテーマでありましたし、商業地と住宅地のほうで負担があまりにも偏っているというような本質的な話もありました。 私のほうからもうちょっと補足しますと、今回わかりにくいということの大もとが、新しく導入された公示地リンクから始まって負担調整をどうするかという切実な問題の中で生まれてきたわかりにくさなんですが、でも、その新しい制度、固定資産税の大幅見直しは結局不動産価格、インフレ時代の副産物なんですよね。その後もう全部のパラメーターが変わってしまって、地価上昇は終わったし、上昇が終わったどころじゃなくて、下落があまりにも続くし、まだ続くんじゃないか。それから、それとともに不況が深刻化して、これも先が不透明で、何か回復が見えないというようなこともありますし、反面、情報公開ニーズは年々高まる。しかも、分権化の流れで財源としてはますます重要になると。全部のパラメーターが全くその当時とは変わっている。その中での議論ということになると思うんですね。 いかがでありましょうか。では、最初にごく簡単に前田さんからお願いします。座っていらっしゃる順でいいと思うんですけれど、どうでしょうか。 前田 今まで話したことをすべて整理することはやめまして、言い足したいところだけ申し上げますが、実はきのう、ある自治体のシンポジウムにやはりパネリストとして出ておりました。それは行政評価とか、市民参加に関するシンポジウムだったんですけれども、行政のあり方に関する住民の考え方も随分変わってきていることを感じました。いろいろ過渡期で大変だとは思うんですけれども、ただ、この過渡期において固定資産税に関しまして、先ほどから言っている点は、課税の公正さというのが大前提、それを地方分権で団体自治なり、住民自治が拡充されている中でそれを担保する、財源面から担保するお金のところをきっちりしなくちゃいけない。それを当面は、多分ここにおられるたくさんの課税事務、納税に携わっておれらる方も大変でしょうし、納税者も大変だけども、この山場を乗り越したら、あとは地方分権に耐え得る固定資産税ができるんじゃないか、そのことをもう正直に――正直といいますか、もうオープンに納税者である市民の方に説明して、これが、これを超さないと水道が出なくなりますよと、学校の先生の数を減らさないといけませんよと、公園はもう荒れ放題ですよと、ごみの収集は週1回にしますよということになるんですけれども、それでもいいですかというところまで説明して、納得をしていただかなければならんじゃないかと思います。きのうそのシンポジウムに出まして、正直なところを申し上げていきますと、市民の方はそれであればということをわかってこられる、そういう風潮が形成されていると思うんですね。 それと、総務省にお願いしたいのは、課税の実際に、これから大変だと思うんです。情報開示が増えていくとか、ここにおられるたくさんの市町村の課の現場の方が、大変だと思いますので、例えば人事のローテーションに関しまして、ほかの部局と同じように3年から5年でどんどん変わっていくというんじゃなくて、課税に関してのプロフェッショナルとして、例えば教育主事ですとか、建築主事であると同じようなそういう感覚でもって、きちっと納税に関するプロフェッショナルを育てるような、そういうガイドラインをつくっていただきまして、そういう事務の増大に耐え得るような体制をバックアップしていただきたいというふうに考えます。以上でございます。 福井 はい。ありがとうございます。塩川さん、お願いします。 塩川 地方分権時代に向けて、それを推進する見地からも地方財源の充実というのは欠かすことができません。その意味から、固定資産税の重要性というのはますます大きくなっていくものと思われます。各市町村の行政サービスとそれに必要な負担のあり方を、各市町村及び住民が決められるような固定資産税制が実現されることを望んでやみません。そのためには、評価や課税に関する情報を公開していただきまして、賦課徴収制度とはいえ、評価の過程が納税者にもわかる制度へと進展しまして、公平な税制が実現されるよう願っております。私ども納税者としては、公平でかつわかりやすく、そして、容易に理解できる税制を望んでいます。また、納税者として、市町村に協力していく所存でございます。しかし、その中で税金の使われ方にはしっかりと目を開いて見つめていきたいと思っております。 福井 ありがとうございます。では、水城さん、お願いします。 水城 わかりやすい税制ということは、もう一面やはり納税者にわかりやすく説明するということで先ほどいろいろ申し上げたんですが、もう一つつけ加えますと、固定資産税とは何かということを地域住民の方にほんとうにわかっていただくということが一番大事だと思うんですね。つまり、都道府県の税制で外形課税が問題になっておりますように、地方税というのは、そこに住んで行政サービスを受けると、これに対する、平たく言うと町内会費みたいなもので、所得があったから税金を納める、赤字だから納めないと、そういう税金ではない、応益課税であると。応益課税なんて難しい言葉を使わなくてもいいんですが、そこのところをわかっていただけると、地価が下がっているのに税額が変わらないのはなぜかとか、そういう問題も理解していただけるんじゃないか。そういう努力が必要だということが一つ。 それからもう一つ、私は、ドル箱だ、安定税源だって強調いたしましたが、すべてを固定資産税に頼りにしたら、これ、大変なことでございまして、それは生活の基盤であり、商売の基盤でありますから、税負担はあまり増えないほうがいいわけでございます。そのほかの問題、例えばいろいろ超過課税とか、独自課税もやりやすくなっているわけでございますから、そういう問題であるとか、あるいは歳出面の徹底したリストラ、行革ということとあわせて、そういう流れの全体の税財政改革の中で固定資産税をとらえていかなきゃいけないんじゃないかということ。そして、最後に、将来的には、これは今は私も頑張っているんですが、税財源を移譲して地方分権、地方主権、そういう方向にもういかなきゃいけないわけでございますが、将来の課題としては、これは、先ほどご指摘があったように、地域住民が決めるんだ、税率にしても何にしても、将来的には自治体が独自に決められるという方向にもっていかなきゃいけないんじゃないか、こんなふうに考えております。以上です。 福井 わかりました。では、株丹課長、お願いします。 株丹 比較的最近なんですけれども、アメリカに行く機会がありまして、その中で固定資産税の関係を見せていただく機会がありました。ご存じのように、日本の固定資産税というのは、アメリカの、日本語で訳すと財産税ということになるんですけれども、アメリカの税をもとにして、もっと昔は地租であるとか、家屋税とか、日本の独自のものがあるんですが、つくられたと言われています。 参りました先、ニューヨークの郊外で、非常に豊かな地域でございまして、一戸建てばっかりがある、きれいなところという感じであって、非常にいいところであったわけですけれども、お話を伺ったときに非常に印象的だったこと、これは私が不勉強で知らなかっただけなんですけれども、アメリカの場合ですと、地方自治体での評価事務、特に私どもが聞かせていただいたのは家屋評価の話ですが、評価は専門家を中心に職員がきちっとやっていますと。アメリカの自治体は、いろんな収入があって、最後足りない部分を財産税で帳じりを合わせる。行政需要が膨れれば税率をそれだけ上げます、税負担が増えます、こういう仕掛けをしているんですが、税負担の増の話は職員に言っていただいても困るというか、別な話です。議会が税負担は決めます。だから、そこの話は議会の話です、こういうふうにちゃんと峻別できていますというお話でございました。非常にうらやましいというか、一つの形だと思ったわけです。それでもなお、評価についてみんながみんな納得するわけじゃない。もちろんアメリカはアメリカで、日本と同じようにといいますか、基本的な考え方は同じで、幾つかの使い方は違いますけれども、やっておられるし、専門性の高い職員がずっと長い任期を通じて評価を専門的にやっているということではありますが、それでもなお、必ずしもみんなが納得するわけじゃないと、こういうお話がございました。 固定資産税、税の中のフロントランナーみたいな形になっていまして、市町村の税収の中で非常にウエートが高いということもそうですし、今後の税収はちょっと、正直言うとなかなか厳しいと思うんですが、これまで全体の中で伸びてきておりました。したがってというか、ある意味でそのことも含めて非常に、言葉が適切かどうかわかりませんが、風当たりが強いということがございます。その内在する問題はここでもいろいろご議論になりましたし、結果として非常にわかりにくくなっているということがございます。 話がどんどんずれていくような気もいたしておりますが、私が申し上げたいのは、実際に税で行政に携わっておられる方ですとご案内だと思いますけれども、行政でいろんな問題が起きたときに、必ずしも税務行政の問題でなくても、含めていろいろご指摘を受けなければいけない。その中で固定資産税を含めて税の行政というのは、大変な部分があるわけですけれども、税務行政自体の中でも、また全体の行政についての説明、さらに評価、それから、わかりにくい負担水準と、こういうことも含めてご説明をお願いしなきゃいけないという状況にあるということでございます。 前田先生がおっしゃっていただいたように、ここの部分を何とかして頑張れば明るい展望が開けるという希望を持って、何とか今の厳しい状況を引き続きよろしくお願いしたいと、こんなふうに思いました。ありがとうございます。 福井 では、最後に猪山さん、お願いします。 猪山 評価と負担の点でそれぞれ1点ずつ。 評価については、いろんな評価手法があると思うんですけれども、地価公示価格を基準として、それの7割なり、あるいは私は地価公示価格同水準でもいいのではないかと思っています。価格というのは、地価公示価格については地価公示法に基づいており、新聞発表もされるわけですから、一番納税者にとって比較の対象になりやすい価格ですね。これは、ただし、今の地価公示価格制度も、せっかく固定資産税とか相続税財産評価で使っているわけですから、さらに充実していただきたいし、先ほど福井先生がおっしゃられました収益還元的な考え方からのアプローチ、検証、これは地価公示の中で、あるいは市町村が委託した標準宅地の評価の中で実現していただきたい。次の路線価へのステップはその価格がシフトしていくわけです。ですから、先ほど申しましたように、市町村の職員というのは評価のプロではありませんので、専門家ですけれども、プロフェッショナルまではいかないわけですね。ですから、標準宅地、地価公示の価格といった一つの均衡のとれた価格をよりどころに路線価を付設して、それから、個々の画地の計算をしていくと、こういうふうな手順になっていくと思います。ですから、評価の適正化・均衡化を図る上では、地価公示価格の何割というのはこれからも維持していってほしい。それと同時に、地価公示制度ももっと充実して透明性を高めていただきたいなと思います。 それとあと、標準宅地から路線価に落とすところのその外形的な基準が評価基準の中に盛り込まれてくるといいなあというふうに考えています。 それから、負担の面では、課税標準の特例措置というのは、これは国の経済政策で決まってくるわけですけれども、その軽減した負担は全部市町村が今かぶっているわけですね。ですから、資産税という原点に戻って、課税標準の特例が必要ならば、その市町村の中で条例で決めていけばいいわけですから、非課税措置になっているものとか、あるいは課税標準の特例など、国の政策で決めているものについては極力縮減の方向でいっていただきたいなと思います。以上です。 6.まとめ 福井 はい。今のお話、まとめますと、大体3つぐらいになるかと思います。評価と負担は別の概念としてきっちり区分して考えると、いろんなことがわかりやすい。評価はきっちり正確に行って、負担というのはまた別の観点から考えるんだと。これを税率一定と考えるからいつもごっちゃになるのでありまして、税率は変化してよいものということになりますと、評価と負担は全然別の概念であるということがはっきりして、方針も立てやすいかと思います。ただ、そのときに評価を正しくとか、精緻化というと、日本人の性向としまして、何かもうどんどん袋小路に入ってすごく細かくなりすぎ、むしろ、わかりにくくなるということが今まであるんですが、そこは正しくといっても、納税者のレベルでわかりやすくということを守るということではないんでしょうかね、家屋評価でも、土地評価でもそうだと思います。 それから、2点目は、行政は万能でないので、むしろひとりで悩まないで、新しい方向性を決めるときには納税者と一緒になって決めると。もっと言えば、納税者のほうに決めてもらうことでも良いかもしれない。どちらを選択しますかというふうに、納税者のほうにすべての問題をあからさまにぶつけて、みんなで一緒に悩んでもらって、それぞれの市町村でそれぞれの地域住民の方の選択肢として新しいかじ取りをする、そういうのが提案されたと思いますね。 3つ目としましては、特に猪山課長から強調された話ですが、路線価敷設のところがどうも今もやっとしていて、悩みの種というような印象だったですね。標準地評価を外部専門家に委託するのであれば、路線価まではセットで行なうのが本当ですよね。本来、標準地評価と路線価付設は一体の業務としてあるべきで、あれぐらい高い評価料を取るのであればそこまで責任もってしてもいいんじゃないかと思いますね。評価料今、6万いくらかというような価格は、今、どんどん値崩れを起こしていて、ある自治体の例では2万円台、1万円台のところもうわさも聞きます。つまり、路線価まで含めて委託するというようなことで、業者を揺さぶるというのも十分な方法じゃないかなと思うんですけれど、そのときにアメリカのように外部専門家を委託した場合、その結果について市町村の人だけが責任を負うんじゃなくて、委託料を払っているわけですから、評価額についての責任を最後までとってもらう。これは契約の中に入れていればいいと思うんですね。つまり、納税者からクレームが出たり、問い合わせが出たり、質問が出たら、それに全面的に対応まで外部専門家にさせる。それでいいんじゃないでしょうか。そうすると、やっとほんとうのきれいな評価が行われ、市場メカニズムが入ってきますので、というふうに思うんですけれど、この最後の点は市町村の方の悩みとして多く聞くので路線価付設のアイデアとして追加いたしました。 本日は、情報公開とわかりやすさということで2大テーマを議論してまいりました。さまざまなパネルディスカッションのパネリストのお立場の違いが内容の豊富さにつながったのではないかと思います。きょうは長い間ありがとうございました。 |