評価センター資料閲覧室

固定資産評価基準の今日的意義とその課題 第8回 固定資産評価研究大会報告書

U.オープニング講演

「自治体経営の時代」−アウトソーシングによる効率的な行財政改革−

 

 
  愛知県高浜市長
  森  貞述(もり さだのり)
 
 
 
1965年 慶応義塾大学商学部卒業。愛知県食品工業試験所で醸造学を学ぶ。
1966年 家業であるしょうゆ醸造に従事
1987年 高浜市議会議員に当選
1989年 高浜市長に就任(現在4期目)
1997年11月から福祉自治体ユニット代表幹事を務める。
2001年6月から特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク監事を務める。
・ 住民によるワークショップ「168人(ひろば)委員会」の輪を広げ、住民との協働によるまちづくりを目指している。
・ 分権型社会に対応した地方行政組織運営の刷新に関する研究会委員(総務省)、障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会委員(厚生労働省)を務める。
 
研究大会プログラムより
    
○自治体経営の時代
 自治体の持つ人的資源・社会的資源をどのように発掘し、マネージメントしていくか、「自治体も経営の時代」である。
○株主である市民への“配当”還元
 納税者である市民は、高浜市の株主であり、また、サービスの利用者、消費者である。
 資本市場では、株主に対して配当として返すことが当然である。
 自治体においては、高品質な行政サービスを、最少の経費でいかに配当として返していくかが求められる。
○問われる税の使い方
 納税者の立場で税がどのように使われるか問い直してみると、多様化する行政サービスを行政が直接担うことは行政の肥大化につながる。そのことを市民は満足するだろうか。
○株式会社という選択
 平成7年3月、役所を肥大化させず、コストを抑えるため、市の全額出資による高浜市総合サービス(株)を設立。
 10期目の平成15年度の売上高は6億738万円、当期利益も1,276万円を計上。職員は、正規社員66名、臨時職員158名。
 施設管理業務や学校給食業務のほか、市役所の窓口業務、清掃業務、公用車の運転業務等を請負う。
○「公」だけでない、行政の担い手
 自治体業務が役所の一手専売の時代はもはや過去のものとなった。アウトソーシングによって税をいかに有効に活用していくか。
 高浜市総合サービス(株)への委託のほか、放課後児童クラブ、宅老所の運営等をNPOに委託。
 次のステップとして、地域住民との「協働」による運営を進めている。
○新たな「協働」のパートナーづくり−住民と行政とのパートナーシップに基づく行財政改革−
 新しい「公」の担い手として、NPOのほか、地域ボランティアとの「協働」が、財政の持続可能性の確保にとっても大きな要素である。
 ここ数年のうちに、一斉にリタイアする団塊世代の活躍の場・居場所といった受け皿づくりが急務である。

 

1.はじめに

 ただいまご紹介いただきました愛知県高浜市の森でございます。
 まず、承りますと、きょうは、全国から800人近い方がこの会場にお越しということでございまして、いつも6月にこの会場で私ども全国市長会の大会をさせていただきますけれども、愛知県高浜市と言いましても、おわかりにならない方のほうが多いかと思います。皆様方のおうちの屋根がわら、これの全国シェアの55%を持っている、いわゆる三州瓦のまちでございます。そして、あわせて95年、2000年の国勢調査で、いわゆる第2次産業の就業者率と申しますか、55%ということで、これは全国第1位の、いわゆる働くまちでございます。しかし、所得水準はなかなかそうはいきません。しかし、自分たちの周りに働く場所があるということ、これほど私どもにとりまして心強いことはございません。
 これはとりもなおさず、大勢の方が納税者というお立場になっていただけるということで、地方税の中核をなします例えば固定資産税、個人の市民税、都市計画税、いろいろございますけれども、そういう中で個人の市民税というものは大変大きな役割を担っており、そういうふうにして所得があることによって固定資産税もお納めいただけるという意味で、きょうお話をさせていただきますのは、第一線で固定資産税、税というものにお取り組みの皆様方が、税というもの、それは住民の皆様方から、例えば土地の場合ですと評価をされて、そしてある面では、今、板倉自治税務局長様のお話がございましたように、透明性、あるいは住民参加を含めた、そういう中でどのようにそれを集めさせていただけるか、集めていただくときに住民の皆様方がそれに対してきちっとお納めいただけるかどうか、それによって私ども行政、自治体はいろいろな事業ができるということでございます。

2.自治体経営の時代

(1) 納税者の視点

 冒頭、矢野実行委員長様が三位一体改革のお話をなされました。ある面では、この11月末が今回の「2004」に基づく地方6団体と政府とのせめぎ合い、これがどのようになってくるか山場を迎えます。本来の地方分権というのは、お話がございましたように、自分たちの地域、そこに自分たちの課税自主権に基づいて集めたいろいろな税、あるいは使用料とかいろいろなものをどのように住民の皆様方に還元をしていくか、納税者という人たちに対してどのように私どもが創意工夫をして、そして政策としてそれを提示させていただいて、住民の皆様方に満足をしていただけるか。ある面では、これはいわゆる消費者志向と申しますか、あるいは納税者志向と申しますか、そういうような立場に立って私どもがそれぞれの役割を果たしていく。そういうことによって自治体としての存在価値を住民の皆様方に認知していただけます。それは信頼又は企業で言うのれんと言われるもので、こういうものは長い年月をかけてつくりあげられます。
 しかし、それが崩壊をするときには、ほんとうに瞬く間に崩壊をしてしまいます。皆様方が、例えば自治体の職員として、あるいはまた不動産鑑定として、あるいは固定資産の学究者として培われたもろもろのそういう積み重ねが皆様のステータスを含めて信頼を勝ち得ていただくことによって、あの方が、あの団体がという評価を受けて、そしてそれに対して納得をして納税をしていただくとか、評価を受けるというようなことにつながると思います。
 ということは、とりもなおさず、私ども三位一体改革を含めたいろいろな問題の中で、国、あるいは地方の行財政が大変厳しい折に、今こそ納税者という視点、これを大事にしていかなければいけないのではないかというのが、きょう私自身が皆様方にご報告をしたい第1点でございます。企業であれば、俗に言いますと、人・物・金・情報を含めて、そういう資源によって企業経営をして物をつくる、あるいはサービスを提供するということ。しかし、私ども自治体は、同じようにやはり人・物・金・情報というものをどのように調達するか、地域の中の例えば人的資源、あるいは資産的に価値のあるもの、こういうものをいかにして私どもの手にして、そして政策として活かすかということは、とりもなおさず私どもも、言うならば、自治体を経営をしていく、そういう立場にあるということでございます。

(2) 株主である市民への配当の還元

 ある面では、納税者である市民の皆様方は、それぞれの基礎自治体の株主であり、あるときには、例えばサービスを利用される利用者、あるいは消費者であります。あるいはまた、参加、参画、例えばいろいろと市民と行政とがコラボレーションする、協働という立場にもあります。このように、市民の立場というのはいろいろなお顔を持っていらっしゃいます。そのお顔をどのように私どもが、あるときには納税者である市民の方を株主として、それに対して例えば企業で言うならば配当、それを私どもは高品質な行政サービスということによって提供していく。そういうことの繰り返しによって、信頼というものを勝ち取ることができるわけです。
 それによって例えば納税をしていただけることにもつながっていく、そういうことの繰り返しを私どもは日々やっているということではないでしょうか。そういう中で、私どもそれぞれの基礎自治体は、その地域の独占企業でもあります。住民の皆さん方には、ある面では他からサービスを購入できないいろいろなものがございます。例えば戸籍もそうでしょうし、あるいは住民票もそうでしょう。印鑑証明もそうでしょう。私どもがいわゆる生活をしていく上で、印鑑証明とかいろいろなものは、自治体の他からはサービスを購入できません。そういうことからいきましたら、独占企業として、そこに私どもがあぐらをかくことというのは、いとも簡単にできるかもしれません。

(3) 自治体が選ばれる時代

 しかし、それをしてしまったら、住民の皆様方は、そんなことはノーだとおっしゃいます。やはり自分自身が求めるいいサービスを提供していただけるところに、極端なことを言えば、町を住みかわっていくということが、もう現にいろいろなところで起こっています。その1つの例が、例えば若い世代の方でしたら、あそこの町は子育てがいいから、ここの町は子育てが、例えば医療費の問題も含めて、あるいは保育サービスがいいからというようなことを含めて町を選ばれる、そういう時代でもあります。あるいは高齢者施策の問題で、例えばあそこの町の介護保険サービスというものは、保険料とサービスとが見合ってというようなことを含めて、それによって介護移住ということ、これすら現実に起こっているというのが事実でございます。
 そうなりますと、私どもでは独占だというふうに思っていても、住民の皆様方は町を選択をする、そういう時代に今入っているということも事実でございます。そういう中で選ばれる自治体、あるいは都市間競争の中で競り合いをして負けない、存立をしていく、そういう自治体にとって、皆様方がお取り扱いをされていらっしゃる固定資産税について、例えば私どもで言えば税収が72億ございます。そのうちで固定資産税が37億ほど、都市計画税が7億強、そして法人市民税が6億5,000万から7億の間、そして個人市民税が17〜18億という、そういうようなまちにとって、固定資産税というのは、大変大きな大宗をなしています。そういう税を私どもは住民の皆様方からお預かりをして、そして、それをいかにして品質の高いサービスによって住民の皆様方に還元をしていくか、そういうことが今、求められております。 

(4) 問われる税の使われ方

 ということは、とりもなおさず、税の使われ方が今私ども基礎自治体は常に住民の皆様方から強い眼差しで大丈夫であるか、自分たちが出した、納めた税金がほんとうにまちにとって、あるいは私ども住民にとって有効に使われているかというような、そういう気持ちを常にお持ちでいらっしゃるわけです。ご案内のように、ついきのうの新聞にも載っておりましたフリーターの問題も含めて、だんだん納税者そのもののボリュームも大変厳しい、そういう中で安定的な税収を得るためにということは、それはいかにして税の使われ方、これが私どもが常に自分自身を律する、それがある面では住民の皆様方にもそうですし、税にかかわっていただく皆様方にとっても、私はそういう気持ちを自治体をあずかる者にとって、その姿勢を常に律していかなければ信頼を勝ち取る事ができないのではないかなと思います。
 その中で、ご案内のように、いただいた税の中で、これはどこの基礎自治体も同じだと思いますが、一番大きなウエートを占めるのは何かと言えば、やはり職員の人件費ではないでしょうか。これはおそらく愛知県に200人余の富山村から、あるいは自治体として一番大きな横浜市まで含めて、私は税収の中で占める大きなウエートはやはり人件費ではないかと思います。もし仮に同じサービスを、公務員とそうでない者と同じサービスが提供されたら、今ここにいらっしゃる皆様方も納税者だと思いますが、納税者としてどちらを選択されますでしょうか。同じサービスを提供していただくのなら、それは公務員であろうが、公務員でなかろうが、やはり私は納税者という立場であれば、公務員でなくても、そのサービスを手にすることができればというのが、私はごく普通の感覚ではないかと思います。

(5) 多様なサービスの担い手

 そうなると、私どもは、先ほど申しました独占にあぐらをかかないようにしていくためには、常に牽制的役割を持つ、役目を持つ組織、組織と言うのがいいかどうかは別としまして、そういうものを別に置いて、そしてその中でいつでも取ってかわられるという、そういうありようにしておくことが、独占に対する大きな牽制球になるのではないでしょうか。確かにマーケットはご案内のように一番端的な例は価格競争でございます。
 ここでこういうことを言うと大変語弊があるかもしれませんけれども、つい先日、郵政のゆうパックのこととヤマト運輸とのことがいろいろと新聞に比較対照が出ておりました。いわゆる高品質なサービスを一定の価格、これはある面ではビジネスモデルをつくったわけです。それに対して同じようなサービスで、低廉で今から参入をしようということであれば、当然、そこに競争という原理が働きます。そうなると、最後、選ぶのは、それは消費者、利用者だと思います。
 そういうことが現実に例えば企業のレベルであれば、それは日常茶飯事で起きているのが現実ではないでしょうか。その中で私ども、先ほど申しましたように、公のサービスというのは独占、供給主体は私ども基礎自治体、例えば私ども高浜市、13平方キロ、4万981人のエリアであれば、そこにどのような、常に牽制的な機能を含めた、いわゆる公の担い手、これをつくっておくことによって競争するということは、これはもう一つ別の見方をすれば、先ほど申しましたように、同じ皆さん方が、納税者である皆さん方にとっていかにして低廉で質のいいサービスが提供されることにつながってまいります。
 固定的な費用、例えば私ども72億、そのうちの税収の中で少しでもそれを抑えること、抑えるという言い方がどうかは別としまして、それを抑えることができれば、それによって、政策的な、あるいは投資的な経費がそこに生み出されるということにつながります。それはとりもなおさず、納税者である、あるいは株主である市民の皆様方に対して、このようなサービスが新たに提供できる、そういうことによって住民の皆様方の、あるいは納税者の満足度、いわゆる顧客満足を上げることにつながれば、と思います。ということは、また裏返せば、自分たちが納税をすることによってこのようなサービスが提供されるんだ。なるほど、だったらというふうなモチベーションというものにつながるようなそういう仕組みを別につくるということ、これが独占というものの弊害を除去する1つの方法ではないかということでございます。

(6) 株式会社という選択

 それで、実は私どもここまで到達をするまでにざっと10年かかりました。普通、一番簡単な方法は、例えば私どもがずっととってきた方法は、いわゆる単純労務職を不補充にしながらやってきました。例えばそこに最初のころは臨時職員、あるいは法人格なき施設管理協会の職員を充ててきました。これは皆様方もきっとそれぞれの自治体等でおとりになっていらっしゃると思います。あるいは法人格を持とうということになれば、財団化をして財団法人何々市何々管理協会というようなことでやってくる、あるいはもう少し別の見方をすれば、第3セクターで地域の商工会、あるいは農業協同組合等含めた第3セクターでやるというのが普通のやり方かもしれません。
 しかし、私どもはたまたま商法というものに着目し、これによってある面ではより合理性、あるいは透明性を求めていくということ、あるいはまたもう一つ別の見方をすれば、地域住民の皆様方に、その存在というもの、これをどのように認知していただくか、そういうようなことを含めて、あるいはそこに従事していただく社員の方たちが、より意識を高めていただく、そういう方法を含めたいろいろな模索の結果として資本金5,000万の株式会社を平成7年3月31日、この1日だけを第1期としてやってまいりました。それが今日まで何事も世間の皆様方から認知をしていただく、あるいはその存在をご理解していただくまでに10年がかかりました。この10年の間に、今現在、224人の社員と、ざっと6億強の事業を含めてやってまいりました。

(7) 外部委託の成果

 1つの例を申し上げますけれども、先ほど市税収入ということで人件費率のことに少し触れましたけれども、例えば私どもが平成8年度の決算額、これは決算統計数値でございますが、地方税収入が69億余ございました。そのときの人件費が27億強、その比率は39.6%、まあ、40%を少し切れておりました。そして、つい最近、15年度の決算認定していただきましたが、税収が72億4,000万強、そして人件費がざっと20億5,000万、その比率が28%強でございます。この間、私どもの市の一般行政職、決算統計数値に基づく一般行政職が平成8年4月1日現在、234人が、この16年4月1日現在、163人、71人の減となりました。
 実はこういう数字というのは、ある面では、それは確かに人を減らしていけば、そういうことをできるわなと。しかし、それによって、特に例えばこの2004年度、2003の骨太の方針の中で交付税の問題もそうでして、あるいは補助金の一般財源化、こういうもの、これがおそらくきょうお見えの皆様方の自治体も同じように大きな影響を受けられたと思います。そういう中で、私どもも御多分に漏れず、所得譲与税で6,000万入りました。しかし、実際に特別地方交付税――特交と臨時財政対策債――臨財債の関係で3億1,000万の財源がなくなりました。それで、先ほど委託料と人件費の試算のことを申し上げましたが、私どもがもし仮に市の職員の想定で対応した場合にどうなっているかということを比較させていただきますと、市の職員で対応したら、ざっと7億6,000万のお金がかかった。しかし、これを委託料ということで行ったら、ざっと3億6,600万ぐらい、まあ、3億7,000万で済みました。ざっと3億9,000万の減ということは、先ほど申しました2003によって16年度の予算が3億1,000万強飛んでしまった。しかし、外部委託を進めてきたことによって、ある面、厳しくても何とか、予算が組めたということです。

(8) 地域雇用の創出

 しかし、先ほど矢野委員長さんのお話にございましたように、2004、これが11月末、どのような決着をするか、これによってさらにまた大きな、私どもにとりましても厳しい対応が迫られるかもしれません。ですから、先ほど申しました10年かかってここまでいろいろな業務、ざっと11事業の51業務をこういうふうにして、徐々に、徐々に積み重ねてきたのがその結果でございます。ですから、片一方で職員は減っていく。それはあくまでも退職者不補充という格好。片一方で高浜市総合サービス、資本金5,000万の会社の社員はそれを引きかえとして増えていく。
 もう一つ、これは私どもが思いもよらぬ1つの大きなことは、この会社、先ほど申しました224人というこの数字の中で、当初、ここまで来ることも含めて想定ができなかったことは、実は224人のうちの94人が60歳以上ということは、例えば会社を退職した人たちが地域へ戻ってこられた。そして、その中で自分たちの、まだおれが持っている、あるいは私がやれるということ、そういうものを登録制にしてずっとやってきております。そういう結果として60歳以上の方が224人のうちで94人。あるいはまた別のもう一つの視点でいけば、224人のうちの162人が子育て等を終えられた女性がその社員として担っておっていただきます。ということは、別の見方をすれば、地域の雇用を生み出しているという、そういうことにもなります。

(9) 効率的で小さな地方政府の実現

 昨今、これは私自身の1つの考え方ですけれども、その地域で、まちで自治体が一番大きな企業であるということに対する、これは、とりもなおさず、行政が肥大化をしていくということに対して、納税者である住民の皆様方はどのようにお感じになるんだろうか。納税者としては、自治体がただただ肥大化をしていくこと、例えば平成12年4月から地方分権一括法、そして介護保険制度が始まりました。そのときに新しい制度が始まるから、だから人が要る、人を増やす。そういうことをほんとうに住民の皆様方がご納得されるでしょうか。
 こういう問題1つにしましても、ある面では私どもはもう一つ住民の皆様方に、高度経済成長、パイが大きくなるときに、こういうふうにしてお金を、風呂敷を広げてきました。しかし、バブルがはじけてからもう十何年。例えば私どもでは平成2年のときに法人市民税が9億4,600万というのが過去最大でございました。15年度決算でいきましても、7億1,700万。今、私どもの地域はトヨタ関連を含めて大変好調であると言っても、過去のあの平成2年のときのようなことはもうおそらくないというふうに思います。そうなると、先ほど申しましたように、私どもに課せられた役割というものは、いかにして集めた税の使われ方、これを住民の皆様方に還元をしていく、それに尽きるということではないかと思います。
 今、私どもは、先ほど申しましたこの会社もそうでございますし、もう一つ、どこの基礎自治体にもございます社会福祉協議会、ここもある面ではいろいろな意味で、ときにはお荷物にもなりつつあるのではないかと思いますが、しかし、この社会福祉協議会も事業型の社会福祉協議会に変身をすることによって、例えば介護保険というツールを使って事業者として地域の雇用も含めた、自立をしていく、そういうふうにして、今、私どもは、例えば保育サービス、あるいは介護保険サービスを含めたいろいろな事業をやって、そこでヘルパー、あるいは保育士、そういう人たちの雇用の場を生み出して、そこでも今120人余の方たちの雇用を創出してまいりました。

3.アウトソーシング戦略

(1) 公でない行政の担い手

 そうすると、これは1つの見方として、従来、私どもが地域の中でどのように雇用を生み出していくか、創出していくかという1つの視点から見たら、私ども行政が、いわゆる公が常に公務を担うという、そういう判断ではなく、公の中からできるだけ外に出せるもの、あるいは公務員でなければいけない、ほんとうにそういうものがあるのだろうかを含めて、常に自分たちの業務の洗い出しをしていって、それによってある面では新しい雇用を生み出していくことができないだろうかと考えてきました。いろいろなやり方がおそらくあろうかと思いますが、今、私どもはもう一つ新たな視点を持たなければいけないと感じております。と申しますのは、今まで役所本体のアウトソーシングをいろいろと、先ほど申しましたようにどうしても公でというところ以外、できるところは、課業を洗い出ししながらずっとそれでやってきました。それが先ほど申しましたように11事業の51業務、224人という、規模のところへ来ました。
 しかし、このアウトソーシングそのものも、これからは選択をする時代ではないかと思います。私どもは、今、そういう場面に遭遇してまいりました。ということは、公務の担い手というのは、地方自治法の改正によって公の「公の空間」というもののいろいろな媒体が、例えば民間の株式会社もいいでしょうし、NPO もいいでしょうし、市民ボランティアでもいいでしょうし、あるいは昨年の9月から指定管理者制度という新しい制度もできました。ということは、ずっと私どもの今までの長い公の仕事の歴史の中で、私もこの今の職につくまでは、公の仕事は公務員がというふうに思っておりました。しかし、実際にお預かりして進めていく中で、この業務、例えばこういうふうにしたら住民の皆様方にサービスが拡大できないか、そういうことを口に出して言うことによって少しずつ広がってきました。

(2) 現場の声を顧客満足度に

 例えば公民館、今、私どもでは、それを公務員がやっておったとき、月曜日、休館日、年末年始、休館日、そして、例えば朝9時から5時半まで開館、あるいはそのあと夜9時までやる場合には職員が残業というやりかたを行っておりました。しかし、これを別のやり方によって、年末の29日から1月3日までしか休まずに、建物はそこに365日建っている。じゃあ、それをどれだけ最大限住民の皆様方に利用していただくことができるか。そういうことによって、サービスの量が増えることによって利用拡大につながればというようなことを含めて、いろいろなやり方によって住民の皆様方が求めておられる、こういうサービスがあったらいい、こういうサービスだったらいいね、欲しいねというようなことを含めて、それをいかにして現場に一番近い私どもが生かしていくか。これは実は基礎自治体としてこれほど現場現地を持っている者の強さはありません。それは実はもう一つ裏返せば、住民の皆様方のいろいろなお声が私どもに届く。これを形にすれば、それによって顧客満足度を確保できることにつながってまいります。
 それが冒頭にもお話ししましたように、信頼という大きなものを勝ち取っていくことにつながります。私どもも、固定資産税の課税明細書を発送します。そして納付通知までの時間があります。そのときによく言われます。何で隣の市より税金が高いのか。うちは税金が高いね。と言われます。隣の市のあの土地、あそこだとこれだけなのに、高浜だとこうだ。と必ず言われます。そういうものというのは、もちろん私どもでも基準地に基づいてきちっとやってきている。しかし、それでも。これは潜在的に私どもの町のほうが高いという意識、これはなかなか払拭することはできないと思います。
 しかし、それでも私どもはやはり、いかにして努力をしてそうではないということをいろいろとやっていかなければいけない。そういう例が1年に必ず数件、私どもでもあります。そういう点で、きょうお集まりの自治体の皆さん、特に税務に携わる皆さん方もそういう現場でのいろいろなお話しをお聞きになると思いますが、しかし、逆にそういう現場でいろいろなお話をお聞きになって、これをどのようにより透明性の高いものにするか、あるいは時には簡素化につなげることができるか、そういうことでご苦 心されていらっしゃるのではないかなと思います。

(3) 選択のための仕組みづくり

 それと、先ほど申しました選択の時代に入ったということは、実はいろいろな私どもが提供するサービスの担い手を特定をせずに、例えば保育サービスの例を1つ出させていただきます。私どもでは従来、6保育園を公立公営でやっておりました。平成10年にそのうちの1つを公設民営、社会福祉法人の社会福祉協議会に、そして13年から民設民営に、建てかえのときに切りかえました。そうしますと、これは一番大事なことは、住民の皆さん方から、例えばどの保育園のサービスが評価が高いか分かるように、そこに評価システムを入れます。そういうふうにして住民の皆さん方から、目に見ていただいて、現状、現場を見ていただいた上で判断をしていただく、そういうことを私どもは行政の、自治体の役割として取り入れてきました。多様な担い手の中から選択できる仕組みを取り入れてきました。
 この多様な担い手がどのようにサービスを提供しているか、それを自分の目で確かめる。それによって、なるほど、このサービスならばというような評価ができる。これはある面で、これから私どもがさらにこれを進めていく場合に評価と申しますか、極端なことを言いますと、商品を手にとって比べてみるという、そういうことができる。サービスの品質がどうであるかということが分かるわけであります。私は、公の担い手がいろいろできてくるということは、裏返せば、必ずそこに、安かろう悪かろうということでは相入れない、リーズナブルな価格で品質の高いサービス、これをどのように提供していくか、こういうことが求められてくるというふうに思います。

(4) 新たな協働のパートナーづくり

 −地域内分権の取組み−
 そして、きょうこちらにお見えの皆様方も、市町村合併の問題、いろいろとご苦労されていると思います。明日、津山市の岸川課長様が合併のことに関して固定資産のことでお話をされます。ある面では、市町村合併というものが今私どもの周りを含めましていろいろと愁眉な課題でございます。その中で、よく言われることは、合併すると役場が遠くなるということを含めてよくそういうお話が出ます。その中で、私どもでは地域内分権というやりかたによって新しい公の担い手を今模索をさせていただいております。私どもは合併ということは遠のきました。そうなりますと、13平方キロの中でどのようにしていくかということの中で、一小学校区をモデルで地域内分権に取り組んでおります。
 そこで、今まで私どもは、例えば企画立案ということ、いわゆるコアの部分、例えば政策形成能力とか、法務形成能力というそういうコアの部分というのはなかなか外へ出すことは難しいのではないかということも含めて考えていましたけれども、思い切って、その一小学校区のモデルのところに企画立案を含めて、地域のことは地域で、ということで今取り組んでおります。これはとりもなおさず、新しい公の担い手として、コラボレーションということによって新しい公の担い手をつくろうではないか、それによって先ほど申しましたように、いろいろな担い手が私どもの周りにある。それを例えばこういう業務に対しては、例えば指定管理者による方法があるかもしれない。あるいはこのケースにはNPO がいいかもしれません。

(5) 団塊の世代の活躍の場、居場所づくり

 ということは、先ほど高浜市が全額出資しております高浜市総合サービスは、今まである面では大きな担い手、ほかに取ってかわるものがなかったかもしれない。しかし、これからはそれも担い手の1つにすぎないと考えております。最後は住民の皆様方が判断をしていただく、そういう競争を含めたいいサービスの提供体にどうしたらなれるか、経営努力が求められてきます。ご案内のように、平成18年3月までに私どもも指定管理者を含めていろいろと業務の洗い出しをもう1回やっていかなければいけない。きょうこちらにお見えの皆様方の中にもひょっとして、昭和22年、23年、24年ぐらいのお生まれの方がお見えかもしれません。俗に言いますと団塊の世代でございます。私どもの地域社会も、先ほど申しましたように日本の高度経済成長を支えた企業戦士の方たちが、これからあと5年もすれば地域にドッと帰ってこられます。
 従来は、会社人間として朝早く、そして夜遅く、あるいは土日も含めて働いて、地域との接点がありませんでした。しかし、その方たちは、企業でもまれ、しかも、先ほど申しましたように、戦士として活躍していろいろな能力、例えば私どもの地域で言えば、「カイゼン」方式、こういうことで常に鍛えられた方たちであります。この方たちが地域に、大量に帰ってこられ、これから生活を、日々の生活をされます。この方たちの力を私どもはどのように活用し、居場所をつくっていくか。ということは、私は新たな公の担い手としてNPO も含めて、あるいは株式会社の一員として、社会福祉協議会の一員として、あるいは市民ボランティアの一員として、それぞれがどのようなお役割を果たしていただけるか。それによって実は、財政の持続可能性の確保にとっても大きな要素を秘めていると考えています。私ども、いわゆる税収が、先ほど72億強と言いました。これが果たして今後も確保していけるかどうか、これは正直申して私自身でもわかりません。
 例えば税の大宗をなす固定資産税が、今までと同じように確保できるか、これすらわからないと思います。あるいは個人の市民税、これが果たしてどうなるか。たまたま今私どもの地域は職もありますが、しかし、これはバブルのときを思い起こしていただければ皆さんおわかりだと思います。いつかそれが破綻をするときだってあるかもしれません。そのときに持続可能な自立した基礎自治体として生きていくためにどうするか。合併とかそういうこととは、これは住民の皆さん方が最後ご判断いただければと思いますが、しかし、基礎自治体として分権の時代、自分たちで、ある面では税収72億の税収でどこまで自分たちの足で立っていけるか。そういうこと、そこにはある面では、私どもはもっと大きな試練が来るかもしれません。
 そのときに、俗に言いますと、大正を含め、ずっと従来の、旧来の住民像と言いましょうか、どちらかというと、要求型の、何かしてくれという住民の方がいらっしゃる。これは私ども自治体も、いわゆる陳情ということを含めて、かつて、例えば各省庁に行列を連ねてやってきた覚えがありますが、そういうものからこの団塊の世代の新しい人たち、この人たちは、私はある面では合理性、あるいはまた行動力を持った、そういう人たちが会社をリタイアした後にさらに地域で活躍していただける、そういう仕組みを今つくっておくことが、きょう皆様方にお話をした、いわゆるアウトソーシングによる効率的な行財政運営ではないかなと思います。 心されていらっしゃるのではないかなと思います。

(6) むすび

 そういう意味で、私どもが今こそこの厳しい時代、自分たちの知恵、工夫、これによって自主自立、そしてその自立は立つ自立と合わせて、私どもは我が身を律する自律によって、これを乗り切っていかねばなりません。そしてあわせて、地域というものがこれから私はもっと大きな意味をもってくると思います。今まではどちらかというと地域というものに対しての意識が、私どもも含めて希薄であったかもしれません。しかし、地域というものをもう1回掘り下げてみると、そこには私は、現場が一番近く、いろいろな財がそこに埋め込まれている。それを掘り起こしていくことがこれからの私どもの基礎自治体の進むべき道ではないかということをご報告をさせていただきまして、責めを果たさせていただきたいと思います。大変雑駁な話で、ご清聴、ありがとうございました。